業務用・産業用機械製造業界のM&Aと事業承継の動向・案件情報2025年最新版

業務用・産業用機械製造業界のM&A

業務用・産業用機械製造業界に関する最新のM&A動向をご紹介します。 近年の市場推移やトピックス、業界再編にまつわる情報、業務用・産業用機械製造業界の周辺業界を含めたM&A・事業承継の事例をわかりやすく解説しています。 また、日本M&Aセンターが取り扱う最新のM&A案件、当社仲介によりM&Aを実行された経営者様の事例、 各業界の動向やM&A(第三者承継)への理解を深めるセミナー情報などもご紹介します。

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業務用・産業用機械製造業界の概要とM&A動向

業務用・産業用機械製造業界には、発電機、多関節産業用ロボット、溶接機械、切削工具、ポンプ、ボイラー、エンジンなどや、工場内で使用される機械、農業機械、エレベーター、貨幣処理機、業務厨房関連機器、動力工具など、主として法人向けの各種機械を製造する事業が含まれています。

大手企業は、三菱重工業、小松製作所、ダイキン工業、クボタ、二プロ、ディスコ、IHI、ファナックなどを本サイトではこの業界に分類しています。

業務用・産業用機械製造業界をとりまく環境

市場・販売/生産・取引動向

業務用・産業用機械製造業界は、発電設備やボイラー・原動機、化学・プラント機械、搬送・物流機器、工作機械、産業用ロボットなど幅広い製品群から構成されており、日本の製造業・インフラ投資と海外インフラ需要の双方に強く連動する設備投資関連産業です。国内の設備投資動向だけでなく、アジアや北米など外需サイクルの影響を強く受けることが特徴です。

一般社団法人日本産業機械工業会「産業機械受注統計」によると、産業機械の輸出契約高(単体機械・プラント合計)は、2022年が約1.49兆円、2023年が約1.5兆円(前年比▲9.4%)、2024年が約1.7兆円(同+9.6%)となっています。コロナ禍後の調整により2023年に一旦落ち込んだものの、2024年には再び増加に転じており、輸出市場を中心に需要が回復しつつある状況です。

同統計では、ボイラー・原動機や化学機械、運搬機械、金属加工機械、冷凍機械など機種別の動向も把握できます。例えば、2024年の化学機械輸出契約高は322,683百万円と前年比+129.9%と大きく伸長しており、環境・エネルギー関連や特殊化学品向け設備投資の活発化が背景にあると考えられます。一方、プラスチック加工機械や一部搬送機器は前年割れとなっており、分野ごとの差が大きいことも特徴です。

2025年8月単月の輸出契約高を見ると、主要約70社の輸出契約高が2,333億3,300万円、前年同月比+152.8%となっており、特にプラント案件やアジア・北米向けの単体機械輸出が大きく伸びています。これらは、エネルギー転換やインフラ更新、大型プラント投資の再開といった中長期テーマが、産業用機械需要を下支えしていることを示唆していると考えられます。

工作機械分野では、日本工作機械工業会「工作機械統計(受注統計)」によると、2024年の工作機械受注額は1兆4,851億円で、2年連続減少ながら前年比▲0.1%と前年並みを維持しています。また、NC工作機械が1兆4,616億円と全体の98.4%を占めており、高度な自動化・高精度加工への需要が継続していることが分かります。製造現場ドットコムの集計によれば、2024年の受注実績は内需低迷と外需堅調という構図が続いており、特に外需依存度の高さが一段と強まっています。

同統計では、2024年の内需が4,415億円(前年比▲7.4%)、外需が1兆436億円(同+3.4%)で、外需比率は70.3%と暦年として初めて70%を超えています。アジアや北米を中心に外需が高水準を維持している一方、国内では半導体・自動車関連の投資調整が長引いており、内需の弱さを外需が補う構図となっています。

設備投資活動全体を示す指標として、経済産業省「鉱工業指数」をみると、「資本財(除・輸送機械)」出荷指数(2020年=100)は2022年が118.9、2023年が112.7、2024年が110.1となっており、2022年をピークにやや調整局面に入っているものの、コロナ禍初期の水準を上回る高い水準を維持しています。投資財全体の出荷指数も、2024年平均が102.3と2020年(=100)をやや上回る水準で推移しており、需要は高止まりしつつも、足元では過剰投資の修正が進んでいる局面と言えます。

価格面では、日本銀行「企業物価指数(2020年基準)」において投資財・機械関連品目の指数が2021年以降大きく上昇し、2024年もおおむね前年同月比+数%台で推移しています。2024年7月時点で国内企業物価指数全体が前年比+3.0%程度とされる中、投資財・機械は原材料やエネルギーコスト、物流費の上昇を価格に転嫁しつつも、顧客企業のコスト負担に配慮した慎重な価格設定が続いていると考えられます。

総じて、業務用・産業用機械製造業界の市場環境は、「外需は堅調だが内需は調整局面」「価格は高止まりだがコスト上昇が収益を圧迫」という二面性を持つ状況です。製品カテゴリー別には、環境・エネルギー・化学プラントや高機能工作機械など付加価値の高い分野が比較的堅調である一方、汎用機械や価格競争が激しい分野では採算確保が課題となりやすい環境にあります。

M&A観点:
市場規模が中長期的には横ばい〜緩やかな成長にとどまる一方で、外需偏重や分野別の成長格差が大きいことから、既存の製品ラインや販売チャネルだけで売上・利益を伸ばすことには限界がある可能性があります。スケールメリットを活かしたコスト競争力の強化、成長分野(環境関連設備、高度工作機械、ロボティクス等)の製品ポートフォリオ補完、海外拠点・販路の獲得などを目的としたM&Aが、戦略的な成長投資として検討されやすい市場環境になっていると考えられます。
日本産業機械工業会「産業機械受注統計」
日本産業機械工業会「2025年8月産業機械受注状況」
日本工作機械工業会「工作機械統計(受注統計)」
製造現場ドットコム「日本工作機械工業会 2024年(暦年)工作機械受注実績」
経済産業省「2024年12月の鉱工業(生産・出荷・在庫)指数の動向(速報)」
日本銀行「企業物価指数(2020年基準)」

事業者・設備・拠点動向

業務用・産業用機械製造業界は、三菱重工業、小松製作所、ダイキン工業、クボタ、IHI、ファナックなどの大手総合機械メーカーに加え、特定分野に強みを持つ中堅・中小メーカーや専門加工会社が多数参入する、多層構造の産業です。工業統計調査や経済構造実態調査では、一般産業用機械・装置製造業、建設機械・鉱山機械製造業、金属加工機械製造業など複数の統計産業分類にまたがって事業者が存在しており、企業規模や製品レンジによってビジネスモデルや収益構造が大きく異なります。

一般に、大手総合メーカーやグローバル企業は、設計・開発、部品加工、組立、試験、アフターサービスまでをグローバルレベルで垂直統合し、自社ブランドで世界展開を行うモデルが中心です。一方、多くの中堅・中小企業は、「特定部品・ユニットの加工・製造」「特定プロセスに特化した装置製造」「大手・ユーザー企業からの特注案件対応」といったニッチ領域に強みを持ち、大手のサプライチェーンの一角を担っています。

設備・拠点の観点では、国内工場を複数拠点保有しつつ、生産の一部を中国・東南アジア・欧州・北米などの現地工場に移管する動きが続いています。賃金水準や為替動向を踏まえた最適配置に加え、輸送リスクや関税リスクの低減、顧客との物理的距離短縮を目的とした現地生産の比率が高まっている傾向があります。一方で、熟練技能者の集約や自動化投資の効率化を目的として、国内の老朽工場・小規模工場を統合し、少数のマザー工場・拠点工場に集約する動きもみられます。

バリューチェーン上の位置づけとしては、「部品加工主体」「ユニット組立主体」「装置一貫製造」「エンジニアリング・EPC(設計・調達・建設)主体」など、企業ごとに役割が大きく異なります。一貫生産体制を持つ企業は品質・納期面でのコントロール力が高い一方、固定費負担や設備投資負担も大きくなります。逆に、組立主体やエンジニアリング主体の企業は、外部パートナーとの連携力が競争力の源泉となり、サプライチェーン上の関係性が極めて重要になります。

経済構造実態調査などをみると、1事業所当たりの製造品出荷額や付加価値額は、大企業や輸出比率の高い事業所で相対的に高く、中小企業では規模の経済が十分に発揮できていないケースも少なくありません。人材・設備・IT投資への投資余力の格差が、長期的には収益性や事業継続性の差につながる可能性があり、特に後継者不在の中小企業では事業承継の選択肢としてM&Aが現実的になりやすい土壌があります。

M&A観点:
事業者構造の面では、製品・技術・顧客基盤が補完関係にある中小企業同士、大手と中小の組み合わせなど、設備・拠点・人材を統合することによるシナジー余地が大きい業界です。国内工場・海外工場を含めた生産拠点の再配置や統廃合、少数の中核工場への集約、海外サービス拠点・販売拠点の獲得など、M&Aによって効率的に構造改革を進める合理性が高いといえます。また、「組立主体」と「部品内製主体」、「機械メーカー」と「エンジニアリング企業」など、バリューチェーン上で異なるポジションの企業を組み合わせるM&Aも、価値提案力を高める観点から注目されています。
経済産業省「工業統計調査 結果(製造業事業所・産業別)」
経済産業省・総務省「経済構造実態調査 製造業の概況」

需要側ファクター

日本全体のマクロな需要環境としては、人口減少・少子高齢化が進行する一方で、製造業を中心とした生産性向上投資や、老朽インフラ更新・脱炭素投資が続いています。総務省統計局「人口推計」によると、2024年10月1日時点の総人口は1億2,380万2千人で、前年に比べ55万人(▲0.44%)減少しており、14年連続の減少です。一方、65歳以上人口は3,624万3千人で前年から増加しており、高齢化率は29.3%と過去最高水準となっています。国内市場全体のボリュームは縮小する一方で、医療・介護、インフラ、防災、物流など特定分野の需要は中長期的に高水準が続く構造です。

業務用・産業用機械製造業界の主要ユーザー業界としては、自動車・自動車部品、半導体・電子部品、一般機械・精密機器、建設・建設機械、食品・飲料、物流・倉庫、エネルギー・化学プラントなどが挙げられます。各業界で進むEV・電動化、半導体の中長期需要拡大、サプライチェーン再編、インフラ更新、食品・物流の自動化・省人化といった投資テーマは、産業用機械・設備への継続的な需要を生み出しています。

一方で、経済産業省「鉱工業指数」によると、資本財(除・輸送機械)の出荷指数は2022年118.9、2023年112.7、2024年110.1(いずれも2020年=100)と、ピークアウトしつつも高水準を維持しています。これは、2021〜2022年にかけて世界的な需要増と供給制約による設備投資ブームがあり、その後2023〜2024年に調整が進んでいることを反映しているとみられます。短期的には在庫調整や金利上昇の影響を受ける一方、中長期では省エネルギー・脱炭素、デジタル化・自動化に向けた設備更新需要が続くと見込まれます。

ESG・サステナビリティの観点からは、省エネ型モータ・コンプレッサ、排ガス処理装置、廃棄物処理設備、再エネ関連設備など、環境負荷低減に資する機械への投資が増えています。また、労働安全・労災防止の観点から、ガードや安全機構を備えた工作機械・ロボット、遠隔操作・自動化設備の導入が進んでおり、これらも機械メーカーにとっての需要源となっています。

海外需要の面では、産業機械輸出や工作機械受注のデータから、アジア(特に中国・韓国・台湾・インド)および北米が引き続き主要な市場であることが確認できます。2024年の工作機械外需は1兆436億円と4年連続で1兆円を超え、地域別ではアジアが約半分、北米が約3割、欧州が約2割という構成です。こうした地域別の需要構造は、機械メーカーにとってグローバルな販売・サービス体制の整備を不可欠なものにしています。

M&A観点:
需要側の構造変化を踏まえると、単体の機械・設備の供給にとどまらず、「設備+制御・ソフトウェア+保守サービス」を組み合わせたソリューション型ビジネスや、ユーザー業界ごとの課題を深く理解した提案型営業力が重要性を増しています。自社だけでは補いにくい顧客基盤・アフターサービス網・システムインテグレーション機能を、M&Aや資本提携によって獲得する動きが今後も続くと見込まれます。特に、自動車・半導体・食品・物流といった重点ユーザー業界へのアクセスを持つ企業や、ライフサイクルサービスに強みを持つ企業は、買い手にとって魅力的なM&Aターゲットになりやすいと考えられます。
総務省統計局「人口推計(2024年(令和6年)10月1日現在)」
経済産業省「2024年12月の鉱工業(生産・出荷・在庫)指数の動向(速報)」
日本工作機械工業会「工作機械統計(受注統計)」

制度・規制・DX

業務用・産業用機械は、その多くが人の安全や環境に大きな影響を与える設備であることから、多様な安全基準・技術基準・検査制度の対象となっています。例えば、ボイラーや圧力容器は労働安全衛生法やボイラー及び圧力容器安全規則に基づく検査・届出が必要となるほか、エレベーター・エスカレーター等は建築基準法および関連告示に基づく検査・維持管理義務の対象です。クレーンや搬送設備、産業用ロボットなども、労働安全衛生法のもとで設置・使用基準が定められています。

環境・エネルギー関連では、省エネ法(エネルギーの使用の合理化等に関する法律)、地球温暖化対策推進法、フロン排出抑制法、各種排ガス規制などが、設備仕様や運転条件に影響を与えています。高効率モータやインバータ、排熱回収設備、フロンレス冷凍機など、省エネルギー・脱炭素に資する機械の導入を促す補助金・税制優遇策も多く、設備投資案件の採算性や機種選定にも直結しています。

品質・安全・環境マネジメントの面では、ISO9001(品質)、ISO14001(環境)、ISO45001(労働安全衛生)などのISO規格や、機械安全の国際規格(ISO 12100等)をベースにしたリスクアセスメント、JIS規格への適合などが求められています。医薬・食品・半導体など一部の分野では、GMP/GxPやクリーンルーム規格、バリデーション要件など、より厳格な基準への対応が必要となるケースも多く見られます。

近年は、製造現場・サプライチェーンのDXも大きなテーマです。IoTセンサーやエッジコンピューティングを活用した設備状態の常時監視、MES(Manufacturing Execution System)やERPとの連携による生産計画・在庫管理の最適化、PLM(Product Lifecycle Management)による設計情報の一元管理などが進展しています。機械メーカー自身も、図面・技術文書・検査記録の電子化、3D CAD・シミュレーションの活用、遠隔監視・リモートメンテナンスサービス、eコマースによる部品販売など、デジタル技術を活用したビジネスモデル変革を迫られています。

加えて、電子帳簿保存法対応やインボイス制度への対応、電子契約・電子請求書の普及など、取引関連のデジタル化・ペーパーレス化も進んでおり、中小企業にとってはバックオフィスDXの負担が増している側面もあります。個人情報保護法や各種サイバーセキュリティ関連のガイドラインも強化されており、制御系ネットワークを含むセキュリティ対策が製造業全体の重要課題となっています。

M&A観点:
規制対応やDX対応は、単一企業のリソースだけでは負担が重くなりがちであり、特に中堅・中小の機械メーカーにとっては専門知識とIT投資がボトルネックになりやすい領域です。ソフトウェア企業やSaaSベンダー、IoTプラットフォーム企業、エンジニアリング会社とのM&A・資本提携により、DX人材・技術・サービスラインを一気に取り込むことは有力な選択肢となります。また、同業メーカー同士の統合により、法務・品質保証・DX推進などの共通機能をグループ内で集中化・高度化することも可能であり、「規制対応力・DX対応力」をグループ全体の競争力とする動きが今後強まる可能性があります。
経済産業省「経済産業省生産動態統計調査(生産・出荷・在庫編)」

供給・ロジスティクス/サプライチェーン

業務用・産業用機械の製造には、鋼材・特殊鋼・非鉄金属、鋳鍛造品、軸受・ギアなどの機械要素、油圧・空圧機器、モータ・インバータ、制御機器、電子デバイスなど、多様な原材料・部品が必要となります。2021年前後からの世界的な原材料価格高騰や、半導体・電子部品の供給制約は、機械メーカーの生産計画・コスト構造に大きな影響を与えました。その後、2023〜2024年にかけては一部品目で供給制約が緩和されましたが、鋼材・エネルギー価格、物流費はコロナ前水準と比べると依然として高止まり傾向にあります。

国際サプライチェーンの観点では、中国・東南アジア・欧州・北米など複数地域に生産・調達拠点を持つ企業が多く、地政学リスクや貿易摩擦、為替変動、輸送制約などへの対応が日常的なマネジメント課題となっています。米中対立や特定国依存への懸念を背景に、「China+1」「友好国へのシフト」などの調達多元化が進められており、部品内製化や近隣国への生産移管なども検討・実行されています。

国内物流では、2024年問題(働き方改革関連法によるトラックドライバーの時間外労働規制強化)への対応として、幹線輸送・地域配送の効率化、モーダルシフト、共同配送の拡大が進められています。大型機械や重量物を扱う業務用・産業用機械メーカーにとって、輸送能力の確保と物流コスト抑制は収益性と納期遵守に直結するテーマであり、物流企業や3PLとのパートナーシップの重要性が高まっています。

品質・トレーサビリティの面では、サプライヤー監査や調達プロセスの透明性確保、部品単位でのロット追跡、長期保守部品の確保などが求められています。特に、医薬・食品・エネルギーなど安全性・信頼性が重視される分野向けの機械では、部品レベルのトレーサビリティや、長期にわたる保守・部品供給体制が重要な付加価値となっています。

M&A観点:
供給・サプライチェーン面の課題に対処するうえで、上流(部品メーカー・素材加工業者)や下流(物流会社・サービス会社)との垂直統合、同一階層での水平統合によるスケールメリット獲得は有力な選択肢です。重要部材の安定調達や内製化を目的とした部品メーカーの買収、国内外に物流ネットワークを持つ企業とのM&A、調達機能・サプライチェーンマネジメントの高度化を目的とした専門商社やエンジニアリング会社の取り込みなど、サプライチェーン強靭化を軸としたM&Aニーズが高まる可能性があります。
経済産業省「経済産業省生産動態統計調査(生産・出荷・在庫編)」

人材

業務用・産業用機械製造業界では、熟練技能者(加工・組立・溶接・板金など)や機械設計者、電気・制御エンジニア、ソフトウェア・データエンジニアなど多様な職種の人材が必要です。日本全体で製造業就業者の高齢化が進む中、技能継承と若手人材の確保は共通の課題となっています。地方立地の工場では、人口減少や都市部への人材流出の影響を受け、採用難・定着難が顕在化しているケースも多くなっています。
一方で、機械・電気・制御だけでなく、IT・データ分析・AIなどのスキルを兼ね備えた人材の需要が高まっています。DXやスマートファクトリー化、サービスビジネス化に対応するには、OT(制御・現場技術)とITを橋渡しできる人材が不可欠であり、その獲得を巡る他産業との競争が激しくなっています。
技能承継の面では、熟練技能者の暗黙知を形式知化し、教育プログラムやマニュアル、デジタルツールとして残す取り組みが進んでいます。動画やAR/VRを活用した訓練、NCプログラムや加工条件のデータベース化、標準工数の見える化などを通じて、属人的な技能への依存を減らし、若手・中堅への技能移転を加速する動きがみられます。

外国人材の活用や女性技術者・オペレーターの登用も重要なテーマです。言語・安全教育・生活支援などの課題はあるものの、多様な人材を受け入れられる職場環境を整備することが、中長期的な人材確保力の差につながる可能性があります。賃金水準や働き方(残業時間、シフト制、柔軟な勤務形態等)も、他産業との人材獲得競争を左右する要素となっています。

M&A観点:
人材面では、単に人数を増やすだけでなく、「特定技術・技能」「教育・研修プログラム」「海外人材活用ノウハウ」などをまとめて獲得できるM&Aの価値が高まっています。例えば、高度な機械設計・制御設計に強みを持つ企業、特定プロセスの熟練技能を多数抱える企業、社内教育体制が整った企業などは、買い手にとって貴重な人的資本の獲得機会となります。人材ポートフォリオの観点からも、地域や年齢構成、スキル構成が補完的な企業との統合により、グループ全体でバランスの良い人材構成を実現するM&Aが有効と考えられます。
経済産業省・総務省「経済構造実態調査 製造業の概況」

ガバナンス/品質・コンプライアンス

業務用・産業用機械は、故障や不具合が重大事故や長期操業停止につながる可能性があるため、製品安全・品質保証・リコール対応体制の整備が不可欠です。製造物責任法(PL法)の下では、設計・製造・表示・取扱説明などについて、合理的な安全配慮義務を果たしていることが求められます。品質記録・試験記録・トレーサビリティの確保は、万一の事故発生時の原因究明・再発防止に欠かせないだけでなく、顧客からの信頼を得るうえでも重要です。

取引面では、独占禁止法や下請代金支払遅延等防止法(下請法)への対応が求められます。大手メーカーと中小サプライヤーの取引関係が多い業界であることから、価格転嫁や支払条件、仕様変更時の負担配分などについて、公正取引委員会や所管省庁によるガイドラインへの配慮が必要です。また、輸出管理では外為法や各国の輸出管理規制・経済制裁への遵守、贈収賄防止や腐敗防止などのコンプライアンスも、海外案件を扱ううえで重要なテーマです。

情報セキュリティ・サイバーセキュリティの面では、工場の制御系ネットワーク(OT)と情報系ネットワーク(IT)が連携するスマートファクトリー化の進展に伴い、ランサムウェアや不正アクセスによる操業停止リスクが高まっています。機械・設備自体がネットワーク接続されるケースも増えており、機器側のセキュリティ設計やソフトウェア更新、アクセス管理の重要性が増しています。

コーポレートガバナンス・内部統制の観点では、上場企業だけでなく中堅企業でも、取締役会・監査機能・内部監査の強化、コンプライアンス教育、内部通報制度の整備などが求められるようになっています。ESG投資の広がりに伴い、環境・社会・ガバナンスに関する情報開示やサステナビリティレポーティングへの対応も、機械メーカーにとって無視できないテーマとなりつつあります。

M&A観点:
M&Aの成立可能性やPMI(統合プロセス)の難易度は、対象企業のガバナンス水準やコンプライアンス文化に大きく左右されます。品質・安全文化が根付いているか、法令遵守体制が機能しているか、反社チェックや贈収賄防止、輸出管理、情報セキュリティなどのルールが整備されているかは、デューデリジェンスでの重要な確認ポイントです。一方で、ガバナンス体制が未整備な優良技術企業をグループに迎え入れ、親会社側の統制・仕組みを適用することでリスクプロファイルを改善する「ガバナンス・アービトラージ型」のM&Aもあり得ます。PMIでは、品質・安全・コンプライアンスに関するポリシーを統合し、現場レベルまで浸透させることが成功のカギとなります。
政府統計の総合窓口 e-Stat「工業統計調査 産業編 3-17(一般産業用機械・装置製造業ほか)」

M&Aリレーション

近年の業務用・産業用機械製造業界では、国内外を問わずM&Aや資本提携を通じた再編の動きが続いています。日本国内では、大手電機・機械メーカーによる工作機械メーカーの買収、ロボット・モーション制御技術を持つ企業の取得、環境・省エネ関連機器メーカーとの統合など、事業ポートフォリオ拡大・高付加価値分野へのシフトを狙った案件が散見されます。海外でも、欧米の産業機械メーカーやプライベートエクイティファンドによる日本のニッチトップ企業への投資事例がみられます。

事業承継型M&Aも重要なトレンドです。地方の加工・部品メーカーや中小装置メーカーでは、後継者不在やオーナーの高齢化が進んでおり、「技術や顧客基盤はあるが、独立継続が難しい」企業が増えています。こうした企業は、大手メーカーや同業他社にとって、技術・人材・顧客基盤を獲得するうえで魅力的なM&Aターゲットとなりやすく、業界全体としてもサプライチェーンの維持・強化という観点から重要な存在です。

また、海外展開を加速するために、現地の販売代理店やサービス会社、組立工場をM&Aで取り込む動きもあります。これにより、現地通貨建てでの取引やアフターサービス、ローカル規格への対応などをきめ細かく行えるようになり、顧客との距離を縮めることが可能となります。一方、国内では周辺事業(メンテナンスサービス、エンジニアリング、IoTプラットフォーム等)との統合により、「機械+サービス」のビジネスモデルを強化する動きが出てきています。

M&A観点:
業界全体としては、①事業承継・後継者問題を抱える中小・中堅企業、②技術・製品ポートフォリオや顧客基盤が補完的な同業他社、③海外販売・サービス網やエンジニアリング・DX機能を持つ企業が、売り手・買い手双方にとって重要なプレイヤーとなります。買い手企業にとっては、自社の重点戦略(成長市場・重点技術・重点地域)に沿って、どのタイプの企業を組み合わせるべきかを整理し、中期的なM&Aロードマップを描くことが実務上重要です。売り手企業にとっては、自社の強み(技術・人材・顧客基盤・地域性)を明確化し、それを必要とする戦略的パートナーを見極めることで、より良い条件でのM&A・事業承継につながる可能性があります。
日本産業機械工業会「産業機械受注統計」
日本工作機械工業会「工作機械統計(受注統計)」

業務用・産業用機械製造業界の今後の課題と展望

今後3〜5年のシナリオの整理

業務用・産業用機械製造業界の今後3〜5年程度(概ね2030年前後まで)を展望すると、世界経済・為替・金利・原材料価格・半導体サイクルなど外部要因の不確実性が高い一方で、脱炭素・自動化・DXといった構造的な投資テーマは継続すると見込まれます。このため、「ベースシナリオ」「上振れシナリオ」「下振れシナリオ」を想定し、それぞれにおける売上成長率・営業利益率・受注残高・稼働率などのKPIを意識した戦略立案が重要です。

ベースシナリオでは、日本・欧米・アジアの実質成長率が低めながらプラスで推移し、原材料価格や物流費は高止まりしつつも急激な変動は限定的であることを想定します。この場合、業界全体の売上は年率1〜3%程度の緩やかな成長、営業利益率は原材料・人件費の上昇を部分的に価格転嫁できる前提で安定〜やや改善、受注残高・稼働率はコロナ後のピークよりやや低めの水準で推移するイメージとなります。

上振れシナリオでは、半導体・EV・再エネなど特定分野で設備投資が想定以上に拡大し、円安水準の継続による外需の押し上げ、金利上昇の一服などが重なった場合を想定します。この場合、売上成長率は年率3〜5%程度まで上振れ、受注残高も増加基調を維持し、稼働率・営業利益率も改善する可能性があります。ただし、人材・部品供給の制約がボトルネックとなるリスクも同時に高まります。

下振れシナリオでは、世界的な景気後退や金融引き締め長期化、地政学リスクの顕在化による投資マインド悪化、急激な為替変動・原材料価格高騰などにより、設備投資が想定を下回るケースを想定します。この場合、売上成長率はゼロ〜マイナス、受注残高・稼働率が低下し、価格転嫁の遅れや固定費負担により営業利益率が圧迫される可能性があります。受注残高や稼働率のモニタリングを通じて、早期にコスト調整やポートフォリオ見直しを行うことが重要になります。

M&A観点:
いずれのシナリオにおいても、中長期的な競争力の源泉は「技術・人材・顧客基盤・ガバナンス・DX能力」といった無形資産にあります。上振れシナリオでは成長機会を逃さないための攻めのM&A(新市場・新技術の獲得)、下振れシナリオでは事業再編・不採算事業の整理や財務基盤強化を目的とした守りのM&A、ベースシナリオでは選択と集中を進めるポートフォリオ再構築型M&Aがそれぞれ有力なオプションとなります。シナリオごとに「どのタイミングで、どのタイプのM&Aを実行するか」をあらかじめ整理しておくことが実務上のポイントです。
経済産業省「2024年12月の鉱工業(生産・出荷・在庫)指数の動向(速報)」
日本銀行「企業物価指数(2020年基準)」

利益率圧迫要因と収益力改善

課題:
人件費・エネルギーコスト・物流費・原材料価格・為替変動など、複数の要因が同時に利益率を圧迫しています。特に、鋼材・部品価格や電力料金の上昇は製造原価に直接影響し、物流の2024年問題に伴う運賃上昇や人手不足もコストアップ要因となっています。一方で、顧客企業側でもコスト削減圧力が強く、価格転嫁が容易ではない取引も少なくありません。結果として、従来の価格水準を維持したままでは営業利益率が構造的に低下するリスクがあります。
対応策:
一つ目は、製品ミックスの高度化・高付加価値化です。差別化された技術・性能・サービスを持つ機種の比率を高め、単価と利益率を引き上げることで、コスト上昇を吸収しやすくなります。二つ目は、設計標準化・モジュール化によるコスト削減です。共通部品・共通ユニットの活用、設計プラットフォームの統一などにより、部品点数削減・購買統合・製造効率向上を図ることができます。三つ目は、スマートファクトリー化や生産性向上投資により、労働生産性を引き上げることです。段取り時間短縮、自動化設備の導入、品質不良削減などを通じて、単位売上当たりのコストを低減する取り組みが重要です。
M&A観点:
利益率改善の観点からは、スケールメリットを獲得できるM&A(購買・物流・管理部門の共同化)、補完技術や高付加価値製品ラインを持つ企業の買収による製品ミックス改善、原材料調達力やサプライチェーン管理力に優れた企業の取り込みなどが有効です。PMIでは、原価計算ルールや見積プロセス、購買方針、在庫・生産管理ルールをグループ内で統一し、ベストプラクティスを横展開することで、M&Aによる収益力向上を早期に実現できる可能性があります。
日本産業機械工業会「産業機械受注統計」

ロジスティクス再編・サプライチェーン再構築

課題:
人件費・エネルギーコスト・物流費・原材料価格・為替変動など、複数の要因が同時に利益率を圧迫しています。特に、鋼材・部品価格や電力料金の上昇は製造原価に直接影響し、物流の2024年問題に伴う運賃上昇や人手不足もコストアップ要因となっています。一方で、顧客企業側でもコスト削減圧力が強く、価格転嫁が容易ではない取引も少なくありません。結果として、従来の価格水準を維持したままでは営業利益率が構造的に低下するリスクがあります。
対応策:
一つ目は、製品ミックスの高度化・高付加価値化です。差別化された技術・性能・サービスを持つ機種の比率を高め、単価と利益率を引き上げることで、コスト上昇を吸収しやすくなります。二つ目は、設計標準化・モジュール化によるコスト削減です。共通部品・共通ユニットの活用、設計プラットフォームの統一などにより、部品点数削減・購買統合・製造効率向上を図ることができます。三つ目は、スマートファクトリー化や生産性向上投資により、労働生産性を引き上げることです。段取り時間短縮、自動化設備の導入、品質不良削減などを通じて、単位売上当たりのコストを低減する取り組みが重要です。
M&A観点:
利益率改善の観点からは、スケールメリットを獲得できるM&A(購買・物流・管理部門の共同化)、補完技術や高付加価値製品ラインを持つ企業の買収による製品ミックス改善、原材料調達力やサプライチェーン管理力に優れた企業の取り込みなどが有効です。PMIでは、原価計算ルールや見積プロセス、購買方針、在庫・生産管理ルールをグループ内で統一し、ベストプラクティスを横展開することで、M&Aによる収益力向上を早期に実現できる可能性があります。
日本産業機械工業会「産業機械受注統計」

人材確保・人材ポートフォリオ

課題:
熟練技能者や設計・制御エンジニアの高齢化が進む一方で、若手人材の採用競争が激化しています。地方工場では採用難により、増産余地がありながら人員不足のため受注を抑制せざるを得ないケースもあります。また、DXやサービスビジネス化に対応するには新たなスキルセット(IT、データ、AI、サービスデザイン等)が必要ですが、これらの人材は他産業でも需要が高く、単独企業で十分な人数を確保することが難しい状況です。
対応策:
社内教育・研修制度の強化や、OJTに依存しない体系的な技能伝承プログラムの構築が基本となります。設計・製造・保守の各プロセスで必要なスキルを定義し、階層別・職種別の教育カリキュラムを整備することが重要です。また、リスキリングやジョブローテーションを通じて、機械系人材にIT・データスキルを付与するとともに、IT人材に現場理解を促すことで、OT×IT人材の育成を図ることが有効です。外国人材・女性・シニア人材の活用に向けて、働き方や評価制度、職場環境の整備も求められます。
M&A観点:
人材面の課題に対しては、人材や教育ノウハウを持つ企業をグループ化するM&Aが有効です。特定の加工技術や設計分野で強いエンジニア集団を持つ企業、独自の教育プログラムやアカデミー機能を持つ企業、海外人材の受け入れ・教育にノウハウを持つ企業などは、買い手にとって貴重な無形資産となります。PMIでは、人事制度・評価制度の統合だけでなく、スキルマップ・教育体系・キャリアパスの統合・共有を通じて、グループ全体での人材ポートフォリオ最適化を図ることが重要です。
経済産業省・総務省「経済構造実態調査 製造業の概況」

デジタル・データ活用(DX)

課題:
CAD/CAEによる設計、MES/ERPによる生産管理、IoTによる設備監視、予知保全、CRMやSFAによる顧客管理、eコマースによる部品販売など、デジタル化の必要領域は広範に及びます。しかし、多くの企業でシステム間連携やデータ統合が不十分であり、「設計情報」「生産実績」「保守履歴」「顧客情報」がバラバラに管理されているケースが少なくありません。その結果、データに基づく経営判断や、新たなサービスビジネス(予知保全サービス、稼働率保証型契約等)の開発が進みにくい状況があります。
対応策:
DXの出発点として、データの標準化・マスタ整備・システム間連携のロードマップを明確化することが重要です。PLMによる設計情報の一元管理、MES/ERPによる製造・在庫・原価情報の統合、CRMによる顧客接点情報の集約などを進め、必要なデータを必要なタイミングで活用できる基盤を整備する必要があります。そのうえで、IoTセンサーやAI解析を活用した予知保全や品質異常検知、需要予測に基づく生産計画最適化、eコマースによる部品のオンライン販売など、段階的にDX施策を展開していくことが現実的です。
M&A観点:
DX推進に必要なソフトウェア技術やデータサイエンス能力を、自前で全て揃えることは容易ではありません。そのため、ソフトウェア企業、SaaSベンダー、システムインテグレーター、データ解析会社などとのM&A・資本提携により、必要な機能を取り込む戦略が有力となります。PMIでは、製品マスタ・顧客マスタ・部品マスタの統合、システムアーキテクチャの標準化、セキュリティポリシー・アクセス権限の統一など、IT・データ統合の設計が重要です。また、買収先のDX人材が埋没しないよう、グループ横断のDX組織やCoE(センター・オブ・エクセレンス)を設けることも有効です。
経済産業省「経済産業省生産動態統計調査(生産・出荷・在庫編)」

ガバナンス・コンプライアンス・ESG

課題:
製品安全・品質偽装リスク、環境規制対応、下請法・独禁法・労働法制・個人情報保護法など、対応すべきガバナンス・コンプライアンス領域は年々広がっています。特に上場企業やグローバルに事業を展開する企業では、コンプライアンス違反がレピュテーションリスクや取引停止につながる可能性が高く、グループ全体でのルール整備と運用が求められます。一方、中小企業では専任人材や専門知識が不足しており、形式的な規程はあっても実態として運用されていないケースもみられます。
対応策:
取締役会や経営会議におけるガバナンス・コンプライアンスの位置づけを明確にし、内部統制・内部監査機能を整備することが出発点となります。品質・安全・環境・人権・サプライチェーンなど重要テーマごとに方針とルールを明文化し、教育・研修・内部通報制度を通じて現場レベルまで浸透させることが重要です。また、ESGやサステナビリティに関する情報開示(TCFD、人的資本開示等)への対応も、金融市場や大手取引先から求められるケースが増えています。
M&A観点:
ガバナンス・コンプライアンス面では、統合後のグループ全体でのルール整備と文化醸成がPMIの重要テーマとなります。ガバナンス体制が既に整った企業が、体制が未整備な企業を取り込む場合、親会社のルールを一方的に押し付けるのではなく、対象企業の良い文化・現場力を活かしながら段階的に統合することが求められます。また、ガバナンス水準の高さは、買い手側から見たM&A対象の魅力にも直結します。一定以上のガバナンス・コンプライアンス体制を整備しておくことは、「売れる会社」になるうえでも重要な要素といえます。
政府統計の総合窓口 e-Stat「工業統計調査 産業編 3-17(一般産業用機械・装置製造業ほか)」

出口戦略・事業ポートフォリオ再構築

課題:
業務用・産業用機械製造業界では、成熟したコア事業と成長性の高い新規分野が同一企業内に混在するケースが多く、限られた経営資源をどの事業に配分すべきかが重要な経営課題となっています。市場成長性が低く価格競争が厳しい事業を維持し続けることは、全体の収益性と成長力を押し下げる要因となり得ますが、一方で既存顧客との関係や雇用への影響から、事業撤退・売却の意思決定は容易ではありません。
対応策:
事業ポートフォリオを客観的な指標(市場成長率、収益性、競争優位性、資本効率など)で評価し、コアとノンコア、成長事業と収益確保事業、整理・撤退候補事業などに分類することが重要です。そのうえで、ノンコア事業については、縮小・撤退・売却・カーブアウト・合弁設立など複数のオプションを検討し、資本と人材を重点領域(環境・省エネ・ロボティクス・DX関連等)に再配分する戦略が求められます。
M&A観点:
ポートフォリオ再構築の一環として、ノンコア事業の売却やカーブアウト、JV設立など、M&Aを活用した出口戦略が有効です。買い手の視点からは、自社の既存事業とシナジーのある分野について、売り手のカーブアウト案件を獲得することで、短期間で事業規模と顧客基盤を拡大することができます。PMIでは、切り出した事業の業績管理・人事制度・ITシステム・ブランドの扱いを明確にすることが重要です。売り手側にとっては、事業売却によって得られた資金を成長領域への再投資に振り向けることで、企業価値の向上を図ることが可能です。
日本産業機械工業会「産業機械受注統計」

倒産・再編の地合い・金融環境

課題:
金利水準や為替動向、金融機関のリスク許容度は、設備投資計画やM&A・再編の地合いに大きな影響を与えます。世界的な金利上昇局面や信用収縮が続く場合、レバレッジド・ファイナンスやLBOによるM&A実行余地は狭まり、中小企業の資金繰りも厳しくなる可能性があります。また、需要調整とコスト上昇が重なる局面では、採算悪化により倒産・廃業件数が増加するリスクもあります。
対応策:
財務体質の強化(自己資本比率の改善、長期安定資金の確保、運転資金の余裕確保)と、金融機関との継続的な対話が重要です。また、景気変動や為替変動に対してどの程度の耐性があるかをシミュレーションし、ストレスシナリオにおけるキャッシュフローの持続性を確認しておく必要があります。業績悪化が顕在化する前に、事業再編や資本政策のオプション(第三者割当増資、株式の持ち合い解消、資産売却等)を検討しておくことも有効です。
M&A観点:
倒産・再編局面では、スポンサー型M&Aや事業再生型M&Aの役割が高まります。金融機関やスポンサー(投資ファンド、事業会社など)と連携し、事業価値を維持しつつ財務構造を再構築するスキームが求められます。地域金融機関や信用調査会社の情報を活用し、事業価値はあるものの財務・ガバナンス面で課題を抱える企業を早期に把握することで、再生型M&Aによる「事業のソフトランディング」を実現できる可能性があります。買い手側にとっては、こうした局面での選別的な投資が、中長期的な成長機会にもなり得ます。
日本銀行「企業物価指数(2020年基準)」

地域・エコシステム連携

課題:
地方に拠点を置く機械メーカーでは、単独企業で研究開発・人材育成・生産設備投資・海外展開を行うことが難しくなっているケースがあります。地域内の中小企業同士が個別最適で動くのみでは、国際競争力の維持・向上が難しく、設備更新や脱炭素・DXへの投資が後ろ倒しになるリスクもあります。
対応策:
産官学連携や地域クラスター形成を通じて、地域全体としての競争力を高める取り組みが重要です。大学・研究機関との共同研究、自治体や国の補助金を活用した共同設備投資・共同実証、業界団体や商工会議所との連携による共同購買・共同配送など、エコシステム型のアプローチが有効です。特に、DXや環境対応、海外展開など個社だけではスケールが出にくいテーマでは、地域・バリューチェーン全体での連携が鍵となります。
M&A観点:
地域・エコシステム連携の中核として機能する「ハブ企業」が、周辺の中小企業をグループ化するM&A・資本提携を行うケースが考えられます。設計・開発・マーケティング・グローバル営業などの機能をハブ企業が担い、地域の中小企業が製造・加工を担う形で役割分担を明確化することで、グループとしての競争力を高めることができます。M&Aでは、地域内の複数企業を段階的にグループ化しつつ、ブランド・雇用・地域貢献への配慮を行うことが重要です。金融機関や自治体との連携も含め、地域経済全体の持続可能性を高める観点からM&Aを位置づけるアプローチが求められます。
政府統計の総合窓口 e-Stat「工業統計調査 産業編 3-17(一般産業用機械・装置製造業ほか)」
経済産業省「経済産業省生産動態統計調査(生産・出荷・在庫編)」:一般産業用機械・装置、建設機械、金属加工機械等の生産額・出荷額・在庫指数、対象期間2015〜2024年、参照年次2025年
経済産業省「工業統計調査 結果(製造業事業所・産業別)」:一般産業用機械・装置製造業、建設機械・鉱山機械製造業、金属加工機械製造業などの事業所数・従業者数・製造品出荷額、対象期間2010〜2020年、参照年次2025年
一般社団法人 日本産業機械工業会「産業機械受注統計」:産業機械の受注額・輸出契約・機種別動向、対象期間2020〜2025年、参照年次2025年
一般社団法人 日本工作機械工業会「工作機械統計(受注統計)」:工作機械の受注総額・内需・外需の推移、対象期間2020〜2024年、参照年次2025年
日本銀行「企業物価指数(2020年基準)」:投資財・機械関連品目の価格指数、対象期間2015〜2025年、参照年次2025年
総務省統計局「人口推計(2024年(令和6年)10月1日現在)」:総人口・年齢区分別人口・高齢化率、対象時点2024年10月1日、参照年次2025年
経済産業省「2024年12月の鉱工業(生産・出荷・在庫)指数の動向(速報)」:資本財(除・輸送機械)等の生産・出荷指数、対象期間2022〜2024年、参照年次2025年
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業務用・産業用機械製造業界における
M&A活用のメリット

業務用・産業用機械製造業界におけるM&A活用のメリットをご紹介します。

譲渡側のメリット
  • 規模の拡大による交渉力の向上、収益性の改善が見込める
  • 事業意欲旺盛な会社との協業により、相互に発展することが可能
  • 適切な会社に譲渡すれば、社員の雇用は保証され、成長機会も増える
  • 後継者問題を解決できる
  • オーナー社長は個人保証や担保提供から解放され、ハッピーリタイアができ、必要に応じて、役員等として継続してかかわることも可能
譲受け側のメリット
  • 商品・サービスの拡充、商圏の開拓
  • 売上規模・シェアの拡大が見込める
  • 規模の拡大による交渉力の向上、収益性の改善が見込める
  • 新たな流通経路を獲得することでクロスセルが見込める
  • 事業多角化・新規事業への参入
  • 人的リソースを獲得できる
  • コストの削減・財務力強化(仕入れコスト、管理部門コスト、物流コスト等)
  • 垂直統合により、製造から流通までを一括化できる
  • バリューチェーンの補完・関連事業領域の拡大
  • リスク分散ができる
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業務用・産業用機械製造業界で
M&Aを実行する際のポイント

業務用・産業用機械製造業界でM&Aを実行する際に注意すべきポイントには、下記のようなものがあります。

  • 主要取引先の工場の存続
  • コア部分の技術が社内にあるか(ユニットを購入しているだけか?)
  • 元請提出用帳簿の存在
  • 取引先等との関係性、一社偏重の度合い
  • 人的リソース管理、技術者の年齢構成
  • 財務問題
  • 労働問題
  • コンプライアンス、ガバナンス・管理体制

ここでは一般的なポイントをご紹介させていただいておりますが、実際には、個別事情を勘案すると大きく変わります。また、業界によっては独自の規制や商習慣が存在するため、M&Aの仲介を行ううえで、それぞれの業種・業界の特性を正しく理解していることが非常に大切です。日本M&Aセンターでは各業界に精通したコンサルタントが所属しているため、専門性の高いサービスを提供させていただくことが可能です。
当社では秘密保持を厳守のうえ、個別相談を無料でお受けしています。当社は全国に拠点を展開しております。気になることがありましたら、お気軽にお問い合わせください。

業務用・産業用機械製造業界における
M&Aの価格相場

業務用・産業用機械製造業界のM&Aにおける価格や相場感について説明いたします。まず、中小企業のM&Aには明確な相場が存在せず、最終的な価格は売り手と買い手の交渉によって決まることが特徴です。M&Aの価格は、業種や企業の規模、人材の質、財務状況、ブランド力、将来性、市場環境など、多岐にわたる要素によって変動します。そのため、個別の状況を考慮しながら価格が算出されることになります。
M&Aの価格算定にはいくつかの評価方法がありますが、その中の一つに「取引事例法」があります。取引事例法は、過去のM&A事例の中から、事業内容や地域、財務指標が似ている企業の売買実績を基に価値を評価する方法です。取引事例法において重要なのは、類似の取引事例を参考にすることですが、類似条件を見つけるためには、相当数の事例を蓄積する必要があります。非上場企業のM&Aの多くが非公開情報であることから、他社の実績を参考にすることはハードルが高い方法でもあります。その点、日本M&Aセンターでは、M&Aにおいて成約実績10,000件超、M&A成約件数で世界No.1*のギネス世界記録™に5年連続で認定されるなど、豊富な実績があります。事業内容や地域、財務指標に基づく似た会社の売買事例を選定し、一定のルールに従って公正な価値評価を行うことが可能です。こちらから当社の株価算定シミュレーションを体験することができます。

※ギネス世界記録™:M&Aフィナンシャルアドバイザリー業務の最多取扱い企業 2020~2023年に続き、5年連続でギネス世界記録™に認定

あなたの会社の評価額はいくら?

無料で診断(かんたん60秒

あなたの会社が現在どう評価をされるか、ぜひ見てみませんか?

次に、より高い評価を得て会社を高く譲渡売却するためには、よりシナジーのある買い手を見つけることが重要です。M&Aの最終価格は、売り手企業と買い手企業の交渉によって決まるため、買い手が「この会社が欲しい」と思う要素を増やしていく必要があります。例えば、現在、業務用・産業用機械製造業界の市場では人材不足が全体的な問題となっており、若くて優秀な人材を採用できる利点がある場合、買い手企業にとってM&Aの魅力が増します。
さらに、コンプライアンスやガバナンスに関する問題も重要な要素です。具体的には、顧客とのトラブルが存在しないか、社会保険への適切な加入状況が確認されることが求められます。これらの問題があると、潜在的な費用や負債として見なされ、価格交渉において不利な要因となり得ます。これらの要素が事前にクリアである場合、買い手企業も安心してM&Aを進めることができ、価格交渉もスムーズに進行しやすくなる傾向があります。
最後に、M&Aを成功させるためには、総合的に企業の魅力を高める努力が欠かせません。これは、価格評価への影響だけでなく、交渉の流れにも深く関わる要素であるといえるでしょう。

なお、実際には個別の業種や取引環境等によって価格相場は変動しますし、場所や経営状態によっても大きく左右されます。初期的なご相談や、簡易的な株価診断は無料にておこなっておりますので、よりくわしく評価や課題について聞きたい方は、弊社コンサルタントから詳細をご説明いたしますので、お気軽にご相談ください。

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業界別M&Aレポート編集部

株式会社日本M&Aセンター

業界別M&Aレポート編集部は、日本M&Aセンターの社員によって執筆・運営されています。各業界・業種のM&Aや事業承継に関する情報、トピックをお届けします。

業務用・産業用機械製造業界の
最新M&A事例を解説

近年に実施されたM&Aから業務用・産業用機械製造業界に関する事例をご紹介します。産業用機械メーカーのM&Aは、企業規模の拡大、事業範囲の拡大、技術の共有、サプライチェーンの強化、海外進出など、さまざまな目的で行われています。

製造業(工作機械)×製造業
ニデック、工作機械のTAKISAWAを買収

譲渡企業
株式会社TAKISAWA(岡山県岡山市)
譲受け企業
ニデック株式会社(6594)

M&Aの概要

スキーム:TOB、株式譲渡 実行時期:2024年2月2日

ニデックは、2024年2月2日、工作機械メーカーのTAKISAWAが同社の完全子会社となったことを公表しました。また、TAKISAWAは同年1月31日に東証スタンダードからの上場を廃止。これは、ニデックによる株式公開買い付け(TOB)の結果、TAKISAWAが同社の子会社となり、株式併合により上場維持基準を満たさなくなったためです。

TAKISAWAは、工作機械の製造販売業を営む会社です。旧社名は滝澤鉄工所。CNC旋盤などの旋盤に強みを持つメーカーです。
ニデックは、精密小型モータの製造販売業等を営む会社で、旧社名は、日本電産株式会社。世界No.1の総合モーターメーカーとして様々な製品を展開しており、多くの製品でシェアNo.1を獲得しています。

ニデックは、2023年7月にTAKISAWA経営陣からの同意なしでTOBを提案しました。「同意なきTOB」として、注目されていましたが、TOB直前の9月13日にはTAKISAWA経営陣が賛同し、株主に応募を推奨していました。
ニデックによるTOBは2023年9月14日から同年11月14日まで実施。TOBが終了したあと、ニデックは同年11月20日付のプレスリリースにて、TAKISAWAがニデックの子会社となり、さらに完全子会社化するためにスクイーズアウト(株式併合)手続きを進めることを公表していました。
ニデックがTAKISAWAを傘下に入れようとした狙いは、工作機械事業を強化するための戦略の一環であると考えられます。もともとは主要事業の精度向上を目的としていましたが、三菱重工工作機械とOKKを立て続けに買収し、業績を回復させたことで、ニデックは戦略を転換し、2030年までに売上高を約4倍である約10兆円に引き上げる構想を描いています。そして、その柱として工作機械事業を位置付けています。工作機械の中で最も市場規模が大きい旋盤に強みを持つTAKISAWAをグルームに迎え入れることで、製品分野や地理的なカバー範囲を広げられると考えています。

業務用・産業用機械製造業界の
M&Aニュース

業務用・産業用機械製造業界のM&Aニュースを表示します。

業務用・産業用機械製造業界のM&Aニュース一覧

業務用・産業用機械製造業界の
M&A仲介実績

日本M&Aセンターが仲介・支援して成約した業務用・産業用機械製造業界のM&A案件をご紹介します。
※現在、2025年9月までの実績を掲載しています。次回の更新(2025年10月~12月分)は2026年1月30日以降の予定です。

譲渡・売却企業 譲受け・買収企業
2025年9月 鉄筋・鉄骨加工(甲信越) 鉄筋・鉄骨加工(関東)
2025年9月 鉄筋・鉄骨加工(北海道・東北) 建築材料卸売(北海道・東北)
2025年9月 金型製造(東海・北陸) 金属部品加工(東海・北陸)
2025年9月 金型製造(北海道・東北) 樹脂部品加工(関西)
2025年9月 産業用機械製造(関東) 樹脂部品加工(東海・北陸)
2025年9月 鉄筋・鉄骨加工(中国・四国) 金属部品卸売(中国・四国)
2025年9月 電子部品製造(東海・北陸) 産業用機械製造(東海・北陸)
2025年9月 電子部品製造(九州・沖縄) 電子部品製造(関東)
2025年9月 その他機械製造(九州・沖縄) ファンド(関東)
2025年8月 鉄筋・鉄骨加工(中国・四国) 建築工事(中国・四国)

業務用・産業用機械製造業界のM&A仲介実績一覧

業務用・産業用機械製造業界の
最新のM&A事例インタビュー

当社の仲介によりM&A・事業承継された業務用・産業用機械製造業界の事例を、経営者様へのインタビュー形式でご紹介します。

業務用・産業用機械製造業界のM&A事例インタビュー一覧

業務用・産業用機械製造業界の
セミナー情報

当社では、M&Aや事業承継をはじめ、経営に役立つさまざまセミナーを開催しております。ぜひご参加ください。

業務用・産業用機械製造業界向けセミナー一覧

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