銀行業界のM&Aと事業承継の動向・案件情報2025年最新版

銀行業界に関する最新のM&A動向をご紹介します。 近年の市場推移やトピックス、業界再編にまつわる情報、銀行業界の周辺業界を含めたM&A・事業承継の事例をわかりやすく解説しています。 また、日本M&Aセンターが取り扱う最新のM&A案件、当社仲介によりM&Aを実行された経営者様の事例、 各業界の動向やM&A(第三者承継)への理解を深めるセミナー情報などもご紹介します。
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銀行業界の
M&A案件(売却・事業承継案件)
譲渡・売却を希望する銀行業界および隣接業界のM&A案件をご紹介します。非公開のM&A案件のご紹介や具体的な投資金額やエリアを絞って案件を探したい方は「M&A買収ニーズ」よりご登録をお願いします。
銀行業界におけるM&Aの概要
銀行等の金融機関に属する企業を、当業界に含みます。具体的には、都市銀行・地域銀行・信託銀行等のほか、実店舗を配置しないネット銀行やデジタルバンクがあります。また、信用金庫、信用組合、労働金庫等もこの業界に含みます。
地方銀行は、地方都市に本店を置き、地域密着型の経済支援を行い、地元の中小企業を中心に取引しています。第2地方銀行も地方に本店を持ち、地方銀行と同様の役割を果たしますが、もともと相互銀行だったところが多いです。地方銀行と第2地方銀行をあわせてここでは、地域銀行と呼称します。
銀行の再編
バブルのピークだった1989年以降、バブル経済の崩壊や金融ビッグバンを経て、1997年の独禁法改正により銀行持株会社が解禁され、銀行同士の合併、グループの再編が相次いで生じました。そしてネット銀行・デジタル銀行、異業種からの参入なども金融界に大きな変化をもたらしました。
日本では全国的に人口減少や高齢化が進んでおり、特に地方ではとくに著しい傾向がみてとれます。地域の人口減少による地域経済の相対的な落ち込みは、企業が事業活動を継続・拡大していくために必要な資金の要求量や、資金の使い道などのニーズが減少することに繋がり、地域の金融機関を取り巻く環境は、急速に変化しています。人口減少や高齢化による地域経済の相対的な落ち込み、日銀の低金利政策による資金利益の圧迫、さらにネットワーク経済やフィンテックの浸透による資金調達手段の多様化が、地域銀行にとって極めて厳しい事業環境を生み出しています。
特に、地域銀行の事業環境の厳しさは、国債による運用利益の源泉喪失からも明らかです。過去、銀行は定期預金で集めた資金を国債に投資することで安定した利益を上げていましたが、国債の利回りは2006年以降低下し続け、2016年には10年満期以下の国債がマイナスまたはゼロに近い利回りとなっています。一方で、定期預金の金利は0.05%程度にとどまり、逆ザヤ状態が続いています。このため、銀行は集めた預金を確実に利益に結びつける手段を失ってしまいました。
都市銀行(メガバンク)は高度金融サービスやグローバル展開に取り組むことで新たな活路を見出そうとしていますが、地域銀行には明確な方向性が見えず、非常に厳しい状況に直面しています。過去の延長線上には解決策がないため、新しいビジネスモデルを構想し、確立することが急務となっています。
地方の金融機関は、1989年に相互銀行が第二地方銀行に転換した後、経営破綻や吸収合併が進み、集約傾向にありますが、2024年3月期時点で地方銀行・第二地方銀行あわせて99行と、都市銀行の集約に比べて緩やかな変化にとどまっています。
合併、経営統合とひとくちに言っても、企業が他企業と協力して経営資源を強化する方法は多岐にわたります。経営資源の強化によって実現するビジネスの幅やコントロールの強さに基づき、統合の形態を分類できます。具体的には、合併、経営統合、資本提携、業務提携の4つに分かれます。合併は最も事業に対するコントロールが強い一方で、様々なリスクが存在します。あらかじめ、リスクを予測し、リスクに備え、コントロールすることが重要になります。
地域銀行の統合事例としては、長年にわたる準備期間を経て統合に至ったものがあります。例えば、青森銀行とみちのく銀行の統合は、公表から実現までに約4年半かかっています。両行が、共同で持ち株会社を設立すると発表したのは2021年5月のことでした。その後、2022年4月に経営統合し、2025年1月1日に「青森みちのく銀行」として合併しました。再編後の県内の貸出金シェアは7割となり、同一地域の再編を認める独占禁止法の特例法を初適用する事例となりました。
銀行には安定した事業基盤が求められるため、統合による事業規模拡大はチャンスを広げる要因となります。一般的に規模が大きいほど収益性や効率性が向上し、統合後のパフォーマンスも良好です。しかし、大規模な金融機関のすべてが良好なパフォーマンスを示すわけではなく、中規模の金融機関でも成功している事例があります。
これらの動向を踏まえると、地域銀行は再編を通じて経営基盤の強化を図り、効率的な運営を目指しています。地域金融の未来に向けた取り組みが、今後の業界の競争力を左右する重要な要素となるでしょう。
2024年度3月末の業態別金融機関数
業態 | 2024年度 | 2019年度 | 増減 |
---|---|---|---|
都市銀行 | 5 | 5 | 0 |
信託銀行 | 3 | 3 | 0 |
地方銀行 | 62 | 64 | -2 |
第二地方銀行 | 37 | 40 | -3 |
その他銀行 | 15 | 12 | 3 |
信用金庫 | 254 | 259 | -5 |
信用組合 | 143 | 146 | -3 |
労働金庫 | 13 | 13 | 0 |
農業協同組合※ | 507 | 611 | -104 |
証券会社等 | 272 | 264 | 8 |
生命保険 | 42 | 41 | 1 |
損害保険 | 29 | 26 | 3 |
合計 | 1,382 | 1,484 | -102 |
出典:日本金融通信社「2024年3月末の業態別金融機関数」
※速報ベース ※信託銀行は銀行子会社等を除く専業信託銀行に限定
※生命・損害保険は各協会の加盟・社員会社(外資系進出機関を含む)。証券会社は登録金融機関を除く日証協会員会社
※農協数は総合農協のみ(※2024年4月1日現在の数値)
※「その他銀行」は、SBI新生銀行・PayPay銀行・セブン銀行・ソニー銀行・楽天銀行・あおぞら銀行・住信SBIネット銀行・イオン銀行・auじぶん銀行・大和ネクスト銀行・SBJ銀行・ローソン銀行・GMOあおぞらネット銀行、みんなの銀行、UI銀行
銀行業界における
M&A活用のメリット
銀行業界におけるM&A活用のメリットをご紹介します。
- 譲渡側のメリット
-
- 顧客基盤の強化
- 規模拡大による経営安定性の向上
- サービス拡充
- リスク分散
- コスト削減
- 地域経済の活性化
- 事業意欲旺盛な会社との協業により、相互に発展することが可能
- 譲受け側のメリット
-
- 店舗や間接部門の統廃合によるコスト削減
- 人材教育や採用強化
- サービスの拡大
- ノウハウの共有(資産運用、フィンテック対応等)
- 人的リソースを獲得できる
- 関連事業領域の拡大
- リスク分散ができる
- 財務力強化・コストの削減(管理部門コスト等)
銀行業界で
M&Aを実行する際のポイント
銀行業界でM&Aを実行する際に注意すべきポイントには、下記のようなものがあります。
- システムや業務オペレーションの統一化
- ブランド名(銀行名)の浸透
- 通帳の切り替え等
- 異なる企業文化の融合
- 財務問題
- 労働問題
- コンプライアンス
- ガバナンス・管理体制
ここでは一般的なポイントをご紹介させていただいておりますが、実際には、個別事情を勘案すると大きく変わります。また、業界によっては独自の規制や商習慣が存在するため、M&Aの仲介を行ううえで、それぞれの業種・業界の特性を正しく理解していることが非常に大切です。日本M&Aセンターでは各業界に精通したコンサルタントが所属しているため、専門性の高いサービスを提供させていただくことが可能です。
当社では秘密保持を厳守のうえ、個別相談を無料でお受けしています。当社は全国に拠点を展開しております。気になることがありましたら、お気軽にお問い合わせください。
銀行業界における
M&Aの価格相場
銀行業界のM&Aにおける価格や相場感について説明いたします。まず、中小企業のM&Aには明確な相場が存在せず、最終的な価格は売り手と買い手の交渉によって決まることが特徴です。M&Aの価格は、業種や企業の規模、人材の質、財務状況、ブランド力、将来性、市場環境など、多岐にわたる要素によって変動します。そのため、個別の状況を考慮しながら価格が算出されることになります。
M&Aの価格算定にはいくつかの評価方法がありますが、その中の一つに「取引事例法」があります。取引事例法は、過去のM&A事例の中から、事業内容や地域、財務指標が似ている企業の売買実績を基に価値を評価する方法です。取引事例法において重要なのは、類似の取引事例を参考にすることですが、類似条件を見つけるためには、相当数の事例を蓄積する必要があります。非上場企業のM&Aの多くが非公開情報であることから、他社の実績を参考にすることはハードルが高い方法でもあります。その点、日本M&Aセンターでは、M&Aにおいて成約実績10,000件超、M&A成約件数のギネス世界記録™に4年連続で認定※されるなど、豊富な実績があります。事業内容や地域、財務指標に基づく似た会社の売買事例を選定し、一定のルールに従って公正な価値評価を行うことが可能です。こちらから当社の株価算定シミュレーションを体験することができます。
※ギネス世界記録™:M&Aフィナンシャルアドバイザリー業務の最多取扱い企業(2020年~2023年)
次に、より高い評価を得て会社を高く譲渡売却するためには、よりシナジーのある買い手を見つけることが重要です。M&Aの最終価格は、売り手企業と買い手企業の交渉によって決まるため、買い手が「この会社が欲しい」と思う要素を増やしていく必要があります。例えば、現在、銀行業界の市場では人材不足が全体的な問題となっており、若くて優秀な人材を採用できる利点がある場合、買い手企業にとってM&Aの魅力が増します。
さらに、コンプライアンスやガバナンスに関する問題も重要な要素です。具体的には、顧客とのトラブルが存在しないか、社会保険への適切な加入状況が確認されることが求められます。これらの問題があると、潜在的な費用や負債として見なされ、価格交渉において不利な要因となり得ます。これらの要素が事前にクリアである場合、買い手企業も安心してM&Aを進めることができ、価格交渉もスムーズに進行しやすくなる傾向があります。
最後に、M&Aを成功させるためには、総合的に企業の魅力を高める努力が欠かせません。これは、価格評価への影響だけでなく、交渉の流れにも深く関わる要素であるといえるでしょう。
なお、実際には個別の業種や取引環境等によって価格相場は変動しますし、場所や経営状態によっても大きく左右されます。初期的なご相談や、簡易的な株価診断は無料にておこなっておりますので、よりくわしく評価や課題について聞きたい方は、弊社コンサルタントから詳細をご説明いたしますので、お気軽にご相談ください。

株式会社日本M&Aセンター
業界別M&Aレポート編集部は、日本M&Aセンターの社員によって執筆・運営されています。各業界・業種のM&Aや事業承継に関する情報、トピックをお届けします。
銀行業界の
最新M&A事例を解説
業界の動向を見るために、近年に実施された銀行が係わる業界のM&A事例をご紹介します。地銀同士など、同じ業界同士のM&Aだけでなく、業容を広げるために証券会社、IT企業などとのM&Aが活発に利用されています。また、特定の業務を切り離し、譲渡するカーブアウトなどもたびたび行われています。
地域銀行×地域銀行
青森銀行とみちのく銀行が合併、「青森みちのく銀行」が発足
- 消滅会社
- みちのく銀行(青森県青森市)
- 存続銀行
- 青森銀行(青森県青森市)
スキーム:吸収合併 実行時期:2025年1月1日
2022年4月1日、青森銀行とみちのく銀行は経営統合し、共同持ち株会社「プロクレアホールディングス(HD)」を設立しました。両行はプロクレアHDの傘下に入り、2025年1月1日には両行が合併し、「青森みちのく銀行」が発足しました。
この合併により、両行の総預金残高は5兆円を超え、東北地方では七十七銀行、東邦銀行に次ぐ3番目の規模となります。青森県内の融資シェアは7割を超え、地域経済への影響が期待されています。
青森銀行とみちのく銀行は2024年11月25日、金融庁に両行の合併を申請。2024年12月20日付で銀行法に基づく合併が認可され、青森銀行とみちのく銀行に対し、金融庁が合併認可書を交付しました。本件は、地銀再編を進めるために2020年11月に施行された、同一県内の地銀の再編を独禁法の適用除外とした特例法※の適用第一号となります。青森銀行を存続会社とする吸収合併方式とし、青森銀行がみちのく銀行を吸収合併し、「株式会社青森みちのく銀行」に改称しました。
※2020年5月20日の参院本会議で、地方銀行同士の統合・合併を独占禁止法の適用除外とする特例法が可決、成立しました。超低金利や人口減少で収益が低下している地銀の再編を後押しし、経営基盤の強化を促す狙いがあります。統合・合併をめざす地銀の事業計画を金融庁が審査し、公正取引委員会とも協議したうえで、収益力の向上や金融サービスの維持につながることを条件に認可します。
証券代行×信託銀行
三井住友信託銀行、子会社の東京証券代行と日本証券代行を吸収合併
- 消滅会社
- 東京証券代行株式会社(東京都千代田区)
日本証券代行株式会社(東京都中央区)
- 存続銀行
- 三井住友信託銀行株式会社(東京都千代田区)
スキーム:吸収合併 実行時期:2025年1月1日
三井住友信託銀行は、三井住友トラストグループの中核を担い、主要業務において信託業界トップの規模を有する信託銀行。銀行事業、資産運用・資産管理事業、不動産事業を行っています。
東京証券代行株式会社は、日立製作所の株式業務部門を独立させ1962年に設立。2005年に中央三井信託銀行株式会社へ株式譲渡され、同行の子会社となりました。日本証券代行株式会社は、証券処理調整協議会の職員・事務所を引継ぎ1950年に設立。2012年より、三井住友信託銀行の連結子会社となりました。ともに三井住友トラストグループで、証券代行業を主たる業務とする企業です。
三井住友信託銀行株式会社は、子会社である東京証券代行株式会社、および日本証券代行株式会社を関係当局の認可を前提に、2025年1月1日を効力発生日として吸収合併することを決定しました。三井住友信託銀行を存続会社とする吸収合併方式とし、消滅会社である東京証券代行株式会社、および日本証券代行株式会社は、効力発生日をもって解散する予定です。
2社はこれまでグループ内の証券代行業務の専門会社として、顧客に対し株式実務や株主総会運営、コーポレートガバナンス全般に亘るコンサルティング等の各種サービスを提供してきました。本件合併を通じて、経営資源を三井住友信託銀行に結集し、各種サービスの品質向上やデジタル化の推進を実現していくとのことです。
銀行業界の
M&Aニュース
銀行業界のM&Aニュースを表示します。
銀行業界の
M&A仲介実績
日本M&Aセンターが仲介・支援して成約した銀行業界のM&A案件をご紹介します。
※現在、2025年3月までの実績を掲載しています。次回の更新(2025年4月~6月分)は2025年7月30日以降の予定です。
譲渡・売却企業 | 譲受け・買収企業 | |
---|---|---|
2025年3月 | 業務請負・組立・検査等(関東) | 建設設計(関東) |
2025年3月 | 測量・地質調査(東海・北陸) | 測量・地質調査(東海・北陸) |
2025年3月 | 業務請負・組立・検査等(関西) | 受託開発ソフトウェア(関東) |
2025年3月 | イベント・興業(関東) | Webマーケティング(関東) |
2025年3月 | 警備業(関西) | 警備業(関東) |
2025年3月 | 旅行業(九州・沖縄) | 自動車小売(関西) |
2025年3月 | スポーツ・レジャー施設(関東) | その他小売(関東) |
2025年3月 | 葬儀(関東) | 葬祭業(北海道・東北) |
2025年3月 | その他生活関連サービス(関東) | 生活関連サービス(関東) |
2025年3月 | 業務請負・組立・検査等(関東) | 生活関連サービス(関東) |
サービス業界の
最新のM&A事例インタビュー
当社の仲介によりM&A・事業承継された事例を、経営者様へのインタビュー形式でご紹介します。
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「事務所をより大きくしていきたい」。あえて変えることを宣言し、PMIにも注力
譲渡:静岡県浜松市 社会保険・労働保険手続き等
譲受け:静岡県のM&パートナーズは、関東エリアの顧客増加を受け、東京の社会保険労務士事務所との吸収合併を行いました。代表にM&Aを通じた成長戦略について伺いました。
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「この先の人生をどう過ごしたいか」。60歳を前に決断した会社の進む道
譲渡:東京都荒川区 社会保険・労働保険手続き等
譲受け:11人のスタッフが在籍する社労士事務所の代表は、60歳を目前に、事務所の存続のためM&Aを選択しました。現在も代表として円滑な引き継ぎに注力する中、話を伺いました
-
静岡で有名なお弁当チェーン「どんどん」が投資会社の支援を受け取り組む新たな挑戦
譲渡:
譲受け:東京都千代田区 投資事業(中小企業投資・M&Aアドバイザリー・財務コンサルティング)およびHR 事業(人材紹介・採用代行)東京都で中小企業投資・経営支援事業などを行うunlock.ly(アンロックリー)の三島 徹平社長に、M&Aの経緯とハンズオン支援のポイントを伺いました。
-
互いを尊重し合いながら経営ビジョンを作成。社会的使命を追求し、共に全国展開を目指す
譲渡:大阪府大阪市 患者等搬送事業、訪問介護事業
譲受け:大阪府岸和田市 リネンサプライサービス、レンタルコスチュームサービスリネンサプライ業のエスオーシーは、「民間救急」事業のアンビュランスを譲受けました。異業種2社がM&Aに至った背景、PMIについて話を伺いました。
-
徹底したハンズオン支援でバックオフィスを改善。労働環境が整い、業績も順調に成長
譲渡:
譲受け:東京都港区 プライベート・エクイティ・ファンドの運営、役員派遣によるハンズオン経営支援PEファンドのブルパス・キャピタルは、革小物のファブレスメーカーを譲受けました。会社の業績が拡大する現在、M&Aの経緯とPMIのポイントを伺いました
銀行業界の
セミナー情報
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