[M&A事例]Vol.143 静岡で有名なお弁当チェーン「どんどん」が投資会社の支援を受け取り組む新たな挑戦
東京都で中小企業投資・経営支援事業などを行うunlock.ly(アンロックリー)の三島 徹平社長に、M&Aの経緯とハンズオン支援のポイントを伺いました。
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猫壱(東京都)は「猫が幸せ、私も幸せ」をブランドスローガンに、2008年の設立以来、美しく機能性にも優れた猫のための商品作りに取り組んできました。国内外で成長を続けていた同社は、2023年8月に「ブランドと人の発射台」というミッションを掲げ、ブランドと人のエンパワーメントに取り組むMOON-X(東京都)と統合しました。統合から約半年、猫壱の竹内 淳社長とMOON-Xの長谷川 晋社長にM&Aの経緯をお聞きしました。(対談実施日:2023年12月13日)
――“猫壱”は愛猫家の人たちに広く知られているブランドです。まず創業の経緯からお話しいただけますか。
譲渡企業 猫壱 竹内様: 創業は2008年です。最初はアメリカのスポーツペットという猫用品のブランドの代理店からスタートしました。その後、もっと自分たちでこだわり抜いた商品を作りたいという思いで「猫壱」を立ち上げたのです。それが2013年のことでした。当社の代表的な商品は、猫が自然な姿勢でエサを食べられるように高さをつけた「脚付フードボウル」です。これがすごくヒットしました。
――その他にも、シェア1位の商品が数多くあるそうですね。
竹内様: おかげさまで、「ストレスなくスパッと切れる猫用爪切り」や「バリバリつめとぎポール」など、たくさんお使いいただいている商品がどんどん増えていきました。 販売チャネルとしては卸流通でやっていて、オンラインはAmazonや楽天、オフラインではイオンペットやペットのこじまなどのペットショップ、ホームセンターのDCMなどで販売しています。2014年にはアメリカに現地法人を作って展開しています。
――商品を作る上で大切にされているのは、どんなことですか?
竹内様: 実は私は、どちらかというと犬派なんです。だから、まず自分自身が猫と、その飼主であるお客様を知ることから始めました。ペットショップの店頭に立たせてもらい販売をお手伝いしたり、お客様のお宅にお邪魔させていただいたりして猫や猫好きの方のことを理解するように努めました。 この姿勢がお客様の求める商品の開発につながっていると思います。自分が猫好きだと自分のこだわりが強くなり過ぎてしまって本当にお客様の求めているものが見えなくなるんじゃないかという気がします。 あとは納得がいかなければ商品を発売しないということでしょうか。一年に何十、何百という商品を出すメーカーが多いのですが、猫壱は年に1個や2個、場合によっては新商品を出さない年もあります。
――順調に成長を続けてこられたようですが、なぜM&Aを検討されたのですか?
竹内様:実はコロナ禍で“おうち時間”が増え、猫を飼う方も増えてきたこともあり、ずっと目標にしてきた猫の生活用品市場でナンバーワンという位置に手が届くところまできたのです。そのとき、さらに上を目指すのか、それともここで良しとするのか、と考えました。私としては、上を目指さないとジリ貧になるだろう、と思ったのです。 当時、当社は役員を含めて8名。競合他社は数百名の陣容で、売上げ100億円、200億円という会社もありました。商品やマーケティングでは戦える自信はありましたが、当時の組織体制のままで勝ち抜けるのだろうかという不安があり、知り合いの経営者の方に相談すると、ある選択肢を教えていただきました。
――どんな選択肢だったのでしょう?
竹内様:その方は、猫壱の強みをもっと強くし、弱みを補完してくれる、もしくは強化してくれるパートナーと戦略的に組むという選択肢もあるんじゃないか、と言うのです。そうした戦略的な連携もM&Aでできるということで、日本M&Aセンターを紹介してもらいました。M&Aに対してはなにかギラギラした企業買収というイメージしかなかったのですが、戦略的提携の可能性がつかめるのなら考えてみようと思ったのです。
――相手企業に一番求められたのは、どんなポイントだったのですか?
竹内様:猫壱の弱みである組織体制の部分を補完し、強化してくれるようなお相手です。あとは、猫壱の一番の資産である商品を通して築いてきたブランドに対して理解や共感を持っていただけることです。
――その相手企業としてMOON-Xを選ばれました。最初に長谷川社長と会われたときの印象はいかがでしたか。
竹内様:長谷川社長とお会いして、一緒に当社のブランドを伸ばしていこうと考えてくださっていることが伝わってきましたし、なにより私を人として見てくれているというか、尊重してもらっているという感じを受けました。数社と面談しましたが、これがMOON-Xを選んだ決め手になりました。
――長谷川社長にもお聞きしたいのですが、猫壱に興味を持たれたのは、どういう点だったのでしょうか。
譲受け企業 MOON-X 長谷川様:私たちは「共創型M&A」というのを推進していまして、基本的には素敵なブランドでこれからもまだまだ伸び代がある企業にお声がけをしています。お互いの強みを持ち寄ってOne Teamとなることで、ブランドをさらに飛躍させていきたいと思っているんです。 猫壱の魅力は、非常にこだわりをもってものづくりをされていて、商品が秀逸で猫オーナーの皆さんの中ですでに確立された信頼のブランドになっていたことです。
――竹内社長とお会いになった印象は?
長谷川様:楽しかったですね。M&A交渉って一般的にはもっとシビアなものなのでしょうけど、3時間くらいお話した後に食事に行ったんです。お互いに生い立ちの話をしたり、創業時の苦労を聞いたりしていると、すごくワクワクしてきたんです。こういうふうに、ワクワクしながら一緒にブランドを伸ばしていければいいなと思ったのを覚えています。
――とてもいい出会いだったようですね。ディール自体は大変でしたか。
竹内様:大変だったのはDD(デューデリジェンス:買収監査)資料の準備でした。でも自分の中ではこれまでの事業の棚卸しというか、もう一度冷静に事業を見直そうという捉え方をしてモチベーションを保つことができました。
――PMI(M&A成約後の統合プロセス)は、どのように取り組まれていますか?
竹内様:突然、MOON-Xのグループに入ることになったわけですから、なにより従業員の不安を払拭することを考えました。みんなにとってみれば大きな変化です。なるべく早く、お互いに「同じチーム、ファミリーだよ」ということを理解してもらおうと、長谷川社長にも何度も会社にきてもらいました。
長谷川様:最初は安心してもらうことが大事なので、まず皆さんを集めていただいて自己紹介も含め話をさせていただきました。強調したのは「基本的に何かすぐに変えるということはありません。僕らは仕事を理解したいので、いろいろ教えてください」ということです。あとは従業員の方一人ひとりとカジュアル1on1をして、その方のキャリアや仕事への想いなどをお聞きして関係を構築していきました。わりと早く、お互いに気を遣わない関係になりましたね。
竹内様:そうですね。3ヵ月ほどで一緒のファミリー、チームという感じが出てきました。
――M&Aを通して一番変わったと思われることは何ですか?
竹内様:従業員です。とても明るくなりました。かつては人数が少なく一人一部署といった感じで業務負荷が高かったので、いま思うとピリピリしていたのでしょうね。現在は6名から16名にメンバーが増え、私自身も商品開発に注力できるようになりましたし、ものすごく活気に溢れ、嬉しい変化が起きています。 以前は、組織体制や従業員との関わり方が課題なのでは、と思っていましたが、統合後一緒にチームとして働いていく中で、今までの体制のままでそれがさらに良くなっていけるな、という希望に変わりました。猫壱が社内からも社外からも「いい会社だね」と言われる会社になれると思っています。
――今後の展望をお聞かせください。
竹内様:これまではいろいろやりたいことがあっても、組織が小さくてすべてはできませんでした。しかし、いまは諦めることがなくなって夢が広がっていく感じでワクワクしています。国内だけではなく、海外での展開を積極的に考えたいと思っています。
長谷川様:改めて竹内さんのすごさ、特にものづくりへのこだわりのすごさを感じています。その強みをさらに活かせるように、もっと猫や消費者と向き合って素晴らしい製品をどんどん磨いていただきたいと思っています。そのための環境を用意するのが私の仕事です。二人三脚でわいわいやりながら、猫用品で世界を代表するようなブランドに磨いていければいいなと思っています。
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成長戦略部 マネージャー 松田 敏矢(株式会社猫壱担当)
ディールを通じて、竹内御兄弟の「家族としての絆」が深まったことが何よりの成長戦略でございました。竹内様とは、譲渡後、担当者の垣根を越えて家族付き合いをしていただき、モーニングをしながら順調な経過などを教えていただけることが楽しみになっております。今後も継続的に自己実現のご支援ができたら嬉しいです。
成長戦略部 シニアチーフ 兼 EC業界専門グループ リーダー 田中 将司(MOON-X株式会社担当)
M&A後の成長戦略に関して、ディール中に両社で徹底的なディスカッションを行ったことで、「事業・ブランドのさらなる成長」と「従業員・取引先との変わらぬ関係性」が早々に実現されていると感じております。今後も、両社のさらなる飛躍のために、M&Aを通じたご支援ができればと考えております。