医薬品卸業界のM&Aと事業承継の動向・案件情報2025年最新版

医薬品卸業界のM&A

医薬品卸業界は人の生命や健康に深く関わる医薬品の安定した供給とリスク管理を担う重要な役割を果たしています。本記事では、厳しい規制環境や複雑な供給網に向き合う医薬品卸業界のM&A動向、事例などをご紹介します。なお、製薬会社のM&Aはバイオ・医薬品製造業界、医薬品小売に関しては調剤薬局業界ドラッグストア業界をご覧ください。

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医薬品卸業界の
M&A案件(売却・事業承継案件)

譲渡・売却を希望する医薬品卸業界および隣接業界のM&A案件をご紹介します。非公開のM&A案件のご紹介や具体的な投資金額やエリアを絞って案件を探したい方は「M&A買収ニーズ」よりご登録をお願いします。

  • No.15271

    医薬品卸
    地域
    東南アジア
    売上高
    非公開

    ・国内外に商品を販売 ・医薬品や医療機器、サプリメントなど様々な商品を取り扱っている

  • No.15143

    バイオ・医薬品製造
    地域
    東南アジア
    売上高
    非公開

    ・ブランド力のある製品。

  • No.12774

    バイオ・医薬品製造
    地域
    海外
    売上高
    20億円~50億円

    ・ASEAN地域数か国に、製造拠点オフィスあり。 ・創業以来、品質と顧客ニーズへの対応の両面で信頼を得ており、長年に亘り顧客との良好な関係を築いている。

希望に沿う案件をご紹介

医薬品卸業界におけるM&Aの概要

医薬品卸業界は、製薬メーカーや製造業者から仕入れ、病院・クリニック、調剤薬局などの医療機関に医薬品や衛生材料の卸を行う事業者から構成されています。
医薬品卸は、私たちの生命に関わる医薬品を安全かつ安定的に供給するという重要な役割を担っています。一方で、製品の差別化が困難であること、価格転嫁が容易でないことから、業界は薄利体質になってしまう傾向があります。
価格交渉代行などによる一括購入や価格競争の激化等の厳しい経営環境、薬価引下げなどの制度的な要因により、医薬品卸売業界では1999年以降、急速に業界再編が進みました。スケールメリットや販管費削減を期待してM&Aや業務提携が行われ、1990年には381社の卸が存在していましたが、その数は2000年には217社、2022年3月時点で70社まで統合されました。そのうち全国流通している4社は「4大卸」「4メガ卸」と呼ばれ、それぞれが年商1兆円を超える大企業です。全国をカバーする4大卸と特定の地域でシェアの高い地域卸に集約された医薬品卸は、業界内のM&Aはほぼ終息し、均衡状態が続いています。近年では、事業の多角化や経営効率化のための異業種間M&Aが見受けられます。

医薬品卸業界の市場環境

医薬品は多品種少量生産であり、人の健康・生命に直接関わるため、安定供給が求められます。医薬品卸はその医薬品の流通の主要部分を担っています。とくに医療用医薬品では、製薬メーカーから出荷された9割以上の製品が医薬品卸を通じて、日本全国の病院・診療所、保険薬局などの医療機関等へ販売されています。
医薬品はその性質上、製造から仕入、保管、配送、販売、使用に至るまで、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」をはじめとする各種の法的規制の対象となっています。そのため、薬価基準、病院における仕入制度の改正など、政府規制の影響を強く受ける業界です。
本業界の市場規模は、高齢化に伴う医療費拡大を背景に増加傾向にありましたが、近年は概ね横ばいで推移しています。2023年に公表された厚生労働省「医薬品・医療機器産業実態調査」によると、2021年度の医薬品卸売業(93社)の医薬品売上高合計は約13.6兆円となっています。このうち、同年度の売上高集中度では上位5社が全体の約71.7%を占めています。

政府の価格圧力と市場競争などによって医薬品卸の利益率は年々低下し、医薬品卸売業の経営は厳しい状況にあります。日本医薬品卸売業連合会調査によると医薬品卸業の経営状況は、売上総利益率(粗利率)は1993年度の12.2%から2022年度には5.96%と、約半分の6%を割る水準で推移しています。粗利率の低下に合わせて、販売費及び一般管理費率も半減しておりコストの抑制に努めていることが見受けられますが、営業利益率は1%程度で推移しています。特に、2020年度は新型コロナウイルス感染症による影響等もあり、極めて厳しい経営状況となりました。2022年度は回復傾向にありますが、売上高増はコロナ関連の影響で、営業利益も改善しているものの1%には届いていないことから、引き続き厳しい状況にあることが推測されます。

図:医薬品卸業の経営状況
医薬品卸業の経営状況

データ出典:日本医薬品卸売業連合会

医療費の推移

厚生労働省「国民医療費の概況」によれば、2021年度の国民医療費は前年度比4.8%増の45兆 359億円となりました。国民一人当たりの国民医療費は約35.9万円で、これは国民医療費の国内総生産(GDP)の8.18%にあたります。また、厚生労働省が2023年9月に発表した「医療費の動向」によると、2022年度の概算医療費は前年度比4.0%増加の46兆円で、2024年秋に公表見込みの「2022年度国民医療費」は、恐らく47兆円弱程度と予想されます。2020年度は受診控え等により一時的に医療費が減少したものの、2021年度以降は引き続き増加傾向にあります。
日本では高齢化による医療需要の拡大と、それを支える生産年齢人口の減少が同時に進んでいる状況です。国全体の医療費削減は重要な課題ですが、医薬品卸や医療機関、製薬会社にとっては、収益の減少や管理コストの増加、新薬開発のモチベーション低下などの課題も存在しています。

医薬品卸業界における
M&A活用のメリット

医薬品卸業界におけるM&A活用のメリットをご紹介します。

譲渡側のメリット
  • 後継者問題を解決できる
  • 事業意欲旺盛な会社との協業により、相互に発展することが可能
  • 適切な会社に譲渡すれば、社員の雇用は保証され、成長機会も増える
  • オーナー社長は個人保証や担保提供から解放され、ハッピーリタイアができる
  • 個人保証や担保提供から解放されたうえで役員等として継続してかかわることも可能
譲受け側のメリット
  • 売上規模・シェアの拡大・地域補完が見込める
  • 事業多角化・新規事業への参入
  • 人材の獲得・技術力の向上
  • シナジーの創出
  • バリューチェーンの補完・関連事業領域の拡大
  • リスク分散ができる
  • コストの削減・財務力強化(仕入れコスト、管理部門コスト、物流コストなど)

医薬品卸業界で
M&Aを実行する際のポイント

医薬品卸業界でM&Aを実行する際に注意すべきポイントには、下記のようなものがあります。

  • メーカー、医療施設などとの関係
  • 有資格者の状況(人数・年齢・給与・継続雇用の可否)
  • 在庫管理・評価(過剰在庫を抱えていないか)
  • 財務問題
  • 労務問題
  • コンプライアンス
  • ガバナンス・管理体制

ここでは一般的なポイントをご紹介させていただいておりますが、実際には、個別事情を勘案すると大きく変わります。また、業界によっては独自の規制や商習慣が存在するため、M&Aの仲介を行ううえで、それぞれの業種・業界の特性を正しく理解していることが非常に大切です。日本M&Aセンターでは各業界に精通したコンサルタントが所属しているため、専門性の高いサービスを提供させていただくことが可能です。
当社では秘密保持を厳守のうえ、個別相談を無料でお受けしています。当社は全国に拠点を展開しております。気になることがありましたら、お気軽にお問い合わせください。

医薬品卸業界における
M&Aの価格相場

医薬品卸業界のM&Aにおける価格や相場感について説明いたします。まず、中小企業のM&Aには明確な相場が存在せず、最終的な価格は売り手と買い手の交渉によって決まることが特徴です。M&Aの価格は、業種や企業の規模、人材の質、財務状況、ブランド力、将来性、市場環境など、多岐にわたる要素によって変動します。そのため、個別の状況を考慮しながら価格が算出されることになります。
M&Aの価格算定にはいくつかの評価方法がありますが、その中の一つに「取引事例法」があります。取引事例法は、過去のM&A事例の中から、事業内容や地域、財務指標が似ている企業の売買実績を基に価値を評価する方法です。取引事例法において重要なのは、類似の取引事例を参考にすることですが、類似条件を見つけるためには、相当数の事例を蓄積する必要があります。非上場企業のM&Aの多くが非公開情報であることから、他社の実績を参考にすることはハードルが高い方法でもあります。その点、日本M&Aセンターでは、M&Aにおいて成約実績10,000件超、M&A成約件数のギネス世界記録™に4年連続で認定※されるなど、豊富な実績があります。事業内容や地域、財務指標に基づく似た会社の売買事例を選定し、一定のルールに従って公正な価値評価を行うことが可能です。こちらから当社の株価算定シミュレーションを体験することができます。

※ギネス世界記録™:M&Aフィナンシャルアドバイザリー業務の最多取扱い企業(2020年~2023年)

あなたの会社の評価額はいくら?

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あなたの会社が現在どう評価をされるか、ぜひ見てみませんか?

次に、より高い評価を得て会社を高く譲渡売却するためには、よりシナジーのある買い手を見つけることが重要です。M&Aの最終価格は、売り手企業と買い手企業の交渉によって決まるため、買い手が「この会社が欲しい」と思う要素を増やしていく必要があります。例えば、現在、医薬品卸業界の市場では人材不足が全体的な問題となっており、若くて優秀な人材を採用できる利点がある場合、買い手企業にとってM&Aの魅力が増します。
さらに、コンプライアンスやガバナンスに関する問題も重要な要素です。具体的には、顧客とのトラブルが存在しないか、社会保険への適切な加入状況が確認されることが求められます。これらの問題があると、潜在的な費用や負債として見なされ、価格交渉において不利な要因となり得ます。これらの要素が事前にクリアである場合、買い手企業も安心してM&Aを進めることができ、価格交渉もスムーズに進行しやすくなる傾向があります。
最後に、M&Aを成功させるためには、総合的に企業の魅力を高める努力が欠かせません。これは、価格評価への影響だけでなく、交渉の流れにも深く関わる要素であるといえるでしょう。

なお、実際には個別の業種や取引環境等によって価格相場は変動しますし、場所や経営状態によっても大きく左右されます。初期的なご相談や、簡易的な株価診断は無料にておこなっておりますので、よりくわしく評価や課題について聞きたい方は、弊社コンサルタントから詳細をご説明いたしますので、お気軽にご相談ください。

株式会社日本M&Aセンター

業界別M&Aレポート編集部

株式会社日本M&Aセンター

業界別M&Aレポート編集部は、日本M&Aセンターの社員によって執筆・運営されています。各業界・業種のM&Aや事業承継に関する情報、トピックをお届けします。

医薬品卸業界の
最新M&A事例を解説

医薬品卸業界は1990年代後半から多数のM&A(買収・売却)、経営統合が行われ、業界構造の再編が進みました。近年では、大手卸を中心に、海外案件や隣接業種とのM&A事例が見受けられます。近年に公開された医薬品卸の代表的なM&A、事業提携の事例をご紹介します。

食品素材製造・販売×医薬品卸
メディパルHD、住友ファーマフード&ケミカルを完全子会社化

譲渡企業
住友ファーマフード&ケミカル株式会社(大阪府)
※住友ファーマ株式会社(証券コード:4506)の完全子会社
譲受企業
株式会社メディパルホールディングス(証券コード:7459)

スキーム:株式譲渡 2023年3月31日

M&Aの概要

2022年11月、メディパルホールディングス(HD)は、住友ファーマから同社の完全子会社である住友ファーマフード&ケミカルを譲り受けることを発表。2023年3月31日付で住友ファーマフード&ケミカルの全株式を取得し、メディパルHDの完全子会社としました。また、同年4月1日付で社名(商号)を「MP五協フード&ケミカル株式会社」に変更しました。

M&Aの背景と目的

住友ファーマフード&ケミカルは、住友ファーマの子会社で、食品素材・食品添加物・化学製品材料の製造・販売まで幅広い領域で事業活動を展開する企業です。1947年に輸入商社である五協産業として発足し、2010年に親会社の大日本住友製薬(現:住友ファーマ)の食品・化成品事業を継承・統合しました。50年以上にわたる多糖類製造・販売の歴史を持ち、食品素材事業において、自社で研究開発した天然由来の多糖類や機能性素材などを国内外に幅広く提供しています。

住友ファーマは、新薬の研究開発などの医薬品事業を中核事業とする製薬企業です。同社は、事業基盤の強化のために『事業の選択と集中』を進める方針を掲げ、様々な施策を検討していました。その一環として、非医薬品事業子会社である住友ファーマフード&ケミカルの全株式をメディパルHDへ譲渡することを決断しました。

メディパルホールディングス(HD)は、医療用医薬品等の卸売事業、化粧品・日用品、一般用医薬品卸売事業ならびに動物用医薬品・食品加工原材料等卸売などを行う専門卸グループの持株会社です。メディパルグループは中期ビジョンにおいて、健康寿命の延伸ニーズや、予防・未病への関心の高まりに対する取組みの強化・充実を掲げており、医食同源を体現する住友ファーマフード&ケミカルがグループに加わることは、中期ビジョンの実現に資すると判断しました。このM&Aにより、住友ファーマフード&ケミカルの高い研究開発力から創出された競争力のある製品とメディパルグループが持つ流通ネットワークを掛け合わせることによるシナジー効果が期待されます。

医薬品卸×医薬品卸
アルフレッサHD、中国の医薬卸大手と包括的な戦略的業務提携へ

スキーム:業務提携 2023年11月7日

業務提携の背景と目的

2023年11月20日、アルフレッサホールディングスは、中国の医薬品卸大手である華潤医薬商業集団有限公司(北京市、以下「華潤医薬商業」)と包括的な戦略的業務提携に関する合意書を締結し、両社による合意書の調印式が11月7日に実施されたことを発表しました。この提携は、日本の医薬品や医療機器などを中国市場に導入するための支援を目的としており、今後は両社で流通に関する事業開発の協議を進める予定です。

アルフレッサHDは、医薬品をメインに扱う専門商社です。同社の2022~2024年度の中期経営計画では「アジア市場における事業の拡充」を掲げており、海外企業との提携を通じた事業の拡大を進めていました。

華潤医薬商業は中国の複合企業グループである「華潤集団有限公司」の医薬部門に所属する医薬品卸で、中国28省に430社を超える子会社を展開しています。2022年度12月期の売上高が日本円換算で約3.8兆円。2022年度時点で、中国の医薬品卸売企業としては第3位の地位にあります。華潤医薬商業は、8,000軒以上の大病院を中心に医薬品の卸売販売、物流配送、およびサプライチェーン関連のサービスを提供しています。

両社は2019年3月にも提携契約を締結し、中国市場において共同事業を行うことを模索してきました。今回の戦略的業務提携により、両社はお互いのブランド力や医療機関との販売・物流ネットワーク、ノウハウなどの経営資源を活用し、中国市場における日本の医薬品や医療機器の輸出および流通に関する事業開発の協議を進める方針です。

医薬品卸業界の
M&Aニュース

医薬品卸業界のM&Aニュースを表示します。

医薬品卸業界のM&Aニュース一覧

医薬品卸業界の
M&A仲介実績

日本M&Aセンターが仲介・支援して成約した医薬品卸業界のM&A案件をご紹介します。
※現在、2025年3月までの実績を掲載しています。次回の更新(2025年4月~6月分)は2025年7月30日以降の予定です。

譲渡・売却企業 譲受け・買収企業
2025年3月 調剤薬局・ドラッグストア(東海・北陸) 介護・福祉(東海・北陸)
2025年3月 調剤薬局・ドラッグストア(北海道・東北) 調剤薬局・ドラッグストア(九州・沖縄)
2025年3月 調剤薬局・ドラッグストア(関東) 調剤薬局・ドラッグストア(中国・四国)
2025年3月 調剤薬局・ドラッグストア(中国・四国) 調剤薬局・ドラッグストア(中国・四国)
2025年3月 医療機器卸(九州・沖縄) 医薬品卸売(関東)
2025年1月 調剤薬局・ドラッグストア(関東) 調剤薬局・ドラッグストア(関東)
2024年12月 調剤薬局・ドラッグストア(九州・沖縄) 調剤薬局・ドラッグストア(九州・沖縄)
2024年12月 調剤薬局・ドラッグストア(中国・四国) 調剤薬局・ドラッグストア(中国・四国)
2024年12月 調剤薬局・ドラッグストア(九州・沖縄) 調剤薬局・ドラッグストア(関東)
2024年11月 調剤薬局・ドラッグストア(東海・北陸) 調剤薬局・ドラッグストア(東海・北陸)

医薬品卸業界を含む医薬品卸・小売業界のM&A仲介実績一覧

医薬品卸業界の
最新のM&A事例インタビュー

当社の仲介によりM&A・事業承継された医薬品卸業界の事例を、経営者様へのインタビュー形式でご紹介します。

医薬品卸業界のM&A事例インタビュー一覧

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セミナー情報

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