サービス業界のM&Aと事業承継の動向・案件情報2025年最新版

サービス業界のM&A

サービス業界とは、人々のニーズや求めに応じて奉仕をする業種をまとめた言葉で、様々な業種を内包しています。例えばエステや美容室などの接客業、ホテル・旅館などの宿泊業などがイメージしやすいと思います。他にも、鉄道・バス・タクシーなどの旅客業や電気・ガス・水道などのインフラ産業、弁護士や税理士などの士業や保険・保証サービス、銀行などさまざまな業種が含まれます。本記事では、サービス業界のニュースや事例、最新のM&A動向などをご紹介します。

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サービス業界の概要とM&A動向

サービス業界とは、物品の製造ではなく、無形の価値(サービス)を提供する産業全般を指します。具体的には、以下のような業種がサービス業界に含まれます。
ホテル・旅行・外食などの『観光関連サービス』、介護や保育、家事代行などの『生活支援サービス』、学習塾や英会話教室などの『教育・学習支援サービス』、人材派遣・BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)などの『業務支援サービス』、美容・理容・リネン・クリーニングなどの『生活密着型サービス』などに仕分けられます。

サービス業とは、私たちの生活に欠かせないさまざまな業種を含む広い概念です。多くの人が対人接客業をイメージするかもしれませんが、サービス業はこれに留まりません。サービス業は、他者に奉仕し役立つことを目的とした業種を指し、法律問題を解決する弁護士や生活基盤を支えるインフラ産業、宿泊業や飲食業など、多岐にわたります。
サービス業の特徴として、物理的な製品ではなく「役務」を提供する点が挙げられます。例えば、製造業が商品を作るのに対し、サービス業は顧客のニーズに応じて専門的なサービスを提供することが求められます。このように、製造業以外の全ての産業がサービス業に当てはまることになります。日本のサービス産業(第3次産業)のGDP、雇用のシェアは7割程度を占める重要な産業です。少子高齢化・都市集中・ライフスタイルの多様化により、需要は今後も拡大傾向にあります。

日本では、総務省が産業を大きく20種類に分類しており、サービス業は製造業や建設業と並ぶ重要なカテゴリーです。情報通信業、金融業、教育・学習支援業、運送業など、さまざまなサービス業が細分化されており、それぞれ異なる特性を持っています。また、廃棄物処理業や労働者派遣業、政治・経済や宗教団体を含む「サービス業(他に分類されないもの)」もあります。

近年の市場動向と最新のM&A動向

サービス業界に共通する傾向に、人手不足の深刻化があげられます。サービス業は労働集約型の業種が多く、人手不足が大きな課題となっています。特に介護・保育・飲食業などでは、慢性的な人材不足が事業継続に影響を与えています。
また、DX(デジタルトランスフォーメーション)の加速による影響も大きいです。キャッシュレス決済・予約管理アプリ・AIチャットボットなど、デジタル技術の活用が急速に進んでいます。省人化・効率化の手段として、IT導入の重要性が増しています。
後継者不足や競争激化により、中小規模のサービス企業を中心にM&Aが増加しています。規模の経済を求めた再編や、異業種からの参入も活発です。
例えば、人材派遣・BPO分野では、大手によるスケール拡大・専門領域の強化が進行しています。また、ホテル・飲食業界では、コロナ後の需要回復を見込んだ買収や業態転換目的のM&Aが増えています。ほかにも、美容・エステ・フィットネス分野では、フランチャイズ型の成長戦略や、IT・SNS活用企業の買収が注目されています。

サービス業界をとりまく環境

サービス業界は、宿泊・飲食、運輸、情報通信、金融、教育、医療・福祉、専門サービス、レジャー・娯楽など多様な分野を含む広範な産業群で構成され、日本経済において中核的な役割を担っています。総務省統計局や内閣府の統計を用いた分析では、サービス産業(第三次産業)が名目GDPと就業者数のいずれにおいてもおおむね70%前後を占めているとされており、製造業(第二次産業)中心だった産業構造がサービス経済へと移行していることがうかがえます。
一方で、サービス業界は個々の業種・事業モデルごとの収益構造や規制環境の違いが大きく、同じ「サービス」という括りであっても成長性や収益性、人材構造は大きく異なります。そのため、M&Aや事業承継を検討する際には、日本経済全体のマクロトレンドとあわせて、サービス産業全体の動向と主要サブセクターごとの構造を俯瞰的に把握しておくことが重要です。

市場規模・売上高・付加価値の動向

総務省・経済産業省「経済センサス‐活動調査」を用いた経済産業省の分析によると、サービス業(広義)の収入高は2015年時点で約1,113兆円、付加価値額は約198兆円と推計されており、いずれも全産業の約7割程度を占めています。2011年から2015年にかけて収入高は2割強、付加価値額も1割超の増加となっており、長期的にはサービス産業が日本経済の成長をけん引してきたことが分かります。
また、総務省統計局が実施する「サービス産業動向調査(月次)」によれば、2024年12月のサービス産業の売上高は37.0兆円で、前年同月比2.7%増、38か月連続の増加となっています。新型コロナウイルス感染症の影響により2020年前後には一時的な落ち込みが見られましたが、その後は宿泊・飲食、運輸、生活関連サービスなどを中心に回復が進み、名目ベースではコロナ前の水準を上回る局面に入っていることがうかがえます。
同調査では、2022年および2023年に標本の入れ替えが実施されており、売上高や事業従事者数を長期で比較する際にはリンク係数を用いた補正が行われています。そのため、コロナ前後や標本交替前後のトレンドを評価する場合には、調査対象や定義変更の有無を確認しながら、前年比や2019年比など複数の比較軸を組み合わせて解釈することが望ましいです。

M&A観点:
マクロの売上規模が大きく、なおかつコロナ後に需要が戻りつつあるサービス分野では、シェア拡大や新規参入を目的としたM&Aニーズが高まりやすい一方、構造的な需要減少が見込まれる分野では、早期に不採算事業を整理し成長分野へ経営資源を振り向ける「選択と集中」の必要性が高まっています。サービス産業全体の成長トレンドと個別分野の成長・縮小の差を踏まえ、自社がどのポジションにあるのかを把握したうえでM&A戦略を描くことが重要です。

サブセクター構造と伸長領域

サービス業界は、観光関連サービス(宿泊・飲食・旅行代理店・レジャー施設等)、生活支援サービス(介護・保育・家事代行・クリーニング等)、教育・学習支援サービス(学習塾・語学教室・各種スクール等)、業務支援サービス(人材派遣・BPO・コールセンター・広告・コンサルティング等)、生活密着型サービス(美容・理容・リネンサプライ等)、金融・インフラ・専門サービス(金融機関、保険、士業、インフラ事業者等)といった多様なサブセクターに分かれます。
コロナ禍においては、宿泊・飲食・対面型レジャーなど一部業種が大きな打撃を受けた一方、EC・サブスクリプション・オンライン教育・動画配信・クラウドサービス・BPOなど、非対面型・デジタル型サービスは需要を拡大しました。また、少子高齢化や共働き世帯の増加を背景に、介護・保育・家事支援など時間価値を補完するサービスも中長期的に底堅い需要が見込まれます。
こうした新旧サービスの組み合わせやオムニチャネル化が進むなかで、従来は別々と認識されていた業種間の境界が曖昧になりつつあります。例えば、ECと物流、金融と保証サービス、旅行と体験型コンテンツなど、従来別産業と分類されてきた事業間での連携・統合が進行しています。

M&A観点:
成長領域に位置付けられるデジタルサービスやBPO・アウトソーシング、専門人材サービスなどは、スケールメリットや顧客基盤の広さが競争優位となる一方で、新規参入も多い分野です。既存の顧客基盤やノウハウを一括で獲得するために、IT・マーケティング・人材サービスなど隣接セクター間のM&Aが増加する可能性があります。また、生活支援型サービスでは、地域密着型プレーヤーの統合を通じて、広域でのサービスネットワークを構築する動きが想定されます。

事業者数・拠点数・生産性の動向

総務省・経済産業省「経済センサス‐活動調査」によると、サービス業(広義)の企業数は2016年時点で約278万社、事業所数は約390万事業所と推計されており、いずれも全産業の約7割を占めています。2012年と比較すると企業数は約1.7%増、事業所数は約7.9%増となっており、企業・拠点の数の面でもサービス産業への集中が進行していることが分かります。
サービス業では、多店舗展開やフランチャイズチェーンによってスケールメリットを追求するモデルと、専門性・ブランド力・立地などを武器としたニッチ特化型モデルに二極化する傾向があります。一方で、人手不足や賃料上昇、デジタルチャネルへのシフトを背景に、既存店舗の統廃合や業態転換も進んでいます。拠点の統合とネットワーク再編は、収益性向上の観点だけでなく、M&A後のPMI(統合プロセス)においても重要な論点となります。

M&A観点:
企業数・事業所数が多く、オーナー経営が中心のサービス分野では、後継者難や経営環境の変化を背景に、一定数の「承継ニーズ」が継続的に発生する構造があります。他方で、多店舗展開を進めるチェーンやフランチャイズ本部にとっては、既存店舗網の取得や地域ドミナント化を通じてスケールメリットを高める余地があります。買い手にとっては、対象企業単体の収益性だけでなく、自社グループ全体のネットワークやフォーマット戦略の中でどのような役割を果たし得るかを検討することが重要です。

需要側ファクター(人口動態・家計支出・観光・ライフスタイル)

日本では少子高齢化・単身世帯の増加・都市部への人口集中が進んでおり、サービス需要の内容や質に大きな影響を与えています。高齢化の進展により介護・医療・見守りサービスなどの需要が高まる一方、共働き世帯や単身世帯の増加に伴い、家事代行・宅配・外食・コンビニエンスストアなど「時間の節約」を目的としたサービスへの支出も増加してきました。
観光庁および日本政府観光局(JNTO)の統計によると、2024年の訪日外国人旅行者数は約3,687万人と推計され、2019年の水準を上回って過去最高を更新しています。訪日客の消費額も2024年に約8.1兆円とされ、前年から5割超の増加となっています。インバウンド消費は宿泊・飲食・小売・娯楽・交通など幅広いサービスに波及しており、為替動向や国際情勢の影響を受けやすい一方で、地域経済やサービス業にとって重要な成長ドライバーとなっています。
さらに、デジタル化・モバイル化の進展に伴い、消費者は「いつでも・どこでも・自分好みのサービス」をオンライン上で比較・選択・購入できるようになりました。サブスクリプション型サービスやシェアリングエコノミー、オンデマンド配送、オンライン予約・決済など、利便性を高めるサービスに対する期待水準は年々高まっています。

M&A観点:
人口構造やインバウンド・ライフスタイルの変化は、単体企業の努力だけでは対応が難しいケースも多く見られます。地域密着型サービス事業者が観光需要を取り込むために旅行・宿泊・決済事業者と組むケースや、デジタル接点を持つ企業がリアル拠点を取得して顧客接点を拡張するケースなど、異業種連携型のM&A・資本提携の重要性が高まっています。将来の需要シナリオに応じて、どのセグメントにポジションを取りにいくかを事前に整理しておくことがポイントです。

制度・規制・DX環境

サービス業界は、労働法制、個人情報保護法、特定商取引法、景品表示法、金融商品取引法、旅館業法など、多様な法令・ガイドラインの影響を受けます。近年は、長時間労働の是正や同一労働同一賃金のルール整備、パワーハラスメント防止義務化など、労働関連規制が強化されており、シフト管理や人件費コントロールの在り方が見直されています。また、サブスクリプションやオンラインサービスの拡大に伴い、表示義務・解約プロセス・クーリングオフなどの実務対応も複雑化しています。
デジタル化・電子化の観点では、電子帳簿保存法の改正やインボイス制度の導入により、請求・領収書・契約書などの電子管理への移行が加速しています。オンライン本人確認(eKYC)やマイナンバーを活用した身元確認、クラウド型POSや予約・決済システムの普及により、サービス業でもデータドリブン経営への移行が進んでいますが、一方で個人情報保護やサイバーセキュリティ対策の重要性も増しています。

M&A観点:
規制・DX環境の変化は、対応投資の負担能力やノウハウの有無によって企業間格差を生みやすい領域です。大手事業者やITベンダーが中小サービス事業者をグループ化し、統一されたコンプライアンス方針やデジタル基盤の上に乗せていく動きは今後も続くと見込まれます。M&Aの検討にあたっては、対象企業がどの程度規制対応とDX対応を進めているか、買収後にどれだけ追加投資が必要かといった点を丁寧に見極めることが重要です。

供給・ロジスティクス・サプライチェーン

外食・ホテル・リネンサプライ・レジャー施設など、多くのサービス業は原材料・エネルギー・消耗品などの仕入コストの影響を強く受けます。近年は、原油価格の変動や円安、物流費の上昇などにより、光熱費や配送費、備品コストの上昇が収益を圧迫する要因となっています。また、いわゆる「2024年問題」に象徴されるように、トラックドライバーの労働時間規制強化により、配送リードタイムや輸送能力に制約が生じる懸念も指摘されています。
こうした環境下では、複数店舗・複数ブランドを持つ企業ほど、共同配送・センター集約・在庫適正化などサプライチェーン再編の余地が大きくなります。冷凍・冷蔵・危険物など温度管理や安全管理が必要な品目を扱う業態では、コールドチェーンや品質管理体制の整備が不可欠であり、中長期的には物流機能の内製化と外部委託の最適な組み合わせを検討することが求められます。

M&A観点:
物流機能や購買機能を持たない中小サービス事業者にとって、大手チェーンや専門ロジスティクス事業者とのグループ化は、仕入条件や配送品質の改善につながる可能性があります。一方、ロジスティクス事業者側から見ると、安定した荷主・テナントを囲い込むために、サービス事業者の株式取得や共同出資により、垂直統合的なエコシステムを構築する選択肢が考えられます。M&A後は、商品マスタ・配送ルート・在庫管理指標などの統合作業がPMIの重要テーマとなります。

人材・労働市場

サービス業は人手集約度が高く、接客・営業・専門職・バックオフィスなど幅広い職種で人材を必要とします。多くの業種で慢性的な人手不足が続いており、特に外食・宿泊・介護・保育・運輸などでは、有効求人倍率が高い水準で推移しています。有期雇用・パートタイム比率が高い業態では、シフト調整や教育コストも大きな経営課題となっています。
DXや自動化の進展により、タブレットオーダー・セルフレジ・自動チェックインなど、省人化を目的とした投資が進んでいますが、現場では「対人サービスの質」を維持しながら生産性を高めることが求められます。そのためには、接客スキルとデジタルツール活用スキルを両立した人材の育成や、店舗・拠点間でのベストプラクティス共有が重要になります。

M&A観点:
人材確保が難しい地域・業種においては、M&Aを通じて既存の人材プールや教育ノウハウを獲得することが大きなメリットとなります。一方で、M&A後のPMIでは、人事制度・評価制度・賃金水準・シフト運用など「人の面」の統合が最も繊細なプロセスとなります。買収前のデューデリジェンスでは、離職率や人員構成、キーパーソンの把握に加えて、採用チャネルや研修体系の実態を確認し、統合後にどのような人材ポートフォリオを目指すのかを描いておくことが重要です。

ガバナンス・広告・品質・コンプライアンス

サービス業では、景品表示法や各業界の広告ガイドラインに基づき、価格表示やキャンペーン表示、医療・健康・金融など専門性の高い分野における広告表現が厳しくチェックされています。不当表示や誤解を招く表現が発覚した場合、行政処分だけでなく、企業ブランドの毀損や顧客離反につながるリスクがあります。
また、情報セキュリティや個人情報保護も重要なテーマです。会員管理・予約・決済・ポイントなど多数の顧客データを扱うサービス業では、サイバー攻撃や内部不正による情報漏えいリスクへの備えが求められます。内部統制や反贈収賄、独占禁止法・下請法への対応など、ガバナンス全般の水準を引き上げることは、上場企業グループや機関投資家からの信頼を得るうえでも欠かせません。

M&A観点:
ガバナンス・コンプライアンス水準のばらつきは、グループ経営化が進むサービス業において大きなテーマです。買い手企業が持つ内部統制・コンプライアンスのフレームワークを、買収先にどのスピード感で展開していくか、経営陣の役割分担をどう設計するかが重要になります。PMIでは、社内規程や稟議プロセス、権限規程、監査体制などの「見えにくいインフラ」を丁寧に統合しつつ、現場の裁量とスピードを損なわないバランスが求められます。

サービス業界におけるM&Aリレーションの全体像

以上のように、サービス業界ではマクロな市場規模の大きさと多様なサブセクター構造、人口動態・インバウンド・ライフスタイルの変化、規制・DX・人材・ロジスティクスなど多面的な要因が絡み合っています。その結果として、大手による寡占化が進みやすい分野と、地域の中小企業が多数残る分野が混在しており、M&Aや資本提携の形態も多様化しています。

M&A観点:
サービス業界におけるM&Aは、①後継者不在への対応、②成長領域へのシフト・事業ポートフォリオ再編、③スケールメリット・ネットワーク効果の獲得、④デジタル技術や人材など補完的アセットの取得、という4つの目的で整理できます。今後は、単純な規模の拡大だけでなく、顧客データ・ブランド・人材・ノウハウ・システムといった無形資産の統合を前提としたM&Aが増加すると見込まれます。その意味で、M&Aはサービス業における成長戦略と事業承継戦略の双方において、不可欠なオプションになりつつあるといえます。
総務省統計局「サービス産業動向調査(概要・統計表)」
総務省統計局「サービス産業動向調査 年報(2022年報告)」
経済産業省「令和3年度 商取引・サービス環境の適正化に係る事業(サービス産業の動向分析)」
e-Stat「特定サービス産業動態統計調査」
観光庁「訪日外国人旅行者数の推移」
日本政府観光局(JNTO)「2024年訪日外国人旅行者数、2024年12月推計値」
総務省統計局「家計調査」

サービス業界の今後の課題と展望

サービス業界は、日本経済における中核産業として長期的な成長ポテンシャルを有する一方、人件費やエネルギー費の上昇、人口減少による市場縮小、規制・コンプライアンス対応の高度化、デジタル化の加速など、多くの構造的課題に直面しています。ここでは、今後3〜5年程度を念頭に、主要な課題と対応策、その中でのM&Aの活用可能性を整理します。

【総論】3〜5年のシナリオイメージ

サービス産業全体の名目売上高は、足元ではインバウンド需要の回復や物価上昇を背景にプラス成長が続いていますが、人口減少や人手不足が進行するなかで、今後3〜5年を展望すると以下のようなシナリオが想定されます。

ベースシナリオ:
国内需要は人口減少の影響を受けつつも、一人当たりサービス支出の増加やインバウンド需要の回復により、名目売上高は年率1〜2%程度の緩やかなプラス成長を維持するシナリオです。
上振れシナリオ:
インバウンド需要の一段の拡大や、DXによる生産性向上・新サービス創出が想定以上に進み、サービス業の名目売上高が年率2〜3%程度成長するシナリオです。
下振れシナリオ:
世界経済の減速や地政学リスクの顕在化により外需が縮小し、国内でも物価上昇に賃金が追いつかず、実質所得の伸び悩みからサービス支出が抑制されるシナリオです。この場合、業種間・企業間の格差が拡大し、事業再編や再生型M&Aの重要性が高まります。
以下では、主要論点ごとに「課題」「対応策」「M&A観点」を整理します。

利益率圧迫要因(人件費・エネルギー・物流費・賃料 等)

課題:
多くのサービス事業者にとって、人件費・光熱費・物流費・賃料など固定的・半固定的コストの上昇が利益率を圧迫しています。価格転嫁には限界があり、値上げによる顧客離れや利用頻度の減少リスクも無視できません。ポイント還元やクーポン施策の競争が激しい業態では、販促費が想定以上に膨らみ、粗利率の改善が進みにくい状況も見られます。
対応策:
単純な値上げだけでなく、サービスメニューの再設計やバンドル販売、時間帯別・チャネル別の料金設計など、価格戦略の高度化が重要です。また、原価構造を可視化し、①調達単価の引き下げ、②在庫ロスや廃棄ロスの削減、③店舗・拠点ごとの損益管理の精緻化を進めることで、収益性の差を明確にし、構造的に採算が合わない業態・立地からの撤退も含めたポートフォリオ見直しが求められます。
M&A観点:
スケールメリットを活かして仕入条件や物流効率を高められる企業グループにとっては、M&Aはコスト構造の改善余地が大きい店舗・ブランドを取り込む機会となります。一方で、買収後に十分なコストシナジーを実現できない場合、のれん負担だけが残るリスクもあります。デューデリジェンス段階で、店舗ごとの損益・賃料水準・人件費構造・仕入条件を詳細に把握し、PMIで実行すべき統合施策(購買統合、メニュー統一、システム統合等)を具体的に描いておくことが重要です。

ロジスティクス再編とサービス提供モデル

課題:
EC・デリバリー・オンデマンド型サービスの拡大により、ラストワンマイルを含む物流コストとオペレーション負荷が増大しています。ドライバー不足や2024年問題による輸送能力制約の懸念もあり、従来の個社ごとの配送網や店舗単位での発注・在庫管理では、コスト・サービスレベル・環境負荷のバランスを取ることが難しくなりつつあります。
対応策:
幹線輸送の共同化や地域単位での共同配送センターの活用、クロスドッキングによるリードタイム短縮など、ロジスティクスの再編が求められます。冷凍・冷蔵品や高付加価値商材を扱う業態では、GMPやGDP、ISO等の品質基準を意識した温度管理・トレーサビリティの強化が重要です。加えて、需要予測や在庫最適化のためのデータ分析、店舗・センター間の在庫情報のリアルタイム共有も、サービスレベルを維持しながらコストを抑える鍵となります。
M&A観点:
自社単独では十分な規模の物流ネットワークを構築することが難しい企業にとって、ロジスティクスに強みを持つ事業者や同業他社とのM&A・業務提携は有力な選択肢です。物流子会社や3PL事業者をグループ化し、複数ブランド・複数業態で共同配送を行うことで、配送効率とサービス品質の両立を図ることができます。PMIでは、商品マスタや拠点コード、在庫管理ルールなどデータ面の統合が重要なテーマとなります。

人材確保・人材戦略

課題:
人手不足と賃金上昇は、多くのサービス事業者にとって構造的な課題です。特に、夜間・早朝・休日にシフトが集中する業態や、身体的負荷の大きい業務を伴う業態では、採用難度が高く、若年層の定着に苦労するケースが増えています。加えて、外国人材の活用や高齢者雇用の拡大など、多様な人材ポートフォリオのマネジメントも求められています。
対応策:
短期的には、採用チャネルの多様化やリファラル採用の活用、給与・インセンティブ設計の見直しに加え、シフトの柔軟性向上や働きやすい職場環境の整備が重要です。中長期的には、現場マネジャー層を対象としたマネジメント研修や、DX・データ活用スキルを含むリスキリングの仕組みを整えることで、生産性向上と離職率低下の両立を図ることが求められます。
M&A観点:
M&Aを通じて人材・組織ケイパビリティを獲得するケースは増加しています。特定分野の専門人材や優秀なマネジャーを含む組織をグループに迎え入れることで、自社単独では短期間に構築しにくいサービス品質・営業力・教育ノウハウを取り込むことができます。一方で、PMIで人事制度や評価制度の統合を急ぎ過ぎると、キーパーソンの離職リスクが高まります。報酬水準の調整やキャリアパスの提示など、インセンティブ設計を含めた統合戦略が重要です。

デジタル・データ活用とビジネスモデル変革

課題:
顧客はオンライン・オフラインを自在に行き来しながらサービスを利用するようになっており、EC・アプリ・予約サイト・店舗・コールセンターなど、複数チャネルにまたがる顧客体験を一貫して設計する必要があります。しかし、多くのサービス事業者では顧客IDや会員データがシステムごとに分断されており、LTV(生涯価値)やチャーン(解約・離反)の分析、パーソナライズされたマーケティングが十分に行えていないケースが見られます。
対応策:
基幹システム・POS・予約・決済・会員管理など、主要システム間で顧客ID・商品マスタ・店舗マスタを統合し、データ分析の基盤を整えることが第一歩です。そのうえで、需要予測・ダイナミックプライシング・レコメンド・離反予測・不正検知など、AI・機械学習の活用余地を検討します。また、電子帳票・電子請求・電子契約の導入を通じて、バックオフィス業務の効率化とガバナンス強化を同時に進めることも重要です。
M&A観点:
デジタル人材やデータ分析基盤を自前で一から構築するのは時間もコストもかかるため、既にデジタルケイパビリティを持つ企業をM&Aで取り込むアプローチが有効です。マーテック(マーケティングテクノロジー)企業やSaaSベンダー、デジタルエージェンシー、CRM・会員基盤を有する企業との組み合わせにより、サービス事業者の競争力を高めることができます。PMIでは、IT・データ統合のロードマップと、既存システムとの整合性を慎重に設計することが求められます。

ガバナンス・コンプライアンス

課題:
労働法制、個人情報保護、広告規制、景表法、独占禁止法、下請法など、サービス業に関わる法令・ガイドラインは年々高度化・複雑化しています。違反事案が表面化した場合、行政処分や制裁金だけでなく、SNS等を通じたレピュテーションリスクが一気に顕在化する可能性があります。多店舗展開・多ブランド展開を行う企業では、本部の方針が現場まで徹底されているかどうかのモニタリングも課題です。
対応策:
コンプライアンス教育の定期的な実施やホットラインの整備に加え、広告・表示・キャンペーン内容のチェックフローを明確化し、リスクの高い分野については専門家レビューを組み込むことが重要です。また、個人情報保護や情報セキュリティについては、ISMSなどの認証取得や第三者による診断を活用し、ルールと運用が実態に即しているかを検証する必要があります。
M&A観点:
ガバナンス・コンプライアンスの水準は、買い手にとって重要な評価軸です。特に上場企業や金融機関が買い手となる場合、過去の法令違反や内部統制上の問題が重大なディールブレーカーになり得ます。デューデリジェンスでは、顧客対応・広告表現・労務管理・下請取引などの実態を確認し、指摘事項がある場合には、PMIの中でどのように是正していくかを含めたアクションプランを策定することが重要です。

出店・拠点・フォーマット戦略

課題:
人口減少やオンラインサービスの普及により、従来の「出店を続ければ売上が伸びる」というモデルは成り立ちにくくなっています。都心・郊外・地方、ロードサイド・駅前・モール内など、立地ごとに需要構造や競争環境が異なり、フォーマットの選択が収益性を大きく左右します。直営・フランチャイズ(FC)のバランスや、店舗面積・営業時間・提供サービスの幅をどう設計するかも重要なテーマです。
対応策:
商圏データ・来店データ・会員データなどを活用し、立地・フォーマットごとの収益性と成長性を可視化したうえで、スクラップ&ビルドを計画的に進める必要があります。小型店・無人店舗・ポップアップストアなど、新しいフォーマットの試行も有効です。また、FCモデルを活用する場合には、本部と加盟店の利益配分とガバナンスを適切に設計し、チェーン全体のブランド価値を毀損しない仕組みが求められます。
M&A観点:
既存店舗網や許認可、立地権をまとめて取得できる点は、M&Aの大きな魅力です。特に、駅前や観光地など希少性の高い立地や、地域で一定のブランド認知を有するチェーンは、時間をかけて自前出店するよりもM&Aで取得した方が、投資回収期間が短い場合があります。PMIでは、ブランド統合の有無やタイミング、店舗リブランディングの計画、FC本部との契約関係の整理などが重要な検討事項となります。

外需・観光・海外展開

課題:
インバウンド需要はサービス業にとって重要な成長エンジンですが、為替・国際情勢・感染症・自然災害など外部要因の影響を受けやすく、需要の変動幅が大きいという特徴があります。また、越境ECや海外拠点を通じて海外市場を取り込む場合には、言語・決済・物流・規制など、追加の対応コストが発生します。
対応策:
訪日客向けには、多言語対応・キャッシュレス決済・免税販売・Wi-Fi環境整備など、基本的な受入環境の整備に加え、オンライン上での情報発信と口コミ醸成が重要です。海外展開にあたっては、現地パートナーとの提携やフランチャイズモデルの活用、現地法令・税制・労務慣行に関する専門家のサポートを得ることが望まれます。
M&A観点:
海外展開を加速したい日本企業にとって、現地で実績のあるサービス事業者やディストリビューターをM&Aで取得することは、有力な選択肢です。逆に、海外企業による日本市場への参入に際しては、日本での店舗運営や規制対応に強みを持つパートナー企業を買収・提携先として選定するケースも増えています。クロスボーダーM&Aでは、ガバナンス・ブランド・人材の統合に加え、言語・文化のギャップをどう埋めるかがPMIの大きな課題となります。

地域・エコシステム連携

課題:
地域の人口減少や高齢化が進むなかで、単一企業だけでは地域住民のニーズに十分応えきれないケースが増えています。医療・介護・生活支援・交通・金融など、複数のサービスが連携して提供されることが望ましい分野においても、縦割り構造や情報連携の不足が課題となっています。
対応策:
自治体・地場金融機関・商工団体・大学・NPOなどと連携し、地域包括ケアやスマートシティ、地域DXプロジェクトなどに参画することで、地域全体のサービス水準向上と自社の役割の明確化を図ることができます。共同購買・共同配送・共同研修など、複数企業が参加するスキームを通じて、単独では難しい効率化・高度化を実現する取り組みも有効です。
M&A観点:
地域エコシステムの形成においては、必ずしも100%子会社化だけが選択肢ではなく、持分法適用会社やジョイントベンチャー、事業統合など多様なスキームがあり得ます。ただし、地域の中核企業やインフラ事業者が一定のリーダーシップを発揮しなければ、プロジェクトが分散しがちです。M&Aや資本提携を通じて「ハブ」となる企業を明確にし、役割分担と意思決定プロセスを整理することが、地域全体の価値向上につながります。

倒産・再編の地合いと再生型M&A

課題:
コロナ禍からの回復過程において、各種支援策の終了や金利環境の変化を受け、中小サービス事業者の資金繰り負担が高まっています。売上がコロナ前に戻らないままコストだけが上昇した企業や、借入金の返済負担が重くなった企業では、倒産・廃業・事業縮小のリスクが意識されています。信用調査会社や官公庁統計でも、サービス業を中心に小規模事業者の淘汰が進んでいることが報告されています。
対応策:
早期の事業デューデリジェンスと事業計画の見直しを通じて、「再成長が見込める事業」と「縮小・撤退すべき事業」を明確に線引きすることが重要です。金融機関や専門家と連携し、リスケジュールやDIPファイナンス(再生支援融資)、スポンサーの導入などの選択肢を検討しながら、破綻前のタイミングで再生策を検討することが望まれます。
M&A観点:
スポンサー型・再生型M&Aは、サービス業においても重要性が高まっています。買い手にとっては、ブランド・人材・立地といった価値ある資産を適切な条件で取得できる可能性がある一方、既存債務・契約・クレームなどのリスクを慎重に精査する必要があります。事業譲渡や会社分割などのスキーム選択を通じて、健全な事業部分を切り出し、スポンサー企業の経営資源を投入することで、地域に必要なサービスを継続させることができます。

リスク管理・BCP(事業継続計画)

課題:
感染症、自然災害、地政学リスク、サイバー攻撃など、サービス業を取り巻く外部リスクは多様化しています。店舗・拠点の休業やサプライチェーンの寸断、システム障害によるサービス停止などは、直接的な売上減少だけでなく、顧客の信頼低下にもつながります。
対応策:
事業継続計画(BCP)の策定と定期的な見直しに加え、複数拠点・複数サプライヤー・複数チャネルの確保など、リスク分散の仕組みを平時から構築することが重要です。ITシステムについては、クラウド活用やバックアップ体制の整備、多要素認証やゼロトラストセキュリティなどの導入により、障害・攻撃発生時の影響を最小化することが求められます。
M&A観点:
BCPの観点からは、単独企業で全てのリスクに備えるのではなく、グループ内での相互支援やバックアップ体制を構築できるかどうかが重要です。複数地域に拠点を持つ企業や、強固なIT・セキュリティ体制を有する企業をグループ化することで、リスク耐性を高めることができます。M&Aの検討にあたっては、財務指標だけでなく、リスクマネジメント体制やBCPの成熟度を評価軸に加えることが望ましいです。
中小企業庁「中小企業白書2023年版」

サービス業界における
M&A活用のメリット

サービス業界におけるM&A活用のメリットをご紹介します。

譲渡側のメリット
  • 後継者問題を解決できる
  • オーナー社長は個人保証や担保提供から解放され、ハッピーリタイアができる
  • 規模の拡大による交渉力の向上、収益性の改善が見込める
  • 個人保証や担保提供から解放されたうえで役員等として継続してかかわることも可能
  • 事業意欲旺盛な会社との協業により、相互に発展することが可能
  • 適切な会社に譲渡すれば、社員の雇用は保証され、成長機会も増える
譲受け側のメリット
  • 立地のよい店舗を獲得できる
  • 人的リソースを獲得できる
  • 知名度・ブランドの獲得
  • 売上規模・シェアの拡大が見込める
  • 事業多角化・新規事業への参入
  • バリューチェーンの補完・関連事業領域の拡大
  • リスク分散ができる
  • 財務力強化・コストの削減(仕入れコスト、管理部門コスト、物流コスト等)

サービス業界で
M&Aを実行する際のポイント

サービス業界でM&Aを実行する際に注意すべきポイントには、下記のようなものがあります。

  • 人材・従業員の引き継ぎ
  • 顧客との関係性の維持
  • 許認可の確認
  • コンプライアンス・法令遵守のチェック
  • 財務問題
  • 労働問題
  • ガバナンス・管理体制

サービス業は「人」が価値の源泉です。従業員のモチベーションや雇用条件の維持がM&A成功の鍵となります。そのため、人材・従業員の引き継ぎはとても重要です。また、顧客との関係性の維持も大切です。ロイヤルティの高い顧客基盤を持つ企業の場合、買収後もサービス品質の維持・ブランド価値の尊重が重要です。
次に、許認可の確認、法令遵守の確認が重要です。介護・医療・保育などは行政の許認可や法的基準に基づいて運営されているため、M&A時にはこれらの確認が必須です。
そして、財務・法務デューデリジェンスを徹底することが大切です。例えば、売上の安定性(季節要因・顧客集中度)、人件費構造・未払残業代の有無、リース契約や設備の状況、許認可の適正有無や過去の行政指導履歴などをチェックする必要があります。
サービス業界は今後も市場の拡大が見込まれる一方で、人手不足や競争激化といった課題も抱えています。M&Aはこれらの課題を乗り越える有効な手段となります。そのため、戦略的な活用と適切なデューデリジェンスが重要です。

ここでは一般的なポイントをご紹介させていただいておりますが、実際には、個別事情を勘案すると大きく変わります。また、業界によっては独自の規制や商習慣が存在するため、M&Aの仲介を行ううえで、それぞれの業種・業界の特性を正しく理解していることが非常に大切です。
全国に拠点を展開する日本M&Aセンターでは、各業界に精通したコンサルタントが所属しているため、専門性の高いサービスを提供させていただくことが可能です。秘密保持を厳守のうえ、個別相談を無料でお受けしています。M&Aの進め方やポイントなど、気になることがありましたら、お気軽にお問い合わせください。

サービス業界における
M&Aの価格相場

サービス業界のM&Aにおける価格や相場感について説明いたします。まず、中小企業のM&Aには明確な相場が存在せず、最終的な価格は売り手と買い手の交渉によって決まることが特徴です。M&Aの価格は、業種や企業の規模、人材の質、財務状況、ブランド力、将来性、市場環境など、多岐にわたる要素によって変動します。そのため、個別の状況を考慮しながら価格が算出されることになります。
M&Aの価格算定にはいくつかの評価方法がありますが、その中の一つに「取引事例法」があります。取引事例法は、過去のM&A事例の中から、事業内容や地域、財務指標が似ている企業の売買実績を基に価値を評価する方法です。取引事例法において重要なのは、類似の取引事例を参考にすることですが、類似条件を見つけるためには、相当数の事例を蓄積する必要があります。非上場企業のM&Aの多くが非公開情報であることから、他社の実績を参考にすることはハードルが高い方法でもあります。その点、日本M&Aセンターでは、M&Aにおいて成約実績10,000件超、M&A成約件数で世界No.1*のギネス世界記録™に5年連続で認定されるなど、豊富な実績があります。事業内容や地域、財務指標に基づく似た会社の売買事例を選定し、一定のルールに従って公正な価値評価を行うことが可能です。こちらから当社の株価算定シミュレーションを体験することができます。

※ギネス世界記録™:M&Aフィナンシャルアドバイザリー業務の最多取扱い企業 2020~2023年に続き、5年連続でギネス世界記録™に認定

あなたの会社の評価額はいくら?

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あなたの会社が現在どう評価をされるか、ぜひ見てみませんか?

次に、より高い評価を得て会社を高く譲渡売却するためには、よりシナジーのある買い手を見つけることが重要です。M&Aの最終価格は、売り手企業と買い手企業の交渉によって決まるため、買い手が「この会社が欲しい」と思う要素を増やしていく必要があります。例えば、現在、サービス業界の市場では人材不足が全体的な問題となっており、若くて優秀な人材を採用できる利点がある場合、買い手企業にとってM&Aの魅力が増します。
さらに、コンプライアンスやガバナンスに関する問題も重要な要素です。具体的には、顧客とのトラブルが存在しないか、社会保険への適切な加入状況が確認されることが求められます。これらの問題があると、潜在的な費用や負債として見なされ、価格交渉において不利な要因となり得ます。これらの要素が事前にクリアである場合、買い手企業も安心してM&Aを進めることができ、価格交渉もスムーズに進行しやすくなる傾向があります。
最後に、M&Aを成功させるためには、総合的に企業の魅力を高める努力が欠かせません。これは、価格評価への影響だけでなく、交渉の流れにも深く関わる要素であるといえるでしょう。

なお、実際には個別の業種や取引環境等によって価格相場は変動しますし、場所や経営状態によっても大きく左右されます。初期的なご相談や、簡易的な株価診断は無料にておこなっておりますので、よりくわしく評価や課題について聞きたい方は、弊社コンサルタントから詳細をご説明いたしますので、お気軽にご相談ください。

株式会社日本M&Aセンター

業界別M&Aレポート編集部

株式会社日本M&Aセンター

業界別M&Aレポート編集部は、日本M&Aセンターの社員によって執筆・運営されています。各業界・業種のM&Aや事業承継に関する情報、トピックをお届けします。

サービス業界の最新M&A事例を解説

ファンド×美容業
コンヴァノ、美容クリニック運営会社を保有するアセットクリエイトを子会社化

譲渡企業
株式会社アセットクリエイト(東京都港区)
譲受け企業
株式会社コンヴァノ(6574)、虎ノ門キャピタル株式会社(東京都渋谷区)

スキーム:株式譲渡 実行時期:2025年4月3日

M&Aの概要

2025年7月4日、株式会社コンヴァノ(6574)は、連結子会社である虎ノ門キャピタル株式会社が、2025年4月3日に株式会社アセットクリエイトの株式を取得したことを発表しました。

アセットクリエイトと同社の子会社である日本美容・ヘルスケア成長投資1号組合(東京都港区)、株式会社TKBC(東京都千代田区)は、資本金又は出資金がコンヴァノの資本金の額の100分の10以上に相当し、コンヴァノの特定子会社に該当します。

コンヴァノは、ネイルサービスチェーン「ファストネイル」の運営やフランチャイズ管理、商品企画開発などを手掛ける企業。
虎ノ門キャピタルは、コンヴァノの子会社で、投資及びM&Aファイナンシャルアドバイザリーを行っています。
アセットクリエイトは、ファンドの管理・運営を行っています。

コンヴァノは、M&Aを活用し、美容業界および周辺領域のプレイヤーをロールアップすることにより、同業界で売上1兆円超の巨大コングロマリットを確立することを中長期的な事業戦略としています。今回のM&Aは、その第1号案件として実施されました。
アセットクリエイトは、上記ファンドの無限責任組合員であり、美容領域の有望企業を保有していることから、本件取得によりコンヴァノグループの事業シナジーと投資機会の拡大を図ります。

旅館・ホテル×EC業
ベルーナ、仙台の「ホテル瑞鳳」「秋保グランドホテル」を買収

譲渡企業
Karakami HOTELS&RESORTS株式会社(北海道札幌市)
譲受け企業
株式会社ベルーナ(9997)

スキーム:株式譲渡 実行時期:2025年6月30日

M&Aの概要

2025年6月30日、株式会社ベルーナは、Karakami HOTELS&RESORTS株式会社から、リゾートホテル「ホテル瑞鳳」および「秋保グランドホテル」を取得する契約を締結しました。本件の実行は、2025年9月30日を予定しています。

ベルーナは、国内外のシティホテル・リゾートホテルの運営、化粧品健康食品事業、グルメ事業、ナース関連事業等を行なっています。

Karakami HOTELS&RESORTSは、リゾートホテル、ビジネスホテル、貸会議室経営、美術館事業を行っています。

ベルーナは、短期経営計画において、ホテル事業を中心にしたプロパティ事業を、収益性拡大を担うグロース領域と位置付けています。
今回取得する「ホテル瑞鳳」「秋保グランドホテル」は、東北を代表する温泉地である秋保温泉に立地し、高い認知度と安定した集客力を有する大型リゾート施設です。
東北の中心で魅力ある仙台・秋保温泉は今後もお客様が増加していくことが見込まれます。今後は、ベルーナの顧客基盤やホテル運営ノウハウ、人材採用力を活かし、収益性向上とブランド価値の強化を図ります。

施設概要

ホテル瑞鳳(宮城県仙台市)
客室数:本館:117室、櫻離宮:14室

秋保グランドホテル(宮城県仙台市)
客室数:全140室

電気・エネルギー×電気・エネルギー
東京ガス、フィンランドにおける陸上風力発電事業への参画について発表

譲渡企業
Puhuri Oy(フィンランド)
譲受け企業
東京ガス株式会社(9531)、トービー・リニューアブルズ社(デンマーク)

スキーム:事業譲渡、クロスボーダーM&A 発表時期:2025年6月30日

M&Aの概要

東京ガス株式会社は、100%出資子会社のTGノルディック社とデンマークのイービー社で共同出資するトービー・リニューアブルズ社を通じて、Puhuri Oy(以下:プフリ社)より陸上風力発電事業を取得し、本事業に参画したことを公表しました。

東京ガスは、都市ガス事業の最大手。首都圏中心に都市ガスの製造・供給および販売を手掛けています。
トービー・リニューアブルズ社は、デンマークを含む北欧の再生可能エネルギー事業開発・運用・保有を行っています。
プフリ社は、フィンランドの再生可能エネルギー事業者。フィンランドにおける再生可能エネルギー事業開発・運用・保有を行っています。

フィンランドでは、2030年までに最終エネルギー消費に占める再生可能エネルギーの比率を51%に引き上げるという政府目標を掲げており、さらなる再生可能エネルギーの導入が見込まれています。
本事業は、フィンランド北西部に位置するラーヘ市において開発中の「コプサスリー陸上風力発電事業」および「ケトゥンペラ陸上風力発電事業」を対象としており、大型の陸上風力発電機を計12基(総発電容量7.4万kW)設置する計画です。
商業運転開始は、2027年上期に予定しています。
なお、本事業は、トービー・リニューアブルズ社が初めてデンマーク外で開発する再生可能エネルギー事業となります。

サービス業界のM&A動向を動画で解説

当社のM&Aコンサルタントが、サービス業界の特徴とM&Aの動向を分かりやすく解説します。

サービス業界の
M&A仲介実績

日本M&Aセンターが仲介・支援して成約したサービス業界のM&A案件をご紹介します。
※現在、2025年9月までの実績を掲載しています。次回の更新(2025年10月~12月分)は2026年1月30日以降の予定です。

譲渡・売却企業 譲受け・買収企業
2025年9月 労働者派遣(九州・沖縄) 受託開発ソフトウェア(九州・沖縄)
2025年9月 教育(関東) ホテル・旅館(関東)
2025年9月 食品製造(北海道・東北) ホテル・旅館(北海道・東北)
2025年9月 不動産管理・仲介(関西) ホテル・旅館(関東)
2025年9月 ホテル・旅館(東海・北陸) ホテル・旅館(関東)
2025年9月 ホテル・旅館(九州・沖縄) ホテル・旅館(九州・沖縄)
2025年9月 ホテル・旅館(東海・北陸) プラント関連(東海・北陸)
2025年9月 教育(関東) ファンド(関東)
2025年9月 教育(関東) ホテル・旅館(関東)
2025年9月 理美容(北海道・東北) セールスプロモーション(関東)

サービス業界の
最新のM&A事例インタビュー

サービス業界は、接客業・宿泊業・旅客業など多岐にわたり、当社がお手伝いするM&Aの中でも多く見られる業界です。当社がM&Aをお手伝いさせていただいた事例を、経営者様へのインタビュー形式でご紹介します。

M&A事例インタビュー一覧

サービス業界の
セミナー情報

当社では、M&Aや事業承継をはじめ、経営に役立つさまざまセミナーを開催しております。ぜひご参加ください。

M&A・事業承継セミナー一覧

業界別M&A・事業承継の動向

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