百貨店・GMS業界のM&Aと事業承継の動向・案件情報2025年最新版
百貨店・GMS業界に関する最新のM&A動向をご紹介します。 近年の市場推移やトピックス、業界再編にまつわる情報、百貨店・GMS業界の周辺業界を含めたM&A・事業承継の事例をわかりやすく解説しています。 また、日本M&Aセンターが取り扱う最新のM&A案件、当社仲介によりM&Aを実行された経営者様の事例、 各業界の動向やM&A(第三者承継)への理解を深めるセミナー情報などもご紹介します。
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百貨店・GMS業界の概要とM&A動向
百貨店・GMS(General Merchandise Store:総合スーパー)業界は、人口動態の変化やインバウンド需要の回復、デジタル化の進展、物流・人件費の上昇など、多面的な構造変化の影響を強く受ける業界です。ここでは、百貨店・総合スーパーを取り巻く環境を整理します。
百貨店・GMS業界の大手企業で例を挙げると、三越伊勢丹ホールディングス、J.フロント リテイリング、高島屋、イオン、平和堂などを本サイトではこの業界に分類しています。主として食料品、衣料品、日用品を幅広く扱い、セルフサービス方式にて販売する大型の小売店(GMS)を営む事業が含まれます。
百貨店・GMS業界をとりまく環境
百貨店は、衣料品やラグジュアリー、ギフト商材を中心に高付加価値な商材を扱う業態として、都市部を中心に存在感を維持しつつも、長期的には店舗数の減少と業界再編が続いてきました。一方、GMSは、食品・日用品を核としながら衣料・住居関連品などを合わせて提供する総合小売フォーマットとして、郊外ショッピングセンターを中心に幅広い商圏をカバーしてきた業態です。両業態とも、EC(電子商取引)やドラッグストア、専門店チェーンなど他業態との競合にさらされており、売場の再構成とオムニチャネル化が喫緊の経営課題となっています。
市場・販売・取引動向
経済産業省「2024年小売業販売を振り返る」によると、2024年の小売業販売額は167兆1,530億円で、前年比2.5%の増加となっています。このうち、百貨店・スーパーなど大手小売業態はいずれも前年を上回り、とくに百貨店の伸びが相対的に大きいことが特徴です。
同資料では、業態別の販売額の変動要因を「店舗数」と「1店舗当たり販売額」に分解しており、百貨店は2024年に前年比6.3%の増加と、主要業態の中で最も高い伸びを示しています。長期的には店舗数が減少傾向にある一方で、1店舗当たり販売額は4年連続で増加しており、集約・選択と集中により大型旗艦店へ販売が集中している構図が確認できます。スーパー(GMSを含む広義のスーパー)の販売額は前年比2.6%増で、店舗数と1店舗当たり販売額の双方が増加するかたちで市場が拡大しています。
日本百貨店協会が公表した「2024年12月 全国百貨店売上高概況」によると、2024年の全国百貨店年間売上高(店舗数調整後)は5兆7,722億円で、前年比6.8%増となっています。内訳は国内売上が5兆1,234億円(前年比1.4%増)、インバウンド(免税)売上が6,487億円(前年比85.9%増)であり、インバウンド売上は構成比で全体の約11%を占めます。2019年の全国百貨店売上高5兆7,547億円と比較しても3.6%増となっており、百貨店業界はインバウンド需要の回復と高額品需要を背景に、コロナ禍前の水準を上回る水準に回復しつつあります。
一方、GMSを含むチェーンストアの動向を見ると、日本チェーンストア協会「2024年度チェーンストア販売概況」によれば、会員47社・9,479店舗の総販売額は12兆7,643億円余で、店舗数調整後の対前年度比は101.4%と緩やかな増加基調にあります。取扱部門別では、食品が売上構成の多くを占める一方、衣料品や住居関連品は中長期的に伸び悩みが続いており、GMSの中でも「食品への特化」と「非食品の差別化(専門店化・テナント化)」が同時並行で進んでいる状況です。
日本スーパーマーケット協会「スーパーマーケット白書2024」によると、2023年時点でスーパーマーケットにおける売上構成比は、食品が約9割を占め、その中でも惣菜や一般食品など中食・簡便志向領域の伸長が目立ちます。これらのトレンドはGMSにも共通しており、日常使いの食品・日用品を核とした「生活インフラ」としての機能が強まる一方、衣料・住居関連品は価格競争やEC・専門店との競合により縮小圧力が続いていると考えられます。
ECの浸透も、百貨店・GMSの販売構造に大きな影響を与えています。経済産業省「電子商取引に関する市場調査」では、BtoC-EC市場規模とEC化率の上昇が続いており、2023年時点で日本のBtoC-EC化率は約9%台とされています。衣料品・生活雑貨などはEC化率が相対的に高く、百貨店・GMSが従来強みとしてきたカテゴリーほどオンラインへのシフトが進みやすい傾向にあります。その一方で、生鮮食品など即時性や品質確認が求められるカテゴリーでは、店舗・ネットスーパー・クリック&コレクト(店頭受取)を組み合わせたOMO(Online Merges with Offline)型のサービス展開が加速しています。
また、インバウンド需要の回復・拡大は百貨店売上の重要なドライバーとなっています。観光庁「インバウンド消費動向調査 2024年暦年の調査結果(確報)の概要」によると、2024年の訪日外国人旅行消費額は8兆1,257億円で、前年比53.1%増、2019年比68.8%増と過去最高を更新しました。1人当たり旅行支出(全目的)は22.7万円で、費目別では宿泊費が33.6%、買物代が29.5%を占めています。百貨店のインバウンド売上6,487億円は、ラグジュアリーブランドや化粧品、高級時計・宝飾など高額商品を中心に構成され、訪日消費全体の中でも高付加価値領域の消費を取り込んでいるといえます。
ショッピングセンター(SC)内での百貨店・GMSの位置付けも変化しています。日本ショッピングセンター協会「各団体統計調査」が示すように、全国のSCでは専門店テナントの比率が高まり、百貨店・GMSが核店舗でありながらも、全売場のうち直営売場の比率は徐々に低下し、テナント収入型のビジネスモデルへの転換が進んでいます。百貨店では、食品フロアや高価格帯ブランドを直営・もしくは特定ブランド直営としつつ、アパレル・雑貨などの領域は専門店テナントやポップアップストアで補完するケースが増えています。
※商業動態統計や百貨店統計は、年によって基準改定や調査対象企業の変更が行われることがあり、統計の前後比較には定義変更やリンク係数の影響を考慮する必要があります。
- M&A観点
- 百貨店・GMSの売上構造は、「インバウンドを含む高付加価値商材」と「日常の食品・日用品」の二極化が進んでいます。今後もトップライン成長と収益性の両立にはスケールメリットと専門性の両面が求められるため、百貨店においてはラグジュアリーブランドやインバウンド集客に強い店舗・エリアの取り込み、GMSにおいては食品・日用品に強いチェーンやネットスーパー事業者との統合・業務提携などを通じて、売上ポートフォリオの再構成と収益性改善を図るM&Aが合理的と考えられます。
事業者・設備・拠点動向
日本百貨店協会の公表資料によると、2024年12月度の調査対象は70社・178店となっており、長期的には百貨店企業数・店舗数ともに減少傾向にあります。過去には全国で300店舗を超えていた時期もありましたが、人口減少・消費構造の変化・競合激化を背景として、都市部や主要地方都市への集約が進んできました。
一方、GMS・スーパーマーケットを含むチェーンストア協会の会員は47社・9,479店舗と、店舗数ベースではなお多数の拠点を有しています。近年は、総合スーパー型の大型店舗に加え、食品特化型のスーパーマーケットや都市型小型店の出店が進んでおり、同じグループ内で複数フォーマットを運営するケースも一般的になっています。
都心においては、駅前や駅ビル・ターミナル立地における旗艦百貨店が、ラグジュアリー・高級専門店・飲食を組み合わせた都市型SCの中核テナントとして機能しています。これに対し郊外では、大型GMSやショッピングセンターが自動車利用を前提とした広域商圏をカバーし、食品・日用品に加えて専門店モール、シネマコンプレックス、フィットネス、医療モールなど、生活サービスを複合的に提供する「地域の生活拠点」としての役割を果たしています。
1店舗当たり売上や坪効率に関しては、経済産業省「2024年小売業販売を振り返る」で示されるように、百貨店・スーパーともに1店舗当たり販売額が増加する一方で、百貨店では店舗数の減少を通じた集約が、スーパーでは店舗数の増加と1店舗当たり売上の増加が同時に進む構図です。百貨店では、老朽化した地方店や収益性の低い店舗を閉鎖・縮小する一方、都心旗艦店のリニューアルや高付加価値ゾーンの拡張に投資が集中する傾向があります。GMSにおいても、既存店のスクラップ&ビルドや小型フォーマットへの転換が行われています。
店舗フォーマットの多様化も進んでいます。百貨店では、食料品と日常雑貨を強化した「食品・日常使い」重視型、ラグジュアリーとライフスタイルを重視した「体験型・ラグジュアリー特化型」、一部フロアをオフィス・ホテル・サービスアパートメントなどに転換する「複合用途型」など、立地や顧客層に応じた差別化が図られています。GMSでは、食品特化型スーパー、小型都市型スーパー、ドラッグストアやホームセンターとの複合店舗など、商圏・人口構造に合わせたフォーマット選択が重要になっています。
オムニチャネル化の観点では、ネットスーパー、店舗受取サービス(クリック&コレクト)、店舗配送、サブスクリプション型の定期便など、店舗とECを組み合わせたサービスが拡大しています。特にGMS・スーパーマーケットでは、ID-POSデータを活用したクーポン配信やアプリ会員向けプロモーションが一般化しており、アプリを起点とした集客・販促・決済・購買履歴の一元管理が進みつつあります。百貨店においても、オンライン接客やライブコマース、予約制外商・VIPルームとの連携など、店舗とデジタルの連動が強まっています。
- M&A観点
- 店舗数の集約とフォーマットの多様化が同時に進む中で、個社ベースでの最適配置には限界があります。都心旗艦店・郊外SC・小型都市型店舗・ネットスーパーなど、異なるフォーマットを横断的に組み合わせるには、グループ再編・共同出資・不動産オーナーとの連携などを通じた「ポートフォリオ再編」が有効です。M&Aを通じて、特定フォーマットに強みを持つ事業者や、優良立地を保有する不動産会社をグループに取り込むことで、1店舗当たり売上・坪効率の向上と、商圏カバレッジの最適化を同時に進めることが可能になります。
需要側ファクター
総務省統計局「人口推計(2024年10月1日現在)」によると、日本の65歳以上人口は3,624万3千人で、総人口に占める割合は29.3%と過去最高となっています。また、「統計からみた我が国の高齢者」では、1950年以降一貫して高齢化率が上昇しており、今後も2040年頃まで高齢化が続くと推計されています。高齢者比率の上昇は、百貨店・GMSの主要顧客層の変化や、品揃え・サービス内容に大きな影響を与えています。
消費の側面では、総務省統計局「家計調査 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」によれば、2024年の二人以上の世帯の消費支出は1世帯当たり1か月平均300,243円で、前年に比べ名目2.1%の増加となる一方、物価変動を除いた実質では1.1%の減少となっています。すなわち、名目ベースでは支出は増えているものの、実質的な購買力は低下しており、百貨店・GMS各社は値上げと値引き・ポイント施策のバランスを取りながら、客数・客単価・買上点数の維持・向上を図る必要に迫られています。
用途別の支出構造を見ると、外食・レジャー・体験型サービスへの支出比重が高まる一方、衣料品支出は長期的に減少傾向にあります。百貨店では、高価格帯ファッション・ラグジュアリー分野での強みが生きる一方、中価格帯カジュアル衣料はファストファッションやECとの競合に晒されています。GMSでは、衣料・住居関連品が相対的に伸び悩む一方、中食・総菜や健康志向商品など食品分野での伸長が期待されており、売場配分の見直しが進んでいます。
観光・インバウンド需要も重要な需要側ファクターです。観光庁のインバウンド消費動向調査によれば、2024年の訪日外国人旅行消費額は8兆円超で、2019年比でも大きく拡大しています。1人当たり旅行支出は22万円台で、買物代の構成比が約3割を占めることから、百貨店やGMS、ドラッグストア、家電量販店など小売業態にとって、インバウンド需要は売上と利益に与えるインパクトが大きいといえます。百貨店におけるインバウンド売上6,487億円は、訪日消費全体の中でも高付加価値領域を担っており、今後も為替・地政学リスク・入国規制の動向に左右されやすいものの、重要な需要源泉であり続ける可能性が高いです。
ライフスタイル面では、共働き世帯や単身世帯の増加、都市部への人口集中、健康志向・サステナビリティ志向の高まり、キャッシュレス決済やモバイルアプリの普及などが、小売の利用行動に影響を与えています。忙しい共働き世帯向けには、仕事帰りに立ち寄りやすい駅ナカ・駅チカ店舗や、ネットスーパー・店頭受取サービスが支持を集めています。高齢者向けには、駅前・商店街立地や送迎サービス、見守り機能を持つ地域密着型GMSや百貨店食品フロアが重要な生活インフラとなっています。
- M&A観点
- 需要側の変化に対応するには、単一企業・単一フォーマットで全てのニーズをカバーすることが難しくなっています。特定年齢層・ライフスタイルに強みを持つ専門店チェーンや、インバウンド対応に強い事業者、健康志向・サステナブル商品に強みを持つブランドなどを取り込むM&Aは、顧客ポートフォリオと売上ミックスを短期間で再構成する手段として有効です。また、訪日需要を取り込むために、海外現地法人や越境EC事業者との資本提携・共同事業化を進める動きも、今後の重要なテーマになり得ます。
制度・規制・DX
百貨店・GMSの立地・出店には、「大規模小売店舗立地法(大店立地法)」や都市計画・道路交通に関する各種規制が関係します。大店立地法では、周辺の生活環境(騒音・交通渋滞・廃棄物処理など)への影響に配慮した出店計画が求められており、大型店の新設・増床を行う際には、自治体や地域住民との調整が必須です。とくに郊外型大型SCやGMSの新設は、交通量や既存商店街への影響が論点となるケースが多く、今後も新規大規模出店はハードルが高い環境が続くと見込まれます。
業態運営上は、景品表示法・特定商取引法・消費税法・食品衛生法・労働基準法・個人情報保護法など、多様な法令・ガイドラインへの対応が求められます。値引き表示やポイント還元表示に関しては、二重価格表示の禁止や、実勢価格・比較対照価格の妥当性などに注意が必要です。食品を扱うフロアでは、食品表示法・食品衛生法に基づく表示・衛生管理・HACCP対応など、品質・安全面の法令遵守が求められます。
デジタル化・DXの観点では、インボイス制度(適格請求書等保存方式)の導入により、取引情報の電子保存・システム対応が進んでいます。電子帳簿保存法の改正や電子取引データ保存の義務化により、請求書・領収書・契約書などの電子化と、会計・販売・購買・在庫システムとの連携が求められています。また、eKYC(電子的本人確認)やマイナンバー制度など、顧客・従業員の本人確認プロセスにもデジタル技術が導入されつつあります。
個人情報保護法やクッキー規制、越境データ移転に関するルールも、ID-POSデータや会員情報、購買履歴を活用する百貨店・GMSにとって重要な論点です。顧客ID・会員アプリ・ポイントプログラムを活用したCRM(Customer Relationship Management)を推進する際には、同意取得や利用目的の明確化、第三者提供の管理、情報セキュリティ対策などを適切に設計する必要があります。
店舗オペレーション面では、POSデータを活用した売上分析に加え、AIによる需要予測・自動発注、ダイナミックプライシング、棚割最適化、不正検知など、DXの活用領域が広がっています。特にGMSでは、膨大なSKU(品目数)を扱う中での在庫最適化と廃棄ロス削減が重要であり、データ分析基盤やアルゴリズムの高度化が競争力に直結します。百貨店でも、顧客IDに紐づいた購買履歴と外商・店舗接客履歴を統合し、ハイタッチとデジタルを組み合わせたOne to Oneマーケティングへの取り組みが進んでいます。
- M&A観点
- 制度・規制・DXに関する対応は、単独で刷新しようとすると多額の投資と人材が必要になります。そのため、リテールDXやデータ分析に強いベンダー・スタートアップとの資本業務提携や、グループ内にIT子会社・シェアードサービスセンターを統合するM&Aが増加する可能性があります。また、インボイス・電子帳簿保存・個人情報保護など、コンプライアンス要件の高度化に対応できない中小規模の百貨店・GMSが、法令対応力と内部統制を備えた大手流通グループにグループインするケースも想定されます。
供給・ロジスティクス/サプライチェーン
百貨店・GMSの収益構造は、粗利益率に大きく影響する仕入条件と、物流・エネルギーコストに左右されます。近年は、原材料・製品価格の上昇や為替レートの変動、エネルギー価格の高止まりが続き、仕入価格の上昇分を販売価格にどこまで転嫁できるかが重要な経営テーマとなっています。特にGMSでは、価格競争力が重要な食品・日用品を扱う比率が高く、仕入先との共同購買・共同物流、プライベートブランド(PB)開発による原価低減が進められています。
物流面では、トラックドライバーの時間外労働規制など、いわゆる「2024年問題」を背景に、長距離輸送や夜間配送の制約が強まっています。国土交通行政や労働時間規制のガイドラインに基づき、幹線輸送の集約・モーダルシフト(鉄道・海運への切替)、共同配送、配送リードタイムの見直しなどが進んでおり、百貨店・GMSもサプライチェーンの再構築を迫られています。とくに温度管理が重要な生鮮食品や冷凍食品を扱うGMSでは、常温・チルド・冷凍といった温度帯別の物流網を効率的に構築することが、在庫水準や廃棄ロスの抑制に直結します。
返品・廃棄ロスの管理も重要なテーマです。百貨店では、アパレルや雑貨などのシーズン商品・トレンド商品が多く、値引き・在庫処分のタイミングが利益に与える影響は大きくなります。GMSでは、賞味期限の短い食品を多く扱うため、需要予測と発注精度を高めることで廃棄ロスを抑えることが求められます。AIによる需要予測や動態データを用いた在庫最適化、共同配送センターでの一括仕分け・クロスドッキングなど、サプライチェーン全体の効率化が進んでいます。
グローバルサプライチェーンに目を向けると、地政学リスクや為替変動、サプライチェーン途絶リスク(自然災害・パンデミックなど)への対応も重要です。ラグジュアリーブランドや輸入食品など、海外サプライヤーに依存する商材を多く扱う百貨店では、仕入先のポートフォリオ分散や在庫戦略の見直しが求められています。GMSでも、PB商品の海外調達や輸入食品の拡大に伴い、為替ヘッジやサプライヤー監査、サステナブル調達への対応が問われています。
- M&A観点
- 物流網や共同配送拠点、コールドチェーン、サプライチェーンマネジメント機能をグループ内に取り込むことは、百貨店・GMSのコスト競争力向上に大きく寄与します。物流子会社や3PL(サードパーティーロジスティクス)事業者との統合・資本提携、共同購買機能を持つホールディングカンパニーへの参画などは、仕入条件の改善と物流コストの削減を同時に実現する有力なM&Aテーマです。また、PB企画やグローバル調達に強みを持つ専門企業を取り込むことで、サステナブル調達やサプライチェーンリスク対応力を高めることも期待されます。
人材・組織
百貨店・GMS業界では、店舗販売員・バイヤー・MD(マーチャンダイザー)・店舗マネジャーに加え、物流・システム・データ分析など多様な職種が必要とされています。一方で、人口減少とサービス業全体の人手不足を背景に、採用・定着の難易度は年々高まっています。若年層にとっては、勤務時間帯や休日、給与水準、キャリアパスの明確性などが就職先選びの重要な要素となっており、百貨店・GMS各社には労働環境の改善と魅力的なキャリア設計が求められています。
雇用形態の面では、パート・アルバイト・派遣社員など非正規雇用の比率が高いことも、業界の特徴です。シフト制・長時間立ち仕事・繁忙期の残業など、労働負荷の偏りを是正しつつ、サービス品質を維持することが課題となっています。人件費上昇と人手不足が同時に進む中で、セルフレジ・スマホレジ・省人化設備の導入や、バックヤード業務の自動化・集中化によって、フロントの人員を接客や提案に振り向ける動きが広がっています。
デジタル・データ活用が進む中で、DX人材・データサイエンティスト・マーケターなど、新たなスキルセットを持つ人材の獲得・育成も喫緊の課題です。ID-POSデータの分析やAIによる需要予測モデルの構築、OMO戦略の設計・実行などには、従来の小売経験だけでなく、データ分析やITプロジェクトマネジメントの知見が不可欠です。一方で、現場の販売員や店長に対しても、アプリを活用した顧客フォローやデジタルツールの活用スキルを高めるリスキリング(再教育)が求められています。
- M&A観点
- 人材難の中で、自社単独で全ての職種・スキルを内製化することは難しくなっています。DXやデータ分析に強い企業、EC運営やCRMに長けた企業、教育・研修ノウハウを持つ企業などをグループに取り込むM&Aは、人材ポートフォリオを補完する手段として有効です。また、地域に根差した百貨店・GMSをグループに迎え入れることで、その地域で信頼関係を築いてきた人材を確保しつつ、本部機能の統合・教育体系の共通化によって、全体の人材力を底上げすることも可能です。
ガバナンス・広告・品質・コンプライアンス
百貨店・GMSは多数の顧客接点と膨大な商品・取引先を抱える業態であるため、ガバナンス・コンプライアンス・品質保証の体制整備が不可欠です。景品表示法に基づく不当表示の禁止や、セール・値引き・ポイント還元に関する表示規制、特定商取引法に基づく通信販売・訪問販売等のルールなど、販促活動に関わる法令遵守が求められます。特に近年は、SNSやウェブ広告を通じたプロモーションも増えており、ステルスマーケティング規制など新たな規制動向にも留意する必要があります。
食品・日用品・化粧品等については、品質クレーム・リコール対応・是正措置プロセスの整備が重要です。自社ブランド商品やPB商品については、自社が実質的な製造者責任を負うケースも多く、原材料・製造工程・サプライヤー管理を含めた品質保証体制が求められます。リコール発生時には、迅速な情報開示・店頭回収・返金対応・原因究明・再発防止策の実施が必要であり、対応の良し悪しがブランドイメージや信用に直結します。
情報システム・決済・会員基盤を支えるITインフラに対しても、サイバーセキュリティ・情報漏えい対策が不可欠です。POS・ECサイト・会員アプリ・決済端末など、多数のシステムが連携しているため、脆弱性管理やアクセス権限管理、ログ監視、インシデント対応体制の整備が求められます。個人情報保護法に基づく個人情報の取り扱い、社内規程・教育、第三者提供管理なども重要なテーマです。
- M&A観点
- ガバナンス・コンプライアンス体制は、M&A後の統合(PMI)において特に重要な領域です。統合先企業の品質保証・広告表示・顧客対応・情報セキュリティなどの水準が自社グループと大きく異なる場合、ブランド毀損リスクが高まります。そのため、デューデリジェンス段階でコンプライアンス・ガバナンス面を丁寧に確認し、PMIでは社内規程・教育・システム・監査プロセスを統合していくことが不可欠です。一方で、ガバナンス水準の高い企業をグループに迎えることで、全体のコンプライアンス水準を底上げする「ガバナンスのベンチマーク」として活用することも可能です。
M&Aリレーション
百貨店・GMS業界では、すでに大手流通グループによる再編が進んでおり、総合流通グループの傘下に百貨店・GMS・スーパー・コンビニ・ドラッグストア・専門店など複数業態が集約される構図が一般的になりつつあります。スケールメリットを通じた仕入条件の改善、物流・IT・人材制度の共通化、共同プロモーションなど、グループ内シナジーを追求する動きが強まっています。
一方で、地方百貨店やローカルGMSには、後継者不在や設備投資負担、DX対応負担などを背景とした事業承継ニーズが多く存在します。人口減少・商圏縮小が進む地方都市においても、地域住民にとって百貨店・GMSは重要な生活インフラであり、地域の金融機関・自治体・デベロッパーなどと連携した事業承継・再生スキームが求められています。
さらに、専門店チェーン、ドラッグストア、ホームセンター、EC事業者などとの水平・垂直統合や業態転換も進んでいます。百貨店が一部フロアを専門店モールとしてテナント化したり、GMSが食品に特化し、非食品フロアをホームセンターや専門店に転換するケースも見られます。物流子会社やIT子会社、ECプラットフォーム企業との統合・提携も、サプライチェーンやデジタル基盤の強化に資するM&Aテーマです。
- M&A観点
- 今後の百貨店・GMS業界のM&Aは、「地域承継」「フォーマット再編」「サプライチェーン・DX補完」の3つの軸で検討されることが多いと考えられます。地域承継では、地方百貨店・ローカルGMSを大手流通グループや不動産デベロッパーが引き受け、商業施設全体の再開発とセットで再生を図るスキームが想定されます。フォーマット再編では、百貨店・GMSに専門店チェーンやドラッグストア、ホームセンターなどを組み合わせたマルチフォーマット戦略が主流となります。サプライチェーン・DX補完では、物流・IT・EC・データ分析に強い企業を取り込むことで、グループ全体の競争力を高めるM&Aが有力な選択肢となります。
百貨店・GMS業界の今後の課題と展望
百貨店・GMS業界の中期的な経営課題と展望を、3〜5年程度の時間軸で整理します。本節では、まずシナリオ別の業界イメージを示したうえで、利益率・物流・人材・デジタル・ガバナンス・出店戦略・インバウンド・再編地合い・リスク管理といった論点ごとに、「課題」「対応策」「M&A観点」を整理します。
シナリオ別の業界展望
百貨店・GMS業界の中期的な見通しは、マクロ経済・物価・為替・インバウンド・人口動態・競争環境など多くの前提に左右されます。ここでは、2024年を起点とし、売上成長率・既存店売上高伸長率・営業利益率・EC比率・インバウンド売上比率などのKPIを用いて、簡易に3つのシナリオを想定します。
ベースシナリオでは、名目個人消費が年率1〜2%程度で緩やかに成長し、インバウンド需要も為替水準や航空便供給の影響を受けつつも、2024年水準をやや上回る水準で推移する前提を置きます。この場合、百貨店全体の売上高は年率1〜2%程度の成長、GMS・スーパーは食品を中心に年率1〜3%程度の成長が見込まれます。一方で、人件費・エネルギー・物流費の上昇が続くことから、営業利益率は横ばい〜やや改善(0.1〜0.3ポイント程度の改善)にとどまり、EC比率は徐々に高まりつつも、依然として店舗売上が主軸である状況が続くと想定されます。
上振れシナリオでは、インバウンド需要がさらに拡大し、訪日外国人旅行消費額が現行比で追加的に10〜20%程度増加するとともに、実質賃金の底打ち・回復により国内個人消費が想定以上に伸びるケースを想定します。この場合、百貨店ではインバウンド売上比率が15%程度まで高まり、ラグジュアリー・高級時計・宝飾・化粧品など高付加価値カテゴリーの売上が拡大し、営業利益率・EBITDAマージン・ROICの改善幅も大きくなります。GMSでは、食品・中食を中心に売上が伸びる一方、PB強化や物流効率化により粗利率・営業利益率の改善余地が広がります。
下振れシナリオでは、インフレや金利上昇、為替変動、地政学リスクなどの影響で個人消費や訪日需要が減速し、実質賃金の伸び悩みが続くケースを想定します。この場合、売上成長率はゼロ〜マイナス圏にとどまり、既存店売上高伸長率がマイナスとなる店舗も増加します。一方で、人件費・エネルギー・物流費などコスト要因は構造的に高止まりする可能性が高く、営業利益率・EBITDAマージンの低下や、採算割れ店舗の増加が懸念されます。このシナリオでは、店舗閉鎖・業態転換・抜本的なコスト削減とともに、再編・統合・事業売却など抜本的な構造改革が必要となる可能性があります。
利益率圧迫要因と収益構造改革
- 課題
- 人件費・エネルギーコスト・物流費・賃料などの上昇が続く中で、百貨店・GMSの営業利益率は構造的な圧迫要因を抱えています。総務省の家計調査では実質消費支出が減少する一方、名目支出は増加しており、販売価格へのコスト転嫁には限界があります。ポイント還元や値引き競争も続いており、粗利率・販管費率の両面で圧力が高い状況です。特に、百貨店では販売員の人件費と販促費、GMSでは物流費と店舗維持コストの負担が大きく、既存店売上高伸長率が1〜2%にとどまる中で、従来のコスト構造を維持することは難しくなっています。
- 対応策
- 収益構造改革としては、売上面では高付加価値カテゴリー(ラグジュアリー・化粧品・中食・健康志向食品など)の拡大と、PB比率の引き上げによる粗利率改善が重要です。一方コスト面では、店舗のスクラップ&ビルド、バックヤード業務の集中化・自動化、本部機能の統合、店舗オペレーションの標準化などにより、販管費の削減を進める必要があります。KPIとしては、粗利率、販管費率、営業利益率、1人当たり売上、1坪当たり売上などをモニタリングし、フォーマット別・店舗別・カテゴリー別に改善状況を可視化することが有効です。
- M&A観点
- 収益構造改革を進める上では、スケールメリットの獲得とベストプラクティスの共有が鍵となるため、同業他社や近接業態との統合によるコストシナジー創出が重要なM&Aテーマになります。物流やIT、本部機能を集約することで、1社単独では到達しづらいコスト水準への引き下げが可能になります。また、粗利率の高いカテゴリーに強みを持つ専門店やブランドを取り込むことで、売上ミックスを改善し、グループ全体の収益水準を引き上げることも期待されます。PMIにおいては、仕入条件・価格ポリシー・ポイントプログラム・販促方針などの統合が重要な論点となります。
ロジスティクス再編と在庫最適化
- 課題
- トラックドライバーの労働時間規制や燃料費高騰を背景に、物流コストが上昇する中で、百貨店・GMSは幹線輸送・地域配送・店内物流の全てのレイヤーで効率化を迫られています。とくに、GMSにおける温度帯別物流や多頻度少量配送はコスト負担が大きく、在庫水準・廃棄ロスとのトレードオフの中で最適な物流スキームを構築する必要があります。百貨店でも、EC・店舗受取・外商・店舗間移動など、多様な物流フローが発生しており、旧来型の店舗単位の在庫管理では非効率が顕在化しやすくなっています。
- 対応策
- 対策としては、幹線輸送の共同化・集約、地域共同配送・ミルクラン方式の活用、在庫拠点の統廃合と自動倉庫の活用などが考えられます。また、AIを活用した需要予測と自動発注、店舗・センター間の在庫可視化、リードタイム短縮による在庫回転率向上など、サプライチェーンのデジタル化・高度化が重要です。KPIとしては、在庫回転日数、欠品率、廃棄率、物流コスト比率などを設定し、カテゴリー別・拠点別に管理することが有効です。
- M&A観点
- 物流機能の再編では、3PL事業者や共同配送ネットワークを持つ企業、冷凍・冷蔵に強い物流事業者との資本業務提携・統合が有力な選択肢です。また、既に自動倉庫やマテハン技術を内製化している流通グループや、WMS(倉庫管理システム)・TMS(輸送管理システム)に強みを持つIT企業をグループに取り込むM&Aも考えられます。PMIでは、マスタ統合(商品コード・店舗コード・倉庫コード)、リードタイム設定、在庫ポリシー、配送条件(ロット・頻度・締切時刻)などの統合が重要な論点となります。
人材確保・人材ポートフォリオ
- 課題
- サービス業全般で人手不足が続く中、百貨店・GMSでも採用・定着・教育が大きな課題です。特に、地方店舗や深夜営業・早朝営業を行う店舗では、必要な人数を確保できないリスクが現実化しつつあります。また、DXやデータ活用が進む中で、従来の店舗運営スキルだけではカバーできない領域が増えており、バイヤー・MD・マーケター・データサイエンティスト・システム担当など、多様な専門人材の確保が必要になっています。
- 対応策
- 人材戦略としては、1)働き方改革(シフトの見直し・残業抑制・柔軟な勤務制度)、2)報酬・評価制度の改定(成果とスキルに応じた処遇)、3)教育・研修の体系化(接客・商品知識・DX・データリテラシー)、4)採用チャネルの多様化(中途採用・リファラル・地域採用・インターンシップ)などが挙げられます。また、セルフレジや省人化設備の活用により、単純作業を減らし、スタッフを接客や提案など付加価値の高い業務にシフトすることも重要です。KPIとしては、離職率、従業員満足度、1人当たり売上、教育投資額などをモニタリングすることが有効です。
- M&A観点
- 人材面の課題に対しては、教育・研修ノウハウに強みを持つ企業や、DX人材・データ人材を多く抱える企業をグループに迎え入れるM&Aが有効です。また、地域密着の百貨店・GMSを統合することで、その地域ならではの顧客理解や接客ノウハウを取り込むことも可能です。PMIでは、人事制度・評価制度・給与テーブル・キャリアパスの統合が最大の論点となり、合併後にどのように人材のモチベーションを維持・向上させるかが成否を分けるポイントになります。
デジタル・データ戦略(EC・OMO・CRM)
- 課題
- ECやネットスーパーの利用が拡大する中で、百貨店・GMSにとっては、店舗とオンラインをどのように統合するかが重要な戦略課題です。単にECサイトを立ち上げるだけでは、価格競争や配送料負担の増大に晒される一方、既存の店舗オペレーションとの整合が取れないと、在庫・価格・販促がバラバラになり、顧客体験が損なわれるリスクがあります。また、会員アプリ・ポイントプログラム・ID-POSデータなど、蓄積された顧客データを十分に活用し切れていないケースも少なくありません。
- 対応策
- OMO戦略の観点では、「店舗で見てECで購入」「ECで注文して店舗で受取」「アプリでクーポンを取得して店舗で利用」など、チャネルを跨いだシームレスな顧客体験を設計することが重要です。具体的には、在庫情報のリアルタイム連携、価格・ポイント・クーポン条件の統一、顧客IDを軸とした購買履歴管理、アプリを通じたパーソナライズドな情報配信などが挙げられます。KPIとしては、EC比率、アプリ会員数、アクティブ会員比率、会員一人当たり売上、クロスチャネル利用率などを設定し、改善サイクルを回す必要があります。
- M&A観点
- デジタル・データ戦略を加速するには、EC運営やCRM、データ分析に強みを持つ企業とのM&A・資本提携が有力です。既に高いEC比率やアプリ会員基盤を持つ企業をグループに取り込むことで、ノウハウとシステムを短期間で共有できる可能性があります。また、PMIでは、顧客ID・商品マスタ・価格マスタ・在庫マスタなどの統合が重要な論点となり、データ統合の計画と移行リスク管理が成否を左右します。
ガバナンス・コンプライアンス・ESG
- 課題
- 広告規制・表示規制・個人情報保護・労働法令・環境規制など、多岐にわたるルールに対応する必要がある中で、社内のガバナンス体制やコンプライアンス文化の浸透が追いついていないケースも見られます。ESG経営やサステナビリティレポーティングの要請も高まっており、サプライチェーン全体の環境・社会リスクへの対応が求められています。
- 対応策
- 対応策としては、ガバナンス・コンプライアンス部門の機能強化と現場への浸透、内部通報制度・研修・監査の実効性向上が重要です。また、サステナビリティの観点では、店舗運営における省エネ・CO2削減、廃棄ロス削減、サステナブル調達、地域社会への貢献などを定量指標とともに開示していく必要があります。TCFDや国際的な開示フレームワークに沿った情報開示を行うことで、投資家・金融機関との対話を深めることが可能です。
- M&A観点
- ガバナンス・ESGに優れた企業との統合は、グループ全体のガバナンス水準を底上げする機会となります。一方で、ガバナンス水準の低い企業を取り込む場合には、デューデリジェンス段階でリスクを把握し、PMIで優先的に統合すべきテーマ(コンプライアンス教育・内部統制・情報セキュリティ・サプライチェーン管理など)を明確化する必要があります。ESG評価の観点からは、環境負荷が相対的に低い業態・地域・フォーマットへの投資や、サステナブル調達・食品ロス削減に強みを持つ企業との連携が、長期的な企業価値向上と整合的といえます。
出店・拠点・フォーマット戦略と不動産活用
- 課題
- 人口減少・商圏縮小が進む中で、百貨店・GMSの出店・撤退・フォーマット転換の意思決定は、従来以上に難度が高まっています。売上は維持できていても、賃料・人件費・設備更新費用を加味すると採算が悪化するケースもあり、単純な売上規模だけでは判断できません。また、老朽化した店舗ビルを抱える百貨店では、大規模改装や建替えに多額の投資が必要であり、不動産オーナー・デベロッパー・金融機関との協働が不可欠となっています。
- 対応策
- 出店戦略としては、1)都心・ターミナル立地での旗艦店強化、2)郊外でのGMS・SCの収益性向上とフォーマット転換、3)小型都市型店舗・ネットスーパー拠点など新フォーマットの展開、4)収益性の低い店舗の閉鎖・縮小・業態転換が柱となります。不動産活用の面では、百貨店ビルの一部をオフィス・ホテル・サービスアパートメント・医療モール・教育施設などにコンバージョンすることで、収益源の多様化とリスク分散を図る動きも広がっています。
- M&A観点
- 不動産・拠点の観点では、不動産デベロッパーやREIT、インフラファンドとの連携・スキーム構築が重要なテーマとなります。店舗ビルを保有する百貨店・GMSが、その一部を不動産ファンドに売却し、リースバックや共同開発を行うことで、バランスシートの軽量化と店舗投資余力の確保を同時に実現するケースも考えられます。また、優良立地の店舗を持つローカル百貨店・GMSをグループに取り込むことで、都心と地方を結ぶ広域ネットワークを構築するM&Aも有力です。PMIでは、賃貸借契約・共益費・設備投資計画の統合や、テナントミックス戦略の再設計が重要な論点となります。
再編・倒産の地合いとリスク管理
- 課題
- 金利や金融環境、信用供与スタンスの変化により、収益性が低い店舗や過大な借入を抱える事業者にとっては、資金繰りの難度が高まる可能性があります。信用調査会社各社のレポートでは、小売業における倒産件数がコロナ禍直後の水準からやや増加する傾向も指摘されており、特に地方百貨店・中小GMSでは、後継者不在や投資負担を背景に、廃業・M&A・再生案件が増加し得る環境にあります。
- 対応策
- 事業者側としては、早期に財務・事業のモニタリングを強化し、店舗別損益・キャッシュフロー・投資回収状況を可視化することが重要です。収益性の低い店舗や事業については、閉鎖・縮小・業態転換・フランチャイズ化・他社との共同運営など、多様な選択肢を検討する必要があります。また、金融機関・取引先・不動産オーナー・自治体・専門家と連携し、早期のリストラクチャリングやスポンサー探索を進めることで、無理のない承継・再生につなげることができます。
- M&A観点
- 再編・倒産の地合いが変化する局面では、スポンサーとしての役割を果たす大手流通グループや投資ファンド、不動産デベロッパーなどが重要なプレーヤーとなります。百貨店・GMSの事業譲渡・会社分割・株式譲渡など多様なスキームを組み合わせ、事業の切り出し・選択的承継を行うことが一般的です。PMIでは、承継対象に含まれない不採算店舗や非中核事業の整理、負債・保証・オフバランス債務の整理、従業員の処遇・配置転換など、リスク要因を丁寧にコントロールすることが求められます。
リスク管理・BCPと中長期の展望
- 課題
- 制度変更や品質問題、情報セキュリティインシデント、自然災害・感染症・地政学リスクなど、百貨店・GMSが直面するリスクは多様化・高度化しています。特に、サプライチェーンの国際化とデジタル化が進む中で、一つの事故や障害がグループ全体の店舗・EC・物流に連鎖的な影響を及ぼす可能性があります。
- 対応策
- リスク管理・BCP(事業継続計画)の観点では、1)自然災害・停電・通信障害などに備えた店舗・物流拠点のBCP、2)サイバー攻撃・情報漏えいに備えたシステム冗長化・バックアップ・インシデントレスポンス、3)品質・偽装問題に備えたサプライチェーン監査・トレーサビリティ確保、4)パンデミック等に備えた店舗運営・勤務体制の柔軟性確保が重要です。リスクシナリオごとに対応方針と責任体制を定め、定期的な訓練・見直しを行うことが求められます。
- M&A観点
- リスク管理の観点では、BCP体制・情報セキュリティ体制・品質管理体制が整った企業との統合は、グループ全体のレジリエンス向上につながります。逆に、リスク管理体制が脆弱な企業を取り込む場合には、PMIでリスク管理・BCPの統合を最優先テーマの一つと位置付ける必要があります。中長期的には、地域分散・業態分散・チャネル分散を進めることで、特定の地域・業態・チャネルに依存し過ぎないポートフォリオを構築し、外部ショックに対する耐性を高めることが重要です。
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- 参考URL
-
総務省統計局|人口推計(2024年(令和6年)10月1日現在)
総務省統計局|統計からみた我が国の高齢者
総務省統計局|家計調査報告 〔 家計収支編 〕 2024年(令和6年)平均結果の概要
経済産業省|2024年小売業販売を振り返る
政府統計の総合窓口|商業動態統計調査 参考表 百貨店・スーパー販売
一般社団法人 日本百貨店協会|2024年12月 全国百貨店売上高概況
一般社団法人 日本百貨店協会|2024年度チェーンストア販売概況について
一般社団法人 日本百貨店協会|2024年版スーパーマーケット白書
国土交通省観光庁|インバウンド消費動向調査 2024年暦年の調査結果(確報)の概要
国土交通省観光庁|インバウンド消費動向調査2024年暦年(速報)及び10-12月期(1次速報)の結果について
国土交通省観光庁|インバウンド消費動向調査(旧 訪日外国人消費動向調査)
一般社団法人 日本ショッピングセンター協会|各団体統計調査
百貨店・GMS業界における
M&A活用のメリット
百貨店・GMS業界におけるM&A活用のメリットをご紹介します。
- 譲渡側のメリット
-
- 規模の拡大による交渉力の向上、収益性の改善が見込める
- コストの削減・財務力強化(仕入れコスト、管理部門コスト、物流コスト等)
- 管理体制の強化
- 事業意欲旺盛な会社との協業により、相互に発展することが可能
- 適切な会社に譲渡すれば、社員の雇用は保証され、成長機会も増える
- 後継者問題を解決できる
- オーナー社長は個人保証や担保提供から解放され、ハッピーリタイアができ、必要に応じて、役員等として継続してかかわることも可能
- 譲受け側のメリット
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- 商品・サービスの拡充、商圏の開拓
- 売上規模・シェアの拡大が見込める
- 規模の拡大による交渉力の向上、収益性の改善が見込める
- 新たな流通経路を獲得することでクロスセルが見込める
- 事業多角化・新規事業への参入
- 人的リソースを獲得できる
- コストの削減・財務力強化(仕入れコスト、管理部門コスト、物流コスト等)
- 垂直統合により、製造から流通までを一括化できる
- バリューチェーンの補完・関連事業領域の拡大
- リスク分散ができる
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百貨店・GMS業界で
M&Aを実行する際のポイント
百貨店・GMS業界でM&Aを実行する際に注意すべきポイントには、下記のようなものがあります。
- 在庫の管理・評価(デッドストック)
- 品質管理を徹底しているか
- 取引先等との関係性
- 許認可の継続可能性
- 人的リソース管理
- 財務問題
- 労務問題
- コンプライアンス、ガバナンス(管理体制)
ここでは一般的なポイントをご紹介させていただいておりますが、実際には、個別事情を勘案すると大きく変わります。また、業界によっては独自の規制や商習慣が存在するため、M&Aの仲介を行ううえで、それぞれの業種・業界の特性を正しく理解していることが非常に大切です。
全国に拠点を展開する日本M&Aセンターでは、各業界に精通したコンサルタントが所属しているため、専門性の高いサービスを提供させていただくことが可能です。秘密保持を厳守のうえ、個別相談を無料でお受けしています。M&Aの進め方やポイントなど、気になることがありましたら、お気軽にお問い合わせください。
百貨店・GMS業界における
M&Aの価格相場
百貨店・GMS業界のM&Aにおける価格や相場感について説明いたします。まず、中小企業のM&Aには明確な相場が存在せず、最終的な価格は売り手と買い手の交渉によって決まることが特徴です。M&Aの価格は、業種や企業の規模、人材の質、財務状況、ブランド力、将来性、市場環境など、多岐にわたる要素によって変動します。そのため、個別の状況を考慮しながら価格が算出されることになります。
M&Aの価格算定にはいくつかの評価方法がありますが、その中の一つに「取引事例法」があります。取引事例法は、過去のM&A事例の中から、事業内容や地域、財務指標が似ている企業の売買実績を基に価値を評価する方法です。取引事例法において重要なのは、類似の取引事例を参考にすることですが、類似条件を見つけるためには、相当数の事例を蓄積する必要があります。非上場企業のM&Aの多くが非公開情報であることから、他社の実績を参考にすることはハードルが高い方法でもあります。その点、日本M&Aセンターでは、M&Aにおいて成約実績10,000件超、M&A成約件数で世界No.1*のギネス世界記録™に5年連続で認定されるなど、豊富な実績があります。事業内容や地域、財務指標に基づく似た会社の売買事例を選定し、一定のルールに従って公正な価値評価を行うことが可能です。こちらから当社の株価算定シミュレーションを体験することができます。
※ギネス世界記録™:M&Aフィナンシャルアドバイザリー業務の最多取扱い企業 2020~2023年に続き、5年連続でギネス世界記録™に認定
次に、より高い評価を得て会社を高く譲渡売却するためには、よりシナジーのある買い手を見つけることが重要です。M&Aの最終価格は、売り手企業と買い手企業の交渉によって決まるため、買い手が「この会社が欲しい」と思う要素を増やしていく必要があります。例えば、現在、百貨店・GMS業界の市場では人材不足が全体的な問題となっており、若くて優秀な人材を採用できる利点がある場合、買い手企業にとってM&Aの魅力が増します。
さらに、コンプライアンスやガバナンスに関する問題も重要な要素です。具体的には、顧客とのトラブルが存在しないか、社会保険への適切な加入状況が確認されることが求められます。これらの問題があると、潜在的な費用や負債として見なされ、価格交渉において不利な要因となり得ます。これらの要素が事前にクリアである場合、買い手企業も安心してM&Aを進めることができ、価格交渉もスムーズに進行しやすくなる傾向があります。
最後に、M&Aを成功させるためには、総合的に企業の魅力を高める努力が欠かせません。これは、価格評価への影響だけでなく、交渉の流れにも深く関わる要素であるといえるでしょう。
なお、実際には個別の業種や取引環境等によって価格相場は変動しますし、場所や経営状態によっても大きく左右されます。初期的なご相談や、簡易的な株価診断は無料にておこなっておりますので、よりくわしく評価や課題について聞きたい方は、弊社コンサルタントから詳細をご説明いたしますので、お気軽にご相談ください。
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買収の無料相談
株式会社日本M&Aセンター
業界別M&Aレポート編集部は、日本M&Aセンターの社員によって執筆・運営されています。各業界・業種のM&Aや事業承継に関する情報、トピックをお届けします。
百貨店・GMS業界の
M&A仲介実績
日本M&Aセンターが仲介・支援して成約した百貨店・GMS業界のM&A案件をご紹介します。
※現在、2025年9月までの実績を掲載しています。次回の更新(2025年10月~12月分)は2026年1月30日以降の予定です。
| 譲渡・売却企業 | 譲受け・買収企業 | |
|---|---|---|
| 2025年9月 | 自動車小売(東海・北陸) | プラント関連(東海・北陸) |
| 2025年9月 | 建築材料卸売(北海道・東北) | 建築材料卸売(北海道・東北) |
| 2025年9月 | 自動車小売(東海・北陸) | エネルギー(東海・北陸) |
| 2025年9月 | 生活雑貨小売(関西) | 日用雑貨製造・卸売(関東) |
| 2025年9月 | 日用雑貨卸売(関東) | 日用雑貨卸売(東海・北陸) |
| 2025年9月 | 包装資材卸売(関東) | その他小売(東海・北陸) |
| 2025年9月 | はつり・解体工事(関東) | 建築材料卸売(関東) |
| 2025年9月 | 鉄筋・鉄骨加工(北海道・東北) | 建築材料卸売(北海道・東北) |
| 2025年9月 | 電気通信工事(北海道・東北) | エネルギー(関東) |
| 2025年9月 | 法人向けサービス(関東) | 自動車小売(関西) |
卸・小売業界の
最新のM&A事例インタビュー
当社の仲介によりM&A・事業承継された事例を、経営者様へのインタビュー形式でご紹介します。
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心血を注いで開発した製品と事業を存続させるため決断した成長戦略型M&A事例
譲渡:東京都新宿区 化粧品通信販売業
譲受け:福岡県福岡市 健康食品・化粧品関連商品の製造及び販売、健康食品・化粧品関連の企画・販売促進コンサルティング、 通信事業、医薬品販売敏感肌用化粧品のインターネット通信販売を展開するエクラは、3つの課題を解決するために資本提携を決断しました。その決断の背景、現在について伺いました。
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共にブランドを磨き上げ、さらなる飛躍を目指す
譲渡:東京都新宿区 猫用品の企画・販売 等
譲受け:東京都港区 ECブランドの共創型M&A、ブランドの成長・DX支援/コンサルティング 等猫用生活用品製造の猫壱は、ブランドと人のエンパワーメントに取り組むMOON-Xと統合しました。統合から約半年経った現在、両社代表に伺いました。
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塗料業界を魅力ある業界に!高付加価値の提供で変革を続ける榊原の挑戦
譲渡:新潟県新潟市 塗料及び塗装用器具・機械の卸小売・塗装工事業
譲受け:愛知県半田市 塗料販売・塗装工事・消防設備保守点検塗料販売を展開する榊原の3代目社長は、同社の考えに賛同する企業をM&Aでグループインし、業界の変革を目指す同社に直近のM&Aについて話を伺いました。
百貨店・GMS業界の
セミナー情報
当社では、M&Aや事業承継をはじめ、経営に役立つさまざまセミナーを開催しております。ぜひご参加ください。