事業承継とは / 事業承継成功のために
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[表示]事業承継で引き継ぐべき3つの経営資源
事業承継は単に「株式の承継」と「経営者の交代」ではありません。文字通り「事業」そのものを「承継」する取り組みであり、承継後に後継者が安定的な経営でさらなる成長をはかるためには、あらゆる経営資源を承継する必要があります。後継者に承継すべき経営資源として「人(経営)」、「資産」、「知的資産」の3つの要素が挙げられます。

①人の承継
事業承継における「人の承継」とは「経営権」の承継を指します。特に中堅・中小企業においては経営者個人にノウハウや取引関係等が集中していることが多いため、事業の円滑な運営や業績が経営者の資質に大きく左右される傾向にあります。
親族内承継や従業員承継においては、
経営者教育に十分な時間を割く必要があるため、後継者候補の選定はできるだけ早期に開始することが求められます。
近年は、親族内に後継者を見つけることが難しくなってきており、外部の第三者への事業承継の可能性も視野に検討を進める会社が増えてきています。
②資産の承継
資産の承継とは、事業を行うために必要な資産を後継者に承継することを指します。主に現経営者個人が所有する株式や事業用資産(設備・不動産)、資金(運転資金・借入等)があります。経営権確保のための株式移転(物的承継)でも、タイミング・対策次第で税金が大きく変わるケースがあるため、税負担に配慮した承継方法を検討しなければなりません。資産の承継において考慮すべきポイントは専門的かつ多岐にわたるため、早期に税理士等の専門家に相談することが望まれます。
③知的資産の承継
知的資産の承継とは、無形の資産、つまりその会社の競争力の源泉となる強みを継承することを指します。例えば人材、技術、技能、知的財産(特許・ブランドなど)、組織力、経営理念、顧客とのネットワークなどが知的資産に挙げられます。正しく承継するためには現経営者が自社の強み・価値の源泉がどこにあるのかを理解し、後継者に共有する必要があります。
事業承継・事業引継ぎを「誰」にするのか?
事業承継の方法は①親族内承継、②従業員等への社内承継、③第三者への承継(M&A等)の3つがあります。
①親族内承継
現経営者の親族に承継させる方法です。一般的に他の方法と比べて、内外の関係者から心情的に受け入れられやすいこと、後継者の早期決定により長期の準備期間の確保が可能であること、相続等により財産・株式の所有と経営の一体的な承継が期待できるといったメリットがあります。
一方、「子供には自由に自分の道を歩んでもらいたい」「自分の引退時期までに子供への経営者教育が終わらない。」このように考える経営者も増えてきています。
また適性のないご子息に引き継いでしまうことで辛い思いをさせてしまう「継がす不幸」という言葉も出てきています。
メリット | 注意点・デメリット |
---|---|
関係者から心情的に受け入れられやすい 後継者教育を行う準備期間の確保が可能 相続等による所有と経営の分離回避 | 適性のある親族がいるとは限らない 後継者の決定・経営権の集中が難しい |
親族内承継のメリット
関係者から心情的に受け入れられやすい
創業者、経営者の親族への承継がこれまで続いてきた場合、役員や従業員や取引先など内外の関係者からは既定路線として納得しやすい形になります。
後継者教育を行う準備期間の確保が可能
後継者候補を親族内に絞込み、早期に決定することで社内での教育だけでなく例えば海外への留学、社外での経験を積ませるなど、育成に向けて十分な準備が可能となります。
【後継者教育の例】
円滑な事業承継のためには、後継者教育を通じて後継者育成を行うことが不可欠です。
具体的には社内・社外で以下のようなものが挙げられます。
後継者教育(社内)の例 | 期待できる効果 |
---|---|
社内の各部門をローテーションで経験させる | 自社の各分野の経験と必要な知識を習得する |
責任ある地位につけて権限を委譲する | 重要な意思決定やリーダーシップを発揮する機会えることで経営に対する自覚が芽生える |
現経営者による直接指導 | 経営上のノウハウだけでなく経営理念も引き継ぐ |
後継者教育(社外)の例 | 期待できる効果 |
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他社での勤務を経験させる | 人脈の形成・新しい経営手法の習得、自社の枠にとらわれないアイデアの獲得につなげる |
子会社・関連会社の経営を任せる (一定の実力が備わった段階で) |
経営者としての責任感を経験させ、責任感・資質の確認ができる |
外部機関によるセミナー等を活用する | 経営者に必要とされる知識全般を修得し、幅広い視野を育成することができる |
[参考URL]中小企業庁「事業承継ガイドライン20問20答」P11
相続等による所有と経営の分離回避
後継者が親族である場合、株式や事業用資産を相続や贈与で取得させることによって、経営と財産を一体で引き継ぐことが可能となり、所有と経営の分離を回避できます。
親族内承継の注意点・デメリット
適性のある親族がいるとは限らない
現経営者の子供など後継者候補がいることと、経営者としての資質の有無、本人の意欲の有無は別問題です。
親は子への継承することを願っていたが、ご子息自身はそう考えていなかった、ということや、親の会社に入社した後、自分が経営者に向いていないことに気づき、継承について後ろ向きになってしまうケースもあります。
後継者の決定・経営権の集中が難しい
相続人が複数いる場合、後継者以外の相続人への配慮が必要となるため、後継者の決定・経営権の集中が難しくなります。親族内で経営権をめぐる紛争を避けるために、誰が後継者となるか、後継者ではない親族に対する財産分与面での方針をあらかじめ親族会議で決めておく必要があります。
【後継者への株式・財産の分配における注意点】
以下2つの観点をふまえて検討する必要があります。
①後継者への株式等事業用資産の集中
後継者およびその友好的な株主に対し、相当数の株式を集中させることが望ましいとされています。(目安:株式総会で重要事項決議に必要な3分の2以上の議決権)
②後継者以外の相続人への配慮
生前贈与や遺言を用いる場合でも、他の相続人の遺留分による制限があります。遺留分とは、配偶者や子供などの一定範囲の法定相続人に認められる最低限度の遺産取得割合を指します。この遺留分を考慮する必要があるため、後継者に集中できる財産の限度に制限がかかることとなります。
[参考URL]中小企業庁「事業承継ガイドライン20問20答」P12
②従業員等への社内承継
親族以外の役員・従業員等に承継する方法です。自社株はオーナーが保有したまま社長の地位を譲るケースや、将来親族等への承継の中継ぎとして従業員へ一時的に承継されるケースも見られます。
社内の後継者候補としては、共同創業者、経営者の右腕を担ってきた役員、優秀な若手経営陣、工場長等の従業員等が挙げられます。従業員等への承継では、経営者としての能力のある人材を見極めて承継することができること、長年勤続する従業員であれば経営方針等の一貫性を保ちやすいといったメリットがあります。
これまで従業員承継における大きな課題であった資金力問題については、種類株式や持株会社、従業員持株会を活用するスキームの浸透や、親族外の後継者も事業承継税制の対象に加えられる等、より実施しやすい環境が整いつつあります。また、従業員承継を行う場合には、重要親族株主の了解を得ることが重要です。早期に親族株主間の調整を行い、関係者全員の同意と協力を取り付け、事後にトラブルを生まないよう進めることがポイントとなります。
メリット | 注意点・デメリット |
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会社・事業に詳しい人にスムーズに承継できる 経営者としての資質・適性の見極めができる | 適任者がいないおそれがある 後継者候補に株式取得等の資金力が無い場合が多い 個人債務保証の引き継ぎ等に問題が多い |
従業員等への社内承継のメリット
会社・事業に詳しい人にスムーズに承継できる
最大のメリットとしては現経営者の思いや社風、業務や現場をよく知っている人に承継するため、スムーズな事業承継が期待できる点です。
経営者としての資質・適性の見極めができる
これまでの会社に対する貢献、働きぶりから後継者としての適性を見極め、判断することができます。
従業員等への社内承継の注意点・デメリット
適任者がいないおそれがある
親族内承継の場合以上に、後継者候補が経営への強い意志を有していることが重要となります。資金面、債務保証のリスクを負うことになるため、経営への意欲だけでは務まらず、適任者が見つかりにくいという側面があります。
後継者候補に株式取得等の資金力が無い場合が多い
経営権=株式であり、経営者やオーナーからの株式買取資金は中小企業でも数億円から数十億円かかるケースも少なくありません。有償譲渡になるケースが多い社内承継の場合は、相続税対策が不要になる一方、資金調達面の壁が立ちはだかります。
個人債務保証の引継ぎ等に問題が多い
多くの経営者は個人資産を担保に事業を行うため、会社経営リスクへの理解や説明が、後継者や後継者の家族に対して必要となります。
③第三者への承継(M&A等)
親族や従業員等に後継者候補がいない場合は、M&Aという手法で会社を売却し、第三者へ承継、経営を託すことが選択肢として挙げられます。近年は後継者不足のほか、中小企業のM&Aを専門に扱う仲介会社が増えてきたことや、国の支援体制が強化されM&Aの認知が高まったことにより、中小企業のM&A件数は増加傾向にあります。
[関連記事]M&Aとは/M&A成功のために
第三者への承継は、身近に適任者がいない場合でも、広く候補者を外部に求めることができます。また、現経営者が会社売却の利益を得られることもメリットとして挙げられます
メリット | 注意点・デメリット |
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後継者を広く外部に求められる 個人保証や、個人資産の担保提供から解放される 創業者利益を確保できる | 希望の相手を見つけるのが自力では困難 文化やシステムの統合に時間がかかる 経営方針が買い手に委ねられる 利害関係者に対して十分な説明が必要 |
第三者への承継のメリット
後継者を広く外部に求められる
身近に後継者に適任なものがいない場合でも、広く候補者を外部に求めることができます。選択肢が広がることで、「後継者不在による廃業」を免れる可能性が高まります。
個人保証や、個人資産の担保提供から解放される
中小企業では経営者が個人保証を行い、金融機関から融資を受けているケースが多く見られます。M&Aでは譲受け側による融資の肩代わり、もしくは保証そのものを引き受ける形で個人保証の解除が可能になります。
創業者利益を確保できる
中小企業の多くは未上場であるため、株式を現金に換えにくい一面があります。しかしM&Aにより株式譲渡を選ぶと、株式を保有するオーナーが譲渡益を獲得することができます。自社の譲渡後に新たな事業を始める、余裕あるセカンドライフを送るという事例も見られます。
第三者への承継の注意点・デメリット
希望の相手を見つけるのが自力では困難
事業を継続しながら、自力で希望の条件(従業員の雇用、価格等)を満たす相手先企業を見つけ、交渉を進めるには非常に多くの労力と時間がかかります。M&A仲介会社など専門家の力をうまく活用することが求められます。
文化やシステムの統合に時間がかかる
人事や社内システム、組織体系などハード面の統合に加え、それぞれが築いてきた企業文化の統一には時間を要します。統合プロセスの専門家など外部のリソースも活用しながら慎重に進める必要があります。
経営方針が買い手に委ねられる
経営権の移管によって、M&A後は譲受け側の経営方針に従う必要があります。従業員の雇用条件等が悪化しないよう、事前に条件に組み込んでおくことが求められます。
利害関係者に対して十分な説明が必要
従業員や取引先などへの説明次第で、その後の従業員の士気や、取引先からの信頼度は大きく変わってきます。発表前のタイミング・表現・幹部への根回しに十分配慮することが必要となります。
事業承継で大切なこと
事業承継で大事なことは「経営理念や想いが次の世代にも受け継がれること」と「家族でしっかりと話し合うこと」です。
理念や想いへの共感があってこそ、従業員や取引先、消費者に支持され続けることができます。現経営者が事業に対する想いを明文化し、後継者に伝えることは極めて重要なプロセスとなります。
また、後継者問題は家族の問題でもあります。家族がホンネで話し合うことで、お互いに安心・納得した事業承継を進めることができます。経営者のご家族向けに、事業承継のポイントについてまとめた「事業承継ガイドブック」があります。下記よりダウンロードしてご活用ください。
[関連資料]事業承継ガイドブック
中小企業をめぐる事業承継・事業引継ぎの状況
親族内承継と親族外承継の割合が逆転
後継者確保の困難化等の影響から、近年、事業承継において親族内承継から親族外承継へと主流がシフトしつつあり、日本M&Aセンターでご紹介しているM&A案件の中にも、後継者問題解決のために第三者承継を検討されている方が多くいらっしゃいます。中小企業庁のデータによると、かつては親族内承継が9割を占めていましたが、最近では親族外への承継が2/3を占めるまでになりました。
会社の引き継ぎ先推移:親族外承継が急速に一般化

M&Aに対する認知・理解が十分でない現状
これまでは「M&Aは大企業のもので自社は対象にならない」「M&Aをしたらリストラをされて社員がかわいそうだ」といったM&Aに対する誤解が多くありました。しかし前述の通り第三者への承継が増えている要因として下記の2点が挙げられます。
(1)中堅・中小企業におけるM&Aに対する認知・理解が進んでいること
(2)上記の結果、友好的なM&Aのメリットを積極的に評価し、活用する事業者が増えていること
M&Aで譲渡できる企業は、他社から見て魅力があり社会から必要とされている証です。会社の存続をあきらめる前に、M&Aを重要な選択肢として検討してみることが大切です。
経営者のM&A認知状況:親族外承継が増えている一方で、まだ認知度は低い

中小企業の事業承継にまつわる公的支援・動向
中小企業の円滑な事業承継を支援する中小企業庁ではどのような取り組み、支援が行われているのでしょうか。直近の動きを中心に見ていきます。
「事業承継ガイドライン」の改訂
「事業承継ガイドライン」が2022年3月に、約5年ぶりに改訂されました。後継者不在率が改善傾向にあるなど事業承継は徐々に進みつつありますが、経営者の高齢化は依然として進んでおり事業承継の取組の必要性は高い状況が続いています。足下で長期化している新型コロナウイルス感染症の影響もあって、事業承継を後回しにしてしまうケースも少なくありません。
こうした状況も踏まえて円滑な事業承継をより一層推進するため、前回改訂時以降に事業承継に関連して生じた変化や、新たに認識された課題と対応策等を反映したのが最新版の「事業承継ガイドライン」となります
[関連URL]中小企業庁:事業承継ガイドライン(第3版)
中小M&Aガイドラインの策定
後継者不在の中小企業にとって、M&Aを通じた第三者への事業の引継ぎは、事業承継の重要な手法の1つです。しかしながら、中小企業経営者の中ではM&Aに対する知見がまだ十分でないのが現状です。その改善のため中小企業向けの手引書として「中小M&Aガイドライン」が2020年3月に策定されました。
[関連URL]中小企業庁:中小M&Aガイドライン
[関連URL]中小企業庁:中小M&Aガイドライン参考資料
ガイドラインのポイントは次の2つです。
M&Aの基本的な事項や手数料の目安を示すこと
関連用語や、M&Aに向けた心構え、注意すべきこと、M&Aのプロセスや手数料などについてわかりやすく丁寧に解説されています。また、冒頭に紹介されている約20のM&A事例では「廃業を予定していた」「経営状況が良好でなかった」「従業員の反対があった」など様々なケース別の事例が取り上げられており、多くの経営者が自社に当てはめて考えられるような構成になっています。(事例の詳細は、ガイドライン参考資料の方に記載されています)
支援機関に求められるサポート内容や注意点を明示した行動指針であること
M&Aを行う中小企業経営者のほとんどは支援機関のサポートを得ながら進めます。
本ガイドラインでは支援機関に対しても「各機関はそれぞれが持つ専門知識をフルに生かしてM&Aがスムーズに進むよう努め、さらに依頼者(顧客)である中小企業の利益に真に忠実に動くこと」という基本姿勢や、それぞれの専門・役割に応じて互いに連携しながらバックアップすることが強調されています。
中小M&A推進計画の策定
「中小M&Aガイドライン」に続いて2021年4月、中小企業庁は「中小M&A推進計画」を作成しました。計画では後継者不在、新型コロナウイルス感染症の影響による休廃業を防ぐため、中小企業におけるM&Aを実現するにはどうしたらいいか、官民が今後5年間に実施すべき取組みがまとめられています。
中小M&A推進計画の主なポイントは以下のとおりです。
[関連URL]中小企業庁:中小企業の経営資源集約化等に関する検討会取りまとめ~中小 M&A 推進計画~
中小M&Aの意義の再定義と潜在的な対象事業者
「経営者の高齢化への対応」という観点に加え「経営資源の散逸の回避」「生産性向上の実現」「リスクやコストを抑えた創業」の観点から中小M&Aを推進することが明記されています。また潜在的に中小M&Aの対象となりえる譲渡側の事業者数にも触れ、まだ拡大途上にあるとも記されています。
企業規模によって費用負担やM&A支援機関にも違いがあることから、規模別の取り組みが策定されています。
小規模・超小規模M&Aの円滑化
小規模・超小規模M&Aは、該当する企業の多くが中小企業のため、後継者不在を解消する事業承継の手段として、M&Aの推進が喫緊の課題です。しかし費用負担をはじめ、公的支援を必要とする事業者の数が多く、対応しきれていない実情がありました。その改善を目的に下記方針が定められました。
官民のマッチングネットワークの構築
地方において特に小規模、超小規模向けの支援が不足していることから、全国にある事業承継・引継ぎ支援センターと民間M&A支援機関の連携強化が図られます。
人員強化、業務標準化
優秀なM&A支援人材や経営者OB人材を全国的に公募し、地方の事業承継・引継ぎ支援センターへの配置等が進みます。また、必要な人材育成カリキュラムを検討し、2023年度から、全国の事業承継・引継ぎ支援センターの職員向けの定期的な人材育成を大幅な強化が図られます。
創業希望者と後継者不在企業のマッチングの拡充
創業支援型の事業承継・引継ぎ補助金創設により、引継ぎ型創業が推進されます。
また、一部の事業承継・引継ぎ支援センターにおいて、M&Aプラットフォーマーとの連携に加え、オープンネームでのマッチングを含め、人材紹介プラットフォーマー等との連携が試行されます。取組の有効性があれば、本取組を行う事業承継・引継ぎ支援センターの拡大が期待されます。
小規模・超小規模M&Aにおける安心の提供
M&Aには、表明保証違反が発覚した際、買い手が負った経済的な損失を補償するための「表明保証保険」があります。安心の取組を確保するため、保険料への補助通じ、表明保証保険の活用が推進されていきます。その他、士業等専門家の育成・活用の強化も図られます。
大規模・中規模M&Aの円滑化
小規模・超小規模 M&A と同様に後継者不在問題等に起因する事業承継型M&Aが多く、最近の傾向として譲受側を起点とするM&Aも増えており、「売上・市場シェアの拡大」、「新事業展開・異業種への参入」、「人材 の獲得」などを目的とする成長志向型 M&A の重要性も高まってきています。
M&A支援機関の支援の妥当性を判断するためのツール等の提供
中小企業が民間のM&A支援機関による支援を適切に活用できるよう、企業価値評価ツールを提供するとともに、補助金等によりセカンドオピニオンの取得が推進されていきます。
中小M&AにおけるPMIに関する支援の確立
M&A実施後の経営統合(PMI)の取組等を推進するため、中小M&AにおけるPMIに関する指針が策定されます。
[関連URL]中小企業庁:中小PMIガイドライン(2022年3月策定)
[関連記事]中小企業庁が中小PMIガイドラインを初策定
中小企業向けファンドによる支援の周知
独力での成長に限界を感じている中小企業にとって、PEファンドによる投資を受けることで、ハンズオン支援を通じ成長の壁を打ち破る可能性があります。
しかし、PEファンドによる支援の理解は十分に進んでいない状況です。
必要に応じてファンドに支援を求められるよう、ファンドによる中小M&A支援の内容や具体的な事例を分かりやすく整理し、中小企業向けに継続して広報が行われていきます。
中小企業経営力強化支援ファンドを通じたすそ野の拡大
後継者不在の企業を譲り受け、経営者として企業の再成長を実現させる経営者候補(サーチャー)がいます。中小企業経営力強化支援ファンド出資事業において、このサーチャーに対して資金等の支援を行うサーチファンドを含め、中小M&Aを支援する新たな形態や新たなプレイヤーによるファンドの組成が重点的に支援されます。
また、従来のPEファンドよりも投資リターン目線は低いが、幅広い中小企業のニーズに即して中小M&Aを支援するファンド組成を後押しするため、中小企業経営力強化支援ファンド出資事業において、他の投資家に優先分配を行える仕組みを措置するなどの特例措置の創設について検討が進められます。
中小M&Aに関する基盤の構築
事業承継への気づき、M&Aの精度的な課題、M&A支援機関の増加に伴うトラブル検知、といった課題に対処するための基盤強化が進んでいます。
事業承継に着手するための気づきを提供する取組の拡充
事業承継は他の経営課題より後回しにされがちです。事業承継の準備に早期に着手し、計画的に進めるために気づきを提供する「企業健康診断」などの実施が推進されます。
中小M&Aの制度的課題に対応
M&Aの実施プロセスでの障害となる制度的課題が顕在化しつつあります。その改善の一つとして、所在不明株主の、株式の買取り等に要する期間の短縮等が検討されています。
M&A支援機関の信頼感の醸成
M&A支援機関の質を確保するため、M&A支援機関に係る登録制度(M&A支援機関登録制度)が創設されるとともに、M&A仲介に係る自主規制団体である「一般社団法人M&A仲介協会」が設立されました。M&A業界の健全な発展と信頼感の醸成が推進されます。
[関連URL]一般社団法人M&A仲介協会
[関連記事]中小企業庁が中小M&A推進計画を初策定
事業承継・引継ぎ補助金
事業承継やM&Aを契機とした経営革新等への挑戦、M&Aによる経営資源の引継ぎ行う中小企業者を支援するものとして「事業承継・引継ぎ補助金」があります。
M&Aをする前段階で民間のM&A仲介会社などの支援を受ける専門家活用費用を補助するもの(「専門家活用」類型)と、M&A後に経営革新のため新事業の展開や生産性向上を図るための費用を補助するもの(「経営革新」類型)の2類型があります。申請条件や、補助上限額は年度や類型によって異なりますのでご注意ください。
[関連URL]令和4年度 当初予算 事業承継・引継ぎ補助金
[関連記事]解説コラム「事業承継・引継ぎ補助金」
事業承継税制
事業承継税制とは、中小企業の先代経営者等から株式・資産などを後継者が贈与、相続又は遺贈により取得した際、一定の要件を満たす場合に贈与税・相続税が猶予される制度です。事業承継税制は平成21年の税制改正で登場しました。平成30年度の税制改正ではこれまでの措置に加え、10年間の措置として納税猶予の対象となる非上場株式等の制限の撤廃や、納税猶予割合の引上げ等がされた特例措置(特例事業承継税制)が設けられました。
概要について下記をご覧ください。
[関連URL]経営承継円滑化法申請マニュアル
[関連記事]事業承継税制とは?その概要、ポイントを解説
事業承継に向けた進め方・方法
事業承継をスムーズに進めるためには早期から準備に着手することが大切です。
後継者教育等の準備に要する期間を考慮し、経営者が概ね60歳に達した頃には事業承継の準備に取りかかることが望ましいとされています。60歳を超えてなお経営に携わっている経営者もいますが、心身のリスク等を考慮すると、元気で社内外に影響力があるうちから準備に着手すべきです。
事業承継を進める主なステップと、気をつけるべきポイントを簡単に見ておきましょう。
①自社の現状把握と経営改善
まずは自社の経営状況と事業承継を行うにあたっての課題を浮き彫りにします。
自社株の評価、収益性の高い商品・サービス、競争優位性の把握、業界におけるポジショニングなどの分析で経営状況の把握を行います。
加えて、後継者候補の有無、相続財産の特定や相続税額の算定シミュレーション、親族への対応など事業承継における課題も可視化します。M&A仲介会社などの支援機関を活用することで、適切なアドバイスを得られるので、うまく活用しましょう。
また、現経営者が事業の維持・成長に努めることは、後継者が安心して事業を引き継ぐことにつながります。経営改善による磨き上げも行っておけると望ましいです。具体的には、経営資源を活かした競争力の強化、財務状況の改善、職務権限の明確化、マニュアル・規程の整備、社内体制の見直しなどが挙げられます。
②事業承継計画の策定/M&Aの相手探し
親族内・従業員への承継の場合は事業承継計画に向けた手続き、第三者への承継の場合は、M&Aの相手探しを行います。
親族内・従業員への承継の場合
事業承継計画の策定を行います。事業承継計画は経営者が一人だけで考えるものではなく、後継者や親族などと一緒に社内外関係者を考慮しながら策定します。具体的には、中長期的な経営方針や方向性、目標を設定しながら、その中に事業承継の行動計画(いつ、誰に、何を、どのように)を盛り込みます。事業承継計画の策定は「計画書」を作ることが目的になってはいけません。経営者と後継者が事業承継という一つの目標に向かって共に考え定めていくというプロセスそのものも、事業承継を進める上で大切な要素になります。
第三者承継の場合
M&Aの相手(買い手候補)とのマッチングを進めます。自力で相手探しを行い、交渉・契約を進めることは非現実的なため、M&A仲介会社などの支援機関と契約し、実務を依頼することが一般的です。理想の相手探しを行うためにも、自社の状況にふさわしい相手はどういう条件か、支援機関のアドバイスを受けながら、希望条件を固めておくことが大切です。
③事業承継/M&Aの実行
親族内・従業員への承継の場合は事業承継、第三者承継の場合はM&Aの実行を行います。
具体的には、資産の移転や経営権の譲渡を行います。親族や社員への継承は経営者教育の面で数年から10年のスパンで時間を要します。一方でM&Aは社外から経営者を派遣してもらうため短期間で実施可能です。しかし、M&Aの相手はすぐに見つかるとは限りません。また、より良い相手に良い条件で引き継ぐ上でも、計画的に、時間的余裕をもって取り組みましょう。
M&Aを進めていく過程でポイントの一つとなる企業価値や税務については下記記事を参照ください。
[関連記事]M&Aの実行に伴うにおける税務のポイントを分かりやすく解説
[関連記事]M&Aにおける企業価値評価についての解説
社長様の健康不安などの事情から「M&Aで後継者をできるだけ早く見つけてほしい」というご相談も近年増えています。確実に事業承継を成功させるためには、早くからの事業承継のご準備をお勧めしています。

事業承継のM&A事例インタビュー
当社を通じて、事業承継や会社の成長につなげた体験談をご紹介します。
事業承継案件
日本M&Aセンターでは、ホームページ上でも譲渡案件や買収ニーズ情報を常時ご紹介しており、事業のお相手を探すことができます。機密性の高い情報を、日本M&Aセンターが厳しく管理し、匿名化した情報として掲載しております。
※性質上、一般に公開できない案件情報も多数あるため、ごく一部のみの掲載となります。
また、個人や個人事業主に譲り渡す事業承継も急増しています。
日本M&Aセンターグループの株式会社バトンズでは、小規模M&Aを含むオンライン事業承継マッチングサービス「BATONZ(バトンズ)」を提供しています。
事業承継・事業引継ぎは日本M&Aセンターにご相談下さい
上記の通り、事業承継をどうするかという問題は、今では社外も含めて「誰に継がせるか」という問題設定も必要になりつつあります。事業承継の助言をされる方でも、長らく親族内承継が主流だったために税理士や公認会計士の先生方の中にも、事業承継M&Aのメリットについて十分に認知されていないケースもあります。
日本M&AセンターはM&A仲介業のリーディングカンパニーとして、「M&A業務を通じて企業の存続と発展に貢献する」ことを企業理念とし、創業以来累計 8,000件 を超えるM&A支援実績を有しています。会計事務所・地方銀行・メガバンク・証券会社との連携も深めており、より身近な事業承継やM&Aに関する相談機会の創出を加速し、マッチングを強化しています。
その他、M&Aによる事業承継(事業引継ぎ)について興味・ご関心がございましたら、ぜひ当社にご相談下さい(日本全国対応)。
M&A・事業承継 無料相談 お申込み
ご相談は無料です。秘密保持を厳守しご対応いたします。経験豊富でM&A・事業承継に精通した当社コンサルタントが対応いたします。まずはこちらからお申し込みください。後ほど弊社より折り返しご連絡させて頂きます。Webミーティングによる個別面談も対応いたします。
監修者プロフィール
会社の譲渡価格・譲受け先をシュミレーションする
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【連載】「経営者と家族のための事業承継」現場でみる最新の考え方と進め方 ~第1回 いい事業承継とは?~

中小企業庁の発表では、2025年までに、平均引退年齢である70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、うち約半数の
5年以内の事業承継を考えている中小事業者が30% ~コロナ禍で広がる事業継承という選択肢~

全国の中小事業者へ事業承継に関する調査を実施(エキテン×Batonz共同調査)経産省の発表によると、後継者不在の70歳以上の経営者が245万人、10年間でその半
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