人材派遣・紹介業界のM&Aと事業承継の動向・案件情報2025年最新版
人材派遣・紹介業界では、専門職への需要が高まる中、少子高齢化が深刻な人手不足を引き起こし、派遣人材の不足や大手企業との収益格差が拡大しています。そんな人材派遣・紹介業界に関する最新のM&A動向や近年のトピックス、M&A事例を解説します。あわせて、日本M&Aセンターが取り扱うM&A案件や実際の事例、セミナー情報などをご紹介します。
更新:
人材派遣・紹介業界の
M&A案件(売却・事業承継案件)
一覧を見る
売却の無料相談
買収の無料相談
⽬次
人材派遣・紹介業界の概要とM&A動向
人材派遣・紹介業界には、事務系作業や営業販売、研究開発・設計、生産ライン業務などを行う人材を派遣する労働者派遣業、求人者と求職者の仲介を行い両社間の雇用契約の成立を斡旋する人材紹介業などが含まれています。
業界概況
有効求人倍率が1倍を超えて推移し、少子化の影響や景況感の回復により一部の業界では人員不足感が急拡大しています。それにより、人材派遣・紹介業界への需要増となる一方、派遣人員の確保が業界の課題になっており、顧客や派遣人員獲得のためのM&Aニーズが強まっています。大手企業の合従連衡も進み、業界再編が進展しています。
例えば、リクルートによるスタッフサービスHDの買収、テンプスタッフとピープルスタッフの統合によるテンプHDの誕生、テンプHDによるインテリジェンスHDの子会社化、パソナによるキャプランの買収などがこの事例に挙げられます。
人材派遣・紹介業界の
現状・トピックス
人材派遣・紹介業界は、近年、派遣人材の不足や大手企業との格差拡大といった課題に直面しています。とくに、少子高齢化が進む国内では人手不足が深刻化しており、業界全体の業績は好調に見えるものの、中小派遣会社が派遣するスタッフを確保するのが難しい傾向にあります。
専門職に特化した人材派遣会社の需要が高まる一方で、企業間の優秀な人材の奪い合いが激化しています。特にITエンジニアや看護師など、専門性の高い分野ではその傾向が顕著です。企業は、採用方針の見直しや、他社よりも魅力的な条件提示、キャリアアップの明確化、ブランディング強化など、優秀な人材を確保するための施策を講じる必要があります。
さらに、派遣スタッフはより良い条件を求めて大手企業への転職が進んでおり、大手企業と中小企業の収益格差が広がっているのも現実です。
大手派遣会社では合併やグループ化を通じて規模を拡大する傾向が見受けられます。また、大手グループは積極的にM&Aを進め、海外企業の買収や周辺事業へのM&Aも増えています。これは人材派遣業に依存しない収益構造を模索するための戦略として重要です。
一方で、中小派遣会社では、経営者の高齢化や人材確保の難しさ、個人情報管理規制、顧客の契約解除などに直面し、事業譲渡や売却を検討するケースが増加しています。
今後は、中堅・大手の人材サービス会社が中小規模の派遣会社を買収する形での集約が進むと考えられています。この現象は、業界全体の好調さを背景に、M&A市場が活発化しているからです。
業界の整備と変化に適応する必要がある中、中小企業の経営者にとって、事業譲渡や会社売却は、重要な選択肢の一つとなっています。
人材派遣・紹介業界における
M&A活用のメリット
人材派遣・紹介業界におけるM&A活用のメリットをご紹介します。
- 譲渡側のメリット
-
- 取引シナジーにより人員の稼動の改善
- 派遣社員への教育・訓練体制の強化
- 後継者問題を解決できる
- オーナー社長は個人保証や担保提供から解放され、ハッピーリタイアができる
- 個人保証や担保提供から解放されたうえで役員等として継続してかかわることも可能
- 事業意欲旺盛な会社との協業により、相互に発展することが可能
- 適切な会社に譲渡すれば、社員の雇用は保証され、成長機会も増える
- 譲受け側のメリット
-
- 売上規模・シェアの拡大が見込める
- 事業多角化・新規事業への参入
- 人的リソースを獲得できる
- 関連事業領域の拡大
- リスク分散ができる
- 財務力強化・コストの削減(仕入れコスト、管理部門コスト、物流コスト等)
人材派遣・紹介業界で
M&Aを実行する際のポイント
人材派遣・紹介業界でM&Aを実行する際に注意すべきポイントには、下記のようなものがあります。
- 許認可の引き継ぎ
- 取引先等との関係性
- 人的リソース管理
- 財務問題
- 労働問題
- コンプライアンス
- ガバナンス・管理体制
ここでは一般的なポイントをご紹介させていただいておりますが、実際には、個別事情を勘案すると大きく変わります。また、業界によっては独自の規制や商習慣が存在するため、M&Aの仲介を行ううえで、それぞれの業種・業界の特性を正しく理解していることが非常に大切です。日本M&Aセンターでは各業界に精通したコンサルタントが所属しているため、専門性の高いサービスを提供させていただくことが可能です。
当社では秘密保持を厳守のうえ、個別相談を無料でお受けしています。当社は全国に拠点を展開しております。気になることがありましたら、お気軽にお問い合わせください。
人材派遣・紹介業界における
M&Aの価格相場
人材派遣・紹介業界のM&Aにおける価格や相場感について説明いたします。まず、中小企業のM&Aには明確な相場が存在せず、最終的な価格は売り手と買い手の交渉によって決まることが特徴です。M&Aの価格は、業種や企業の規模、人材の質、財務状況、ブランド力、将来性、市場環境など、多岐にわたる要素によって変動します。そのため、個別の状況を考慮しながら価格が算出されることになります。
M&Aの価格算定にはいくつかの評価方法がありますが、その中の一つに「取引事例法」があります。取引事例法は、過去のM&A事例の中から、事業内容や地域、財務指標が似ている企業の売買実績を基に価値を評価する方法です。取引事例法において重要なのは、類似の取引事例を参考にすることですが、類似条件を見つけるためには、相当数の事例を蓄積する必要があります。非上場企業のM&Aの多くが非公開情報であることから、他社の実績を参考にすることはハードルが高い方法でもあります。その点、日本M&Aセンターでは、M&Aにおいて成約実績10,000件超、M&A成約件数で世界No.1*のギネス世界記録™に5年連続で認定されるなど、豊富な実績があります。事業内容や地域、財務指標に基づく似た会社の売買事例を選定し、一定のルールに従って公正な価値評価を行うことが可能です。こちらから当社の株価算定シミュレーションを体験することができます。
※ギネス世界記録™:M&Aフィナンシャルアドバイザリー業務の最多取扱い企業 2020~2023年に続き、5年連続でギネス世界記録™に認定
次に、より高い評価を得て会社を高く譲渡売却するためには、よりシナジーのある買い手を見つけることが重要です。M&Aの最終価格は、売り手企業と買い手企業の交渉によって決まるため、買い手が「この会社が欲しい」と思う要素を増やしていく必要があります。例えば、現在、人材派遣・紹介業界の市場では人材不足が全体的な問題となっており、若くて優秀な人材を採用できる利点がある場合、買い手企業にとってM&Aの魅力が増します。
さらに、コンプライアンスやガバナンスに関する問題も重要な要素です。具体的には、顧客とのトラブルが存在しないか、社会保険への適切な加入状況が確認されることが求められます。これらの問題があると、潜在的な費用や負債として見なされ、価格交渉において不利な要因となり得ます。これらの要素が事前にクリアである場合、買い手企業も安心してM&Aを進めることができ、価格交渉もスムーズに進行しやすくなる傾向があります。
最後に、M&Aを成功させるためには、総合的に企業の魅力を高める努力が欠かせません。これは、価格評価への影響だけでなく、交渉の流れにも深く関わる要素であるといえるでしょう。
なお、実際には個別の業種や取引環境等によって価格相場は変動しますし、場所や経営状態によっても大きく左右されます。初期的なご相談や、簡易的な株価診断は無料にておこなっておりますので、よりくわしく評価や課題について聞きたい方は、弊社コンサルタントから詳細をご説明いたしますので、お気軽にご相談ください。
売却の無料相談
買収の無料相談
株式会社日本M&Aセンター
業界別M&Aレポート編集部は、日本M&Aセンターの社員によって執筆・運営されています。各業界・業種のM&Aや事業承継に関する情報、トピックをお届けします。
人材派遣・紹介業界の
最新M&A事例を解説
人材派遣・紹介×投資ファンド
米投資ファンドのカーライル、トライトの完全子会社化に向けTOB実施へ
- 譲渡企業
- 株式会社トライト(9164)
- 譲受け企業
- カーライル・グループ(アメリカ合衆国ワシントンD.C.)、TCG2505株式会社(東京都千代田区)
M&Aの概要
スキーム:TOB 実行時期:2025年7月末頃(予定)
2025年6月10日、米投資ファンドのカーライルは、傘下のTCG2505株式会社を通じて、株式会社トライトの普通株式を、公開買付け(TOB)により取得することを決定しました。
本件TOBに対して、トライトは賛同を表明しています。TOBが完了した後、トライト株式は上場廃止となる見通しです。
カーライル・グループは、アメリカ合衆国ワシントンD.C.を本拠とするプライベート・エクイティ・ファンドです。
トライトは、医療福祉従事者に特化した人材紹介や、建設業界の人材派遣事業を展開するほか、医療福祉事業等を提供しています。
カーライルは、トライトを完全子会社化することにより、「ガバナンス体制の再構築」、「ヘルスケア、人材サービス、IT領域におけるグローバル・ネットワーク及び知見の提供」、「M&A戦略の構築・実行支援」、「人材組織強化支援」などの各施策をサポートします。そして、中長期的な視点に基づく経営資源の投入を行い、トライトの企業価値向上を図る体制を構築する予定です。
株式公開買付け等の期間は、2025年6月11日(水)から、7月23日(水)までの30営業日を予定しています。
テレビ番組企画制作×人材派遣・紹介
コンフィデンス・インターワークス、テレビ番組企画・制作などのBRAISEを買収
- 譲渡企業
- 株式会社BRAISE(東京都港区)、株式会社ジーズ・コーポレーション(東京都渋谷区)
- 譲受け企業
- 株式会社コンフィデンス・インターワークス(7374)
M&Aの概要
スキーム:株式譲渡 実行時期:2025年7月1日
株式会社コンフィデンス・インターワークスは、株式会社BRAISEの全株式を取得し、2025年7月1日付けで、連結子会社化しました。
なお、本件株式取得に際し、BRAISEの完全子会社である株式会社ジーズ・コーポレーションは、コンフィデンス・インターワークスの孫会社となります。
コンフィデンス・インターワークスは、ゲーム業界を中心に、ゲーム・エンタメ・Web領域に特化した人材事業を行っています。成長産業における「ミドルマネジメント」から「エグゼクティブ」をターゲットにした人材紹介事業、製造業に特化した求人情報サイト「工場WORKS」の運営を中心に事業を展開しています。
BRAISEは、テレビ番組企画・制作、編集・MA スタジオ「RaysStudio」運営、 デジタイズ・ワーク作業 「赤坂デジタルセンター」運営、 撮影機材レンタル事業、労働者派遣事業などを行っています。
ジーズ・コーポレーションは、テレビ番組や企業 PV などの映像企業制作、番組制作スタッフ業務・ 編集スタッフ業務 Web 動画コンテンツ制作、スクリプト・書き起こし業務などを行っています。
コンフィデンス・インターワークスの成長戦略において、ゲーム業界の周辺領域へ人材サービスを拡大していくことを掲げており、IT・WEB業界の進出に続き、新たな周辺領域の一つとしてテレビ番組制作を含む映像制作業界に進出することを模索していました。
BRAISE及びジーズ・コーポレーションは、企業向けの映像制作にも取り組んでおり、コンフィデンス・インターワークスの人材派遣事業のターゲットであるゲーム・エンタメ業界と、映像制作業界は親和性が高く、人材面での相互交流が可能となりクリエイターにとって活躍の場が広がり、キャリアの多様化を見込んでいます。
また、コンフィデンス・インターワークスが持つ大手企業の顧客網を利用することで、BRAISEやジーズ・コーポレーションの映像制作の技術を活かした、企業向け動画制作の市場開拓が可能となります。コンフィデンス・インターワークスが中部・関西圏に拠点を有していることから、BRAISEやジーズ・コーポレーションの中部・関西圏への進出も図ります。
本件M&Aを通じて、双方の強みを活かし、シナジーを生み出すことで事業成長を加速させ、売上高・利益の拡大が期待されています。
人材派遣・紹介業界の
M&Aニュース
人材派遣・紹介業界のM&Aニュースを表示します。
-
2025.11.10
米KKR、フォーラムエンジニアリングへTOB実施
-
2025.10.30
パーソルテンプスタッフ、建築設計業界向けマッチングプラットフォームを運営する青山芸術を子会社化
-
2025.10.27
メドレー、介護施設紹介事業の子会社ASFON TRUST NETWORKを吸収合併
-
2025.10.20
エージェント、BizDev人材のレンタルサービス展開のtalentalを子会社化
-
2025.10.7
サクシード、児童発達支援事業のunicoを買収
-
2025.10.1
オープンアップグループ、自動車開発業務請負のエイセブホールディングスを子会社化
-
2025.10.1
パーソル、フランス人材派遣会社のGojob SASを子会社化へ
-
2025.10.1
ウィルグループ、人材紹介サービスのHR CAREERを子会社化
-
2025.9.30
エスユーエス、HRコンサルティングサービスをウェルネス・コミュニケーションズへ事業譲渡
-
2025.9.30
TWOSTONE&Sons、戦略コンサルティングのストラテジーキャンパスを子会社化
人材派遣・紹介業界の
M&A仲介実績
日本M&Aセンターが仲介・支援して成約した人材派遣・紹介業界のM&A案件をご紹介します。
※現在、2025年9月までの実績を掲載しています。次回の更新(2025年10月~12月分)は2026年1月30日以降の予定です。
| 譲渡・売却企業 | 譲受け・買収企業 | |
|---|---|---|
| 2025年9月 | 労働者派遣(九州・沖縄) | 受託開発ソフトウェア(九州・沖縄) |
| 2025年6月 | 労働者派遣(海外) | 日用雑貨製造(関東) |
| 2025年6月 | 労働者派遣(関東) | 労働者派遣(関東) |
| 2025年6月 | 労働者派遣(東海・北陸) | 労働者派遣(東海・北陸) |
| 2025年6月 | 出版(海外) | 労働者派遣(関東) |
| 2025年3月 | 人材派遣(技術者・専門職)(北海道・東北) | セールスプロモーション(関東) |
| 2025年3月 | 人材派遣(一般事務・単純作業)(関東) | 労働者派遣(東海・北陸) |
| 2025年3月 | 人材派遣(技術者・専門職)(関東) | 労働者派遣(関東) |
| 2025年3月 | 乳幼児向け教育・施設(関東) | 労働者派遣(関東) |
| 2024年11月 | 法人向けサービス(関東) | その他(関東) |
人材派遣・紹介業界の
最新のM&A事例インタビュー
当社の仲介によりM&A・事業承継された人材派遣・紹介業界の事例を、経営者様へのインタビュー形式でご紹介します。
-

静岡で有名なお弁当チェーン「どんどん」が投資会社の支援を受け取り組む新たな挑戦
譲渡:
譲受け:東京都千代田区 投資事業(中小企業投資・M&Aアドバイザリー・財務コンサルティング)およびHR 事業(人材紹介・採用代行)東京都で中小企業投資・経営支援事業などを行うunlock.ly(アンロックリー)の三島 徹平社長に、M&Aの経緯とハンズオン支援のポイントを伺いました。
-

“成長戦略”がキーワードのM&Aで、慢性的な人材不足を解決!
譲渡:東京都渋谷区 家事代行業
譲受け:東京都品川区 人材サービス家事代行サービスの企業が「成長戦略のレールを用意することが社員・スタッフに対する責任」とM&Aによる譲渡を決断。M&A後のシナジーについて伺いました。
-

M&Aは人生で1回きり。安心して仲介を依頼できる企業を探しました
譲渡:東京都中央区 人材派遣事業、IT関連事業
譲受け:東京都千代田区 WEBコンサルティング事業、人材派遣業情報漏洩などあらゆるリスクを勘案し、仲介会社選びの段階から慎重に検討を重ねた譲渡オーナー。強い期待感でM&Aを推進された理由を伺いました。
人材派遣・紹介業界の
セミナー情報
当社では、M&Aや事業承継をはじめ、経営に役立つさまざまセミナーを開催しております。ぜひご参加ください。