食品製造業界のM&Aと事業承継の動向・案件情報2025年最新版

食品製造業界のM&A

食品製造業界に関する最新のM&A動向をご紹介します。 近年の市場推移やトピックス、業界再編にまつわる情報、食品製造業界の周辺業界を含めたM&A・事業承継の事例をわかりやすく解説します。 なお、食品業界全体については食品業界、 食品専門店・スーパーマーケットなどのM&Aについては食品小売・コンビニ業界のページをご覧ください。

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食品製造業界におけるM&Aの概要

食品製造業界は、近年、M&Aが活発におこなわれている業界です。 食品製造・加工に携わる事業者のM&Aが増えた要因は、後継者不足による事業承継だけではなく、 原材料の高騰や人件費の高騰、老朽化や食品の安全基準の変更に伴う設備投資などへの先行き不安などもあります。 また、成長型のM&Aも活発で、食品メーカー同士のM&Aだけでなく、食品卸や小売業界をはじめ、 食品関連業界全体で再編の動きが活発化しています。

食品製造業の定義

食品製造業とは、原材料を購入し、工業規模で食品や飲料を製造、その製品を販売して収益を得る産業です。
経済産業省の「工業統計」では、パンや菓子、肉製品・乳製品、水産食料品、調味料などの製造は「食料品製造業」に分類され、 ビールや清酒、清涼飲料、たばこなどの製造は「飲料・たばこ・飼料製造業」に分類されています。 ここでは、食料品製造業と清涼飲料や酒類の製造業をあわせて「食品製造業界」としています。

食品としての取扱い製品には多種多様なものがあります。 内容に応じて営業種目が細分化され、その製造形態は概ね、製造物を原料として提供する「素材型」と、 製造物を消費者・需要者に提供する「加工型」に大別されます。食品製造業に従事する企業の約90%、総売上高の約80%は、 加工型が占めており、乳製品やパン・菓子、冷凍食品、惣菜などそのまま消費される食料品を製造する事業者が中心となります。

食品製造業界をとりまく環境

食品製造業界は、私たちの生活に直結する幅広い製品をつくる産業であり、国内製造業の中でも特に裾野が広い領域ですが、近年、業界を取り巻く環境は大きく変化し、複数の課題が同時進行しています。本セクションでは、市場規模や生産・取引動向、事業者構造、M&A動向との関係など、食品製造業界をとりまく環境を多面的に整理します。

市場・販売/生産・取引動向

日本の製造業全体に占める食料品製造業の位置付けを見ると、2021年の製造品出荷額等は製造業全体で330兆2200億円、そのうち食料品製造業の構成比は9.1%、付加価値額の構成比は9.5%とされています。

農林水産省「農業・食料関連産業の経済計算」によれば、2022年の農業・食料関連産業全体の国内生産額は114兆2178億円で、全経済活動の10.2%を占めており、食料関連は日本経済において引き続き大きな比重を持つ分野です(農林水産省「農業・食料関連産業の経済計算(令和4年・概算)」)。
同じく農林水産省の整理によると、2021年の農業・食料関連産業のうち、食品製造業の国内生産額は約36兆円規模であり、食品小売業や外食産業と合わせた食品産業全体では約91兆円規模で、農業・食料関連産業全体は約108兆円です。食品産業は、全経済活動の国内生産額(約1,035兆円)の約10.5%を占めています。
食品製造業の生産・価格動向を見ると、農林水産省「食品産業動態調査」における食品製造業生産額指数は、2017年以降おおむね横ばいから緩やかな上昇基調で推移しており、2022年には指数105.2、対前年比+2.6%とされています。これは、生産数量ベースの指数が前年並みである一方、企業物価指数(飲食料品)の上昇による価格転嫁が一定程度進んだ結果と整理されています。
消費者側の価格動向については、内閣府「今週の指標」による分析によれば、2022年以降、生鮮食品および外食を除く食料品価格は、原材料高と円安進行を背景に値上げが相次ぎ、2023年夏には日経CPINowベースで前年比+9%台まで上昇したとされています。 こうした価格上昇を背景に、家計の名目食料支出は増加している一方、実質ベースでは伸び悩んでいるとの指摘もあります。例えば、総務省統計局「家計調査(家計収支編)2024年平均結果」では、2人以上の世帯の2024年の消費支出は名目で前年比+2.1%増である一方、物価変動を除いた実質では▲1.1%減となっており、価格上昇が実質消費を抑制している状況がうかがえます。
食品カテゴリー別に見ると、詳細な公的統計は限られるものの、業界団体や各種レポートを総合すると、健康志向の高まりを背景とした機能性表示食品、高たんぱく食品、低糖質・減塩志向の商品、簡便性ニーズを取り込んだ冷凍食品・チルド惣菜、レトルト食品などが相対的に高い成長を示していると考えられます。輸出面では、日本食ブームやインバウンド需要を背景に、調味料、菓子類、日本酒など一部カテゴリーで中長期的に市場拡大の余地があると想定されます。
チャネル別では、食品製造業の出荷先は、従来からのスーパーマーケット・量販店向けに加え、コンビニエンスストア向けの比重が高く、ここに中食・即食ニーズの取り込みが進んでいます。さらに、ECやD2C型通販、サブスクリプション型のミールキットなど、新しい販路が拡大しつつあり、製造企業側も自社ECやデジタルマーケティングを組み合わせた直販チャネル構築に取り組む例が増えています。

M&A観点
市場規模として食品製造業は安定した裾野と比較的緩やかな成長を併せ持つ一方、カテゴリーごとに成長率や価格転嫁力が大きく異なるため、M&Aにおいては「どのカテゴリー・チャネルにエクスポージャーを高めるか」がバリュエーションとストラクチャリングの重要な起点になります。特に、高付加価値・高成長カテゴリー(健康機能、プレミアム、簡便・中食向け等)や輸出ポテンシャルの高い商品ポートフォリオを持つ企業は、同業・異業種双方からの関心が高まりやすいと考えられます。
経済産業省「2022年経済構造実態調査の製造業に関する結果を取りまとめました」
農林水産省「農業・食料関連産業の経済計算(令和4年農業・食料関連産業の経済計算(概算))」
農林水産省「農産物・食品の価格形成をめぐる事情」
農林水産省「食品産業動態調査 食品製造業をめぐる市場経済動向(令和4年版)」
内閣府「今週の指標 No.1357 2022年以降の食料品物価の動向について」
総務省統計局「家計調査報告〔家計収支編〕2024年(令和6年)平均結果の概要」

事業者・設備・拠点動向

食品製造業の事業者構造を見ると、農林水産省「食品製造業をめぐる情勢」によれば、食品製造業の事業所数は長期的に減少傾向にある一方、従業者数および製造品出荷額は増加傾向にあり、事業所の集約・規模拡大と人員増・付加価値増が並行して進んでいると整理されています。
同資料によると、食品製造業に属する企業のうち、中小企業および零細企業(従業者299人以下)が事業所数ベースで約97.6%を占めており、製造業全体でも中小・零細企業が約98%とされています。一方、製造品出荷額ベースで見ると、食品製造業では全体の約7割を中小企業が占めるのに対し、製造業全体では大企業の構成比が約53%とされており、食品製造業は「中小企業比率の高い産業」でありつつ、中小企業が実際の売上面でも大きな役割を担っていることが特徴です。
設備面では、多くの工場が多品種少量生産・短い賞味期限への対応を求められており、ラインの柔軟性や切替頻度が高い一方で、自動化・省人化投資のハードルも存在します。弁当・惣菜・麺類・パン・菓子など、日配性の高いカテゴリーでは、製造から出荷までのリードタイムが短く、工場稼働の平準化が難しいことから、単純なスループット最大化よりも「歩留まり・廃棄ロスの管理」と「品質安定」が重視される傾向があります。
拠点戦略としては、全国に多数の中小工場が分散立地する一方、大手メーカーや大手小売グループでは、セントラルキッチン型の大規模工場・広域物流センターを組み合わせたドミナント戦略が採用される例が増えています。また、冷凍食品・冷蔵食品を扱う工場では、冷凍・冷蔵倉庫やコールドチェーン物流センターを一体化させた拠点設計が進んでいます。
品質・安全面では、HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point:危害要因分析重要管理点)に沿った衛生管理の制度化を背景に、HACCPに基づく衛生管理計画の整備に加え、ISO22000やFSSC22000などの国際規格認証を取得する工場も増加しています。これにより、取引先への品質・コンプライアンス説明責任を果たしつつ、輸出や大手小売・外食チェーンとの取引基盤を整える動きがみられます。

M&A観点
事業所構造を見ると、食品製造業は中小・零細企業が多数を占める一方で、設備・拠点投資の負担が重く、後継者問題や老朽設備更新の課題を抱える企業も少なくありません。既に広域の工場ネットワークや物流網を持つ企業が、中小規模の地域工場をM&Aで取り込むことで、①生産拠点の最適配置、②設備投資の集約、③稼働率・歩留まり改善、④物流距離の短縮によるコスト削減といったスケールメリットを享受しやすく、統合後のPMIでは生産・物流ネットワーク全体の再設計が重要なテーマになります。
農林水産省「食品製造業をめぐる情勢(令和7年版)」

需要側ファクター

マクロな前提として、日本の人口は中長期的な減少・高齢化トレンドが続いています。総務省統計局「人口推計」(確定値)によれば、2024年10月1日現在の総人口は1億2380万2千人で、前年から55万人(▲0.44%)減少し、14年連続の減少となっています。
国立社会保障・人口問題研究所による将来推計では、出生中位・死亡中位の前提の場合、総人口は2020年の1億2615万人から、2070年には約8700万人まで減少し、高齢化率は約35〜42%に達すると見込まれています(出生中位推計では38.7%)。
人口減少自体は内食・中食・外食を含む総量需要に対して中長期的なマイナス要因ですが、一方で世帯構造の変化(単身世帯・共働き世帯の増加、高齢者単身・夫婦のみ世帯の増加)やライフスタイルの変化が、食品のカテゴリー別・チャネル別需要の構造を大きく変えています。調理時間の短縮ニーズや、買い物頻度・距離の制約から、中食・簡便調理品・冷凍食品の利用頻度が高まっていることは、多くの家計調査・業界調査から指摘されています。
家計支出の観点では、食品・飲料全体の名目支出は増加傾向にあり、ある民間調査によると2024年の食品・飲料(酒類含む)の1家計あたり年間支出は10年前から一貫して増加しているとされていますが、実質ベースでは物価上昇分を差し引くと伸びは限定的と推測されます。総務省「家計調査」の分析でも、2024年の二人以上世帯の消費支出は名目増加・実質減少となっており、今後も「単価アップは可能だが、数量の伸びは限定的」という前提を置いた事業計画が求められます。
インバウンド需要も食品製造業にとって重要な外需要因です。観光庁「訪日外国人旅行消費額」によれば、2024年の訪日外国人旅行消費額は8兆1257億円と過去最高を記録し、費目別構成比では宿泊費33.6%、買物代29.5%、飲食費21.5%となっています。買物代の中には、菓子・加工食品・酒類などの土産物が一定の割合を占めており、インバウンド向け商品開発や多言語表示・ハラール・ベジタリアン対応などは、今後も差別化要因として重要性を増すと考えられます。
ライフスタイル面では、健康志向・ウェルネス志向の高まり、環境・サステナビリティへの関心、動物福祉・プラントベース志向など、多様な価値観が同時並行で進行しています。これにより、減塩・糖質オフ・高たんぱく・機能性表示食品、有機・オーガニック認証商品、フェアトレード原料を用いた商品などへのニーズが拡大しており、食品製造企業は商品設計段階からこれらの要素を組み込むことが求められます。

M&A観点
需要側ファクターを見ると、人口減少・高齢化・実質所得の伸び悩みという構造問題の中で、①高付加価値・健康志向、②中食・簡便・時短、③インバウンド・輸出、④サステナビリティ対応といった成長軸をどの程度自社でカバーできるかが、中長期の成長ポテンシャルを左右します。自社単独で新カテゴリー・新チャネルを開拓するには時間と投資を要するため、すでにポジションを確立している企業をM&Aで取り込むことは、ポートフォリオ転換・需要構造の変化への対応を加速させる手段となります。
総務省統計局「人口推計(2024年(令和6年)10月1日現在)‐全国:年齢(各歳)、男女別人口・都道府県別人口‐」
国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)Population Projections for Japan:2021–2070」
総務省統計局「家計調査報告〔家計収支編〕2024年(令和6年)平均結果の概要」
観光庁「訪日外国人の消費動向 調査結果(2024年暦年(確報))」

制度・規制・DX

食品製造業は、他の製造業と比べても安全・衛生・表示に関する規制が厚く、制度環境の変化が経営に与える影響も大きい分野です。食品衛生法の改正に伴い、2021年6月以降、原則すべての食品等事業者に対してHACCPに沿った衛生管理の制度化が行われており、事業規模に応じた衛生管理計画の策定・記録保存が求められています。
表示面では、食品表示法に基づき原材料名・アレルゲン・栄養成分・原産地などの表示が義務付けられており、機能性表示食品制度や特定保健用食品制度など、健康機能表示に関するルールも複雑化しています。消費者庁は食品リコール情報の届出制度を運用しており、事業者は自主回収時にオンラインでの届出・情報公開を行う必要があります。
JAS法に基づく日本農林規格(JAS規格)や、有機JAS、ISO22000、FSSC22000などの国際規格認証は、取引先や消費者に対する品質保証の手段として活用されており、特に輸出や大手流通向け取引においては認証の有無が取引条件に組み込まれるケースが増えています。
DXの観点では、製造現場のIoT化・設備モニタリング、トレーサビリティ情報の電子管理、電子帳簿保存法への対応を含む電子帳票・電子請求書、EDI・電子取引、在庫管理システム、需要予測・生産計画の高度化など、多岐にわたるテーマがあります。食品製造業向けの動態調査でも、生産額指数や労働生産性の分析に加え、デジタル化・自動化の必要性が繰り返し指摘されています。
消費者データや購買履歴を活用したマーケティングについては、個人情報保護法やクッキー規制、越境データ移転など、プライバシー保護・データガバナンス上の留意点が増えています。特に自社ECや会員プログラム、D2Cモデルを展開する企業では、個人情報の取得・利用目的の明確化や、安全管理措置、委託先管理などが求められます。

M&A観点
制度・規制・DXの観点では、①食品衛生法・食品表示法・景品表示法等の遵守状況、②HACCPや各種認証の取得状況、③電子帳簿保存法・インボイス制度・個人情報保護法への対応状況、④基幹システム・生産管理システムの老朽度合い・統合可能性、がデューデリジェンスの主要項目になります。買収側企業にとっては、コンプライアンス水準やDXの進捗度合いが高いターゲットほどPMIの負荷が小さく、逆に水準が低いターゲットでは、統合後に追加投資・体制整備コストが発生する前提でバリュエーションや条件設定を行う必要があります。
厚生労働省「食品衛生法の改正について(HACCPに沿った衛生管理の制度化)」
消費者庁「食品表示の適正化・リコール情報サイト」
農林水産省「食品製造業をめぐる情勢(令和7年版)」

供給・ロジスティクス/サプライチェーン

供給・サプライチェーンの観点では、穀物・油糧種子・畜産物・水産物などの国際相場、為替レート、エネルギー価格の変動が原材料コストに大きく影響します。近年では、ウクライナ情勢や気候変動による不作、海上運賃の高騰などを背景に、原材料・物流コストの上昇が大きな負担となりました。農林水産省「農産物・食品の価格形成をめぐる事情」でも、原材料価格の高騰や急速な円安進行が、農業・食品産業の事業環境に急激な変化をもたらしていると整理されています。
物流面では、いわゆる「2024年問題」に象徴されるトラックドライバーの時間外労働上限規制(年間960時間)など、働き方改革関連法による労働時間規制が、輸送能力・運賃水準・リードタイムに影響を与えています。国土交通省や厚生労働省の資料でも、2024年4月以降、トラック運転者に時間外労働の上限規制が適用され、物流への影響が懸念されている旨が示されています。
食品は温度管理や賞味期限管理が厳格に求められるため、コールドチェーン、在庫回転、ロットトレース、リコール対応など、サプライチェーン品質管理の水準が事業継続リスクと密接に関係します。原材料のトレーサビリティ確保、製造履歴と出荷ロットの紐付け、サプライヤー監査体制の構築などが求められます。
また、国産農林水産物との結びつきという観点では、農林水産省の分析によれば、国産農林水産物の仕向け先の約6割が食品製造業とされ、食品製造業における原材料のうち約7割が国産農林水産物とされています。これにより、食品製造業は農業・水産業と一体となって地域経済を支える役割を担っており、原材料調達・価格交渉・契約形態も中長期的なパートナーシップを前提とすることが多くなります。

M&A観点
供給・サプライチェーン面から見ると、①原材料調達先の集中・依存度、②コールドチェーン・共同配送・モーダルシフト等に対応した物流インフラの有無、③トレーサビリティ・リコール対応の仕組み、が統合後のリスク・シナジーの大きな源泉になります。原材料価格変動・物流制約に対して協調購買や共配網の再構築を進めるには、取扱数量の集約が有効であり、川上(農業・水産業)・川中(一次加工)・川下(小売・外食)との垂直統合や、同業他社との共同配送・共同調達を目的としたM&A・業務提携が選択肢となります。
農林水産省「農産物・食品の価格形成をめぐる事情」
国土交通省東北運輸局「物流の2024年問題とは」
厚生労働省「物流情報局(事業者の皆さまへ)トラック運転者の働き方改革について」
農林水産省「食品製造業をめぐる情勢(令和7年版)」

人材

人材面では、食品製造業は製造現場オペレーター、品質管理・品質保証、商品開発、購買・物流、営業、DX・データ活用など、多様な職種から構成されます。農林水産省「食品製造業をめぐる情勢」によれば、食品製造業の有効求人倍率は近年、全産業平均の2倍前後の水準で推移しており、特に地方圏では人材確保の難しさが顕著とされています(同資料における都道府県別有効求人倍率の分析)。
技能面では、HACCPをはじめとする衛生管理、アレルゲン管理、微生物検査、官能評価、規格・規制対応など、食品特有の知識・スキルを持つ人材が重要です。同時に、設備自動化・生産管理システムの導入に伴い、現場オペレーションとデジタル技術の両方に精通した「橋渡し人材」が求められています。
商品開発の分野では、栄養・調理・マーケティング・データ分析を組み合わせた総合的な企画能力が必要とされ、短い商品ライフサイクルの中でヒット商品を継続的に生み出す体制の有無が、企業競争力を左右します。
また、少子高齢化に伴う労働力人口の減少を受けて、外国人材の活用も進んでいます。食品製造業は、特定技能制度等を通じて外国人材受け入れの対象となる職種を含んでおり、多言語・多文化環境での労務管理や教育体制の整備が課題となっています。

M&A観点
人材の観点では、①食品安全・品質保証、②商品開発、③DX・デジタル、④多店舗展開を支えるマネジメント人材、などの「ボトルネック人材」をどのように確保・育成しているかが重要です。人材難が背景となるM&Aでは、単なる設備・ブランドの取得ではなく、「組織・人材プールの取得」という意味合いが強くなり、PMIにおいても評価制度・賃金体系・教育体系・安全衛生ルールの統合が成否を分けるポイントになります。
農林水産省「食品製造業をめぐる情勢(令和7年版)」

ガバナンス/広告・品質/コンプライアンス

食品製造業は、食の安全・安心に直結する業種であるため、ガバナンス・コンプライアンスに対する社会的要請が高い分野です。景品表示法による不当表示規制、食品表示法に基づく原材料・アレルゲン・原産地表示の適正化、健康機能の表示に関するガイドラインなど、広告・表示に関する規制は多岐にわたります。
過去の事例では、産地偽装や賞味期限の不適切表示、機能性表示の根拠不足などが社会問題となったことから、多くの企業が品質保証部門やコンプライアンス部門を強化し、表示内容の事前チェックや、クレーム・リコール対応の標準プロセス整備を進めています。リコール対応においては、原因究明・影響範囲特定・回収・是正措置・再発防止策の検討まで、一連のPDCAを実行できる体制が求められます。
また、サイバーセキュリティや情報漏えいリスクも無視できません。生産設備と情報システムの連携が進む中で、ランサムウェア等による工場停止や、顧客情報・レシピ情報の漏えいが企業価値に与えるインパクトは大きく、IT統制・アクセス権管理・バックアップ体制の整備が必要です。

M&A観点
ガバナンス・コンプライアンスの成熟度は、M&Aにおけるリスク評価とシナジー実現可能性に直結します。買収側としては、①過去の品質事故・リコール履歴、②表示関連の指摘・行政処分の有無、③内部統制・リスク管理体制、④情報セキュリティ対策、などをデューデリジェンスで確認し、PMIではグループ共通のコンプライアンス基準・品質マニュアル・ITポリシーをどのように浸透させるかが課題となります。
厚生労働省「食品衛生法の改正について(HACCPに沿った衛生管理の制度化)」
消費者庁「食品表示の適正化・リコール情報サイト」

M&Aリレーション

食品製造業界では、総合食品メーカー・飲料メーカー・冷凍食品メーカー・惣菜メーカーなどによるM&A・事業統合が継続的に行われており、カテゴリーごとに一定の寡占化が進んでいる領域も存在します。一方で、中小・零細事業者が多数を占めるため、業界全体としては依然として事業者数が多く、再編の余地も大きい状況です。
再編の主要なドライバーとしては、①オーナー経営者の高齢化による事業承継ニーズ、②老朽設備更新負担や環境・衛生・DX投資負担の増大、③原材料・物流・人件費の上昇を背景としたスケールメリット追求、④ブランド・商品開発力・販路の獲得、⑤6次産業化・製販一体型モデルへの転換、といった要因が挙げられます。
また、地域の農業・水産業と密接に結びついた中小食品メーカーについては、地域金融機関や自治体、農協・漁協などと連携した「地域承継・地域M&A」の枠組みが広がりつつあります。地域ブランド食品や土産物、地場食材を活用した加工品などは、観光・インバウンド需要と結びつくことで、新たな成長機会となる可能性があります。

M&A観点
食品製造業のM&Aは、①同業によるスケールメリット追求型、②小売・外食等との垂直統合型、③IT・物流・包装資材など周辺産業との補完型、④地域エコシステム形成を目的とした資本業務提携型など、多様なパターンがあります。買収後のPMIにおいては、価格・原材料・在庫・与信条件などのマスタ統合、品質・表示・コンプライアンス基準の統一、ブランド・商品ポートフォリオの整理が成否を左右します。M&A仲介・アドバイザリー会社は、これらの多様なニーズを踏まえ、地域性・カテゴリー特性・規制環境を踏まえた案件組成・条件調整が求められます。
帝国データバンク「倒産集計 2024年報(1月〜12月)」
東京商工リサーチ「『食品業』倒産 2年連続増加の653件 原材料やエネルギー価格、人件費上昇が負担」

食品製造業界の今後の課題と展望

本セクションでは、今後3〜5年程度を念頭に置き、食品製造業界が直面する主な課題と対応策、そしてM&Aの観点からの示唆を整理します。ベースシナリオ・上振れシナリオ・下振れシナリオという3つの視点から、売上高成長率や利益率、人件費率、原材料比率、生産性などのKPIイメージもあわせて検討します。

マクロシナリオとKPIイメージ

課題
人口減少・高齢化の進行、実質賃金の伸び悩み、原材料・エネルギー・物流・人件費の上昇など、食品製造業を取り巻くマクロ環境は中長期的に厳しさを増しています。一方で、健康志向や簡便志向、インバウンド需要等のプラス要因もあり、「総量としては横ばい〜緩やかに縮小しつつ、中身の入れ替えが進む」局面にあります。
対応策
企業側は、自社の売上・利益を「マクロ市場全体の伸び」に依存するのではなく、①ポートフォリオシフト(高付加価値・成長カテゴリーへのシフト)、②価格戦略・ブランド戦略の再設計、③生産性向上・原価構造改革、④外需・インバウンドの取り込み、⑤事業ポートフォリオの選択と集中、といった施策を組み合わせることが求められます。
M&A観点
事業ポートフォリオの転換やスピード感ある構造改革を実現するうえで、M&Aは重要なオプションです。ベースシナリオでは、自社既存事業の改善にM&Aを補完的に活用するイメージですが、上振れシナリオでは、成長カテゴリー・海外販路・DX機能などを持つターゲットを積極的に取り込むことで、売上高成長率を年率+2〜3%程度上乗せする可能性があります。一方、下振れシナリオでは、コストインフレや需要減退が想定以上に進行し、スポンサー型M&A・再生型M&Aへの関与が増えることが想定されます。
総務省統計局「人口推計(2024年(令和6年)10月1日現在)‐全国:年齢(各歳)、男女別人口・都道府県別人口‐」
国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)Population Projections for Japan:2021–2070」
総務省統計局「家計調査報告〔家計収支編〕2024年(令和6年)平均結果の概要」

利益率圧迫要因と原価・価格戦略

課題
近年の食品製造業の利益率は、原材料価格の高騰、エネルギー・物流コストの増加、人件費・最低賃金の引上げ、ポイント還元・値引き圧力など複合要因から圧迫を受けています。家計の実質購買力が低下する中で、販売価格への十分な転嫁が難しいケースも多く、数量減を避けたい需要サイドと、原価上昇に直面する供給サイドの間でせめぎ合いが続いています。
対応策
利益率改善に向けては、①高付加価値商品の比率向上(健康機能、プレミアムライン、差別化原料等)、②SKU整理による不採算商品の削減、③レシピ・包材の見直しによる原価低減、④歩留まり改善・廃棄ロス削減、⑤エネルギー効率改善・省エネ投資、⑥製販一体での価格戦略(販促・値引きの適正化)が重要です。KPIとしては、売上総利益率、原材料比率、人件費率、エネルギー・物流コスト比率、SKU当たり粗利額などをモニタリングし、中期的には営業利益率を数十bp単位で改善するイメージが現実的です。
M&A観点
原価構造の観点からは、①調達スケールの拡大(共同購買)、②生産拠点統合による固定費削減、③ブランド力の高い商品ポートフォリオの獲得による価格プレミアム確保、などがM&Aシナジーの主要テーマになります。PMIにおいては、価格・取引条件・仕入先・包材・物流条件などのマスタ統合が重要であり、粗利率・営業利益率の改善目標を明示したうえで、統合後のKPI管理を行うことが望ましいです。
農林水産省「農産物・食品の価格形成をめぐる事情」
内閣府「今週の指標 No.1357 2022年以降の食料品物価の動向について」
総務省統計局「家計調査報告〔家計収支編〕2024年(令和6年)平均結果の概要」

ロジスティクス再編と2024年問題への対応

課題
トラックドライバーの時間外労働上限規制(年間960時間)を含む「2024年問題」により、輸送能力不足や輸送コスト上昇が懸念されています。食品は賞味期限・温度帯管理が厳格であるため、リードタイムの延伸や遅配は直接的に廃棄リスク・販売機会損失につながります。特に中小規模の食品メーカーでは、自社単独での物流効率化投資や運賃交渉力に限界があるケースが多いです。
対応策
対応策としては、①幹線輸送のモーダルシフト(鉄道・フェリー活用)、②共同配送・共同倉庫による積載率向上、③在庫拠点の集約・クロスドッキング活用、④配送頻度・リードタイムの見直し、⑤3PL(サードパーティ・ロジスティクス)の活用、⑥需要予測・在庫最適化システムによる配送計画の高度化、などが挙げられます。これらを組み合わせることで、物流コスト比率の上昇を抑制しつつ、サービスレベルを維持することが目標となります。
M&A観点
物流・ロジスティクス機能を自社で強化するために、冷凍・冷蔵倉庫や共同配送網を持つ企業、物流ノウハウを有する3PL事業者とのM&A・資本業務提携を検討するケースが増えています。M&A後のPMIでは、配送エリア・温度帯・SKU構成・配送条件を踏まえたネットワーク再設計と、在庫マスタ・配送マスタの統合が重要であり、シミュレーションに基づく拠点再配置やルート再編が成功の鍵となります。
国土交通省東北運輸局「物流の2024年問題とは」
厚生労働省「物流情報局(事業者の皆さまへ)トラック運転者の働き方改革について」

人材確保・組織づくり

課題
食品製造業では、現場オペレーターから品質管理・商品開発・DX人材に至るまで幅広い領域で人手不足が続いています。農林水産省の資料によれば、食品製造業の有効求人倍率は全産業平均の2倍以上で推移しており、とりわけ地方圏での人材確保が喫緊の課題となっています。
対応策
人材確保・定着に向けては、①処遇改善・賃金水準の見直し、②交替勤務・シフトの働きやすさ向上、③教育訓練体系の整備、④外国人材の適切な受け入れ・多文化マネジメント、⑤自動化・省人化投資による省力化、などを組み合わせる必要があります。特に、HACCP対応や品質管理、DXなど高度なスキルを要するポジションについては、ジョブ型採用や社内資格制度の導入等によりキャリアパスを明確化することが有効です。
M&A観点
人材面のM&Aでは、①熟練技能者や品質・開発人材を多く抱える企業の取得、②教育機能(研修センター、技術学校等)を持つ企業との統合、③グループ内での人材ローテーション・キャリアパス構築、などがポイントになります。PMIでは、評価制度・賃金制度・就業規則の統合とともに、カルチャー・安全衛生意識の統合が重要であり、統合初期から人材ポートフォリオとスキルマップを可視化したうえで、再配置・採用計画を検討することが望まれます。
農林水産省「食品製造業をめぐる情勢(令和7年版)」

デジタル/データ活用・DX

課題
多くの食品製造企業では、生産管理、品質管理、在庫管理、販売管理、経理などのシステムが部門別に分断されており、データがサイロ化しているケースが見受けられます。レガシーなオンプレミスシステムや紙・Excel運用が残っている場合、需要予測・在庫最適化・歩留まり分析など高度なデータ活用が困難であるほか、M&Aに伴うシステム統合の負荷も高まります。
対応策
DX推進の方向性としては、①基幹システム(ERP)・生産管理システムの標準化・クラウド化、②トレーサビリティ・品質情報を含むデータプラットフォーム構築、③AIによる需要予測・価格最適化・廃棄ロス削減、④電子帳票・電子請求書・電子契約によるバックオフィス効率化、⑤自社EC・D2C・CRM基盤整備などが挙げられます。KPIとしては、在庫回転日数、欠品率、廃棄率、歩留まり、受注から出荷までのリードタイム、DX投資の投下資本利益率(ROIC)などを設定し、段階的な改善を図ることが重要です。
M&A観点
DX面でのM&Aでは、①既に基幹・生産システムが整備され、テンプレートとして活用できる企業の取得、②AI・デジタルマーケティング・EC運営などに強みを持つ企業の取得、③グループ全体のデータ基盤を統合するためのIT子会社化、などが検討されます。PMIでは、マスタ統合(得意先・仕入先・商品・原材料)、会計科目・分析軸の統一、段階的なシステム移行計画策定が不可欠であり、IT PMO機能の設置が成功の前提となります。
農林水産省「食品製造業をめぐる情勢(令和7年版)」

ガバナンス/コンプライアンス強化

課題
食品安全・表示・広告・環境・労務・独占禁止法・下請法・個人情報保護法など、食品製造業が対応すべき法規制は多岐にわたります。原材料高や人手不足への対処に追われる中で、コンプライアンス対応が後回しになり、結果として行政指導・ブランド毀損リスクが顕在化する可能性があります。
対応策
ガバナンス強化に向けては、①取締役会・経営会議でのリスク・コンプライアンス報告の定例化、②品質保証・法務・内部監査機能の強化、③表示・広告・契約・下請取引の事前レビュー体制の構築、④内部通報制度や通報対応プロセスの整備、⑤グループ全体でのコンプライアンスポリシー・行動規範の策定と教育、などが必要です。
M&A観点
M&Aにおいては、対象企業のコンプライアンス水準がバリュエーションと契約条件に直結します。デューデリジェンスでは、①過去の品質事故・リコール・行政処分、②表示・広告・下請取引に関するトラブル、③内部通報制度やコンプライアンス教育の有無、④個人情報保護・情報セキュリティの管理レベル、などを詳細に確認する必要があります。PMIでは、グループ共通のルール・マニュアルに統合し、品質・コンプライアンス監査の対象に組み込むことで、リスクを可視化・低減していくことが重要です。
厚生労働省「食品衛生法の改正について(HACCPに沿った衛生管理の制度化)」
消費者庁「食品表示の適正化・リコール情報サイト」

出店/拠点/フォーマット戦略(6次産業化・製販一体型を含む)

課題
老朽化工場への設備更新投資や、地方拠点の採算性悪化、販路確保の難しさなどから、拠点戦略の見直しが求められています。農業・水産業と連携した6次産業化や、直営店舗・外食・ECを組み合わせた製販一体型モデルへのシフトも課題となりますが、単独企業での投資負担は大きくなりがちです。
対応策
拠点戦略としては、①老朽工場の統廃合と最新設備への集約、②地域工場を生かした地産地消・地域ブランド戦略、③直営店・外食・専門店・ECなど販路の多様化、④工場併設直売所・観光型工場見学等の体験価値提供、⑤農業法人・水産会社・小売・外食との連携による6次産業化スキーム構築、などが考えられます。
M&A観点
製販一体型モデルの構築にあたっては、①既存の小売・外食チェーンの買収・出資、②地域の有力ブランドや専門店の取得、③農業法人・水産加工業との垂直統合などが選択肢になります。M&A後のPMIでは、ブランドポジショニングの整理、製造拠点と店舗・ECのサプライチェーン設計、価格・販促方針の統一が重要であり、マスタ統合とともに「どのチャネルにどのブランドを載せるか」という全体設計が求められます。
農林水産省「食品製造業をめぐる情勢(令和7年版)」

外需/輸出・インバウンド戦略

課題
輸出やインバウンド向けビジネスは成長余地が大きい一方、輸出規制・関税・検疫・各国の食品安全規制・ハラールや有機認証などの要件への対応が必要であり、中小企業にとって参入障壁になり得ます。また為替変動リスクや地政学リスクも無視できません。
対応策
輸出・インバウンド戦略としては、①輸出専用ラインや国際認証(ハラール、有機JAS等)の取得、②現地パートナー(輸入商社・小売・外食)との連携、③インバウンド需要が強い都市圏・観光地における土産物・飲食の品揃え最適化、④多言語表示・デジタル決済への対応、⑤物流・通関スキームの標準化などが挙げられます。観光庁の統計が示すように、2024年の訪日外国人旅行消費額は8兆円規模に達しており、そのうち飲食費や買物代の一定部分を食品が占めていることから、戦略次第では国内市場の伸び悩みを補完するポテンシャルがあります。
M&A観点
外需を取り込むためには、①海外販路・現地法人・現地工場を持つ企業の買収、②インバウンドに強い小売・外食・土産物事業者とのM&A・資本提携、③ブランドの国際展開ノウハウを持つ企業との連携、などが有効です。クロスボーダーM&Aでは、法制度・商習慣・ガバナンスの違いを踏まえたPMIが必要であり、現地マネジメントの維持・インセンティブ設計が成功の鍵となります。
観光庁「訪日外国人の消費動向 調査結果(2024年暦年(確報))」

倒産/再編の地合いとスポンサー型M&A

課題
帝国データバンクの集計によれば、2024年の企業倒産件数は9901件と、3年連続で前年を上回り、2013年以降で最も多い水準となっています。食品業に限っても、東京商工リサーチのレポートでは、原材料・エネルギー・人件費の上昇や価格転嫁の遅れを背景に、倒産件数が増加傾向にあるとされています。
対応策
資金繰り・財務面の観点からは、①金融機関との対話による借入条件の見直し、②在庫・売掛金など運転資本の効率化、③不採算事業・過剰設備の整理、④コスト構造の抜本的見直し、⑤早期の事業承継・M&A選択などが求められます。特に中小食品メーカーでは、事業承継と財務リストラクチャリングを一体で考えるアプローチが重要です。
M&A観点
倒産・再生局面では、スポンサー型M&A(再生型M&A)の活用が重要な選択肢となります。スポンサー企業は、①製造・販売ネットワークやブランドの再活用、②債務・不採算資産の整理を伴う事業再生、③人材・取引先の保護、などの観点から関与することになります。M&Aアドバイザー・再生専門家・金融機関が連携し、早期にスキーム設計・利害関係者調整を行うことで、価値毀損を最小化しつつ事業の継続可能性を高めることが求められます。
帝国データバンク「倒産集計 2024年報(1月〜12月)」
東京商工リサーチ「『食品業』倒産 2年連続増加の653件 原材料やエネルギー価格、人件費上昇が負担」

リスク管理とBCP(事業継続計画)

課題
食品製造業は、自然災害、感染症、サイバー攻撃、品質事故、制度変更、地政学リスクなど、多様なリスクに晒されています。サプライチェーンが多段階かつグローバル化しているケースも多く、単一拠点の操業停止が全体の供給に大きな影響を与える可能性があります。
対応策
リスク管理・BCPの観点からは、①重要拠点・重要原材料の特定と代替策の検討、②複数サプライヤー・複数物流ルートの確保、③在庫ポリシーの見直し、④災害・感染症時の操業体制・シフト運用ルールの整備、⑤サイバーセキュリティ対策とバックアップ・復旧計画、⑥品質事故・リコール時の危機対応マニュアル整備と訓練、などが重要です。
M&A観点
BCP・リスク管理の成熟度が高い企業との統合は、グループ全体のレジリエンスを高める効果があります。サプライチェーン多元化を目的としたM&Aでは、地域・原材料・製造技術・物流インフラの分散を意識したターゲット選定が必要であり、PMIでは、統合グループ全体のBCP・リスクマップを再構築することが望ましいです。
農林水産省「食品製造業をめぐる情勢(令和7年版)」
国土交通省東北運輸局「物流の2024年問題とは」
厚生労働省「物流情報局(事業者の皆さまへ)トラック運転者の働き方改革について」

まとめ:食品製造業界の中期展望とM&Aの位置付け

総じて、日本の食品製造業界は、人口減少・高齢化といった構造的な需要制約と、原材料・人件費・物流コストの上昇といった構造的なコストプレッシャーの双方に直面する一方で、健康・簡便・サステナビリティ・外需・インバウンドといった複数の成長ドライバーを同時に抱える「選択と集中」が求められる局面にあると言えます。
ベースシナリオでは、国内市場全体としては横ばい〜緩やかな縮小が続く中で、企業ごとの差別化・生産性向上・ポートフォリオ転換により、売上高成長率0〜+2%、営業利益率の漸進的改善を目指すイメージが現実的です。上振れシナリオでは、DXの加速・高付加価値商品へのシフト・輸出・インバウンドの取り込みにより、売上高成長率+3〜+5%、営業利益率の顕著な改善も視野に入ります。下振れシナリオでは、価格転嫁の停滞や需要減退により、売上高成長率がマイナス領域に陥り、再編・再生案件が増える可能性もあります。
M&Aは、こうしたシナリオの中で、①成長ドメインへの参入・拡大、②スケールメリットによるコスト構造改革、③人材・ノウハウ・DX機能・販路の獲得、④事業承継・再生・BCP強化、など複数の目的を同時に達成する手段となります。案件ごとに目的とKPI(売上高成長率、営業利益率、ROIC、シナジー金額・実現時期等)を明確化したうえで、マスタ統合・システム統合・組織・カルチャー・コンプライアンス統合を計画的に進めることが、食品製造業界におけるM&A成功の鍵になります。

総務省統計局「人口推計(2024年(令和6年)10月1日現在)‐全国:年齢(各歳)、男女別人口・都道府県別人口‐」
国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)Population Projections for Japan:2021–2070」
総務省統計局「家計調査報告〔家計収支編〕2024年(令和6年)平均結果の概要」

食品製造業界で
M&Aを実行する際のポイント

食品製造業界でM&Aを実行する際に注意すべきポイントには、下記のようなものがあります。

  • 衛生管理・品質管理を徹底しているか
  • 調達や販売における安定性
  • 人的リソース管理
  • 取引先等との関係性
  • 財務問題
  • 労務問題
  • コンプライアンス
  • ガバナンス・管理体制

ここでは一般的なポイントをご紹介させていただいておりますが、実際には、個別事情を勘案すると大きく変わります。また、業界によっては独自の規制や商習慣が存在するため、M&Aの仲介を行ううえで、それぞれの業種・業界の特性を正しく理解していることが非常に大切です。
全国に拠点を展開する日本M&Aセンターでは、各業界に精通したコンサルタントが所属しているため、専門性の高いサービスを提供させていただくことが可能です。秘密保持を厳守のうえ、個別相談を無料でお受けしています。M&Aの進め方やポイントなど、気になることがありましたら、お気軽にお問い合わせください。

食品製造業界の
現状・トピックス

食品製造業界の現状・トピックスについてご紹介します。

トピックス

  • 円安により輸入食品・原材料の価格が上昇
  • TPP(環太平洋連携協定)参加による関税撤廃・税率低下による機会と脅威
  • 国内外における食の安全性への関心の高まり
  • 消費傾向の二極分化の進展により堅調な高級食料品に対してデイリーユースの食用品へは価格志向が強まる
  • 少子高齢化に伴い消費量の増加は期待できないが、宅配サービス等の新たな市場が成長している

地場産業として地域経済に大きなウェイトを占める食品製造業

食品産業は、食品製造、卸売、小売、外食産業のいずれも中小零細企業比率が98~99%を占め、事業所の総数は約92万事業所、従業者数は約900万人をこえています。そのうち食品製造業は、全製造業の中でも事業所・従業員数ともに上位にあり、地域経済において地場産業として大きなウェイトを占めています。特に、農林水産業の盛んな地域では、農林水産業とむすびつきの強い食品製造・加工等の食料関連産業が地場産業として大きなウェイトを占めることが多く、北海道、鹿児島、沖縄では製造品出荷額の約30%。雇用面では、製造業の従事者の過半近くを占めるなど、地域経済の安定に重要な役割をもっています。

食品製造業界の現状と変化

2022年の日本の名目GDP(国内総生産)は 556.5兆で対前年比 1.3%とわずかに増加。そのうち、家計消費支出は対前年比 5.1%とやや増加。財貨・サービスの輸出は 19.8%で大幅な増加となりました。2022年の日本経済は、2020年の新型コロナウイルス感染症がもたらしたパンデミックによる経済停滞から徐々に回復傾向にあることを示しています。
これは全経済活動の11.1%にあたり、食品業界が非常に規模の大きい市場であることが分かります。
農林水産省の「農業・食料関連産業の経済計算」によれば、2021年における「農業・食料関連産業の国内生産額」は、前年に比べて0.3%減少し108兆5,321億円となりました。農林水産省の「農業・食料関連産業の経済計算」によると、2020年の農業・食料関連産業の国内生産額は約109兆円でした。

食品製造業においては、2018年以降、全体の生産額はコロナ禍などの影響により減少傾向となりました。しかし、飲料・酒類を除いた加工型製造業は生産指数がほぼ横ばいで推移。堅調に推移しているのは加工肉、乳製品、漬物、生麺類、パン類、野菜飲料、調理済み食品などです。これは単身世帯や共働き世帯の増加とともに中食・惣菜の需要が増えていることが背景となっています。
食品産業においては、感染症対策の規制緩和や各種政策の効果もあって、景気が持ち直していくことが予想されています。その一方、エネルギー価格や物価高騰など生産コストの価格転嫁、食料品価格上昇による消費の低迷などの課題に直面しています。

食品製造業における労働生産性の課題

食品製造業の労働生産性は製造業全体の平均に比べて低い水準にあります。食品の素材の特性から人手がかかり生産の機械化が難しい点、原料供給の不安定さや物流コストの高騰などが原因とされます。これらの問題は食品製造業を含む多くの産業において生産性を押し下げる要因となっています。

同時に、食品ロスや海洋プラスチック問題への対応を求められ、安全・安心な食品へのニーズも高まっています。SDGsへの取り組みや食の安全・安心へのコストは必要なものであり、これらを事業全体の中にどう組み込むかが食品製造業にとって大きな課題となっています。

M&A活発化の背景と動向

こうした中、食品製造業界では変化する消費ニーズへの対応や生産性向上、イノベーション推進などを目的として、活発にM&Aが行われています。相手企業も同業者だけでなく、食品小売・卸売、外食、IT、バイオ、不動産など多岐にわたり、今後もこの流れは加速していくと予想されます。

食品製造業界は各種の変化とともに進化し、その中で新たな経営戦略としてM&Aが重要な選択肢となってきています。事業者はその動向を注視しつつ、自社の成長戦略にどう取り入れるかを考えるべき時期に差し掛かっています。

食品製造業の製販一体型M&Aによる成長戦略

食品業界における成長戦略が新たな局面を迎えています。近年、製造と販売の両側面を結びつける、製販一体型のM&Aが食品業界内で増加しています。この動きは、業界再編と新たな競争の激化に対する経営者たちの応えとして、ますます重要性を増しています。

食品製造業は、隣接する食品小売業や食品卸業とも関連性が深く、業務用食品卸の一部企業は食品スーパーや小売店を運営しています。最近では、『6次産業化』と呼ばれる取り組みも官民活発で、農産物・水産物などを生産する『1次産業』から、製造加工を行う『2次産業』、流通販売を担う『3次産業』までを総合的に結びつけ、地域資源を活用した新たな価値を創出する試みが行われています。

6次産業化とは
⼀次産業としての農林漁業と、⼆次産業としての製造業、三次産業としての⼩売業等の事業との総合的かつ⼀体的な推進を図り、地域資源を活⽤した新たな付加価値を⽣み出す取組。

「地域資源を活⽤した農林漁業者等による新事業の創出等及び地域の農林⽔産物の利⽤促進に関する法律」(六次産業化・地産地消法)前⽂より

製販一体型M&Aを進める食品業の事例

食品小売業界では、地域を拠点に展開する企業が、食品製造会社との統合を進めています。東海地方を拠点に展開するバローホールディングスや、ロピアを中核とするOICグループなどがその代表例です。積極的に食品製造の会社を積極的に買収し、製造機能の内製化に力を入れています。商品調達の中間マージンを減少させると同時に、独自商品の開発によって競争力を向上させています。

製販一体型M&Aを積極的に打ち出している例として、神戸物産グループが挙げられます。
1985年に設立した神戸物産は、2022年10月期の連結売上高は4,068億円、全国に1,000店舗を出店する日本を代表する食品企業です。自社の食品スーパーチェーン「業務スーパー」と製造機能を結びつけることで、生産から販売までのプロセスを一貫して管理する「食の製販一体体制」を確立。神戸物産グループは国内に食品加工工場を25拠点所有し、自社製造だから実現できる品質と価格で、ユニークなPB商品を強みとしています。SNSやテレビなどでとりあげられることも多い業務スーパー。特に話題にされるのは、他店にはないオリジナル商品です。例えば、豆腐パックに入ったチーズケーキ、1リットルの牛乳パックに入った大型プリンや水羊羹などのデザートは、その独自性と味わいで評価されています。これらのオリジナル商品は、M&Aによって取得した工場から生み出されています。工場の再活性化を通じて、差別化された独自の商品を生み出し、市場での地位を確立しています。この取り組みは、商品の創造だけでなく、企業の再生と成長の可能性を示唆しています。工場の再生によって新たな製品を提供し、同時に廃業寸前だった工場に新たな活路を開くことができました。神戸物産グループのM&Aは、異なる分野の企業を取り込むことで、新たな市場を開拓し、売上を拡大した好事例です。こうした事例は、異なる強みを持つ企業同士が協力し、シナジー効果を最大限に引き出すことの重要性を証明しています。

「食の安全」に係る取組みの重要性

食品製造業は、日々の食事を支える非常に重要な産業であり、国民の健康や栄養に影響を及ぼすため、製品の安全性には特に配慮が必要です。消費者は食品の安全性に対して高い期待と信頼を寄せています。一度でも安全性に問題があると報道されれば、その製品の信頼は失墜します。一方で、安全な食品を提供することは消費者の「安心」につながり、長期的にはブランド力と信頼性を高めます。安全性はコストや効率を考慮する前に確立すべき最優先の課題であり、その土台をしっかり築くことが企業価値を高める鍵となります。
2018年に食品衛生法及び食品表示法が改正され、2021年6月1日から、食品リコール(自主回収)を行う場合、食品衛生法及び食品表示法に基づき、リコール情報を行政へ届出することが義務化されました。同じく2021年6月、全ての食品等事業者(食品の製造・加工、調理、販売等)を対象として、HACCP※に沿った衛生管理が完全義務化されました。
食料品製造業として「食の安全」への取組みは不可欠です。今後ますます消費者の食品の安全・安心への関心が高まり、これを受けて食品業界においては、消費者へのわかりやすい情報の開示やトレーサビリティシステムの充実など一歩踏み出した取組みを計画的に織り込むことが課題となっています。

※HACCP (Hazard Analysis and Critical Control Point):HACCPとは、食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去又は低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようとする衛生管理の手法です。

新たな付加価値業務への転換

食品業界における最大の課題は、「自前主義」からの脱却です。特に中小企業は、限られたリソース内で様々な業務をこなす必要がありますが、すべてを単独で成し遂げることは困難です。こうした課題に対処するために、新たな付加価値業務への転換を図ることが求められています。営業と製造の専門知識を結集し、競争力を高めつつ、自社内でのノウハウの蓄積ができる、製販一体型のM&Aが重要な役割を果たします。

業界再編の波が押し寄せる中、食品業界の経営者たちは重要な選択を迫られています。自社の規模を極限まで拡大し、収益性を向上させる道と、高付加価値型のビジネスへと転換する道。これからの展望にどう向き合うか、その選択が業界の未来を形作る重要な鍵となります。

製販一体型のM&Aは、経営者にとって画期的な道となるかもしれません。異なるスキルセットやビジネスモデルを持つ企業同士が協力し、成長戦略を展開することで、業界の再編に前向きに対応できるでしょう。業界を牽引する経営者の判断が、食品業界の新たな未来を築く上で鍵となることでしょう。

食品製造業の生産性

2021年度の日本の一人当たり労働生産性は、購買力平価(PPP)換算で 818 万円。これに対し製造業の労働生産性は1193万円で、日本の全産業の中で、製造業は比較的高い生産性を示しています。このうち食品製造業の労働生産性は665万円で、全業種平均を下回っています。売上高が国内GDPの約10%に迫る食品製造業ですが、こういったデータから、食品製造業の生産性向上は他の製造業に比べて、低い部類に位置することがわかっています。
食品製造業の生産性が低い主な理由として、多品種少量の生産形態と、中小零細事業者の高い労働集約度が考えられます。
経済産業省のデータによれば、従業員数が300人以上の事業所では生産性が高く、小規模な事業所ほど生産性が低い状態にあり、従業員数と生産性が比例している傾向があります。 食品という製品は、多品種少量生産が一般的であり、機械化が進んでいない小規模事業者ほど人手が必要な生産形態が多いことがあげられます。食品製造業は、従事者数規模では製造業中最大であり、食品製造業、とくに中小零細事業者の生産性向上は、日本の雇用や食品製造業従事者の待遇にとって極めて重要な意味を持っています。

図)製造業全体と食品製造業の労働生産性の推移
図)製造業全体と食品製造業の労働生産性の推移

出典:農林水産省/資料:財務省「法人企業統計調査」
※1 労働生産性=付加価値額÷総人員数 ※2食品製造業には、飲料タバコ飼料製造業を含む、

垂直統合による打開策:M&Aの活発化

2023年8月、農林水産省が発表した2022年度の食料自給率は、カロリーベースで38%、前年度比で横ばいでした。これは2020年度に記録した過去最低の37%からは少し回復していますが、政府が2030年度に45%に到達するとの目標にはまだ届いていない状況です。自給率を押し下げる要因として、小麦や大豆の面積当たりの収穫量が減少したこと、漁獲量の低下の影響が挙げられます。
原材料の調達や物流の高コストを解消するため、多くの企業は垂直統合を進めています。これは、生産から販売、サービスまでを一元管理することで、効率を高める戦略です。特に、バリューチェーンを拡張する垂直型M&Aが注目を集めています。

適切なM&A戦略が企業価値を高める

食品製造業において、売却価格や企業価値は多くの要因によって決まります。それは、収支・財務状況、市場動向、そして買い手とのシナジー等です。特に、自社と相補関係にある企業とのM&Aは、企業価値を高める大きな鍵となります。逆に言えば、M&A戦略が不適切であれば、企業価値は著しく損なわれる可能性もあります。これらを踏まえ、経営者はどのように業界の課題と向き合い、持続的な成長を達成するのか、その策定が求められています。

食品製造業界におけるM&Aは年々増加しています。当社がお手伝いする中でも、製造業が関わるM&Aはもっとも件数が多い業界の一つで、圧倒的な成約実績があります。地域・業界・企業規模にとらわれないマッチング力によって、ベストなパートナーをご提案いたします。食品業界のM&Aや事業承継に関して、ご不明点やご要望などがありましたら、お気軽にご相談ください。

食品製造業界における
M&A活用のメリット

食品製造業界におけるM&A活用のメリットをご紹介します。

譲渡側のメリット
  • 規模の拡大・生産性の向上による収益性の確保
  • 販路の拡大により販売力の強化
  • 後継者問題を解決できる
  • オーナー社長は個人保証や担保提供から解放され、ハッピーリタイアができ、必要に応じて、役員等として継続してかかわることも可能
  • 製造ノウハウ・衛生管理の強化
  • 事業意欲旺盛な会社との協業により、相互に発展することが可能
  • 適切な会社に譲渡すれば、社員の雇用は保証され、成長機会も増える
譲受け側のメリット
  • 売上規模・シェアの拡大が見込める
  • 事業多角化・新規事業への参入
  • 人的リソースの獲得
  • バリューチェーンの補完・関連事業領域の拡大
  • リスク分散ができる
  • コストの削減・財務力強化(仕入れコスト・管理部門コスト等)
  • 需要が安定しているビジネスを取込み、経営を安定化させる
  • 季節性による繁忙期を分散させる
  • シナジーの創出
  • 海外への進出の可能性
食品製造業の
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食品製造業界における
M&Aの価格相場

食品製造業界のM&Aにおける価格や相場感について説明いたします。まず、中小企業のM&Aには明確な相場が存在せず、最終的な価格は売り手と買い手の交渉によって決まることが特徴です。M&Aの価格は、業種や企業の規模、人材の質、財務状況、ブランド力、将来性、市場環境など、多岐にわたる要素によって変動します。そのため、個別の状況を考慮しながら価格が算出されることになります。
M&Aの価格算定にはいくつかの評価方法がありますが、その中の一つに「取引事例法」があります。取引事例法は、過去のM&A事例の中から、事業内容や地域、財務指標が似ている企業の売買実績を基に価値を評価する方法です。取引事例法において重要なのは、類似の取引事例を参考にすることですが、類似条件を見つけるためには、相当数の事例を蓄積する必要があります。非上場企業のM&Aの多くが非公開情報であることから、他社の実績を参考にすることはハードルが高い方法でもあります。その点、日本M&Aセンターでは、M&Aにおいて成約実績10,000件超、M&A成約件数で世界No.1*のギネス世界記録™に5年連続で認定されるなど、豊富な実績があります。事業内容や地域、財務指標に基づく似た会社の売買事例を選定し、一定のルールに従って公正な価値評価を行うことが可能です。こちらから当社の株価算定シミュレーションを体験することができます。

※ギネス世界記録™:M&Aフィナンシャルアドバイザリー業務の最多取扱い企業 2020~2023年に続き、5年連続でギネス世界記録™に認定

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次に、より高い評価を得て会社を高く譲渡売却するためには、よりシナジーのある買い手を見つけることが重要です。M&Aの最終価格は、売り手企業と買い手企業の交渉によって決まるため、買い手が「この会社が欲しい」と思う要素を増やしていく必要があります。例えば、現在、食品製造業界の市場では人材不足が全体的な問題となっており、若くて優秀な人材を採用できる利点がある場合、買い手企業にとってM&Aの魅力が増します。
さらに、コンプライアンスやガバナンスに関する問題も重要な要素です。具体的には、顧客とのトラブルが存在しないか、社会保険への適切な加入状況が確認されることが求められます。これらの問題があると、潜在的な費用や負債として見なされ、価格交渉において不利な要因となり得ます。これらの要素が事前にクリアである場合、買い手企業も安心してM&Aを進めることができ、価格交渉もスムーズに進行しやすくなる傾向があります。
最後に、M&Aを成功させるためには、総合的に企業の魅力を高める努力が欠かせません。これは、価格評価への影響だけでなく、交渉の流れにも深く関わる要素であるといえるでしょう。

なお、実際には個別の業種や取引環境等によって価格相場は変動しますし、場所や経営状態によっても大きく左右されます。初期的なご相談や、簡易的な株価診断は無料にておこなっておりますので、よりくわしく評価や課題について聞きたい方は、弊社コンサルタントから詳細をご説明いたしますので、お気軽にご相談ください。

株式会社日本M&Aセンター

業界別M&Aレポート編集部

株式会社日本M&Aセンター

業界別M&Aレポート編集部は、日本M&Aセンターの社員によって執筆・運営されています。各業界・業種のM&Aや事業承継に関する情報、トピックをお届けします。

食品製造業界のM&A動向を動画で解説

当社のM&Aコンサルタントが、食品製造業界の特徴とM&Aの動向を分かりやすく解説します。

食品製造業界の
最新M&A事例を解説

近年に実施された食品製造業界のM&A事例を解説とともにご紹介します。

食品製造業(中食・惣菜)×食品製造業(製粉)
日清製粉グループの中食・惣菜事業の成長戦略、トオカツフーズを完全子会社化

譲渡企業
トオカツフーズ株式会社
譲受企業
株式会社日清製粉グループ本社

実行時期:2019年7月 スキーム:株式譲渡/完全子会社化

株式会社日清製粉グループ本社(以下、日清製粉グループ)は、関連会社であるトオカツフーズ株式会社(以下、トオカツフーズ)との株式譲渡契約を締結。その後、2019年7月4日付でトオカツフーズの全株式を株式譲渡の方法により取得。トオカツフーズは、株式会社日清製粉グループ本社の100%子会社となりました。

トオカツフーズ株式会社は、1968年に設立され、総合中食サプライヤーとして、コンビニエンスストアを中心としたデリカ惣菜事業と、宅配ルートを中心とした冷凍惣菜事業を展開していました。
株式会社日清製粉グループ本社は、製粉事業で国内トップシェアをもつ日清製粉と、パスタなど加工食品最大手の日清フーズを基幹企業とする持ち株会社。

日清製粉グループは、中食・惣菜事業を成長分野の一つと位置付け、グループの主力事業に育てるべく取り組んでおり、両社は2012年12月の資本提携を通じて、協力関係を築いてきました。トオカツフーズの完全子会社化により、両社の協力関係をさらに発展させるとともに、中食・惣菜事業及び冷凍食品事業の一層の拡大を目指しています。

M&Aによるシナジー効果

日清製粉グループの100%子会社となったトオカツフーズは、両社が長年培ってきた研究開発力や品質管理体制、製造ノウハウを共有し、『常温・チルド・冷凍』3つの温度帯の商品を世に送り出す、総合中食サプライヤーとして更に成長しています。また、特定チェーンのPB(プライベートブランド)商品を製造するだけでなく、独自のNB(ナショナルブランド)商品として、食事宅配サービス「おまかせ健康三彩」などのブランド商品を立ち上げるなど、食品メーカーとしての活動も幅広く展開しています。

【2022年】会社分割による中間持株会社設立、中食・惣菜事業の競争力強化

日清製粉グループは、成長分野の1つとして育ててきた中食・惣菜事業を、さらにグループの“中核事業”として発展させるため、2022年7月、会社分割により事業を統括する中間持株会社の「株式会社日清製粉デリカフロンティア」を設立しました。
日清製粉グループの中食・惣菜事業は、主に事業会社であるトオカツフーズ株式会社、株式会社ジョイアス・フーズ(2016年子会社化)、イニシオフーズ株式会社が担っています。今後は、日清製粉デリカフロンティアが中心となって3社を統括し、日清製粉グループ各社との人的交流や技術交流などによる経営資源の有効活用を推進。中食・惣菜という成長市場において、競争力強化を図ります。

調味料類製造×調味料類製造(ソース)
ブルドックソース、お好み焼きソースメーカーのサンフーズを子会社化

譲渡企業
サンフーズ株式会社(広島県広島市)
譲受企業
ブルドックソース株式会社(東京都中央区/東証プライム2804)

実行時期:2019年10月 スキーム:株式譲渡/完全子会社化

調味料メーカーのブルドックソース株式会社は2019年10月、広島風お好み焼ソースを主力とするサンフーズ株式会社の全株式を取得し、完全子会社としました。

サンフーズは、ソース類、食酢を中心とした液体調味料の製造を主力とする調味料メーカーです。1916(大正5)年に広島で創業し、全国的な人気を持つ広島風お好み焼き用ソースの「ミツワソース」「ヒガシマルソース」でも知られています。
ブルドックソース株式会社は、東京都中央区に本社を置く調味料メーカーです。1902年(明治38年)に創業し、1905年からソースの製造販売を手がけました。2005年には、イカリソースのブランドを取得し関西地方の市場を強化しました。

東京に本社を構えるブルドックソースは、ソース事業の拡充策として、2005年に大阪のイカリソース株式会社を買収。続いて、2019年に広島のサンフーズをグループに迎え入れることで、「ブルドックソース」「イカリソース」に続く新たなブランドを獲得しました。
東西エリアそれぞれで知名度のあるソースブランドを傘下に入れ、相互の人材・技術交流を通じて、競争力向上に取り組みます。

サッポロHD、「神州一味噌」の宮坂醸造を子会社化

譲渡企業
宮坂醸造株式会社(東京都中野区)
※2017年社名変更:神州一味噌株式会社(長野県諏訪市)
譲受企業
サッポロホールディングス株式会社(東京都渋谷区)

実行時期:2016年9月 スキーム:第三者割当増資/子会社

ビール大手のサッポロホールディングス株式会社は2016年9月、味噌などの製造販売を手がける宮坂醸造株式会社の第三者割当増資を引き受け、子会社化しました。宮坂醸造は宮坂ホールディングス株式会社(長野県諏訪市)の子会社でしたが、出資後の持ち株比率はサッポロホールディングスが 51%、宮坂ホールディングスが 49%となります。 ※同名の酒(真澄)を主業とする宮坂醸造株式会社(長野県諏訪市)は本件の対象外。

宮坂醸造は、「神州一」ブランドを核に味噌・即席味噌汁・フリーズドライ製品の製造販売を手掛けています。味噌事業創業100年の2016年に、サッポログループ傘下入りし、翌2017年、神州一味噌株式会社へ社名変更しました。
サッポロホールディングスは、日本の大手ビールメーカーであるサッポロビール、清涼飲料水メーカーのポッカサッポロフード&ビバレッジなどを傘下に持つ純粋持株会社です。主に酒類事業、食品・飲料事業、外食事業及び不動産事業を展開しています。

子会社化について、サッポロホールディングスは、「神州一ブランド」を持つ宮坂醸造がグループに加わることで、グループ各社とのシナジーを最大限に引き出し、食品領域の拡大を通して、サッポログループ全体の成長戦略を加速させるとしました。
本件M&A後、サッポロホールディングスでは、ビールや飲料に加え、大豆や発酵などの研究に取り組むなど、研究開発の幅を広げています。

飲食店(カフェ)×飲料品メーカー
伊藤園、タリーズを展開するフードエックス・グローブを完全子会社化

譲渡企業
フードエックス・グローブ株式会社(東京都港区)
※2008年社名変更:タリーズコーヒージャパン株式会社
譲受企業
株式会社伊藤園(東京都渋谷区)

実行時期:2006年10月 スキーム:株式譲渡/連結子会社

フードエックス・グローブ株式会社は、子会社であるタリーズコーヒージャパン株式会社を通じて、スペシャルティコーヒーの「タリーズコーヒー」等を日本全国で展開しています。日本法人は、本国とは別法人で1997年に第1号店を銀座にオープン。2005年に日本における「Tully’s」商標権を完全取得しています。
株式会社伊藤園は、茶製品および清涼飲料水メーカーです。緑茶ペットボトル飲料でシェアトップ。1964年に創業し、茶葉を小分けにして梱包するパック茶、世界初の缶入りウーロン茶の開発などの実績があります。

2006年10月24日までに、タリーズジャパンの創業者であるフードエックス・グローブの松田社長から株式4%を取得。同月25日、伊藤園はフードエックス・グローブの発行済み株式36.4%を取得することを発表。伊藤園はフードエックス・グローブの筆頭株主となり、同社は伊藤園の持ち分法適用会社へ。同月26日、株式を追加取得(36.4%から51%)することを発表。フードエックス・グローブは、伊藤園の連結対象子会社となりました。

2007年6月、伊藤園は、連結子会社フードエックス・グローブ株式について、SBIホールディングスの連結子会社SBIキャピタル(東京都港区)から、追加取得することを発表しました。伊藤園はすでにフードエックス・グローブの筆頭株主でしたが、SBIが保有するフードエックス・グローブの全株式(発行済株式の28.96%)を取得することで、株式保有比率を51.49%から80.45%に高め、経営の一体化を進めたい考え。
この後も伊藤園は、フードエックス・グローブの株式を買い進め、最終的に完全買収を実現させています。

2008年4月1日、フードエックス・グローブ株式会社がその子会社のタリーズコーヒージャパン株式会社を吸収合併し、商号を「タリーズコーヒージャパン株式会社」に変更。2023年現在、タリーズコーヒージャパンは伊藤園の完全子会社となっています。

M&Aによるシナジー効果

伊藤園は、コーヒー事業の強化を目的として「タリーズコーヒー」のショップを運営するフードエックス・グローブを2006年に連結子会社化。その翌2007年、タリーズコーヒージャパンと初めて共同開発したチルドカップ製品を発売。2009年には「TULLY’S COFFEE」ブランドから初となる缶コーヒー飲料を発売するなど、両社のシナジーを高めてきました。2022年度にはタリーズボトル缶は過去最高の販売数量を達成。
タリーズコーヒーのカフェ事業では、2006年度の299店舗売上高54億円から、2022年度には766店舗売上高355億円に成長しています。コロナ禍を経て、人流の回復とともに売上も利益も回復傾向にあります。今後も新しい店舗開発に取組むとともに、ロケーションの良い出店を加速。新たに、伊藤園の強みを生かした、“タリーズ&TEA”業態の店舗を出店。紅茶を強化した業態で、同業他社との差別化を図っています。

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日本M&Aセンターが仲介・支援して成約した食品製造業界のM&A案件をご紹介します。
※現在、2025年9月までの実績を掲載しています。次回の更新(2025年10月~12月分)は2026年1月30日以降の予定です。

譲渡・売却企業 譲受け・買収企業
2025年9月 食品製造(関東) 食品製造(関西)
2025年9月 食品製造(北海道・東北) ホテル・旅館(北海道・東北)
2025年9月 食品卸売(関西) 食品製造(関東)
2025年6月 食品製造(関東) 食品製造(関西)
2025年6月 食品製造(関東) 食品製造(東海・北陸)
2025年6月 飲食店(関東) 食品製造(甲信越)
2025年3月 弁当・給食(九州・沖縄) 食品製造・給食(関東)
2025年3月 その他食品加工(北海道・東北) 食品製造(関東)
2025年3月 菓子製造販売(東海・北陸) 食品製造(関西)
2025年3月 味噌・醤油(関西) 生活関連サービス(関西)

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当社の仲介によりM&A・事業承継された食品製造業界の事例を、経営者様へのインタビュー形式でご紹介します。

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