レジャー・アミューズメント業界のM&Aと事業承継の動向・案件情報2025年最新版

レジャー・アミューズメント業界のM&A

レジャー・アミューズメント業界に関する最新のM&A動向をご紹介します。 近年の市場推移やトピックス、業界再編にまつわる情報、レジャー・アミューズメント業界の周辺業界を含めたM&A・事業承継の事例をわかりやすく解説しています。 また、日本M&Aセンターが取り扱う最新のM&A案件、当社仲介によりM&Aを実行された経営者様の事例、 各業界の動向やM&A(第三者承継)への理解を深めるセミナー情報などもご紹介します。

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レジャー・アミューズメント業界の概要とM&A動向

レジャー・アミューズメント業界には、テーマパーク、娯楽施設、スポーツレジャー施設、映画館などの主として余暇を過ごすためのサービスや、スポーツチーム、競輪場・競馬場、ゴルフ場などの保有・運営、興行チケットの取次事業などが含まれています。
大手企業の中で例を挙げると、東宝、ぴあ、ラウンドワン、オリエンタルランド、アコーディア・ゴルフ、PGMホールディングス、東京都競馬、鉄人化計画などを本サイトではこの業界に分類しています。
レジャー・アミューズメント業界は、コロナ禍を経て、大きな事業構造改革に迫られている業界のひとつであります。成熟した消費社会では、大量のモノがあふれているため、モノを持つことが必ずしもステイタスではなくなり、経験や体験などのコト消費への関心が高まっています。体験や経験を重視する消費行動が増えており、このようなモノ消費からコト消費への移り変わりは、SNSなどの浸透によってより加速しています。
この業界は、規模の拡大、経営の安定化を目的としたM&Aなど、業界再編が活発化しています。また、経営者の高齢化や人手不足が進む中で、事業承継を目的とするM&Aが増加しています。また、規模の経済によりコスト削減、人材の確保、業務効率化を目指す企業も、M&Aを通じて事業を拡大しようとしています。

レジャー・アミューズメント業界をとりまく環境

レジャー・アミューズメント業界は、テーマパークや遊園地、スポーツレジャー施設、アミューズメント施設、興行・チケット関連事業など、多様なサブセグメントから構成されており、日本人の余暇活動とインバウンド観光の双方に支えられている産業です。新型コロナウイルス感染症による大きな落ち込みを経て、国内外の観光需要の回復と消費マインドの改善を背景に、2023年以降は市場全体として急速な回復局面に入っています。一方で、物価・人件費の上昇や設備更新負担など構造的なコスト要因も顕在化しており、事業ポートフォリオや資本政策を含めた中長期戦略の再構築が求められる局面です。

市場・販売・取引動向

日本全体の余暇関連市場を見ると、公益財団法人日本生産性本部「レジャー白書2024」によれば、2023年の余暇関連市場規模は前年比13.4%増の71兆2,140億円と推計され、コロナ禍前の2019年比では98.5%の水準まで回復したとされています。レジャー白書2025の概要では、2024年の余暇関連市場規模は75兆2,030億円、前年比5.6%増とされており、コロナ禍前の水準を上回る水準まで拡大したと整理されています。
このうち観光・行楽部門は、観光庁が実施する「旅行・観光消費動向調査」とも整合的に拡大しています。同調査の2023年年間値(確報)によると、日本人国内旅行消費額は21兆9,101億円と2019年比0.1%減まで回復し、2024年の年間値確報では25兆1,536億円と2019年比14.7%増・前年比14.8%増で過去最高を更新しています。国内旅行消費の増加は、レジャー・アミューズメント施設への来場者数と周辺消費を底上げする重要な需要要因になっていると考えられます。
レジャー・アミューズメント業界により近い指標として、経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」の長期データ(遊園地・テーマパーク)が挙げられます。同統計に基づく民間分析によれば、遊園地・テーマパークの売上高は2019年に約7,184億円であったのに対し、2020年には約2,638億円と約63%減少し、その後2021年3,055億円、2022年6,000億円と段階的に回復し、2023年には8,441億円と過去最大を更新しています。2023年時点では、売上高ベースで2019年比約17%増と、コロナ前の水準を大きく上回る水準まで回復している一方、入場者数は2019年の7,946万人に対し2023年は7,238万人とまだ約9%程度低い水準とされており、客単価上昇による売上成長という構図が鮮明になっているといえます。
同じ統計に基づく入場者数の推移を見ると、2019年の7,946万人から2020年には3,138万人と約60%減少し、その後2021年3,373万人、2022年5,766万人、2023年7,238万人と回復してきています。2020〜2021年の落ち込みは外出制限や入場制限の影響が色濃く表れた時期であり、2022年以降は感染症法上の位置づけ変更や行動制限緩和を背景に、入場者数・売上高ともに回復している状況です。
インバウンド需要も、レジャー・アミューズメント業界にとって重要なドライバーです。観光庁の「インバウンド消費動向調査 2024年暦年の調査結果(確報)」によると、2024年の訪日外国人旅行消費額は8兆1,257億円と推計され、2023年比53.1%増、2019年比68.8%増と過去最高を更新しています。また、日本政府観光局(JNTO)の統計では、2024年の訪日外客数は3,686万9,900人と推計され、2019年の3,188万人を大きく上回る過去最多となっています。このようなインバウンドの急回復・拡大は、テーマパークや主要観光地近接のレジャー施設を中心に、客数・売上の増加をもたらしています。
レジャー・アミューズメント施設の収益構造を見ると、入場料やアトラクション料金に加え、物販・飲食・有料コンテンツ・イベント・宿泊など複数の収益源を組み合わせることで、1人当たり売上高の向上を図る動きが強まっています。東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドの決算ハイライトでは、2024年3月期の売上高(連結)が6,184億93百万円と過去最高を更新しており、その要因として入園者数の増加に加え、ディズニー・プレミアアクセスや変動価格制による高価格帯チケットの構成比上昇、40周年関連商品の好調などに伴うゲスト1人当たり売上高の増加が挙げられています。主要テーマパークの価格・商品戦略は、業界全体の平均客単価に影響を与えていると考えられます。
取引チャネル面では、オンライン予約・電子チケットやダイナミックプライシングの浸透により、インターネット経由販売の比率が高まっています。公式アプリやオンライン会員制度を通じて顧客IDを統合し、入場履歴・購買履歴・位置情報などを分析してCRMやデジタルマーケティングに活用する動きも進んでいます。これらの仕組みは大手テーマパークを中心に高度化が進んでいますが、中小規模施設では未整備のケースも多く、将来的な競争力に差が生じる可能性があります。
統計上の注意点として、特定サービス産業動態統計調査は月次統計であり季節性の影響が大きいほか、基準改定や調査対象範囲の見直しが行われる場合があります。長期時系列を比較する際には、経済産業省が公開する長期データやe-Stat上の長期時系列表を確認し、定義変更やリンク係数の有無を確認したうえで前後比較を行う必要があります。
M&A観点:市場規模がコロナ前比で拡大し、客単価の構造的な上昇が見込まれることは、レジャー・アミューズメント業界の事業価値を押し上げる要因になります。一方で需要には景気・為替・災害・感染症など外部要因による変動も大きいため、単一施設への依存度が高い企業ではキャッシュフローの変動が大きくなりやすいです。複数施設のポートフォリオ化やインバウンド比率の最適化、オンライン事業との組み合わせなど、リスク分散と成長性を両立するビジネスモデルをM&Aで構築していくことが、買収側・売却側双方にとって重要なテーマです。

事業者・設備・拠点動向

レジャー・アミューズメント業界の事業者構造を見ると、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドやユニバーサル・スタジオ・ジャパン等のメガテーマパークが、市場全体の売上高・入場者数の大きな部分を占めています。一方で全国各地には、中規模のテーマパーク・遊園地、スキー場、ゴルフ場、温浴・健康増進施設、ボウリング場、カラオケボックス、アミューズメント施設、自治体関連の公営・指定管理施設など、多数の中小事業者が存在しています。
オリエンタルランドのIR資料によれば、国内遊園地・レジャーランド市場における同社のシェアは売上高ベースで約54%とされており、国内テーマパーク市場で圧倒的なポジションを有していることが示されています。レジャー施設の集客データやランキングを見ても、東京ディズニーランド/東京ディズニーシー、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン、主要リゾート型施設など上位数施設が入場者数の大半を占める「トップヘビー」な市場構造となっていることがうかがえます。
こうした中、各施設の設備・拠点戦略としては、①既存施設の大型リニューアルやエリア拡張、②IP(知的財産)コンテンツとのタイアップによるテーマ性強化、③ホテルや商業施設との一体開発、④地方の観光資源と組み合わせた広域観光拠点化、といった方向性が目立ちます。特にメガテーマパークでは、数千億円規模の投資を伴う長期開発計画が一般的となっており、資本負担や投資回収期間の長さが経営上の大きなテーマになっています。
一方で、新規参入として中規模のテーマパーク・自然体験型パークなども生まれています。たとえば2025年夏に沖縄県で開業予定の自然アドベンチャーパーク「Junglia」は、旧ゴルフ場跡地を活用した60ヘクタール規模の施設で、約700億円の投資を背景にインバウンド観光ブームの取り込みとアジア展開を目指すプロジェクトと報じられています。このような新設案件は、従来型の遊園地とは異なる体験価値を提供するとともに、既存観光地との相乗効果を狙う動きとして注目されています。 1施設当たりの売上・稼働の観点では、テーマパークのような大型施設は高い固定費を抱える一方、入場者数と客単価の組み合わせによって高い収益性を確保できる構造となっています。他方、地方の中小遊園地や公営レジャー施設などでは、人口減少・競合施設の存在・設備の老朽化により、1施設当たり売上や稼働率が伸び悩むケースも少なくありません。施設の老朽化が進むなか、更新投資や安全対策への対応が重荷となり、後継者難と相まって事業承継・統廃合のニーズが高まりつつあります。

M&A観点:
事業者・設備・拠点の観点からは、①メガテーマパークを核とした周辺施設・地域との連携強化、②老朽化した中小施設の統合・再生、③指定管理事業者の入れ替え・再編など、多様なM&A・パートナーシップの可能性があります。特に、集客力の高い大規模施設と地域密着型の中小施設を組み合わせることで、ドミナント出店や広域ネットワークを構築し、マーケティング・人材・設備投資をグループ全体で最適化する余地が大きいです。

需要側ファクター

人口動態の観点では、総務省統計局「統計からみた我が国の高齢者」によると、2024年時点で日本の65歳以上人口比率は29.3%と過去最高を更新しており、国立社会保障・人口問題研究所の将来推計では2040年に34.8%まで上昇すると見込まれています。高齢化の進展は、ファミリー層向けの遊園地・テーマパーク需要だけでなく、シニア層向けの健康増進施設や温浴施設、ウォーキングイベント、軽スポーツなど、多様なレジャーニーズの拡大・質的変化をもたらしています。 家計サイドの支出を見ると、総務省「家計調査2023年平均結果」によれば、二人以上の世帯の月平均消費支出は293,997円で前年に比べ名目1.1%増となった一方、物価変動を除いた実質では2.6%減少しています。実質所得の目減りが進むなかでも、先述のとおり国内旅行消費額や余暇関連市場はコロナ前水準を上回る水準まで回復しており、「モノ消費」から「コト消費」へのシフトが続く中で、限られた可処分所得の中から体験型・娯楽サービスへの支出を優先する傾向が強まっていると考えられます。 インバウンド需要の観点では、訪日外国人旅行者数・旅行消費額が過去最高水準にあることに加え、観光立国推進基本計画で掲げられた「訪日外国人旅行消費額5兆円の早期達成」といった政策目標を大きく超える水準で実績が積み上がっている点も注目されます。レジャー・アミューズメント業界では、長期滞在型のリゾート施設やテーマパークがインバウンド需要を積極的に取り込む一方、地域の中小施設においては多言語対応やキャッシュレス決済、免税販売などの対応が遅れ、需要取りこぼしが生じているケースもあります。
ライフスタイルの変化としては、在宅勤務・ワーケーションの普及に伴い、平日日中の利用や地方リゾートでの長期滞在中のレジャー需要が新たに生まれています。また、オンラインゲーム・動画配信サービスなどデジタルコンテンツとの競合も強まっており、オフラインのレジャー施設は「そこでしか得られない体験価値」をどのように設計するかが重要になっています。サブスクリプション型の年間パスポートやポイントプログラムなど、継続利用を促す仕組みも重要なマーケティング手法となっています。

M&A観点:
需要構造の変化を踏まえると、①ファミリー層・シニア層・インバウンドなどターゲット別に強みを持つ施設のポートフォリオを組み合わせることで、景気・為替・人口構造変化に対する耐性を高める戦略、②オンラインコンテンツやスポーツ・エンターテインメントとの連携により、「滞在時間の最大化」と「体験価値の差別化」を図る戦略などが有力です。需要の多様化に対応するため、異なるフォーマット・地域・客層を持つ事業者同士のM&Aや提携が今後も増加する可能性が高いです。

制度・規制・DX

レジャー・アミューズメント業界には、事業内容に応じて多様な法令・規制が適用されます。風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(いわゆる風営法)は、キャバレーやナイトクラブだけでなく、一部の遊技施設や深夜営業を行う飲食・アミューズメント施設なども対象とし、許可制や営業時間・照度・騒音などに関する規制を通じて営業の適正化・健全化を図っています。このほか、建築基準法・消防法・労働安全衛生法など、安全確保に関する規制も重要です。 興行・チケット販売に関しては、「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律(チケット不正転売禁止法)」が2019年に施行されており、興行主の同意なく高額転売を行う行為を禁止するとともに、興行チケットの適正な流通を確保することを目的としています。この法律に対応するため、多くのレジャー施設・興行主が本人確認、電子チケット、公式リセールサービスの導入などを進めています。
観光政策面では、観光立国推進基本計画(第4次)が2023年3月に閣議決定され、持続可能な観光、消費額拡大、地方誘客促進をキーワードに、訪日外国人旅行消費額・一人当たり消費額・地方部宿泊数などの指標に数値目標が設定されています。この計画に沿って、インバウンドの地方分散やオーバーツーリズム対策、観光DX・スマートシティ化などが進められており、レジャー・アミューズメント施設にも、地域連携や環境・社会への配慮を求める政策的なプレッシャーが高まっています。
DX(デジタルトランスフォーメーション)の観点では、電子チケット・モバイルオーダー・キャッシュレス決済・顔認証入場などの導入により、入場・決済・顧客動線のデータ化が進んでいます。一方で、個人情報保護法やクッキー規制、越境データ移転に関する国際的なルールにも留意が必要であり、データ利活用とプライバシー保護のバランスをどう取るかが経営課題となっています。

M&A観点:
制度・規制・DXの領域では、①風営法や安全関連法令への対応コストをグループ内で分散・標準化すること、②高度なチケット・予約・CRMシステムを自社で開発・保守するのではなく、専門事業者の買収・資本提携を通じて一体化すること、③個人情報・サイバーセキュリティ対応をグループ全体で統合的に行うこと、などが重要です。規制対応力やDXノウハウの強い企業を核とした再編は、規模の経済だけでなくコンプライアンス・デジタル面での競争優位をもたらし得ます。

供給・ロジスティクス/サプライチェーン

レジャー・アミューズメント施設の供給側では、建設・改修コストやエネルギー価格、遊具・設備・飲食・物販の仕入価格の動向が収益性に大きな影響を与えます。近年の資材・人件費・エネルギー価格の上昇は、特に大型テーマパークの新築・大規模リニューアルや、スキー場のリフト・造雪装置更新、温浴施設のボイラー更新など、設備集約度の高い事業にとって大きな負担となっています。
飲食・物販・グッズ販売のサプライチェーンでは、需要の季節性やイベント・キャンペーンに応じて、在庫水準や補充頻度をきめ細かく調整する必要があります。人気コンテンツとのコラボレーショングッズや限定商品は、高い利益率を生む一方で、需要予測が難しく在庫リスクも大きくなりがちです。共同配送・共同購買、物流拠点の再編、在庫管理システムの高度化などにより、サプライチェーン全体の効率化とリスク低減を図ることが求められています。
大型イベントやテーマパーク周辺では、特定期間に交通需要が集中し、道路・公共交通機関の混雑や駐車場逼迫が課題となります。来場者の移動手段として、鉄道会社やバス会社との連携による直通便・シャトルバスの運行、パーク&ライド方式の導入など、地域全体でのモビリティマネジメントが重要になっています。

M&A観点:
供給・ロジスティクスの観点からは、①飲食・物販・グッズの調達・物流を担う企業との垂直統合、②複数施設間での共同購買・共同配送を前提としたグループ再編、③エネルギー管理や施設管理(FM)を専門とする事業者の取り込みなどが検討余地の大きいテーマです。複数業態・複数地域にまたがるレジャー施設グループを形成することで、原価管理や在庫管理の高度化を通じた利益率向上が期待できます。

人材

レジャー・アミューズメント業界における人材は、運営・接客スタッフ、エンターテイナー、イベント企画・運営、設備保守・安全管理、マーケティング・デジタル担当など多岐にわたります。人口減少とサービス業全般での人手不足が進む中で、特に土日・祝日・夜間・繁忙期に集中する労働需要に対応することが難しくなっているほか、外国人観光客対応に必要な語学・異文化対応スキルを持つ人材の確保も課題となっています。
高齢化の進展により、シニア層の就労機会としてレジャー施設での就業が増える可能性がある一方、体力的な負担の大きい職種や夜間シフトを伴う業務ではミスマッチも生じやすくなります。また、接客・ホスピタリティの品質維持には、研修・OJT・マニュアル整備だけでなく、現場の裁量と顧客理解を高める仕組みも重要です。
さらに、DX・データ活用・デジタルマーケティングの重要性が高まる中で、データサイエンティストやデジタルマーケター、システムエンジニアなどの専門人材を内部に抱えることができるかどうかが、施設ごとの競争力を左右しつつあります。大手グループではIT部門やデジタル戦略部門を設けて専門人材を集約する動きが広がる一方、中小事業者では社外パートナーへの依存度が高い状況です。

M&A観点:
人材面では、①教育・研修体制が整った企業やホスピタリティ人材・デジタル人材に強みを持つ企業の獲得、②グループ内での人材シェアリングやキャリアパスの多様化による採用・定着力の向上、③PMIにおける人事制度・評価制度・企業文化の統合といったテーマが重要です。人材獲得競争が激化する中で、単に施設やブランドを取得するだけでなく、「人材プールとしての魅力」をどう高めるかが、M&A戦略上の大きな論点になります。

ガバナンス/広告・品質/コンプライアンス

ガバナンス・コンプライアンスの観点では、レジャー・アミューズメント施設においても、景品表示法に基づく表示規制、個人情報保護法に基づく顧客データの管理、労働基準法や労働安全衛生法に基づく労務管理など、多岐にわたる法令遵守が求められます。広告やキャンペーンにおいては、過大な宣伝や誤認を招く表示を避けるとともに、安全性や年齢制限などの重要情報を適切に表示する必要があります。
安全・品質面では、アトラクションの事故・トラブルや施設内での怪我・疾病に対する予防・対応体制が重要です。定期点検・保守記録の管理、ヒヤリハットを含むインシデント情報の共有、緊急時の避難誘導訓練などを通じて、安全文化を組織に根付かせる必要があります。特に大型テーマパークにおける事故・トラブルはメディア露出が大きく、レピュテーションリスクにつながりやすいため、ガバナンス上の重要テーマとなります。
サイバー・情報セキュリティの観点では、オンラインチケット販売サイトや会員管理システムへの不正アクセス、決済情報・個人情報の漏えいリスクに備え、アクセス制御・暗号化・脆弱性診断・ログ監視などを継続的に行う必要があります。グループ内外の委託先・パートナーを含めたサプライチェーン全体でのセキュリティ水準の確保が求められます。

M&A観点:
ガバナンス・コンプライアンスの観点からは、①デューデリジェンスにおいて安全・労務・個人情報・広告表示などのリスクを丁寧に把握・評価すること、②PMIの初期段階でコンプライアンス体制・内部統制・情報セキュリティポリシーを統一・標準化することが重要です。ガバナンス水準の高い企業をプラットフォームとし、そこに中小事業者を順次統合していくモデルは、業界全体の信頼性向上にも資する再編シナリオといえます。

M&Aリレーション

レジャー・アミューズメント業界のM&Aリレーションとしては、①メガテーマパークや大手レジャー企業を中心とする業界再編、②後継者難に直面する地方遊園地・スキー場・ゴルフ場・温浴施設などの事業承継案件、③チケット販売・ITプラットフォーム・コンテンツホルダーなど周辺業種との垂直・水平統合が挙げられます。
大手による統合・再編では、スケールメリットを活かした共同仕入・共同広告・人材交流・IT投資の効率化が期待されます。一方、地域密着型施設の承継では、地域住民や自治体との関係性、観光振興・雇用維持といった観点も重視されるため、財務面だけでなく「地域に対する責任あるオーナーシップ」が求められます。

M&A観点:
M&Aは、単なる撤退・整理の手段ではなく、①成長戦略として新たなフォーマットや地域に参入する手段、②人材・ノウハウ・ブランド・IT基盤など補完的なアセットを獲得する手段、③事業承継や事業再生を通じて地域のレジャーインフラを維持・再生する手段として機能し得ます。レジャー・アミューズメント業界の特性を踏まえると、財務・税務だけでなく、安全・労務・コンプライアンス・地域との関係性など多面的な視点からM&A戦略を組み立てることが重要です。
経済産業省「特定サービス産業動態統計調査 長期データ(遊園地・テーマパーク)」
総務省統計局「特定サービス産業動態統計調査 長期時系列表13 遊園地・テーマパーク」
公益財団法人日本生産性本部 余暇創研「レジャー白書2024 概要」
公益財団法人日本生産性本部 余暇創研「レジャー白書2025 概要」
観光庁「インバウンド消費動向調査 2024年暦年の調査結果(確報)の概要」
観光庁「訪日外国人の消費動向」
観光庁「旅行・観光消費動向調査 2023年年間値(確報)」
観光庁「旅行・観光消費動向調査 2024年年間値(確報)」
日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数(2024年12月および年間推計値)」
総務省統計局「統計からみた我が国の高齢者(2024年)」
総務省統計局「家計調査報告〔家計収支編〕2023年(令和5年)平均結果の概要」
国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計) 結果の概要」
オリエンタルランド「業績ハイライト」
オリエンタルランド「市場環境|初めてのOLCグループ」
CareerTicket「テーマパーク業界の現状と今後の動向は?将来性や就職活動のポイントを解説」
警察庁「風営適正化法の概要」
文化庁「チケット不正転売禁止法」
政府広報オンライン「チケットの高額転売は禁止です!チケット不正転売禁止法」
観光庁「観光立国推進基本計画」
観光庁「『観光立国推進基本計画』を閣議決定」
ロイター「New Japan theme park aims to tap tourism boom, become springboard to Asian markets」

レジャー・アミューズメント業界の今後の課題と展望

レジャー・アミューズメント業界の今後3~5年程度を展望すると、コロナ禍からの回復局面を経て、「成長機会をどう取り込むか」と同時に、「コスト上昇・人材不足・規制対応などの構造的課題にどう対応するか」が経営上の大きなテーマになります。ここでは、特定サービス産業動態統計調査における2023年の売上高8,441億円・入場者数7,238万人という水準を出発点とし、2028年前後までの簡易シナリオを検討します。
ベースシナリオでは、国内旅行需要とインバウンド需要が現状水準から緩やかに拡大すると仮定し、遊園地・テーマパークの売上高は年平均2~3%程度の成長を続け、2028年前後には9,000~9,500億円程度のレンジに達する可能性があると想定します。この場合、入場者数は7,300~7,500万人程度で横ばいから緩やかな増加となり、客単価の上昇が売上成長の主因になると考えられます。
上振れシナリオでは、円安の継続やコンテンツ投資の成功、新規テーマパーク開業などによりインバウンド需要がさらに拡大し、年平均3~4%程度の売上成長を前提とすると、2028年前後には売上高1兆円~1兆1,000億円、入場者数7,600~8,000万人といったレンジも視野に入ります。一方、下振れシナリオでは、景気後退・為替反転・災害・感染症再拡大などにより需要が落ち込み、売上高が7,000~7,500億円、入場者数6,500~6,800万人程度へと調整する可能性も想定されます。
以下では、主な論点ごとにレジャー・アミューズメント業界の課題、対応策、M&A観点の順で整理します。

M&Aリレーション

レジャー・アミューズメント業界のM&Aリレーションとしては、①メガテーマパークや大手レジャー企業を中心とする業界再編、②後継者難に直面する地方遊園地・スキー場・ゴルフ場・温浴施設などの事業承継案件、③チケット販売・ITプラットフォーム・コンテンツホルダーなど周辺業種との垂直・水平統合が挙げられます。
大手による統合・再編では、スケールメリットを活かした共同仕入・共同広告・人材交流・IT投資の効率化が期待されます。一方、地域密着型施設の承継では、地域住民や自治体との関係性、観光振興・雇用維持といった観点も重視されるため、財務面だけでなく「地域に対する責任あるオーナーシップ」が求められます。

課題:
人件費の上昇、エネルギーコストの高止まり、原材料・仕入価格の上昇、物流費や賃料の上昇などにより、レジャー・アミューズメント施設の利益率は中長期的に圧迫される可能性があります。特に、労働集約度・設備集約度の高いビジネスモデルでは、最低賃金の引き上げや電力料金の上昇が固定費の増加として影響しやすく、価格転嫁の難しい地域・フォーマットでは営業利益率の低下が顕著になり得ます。
対応策:
収益性を維持・向上させるためには、①ダイナミックプライシングやプレミアムチケットの導入による価格戦略の高度化、②物販・飲食・有料コンテンツの高付加価値化による客単価向上、③バックオフィス・共通機能の集約や省人化を通じたコスト構造改革、④設備更新の優先順位付けと投資回収シミュレーションの高度化などが求められます。また、ピーク時とオフピーク時でサービス水準や開放エリアを柔軟に調整し、稼働率・生産性を最適化する運営も有効です。
M&A観点:
利益率が高く、価格決定力や付加価値の高いフォーマットを持つ企業を取得することは、グループ全体の収益性向上に寄与します。また、複数施設のバックオフィス・共通機能(人事・経理・IT・マーケティングなど)を統合し、規模の経済を発揮することで、利益率圧迫要因に対抗することが可能です。買収検討にあたっては、「単体の利益水準」だけでなく、「統合後のコストシナジー実現ポテンシャル」を定量的に評価することが重要です。

ロジスティクス再編と在庫・品質管理

課題:
物販・飲食・グッズ販売を伴うレジャー・アミューズメント施設では、多品種・少量・短サイクルの在庫を扱うことが多く、特にキャラクターグッズや季節商品などは在庫リスクが高くなります。施設ごと・店舗ごとに発注・在庫管理を行っている場合、需要予測の精度が低く、欠品と在庫過多が同時に発生しやすい構造となります。危険物や要冷蔵品、賞味期限の短い商品などでは、品質管理や廃棄ロスの問題も顕在化しやすいです。
対応策:
幹線・地域レベルでの共同配送センターを活用し、複数施設・複数店舗を束ねた在庫管理・需給調整を行うことで、在庫水準の適正化と物流コストの削減が期待できます。また、POSデータ・来場者予測・天候情報などを活用した需要予測モデルを構築し、発注ロット・配送頻度・品揃えを動的に最適化する仕組みが有効です。危険物・冷蔵品など品質管理が重要な商品については、GxPやISO、HACCPなどの外部認証・ガイドラインを参考に、標準化された管理プロセスを整備することが求められます。
M&A観点:
ロジスティクスに強みを持つ事業者や、グッズ・食品の企画・製造・在庫管理・配送を一気通貫で行う企業をグループ内に取り込むことで、複数施設にまたがるサプライチェーンを統合的に最適化できる余地が大きくなります。また、同一エリアで複数施設を運営するドミナント戦略を取る場合、共同配送・共同購買を前提とした拠点配置をM&A戦略と連動させることにより、統合効果を最大化しやすくなります。

人材確保・定着とスキルミックス

課題:
人口減少と高齢化に伴い、サービス産業全般で人手不足が深刻化しており、レジャー・アミューズメント業界でも、繁忙期・土日祝日のシフトを中心に人員確保が難しくなっています。最低賃金の引き上げや、働き方改革関連法による時間外労働の上限制約などにより、従来の長時間労働に依存した運営モデルは見直しが必須となっています。
対応策:
採用面では、地域の学生・主婦・シニア・外国人労働者など多様な人材をターゲットにした採用チャネルの開拓と、柔軟なシフト設計が重要です。定着面では、評価・処遇制度の透明性向上、キャリアパスの多様化、教育・研修の体系化により、従業員満足度とエンゲージメントを高めることが求められます。また、DX・自動化技術(セルフレジ、モバイルオーダー、行列削減ツールなど)を活用することで、付加価値の低い業務を減らし、従業員がホスピタリティや安全管理など高付加価値業務に集中できる環境づくりも重要です。
M&A観点:
人材基盤の強い企業(教育・研修ノウハウを持つ企業や、従業員の定着率が高い企業)をプラットフォームとして獲得し、そのノウハウ・制度をグループ全体に展開することは、PMIの重要なテーマです。また、特定の専門スキル(デジタルマーケティング、設備保守、エンターテインメント企画など)に強みを持つ企業とのM&A・資本提携により、グループ全体のスキルミックスを強化する戦略も考えられます。

デジタル/データ活用

課題:
多くのレジャー・アミューズメント施設では、チケット販売・入場・アトラクション利用・物販・飲食などが分断されたシステムで管理されており、顧客単位での統合的なデータ分析が十分には進んでいません。また、外部の旅行代理店・OTA・プラットフォーム経由の販売比率が高い場合、自社で保有できる顧客データが限定的になり、CRMやLTV最大化の取り組みが制約を受けることもあります。
対応策:
顧客IDの統合(会員ID・チケットID・決済ID・アトラクション利用履歴等の統合)を進め、DWH(データウェアハウス)やCDP(カスタマーデータプラットフォーム)を構築することで、顧客セグメント別の来場頻度・客単価・チャーン率などを可視化し、パーソナライズされたオファーやダイナミックプライシング、需要予測に活用することが可能になります。AIを活用した来場予測・人員配置最適化・在庫最適化・不正検知なども、収益性と顧客満足度の両面で効果が期待できます。
M&A観点:
自社でデータ基盤・AI活用を一から構築するのではなく、テーマパーク・レジャー施設向けのプラットフォームやCRMソリューションを提供する企業とのM&A・資本業務提携により、短期間でデジタル能力を補完することができます。PMIにおいては、マスタデータ統合(顧客・チケット・商品・ポイントなど)とシステム統合のロードマップを早期に策定し、段階的に統合を進めることが成功の鍵となります。

ガバナンス/コンプライアンス

課題:
安全管理・労務管理・個人情報保護・広告表示など、レジャー・アミューズメント業界のコンプライアンス領域は幅広く、施設ごとの規模やオペレーションに応じた統制が求められます。人員不足や属人的運営により、マニュアル整備や教育が不十分なまま運営が継続されると、事故・クレーム・行政処分などのリスクが高まります。また、チケット不正転売禁止法への対応やリセールサービスの設計など、比較的新しい規制への対応も必要となっています。
対応策:
コンプライアンス体制の整備として、①本社・統括会社にコンプライアンス部門を設置し、グループ全体の方針・マニュアル・教育プログラムを統一すること、②安全管理・労務管理・広告審査・個人情報保護など主要リスクごとに責任者を明確化すること、③内部通報制度やリスク管理委員会を通じて、現場からのリスク情報を早期に把握し、是正措置につなげることが有効です。
M&A観点:
M&Aのデューデリジェンスでは、財務・税務に加え、安全・労務・コンプライアンス面のリスクレビューが非常に重要です。買収後に重大なコンプライアンス問題が発覚すると、ブランド毀損や追加投資が必要となるだけでなく、行政処分や訴訟などに発展する可能性もあります。PMIでは、早期に行動規範・内部統制・リスク管理プロセスを統合し、グループ全体として一貫したガバナンス水準を確保することが求められます。

出店/拠点/フォーマット戦略

課題:
大型テーマパーク、都市型小型施設、地方観光地に立地するリゾート施設、フランチャイズ型のアミューズメント施設など、フォーマットごとに投資額・回収期間・需要特性・リスクプロファイルが異なります。人口減少や消費者行動の変化により、従来の「郊外大規模施設+マイカー来場」モデルだけでは需要の維持が難しい地域も増えており、新規出店や既存拠点のリロケーション・リサイズが課題となっています。
対応策:
立地選定においては、従来の人口・所得・交通アクセスに加え、インバウンド動線、周辺観光資源、競合施設との距離、EC・オンラインコンテンツとの補完性など、多面的な評価軸でポートフォリオを設計することが重要です。試験出店・ポップアップ型施設・期間限定イベントなど、小規模投資で市場性を検証し、その結果を踏まえて大型投資を行う「ステップ型投資」の考え方も有効です。また、遊休不動産や複合商業施設との協業により、初期投資を抑えつつ集客力の高い場所に出店するスキームも検討余地があります。
M&A観点:
既に特定エリアで強いブランド・拠点ネットワークを持つ企業を買収することで、新規出店に比べて短期間で市場参入・シェア獲得が可能になります。複数フォーマットを持つグループでは、「都心小型施設+郊外大型施設+地方リゾート」といった補完的なポートフォリオをM&Aで構築し、季節・曜日・時間帯ごとの需要を平準化する戦略も考えられます。

外需/観光・越境需要

課題:
インバウンド需要の急拡大はレジャー・アミューズメント業界にとって大きな追い風である一方、特定の国・地域や為替水準への依存が高まりすぎると、地政学リスク・感染症・為替変動などによる需要の急減に脆弱になります。また、多言語対応・決済手段の多様化・免税手続きなど、インバウンド対応コストも無視できない水準となりつつあります。
対応策:
外需と内需のバランスを意識した収益構造の構築が重要です。インバウンド需要が強い時期には価格戦略や滞在時間を踏まえた高付加価値メニューの提供により収益性を高めつつ、国内需要の底上げ策(地域限定割引、リピーター向け施策、オフシーズンイベント等)を通じて、需要変動リスクを平準化することが求められます。また、決済手段については、国・地域ごとに利用率の高いブランドやモバイル決済に対応しつつ、為替変動リスクへのヘッジも検討が必要です。
M&A観点:
インバウンド集客に強みを持つ企業(インバウンド専門旅行会社、訪日客向けメディア、越境EC・チケットプラットフォームなど)とのM&A・資本提携により、海外マーケティング・送客力を一気に獲得することができます。また、複数の観光地域・都市に拠点を持つレジャー企業を統合することで、海外旅行会社とのパッケージツアー造成やマルチデスティネーションの提案力を高めることが可能です。

地域/エコシステム連携

課題:
単独のテーマパークや遊園地だけでは、滞在日数・滞在時間・消費単価に限界があり、特に地方に立地する施設では、アクセスや周辺観光資源との連携が不十分な場合、集客に苦戦しやすい構造があります。自治体側も観光地の分散やオーバーツーリズム、インフラ負荷の問題に直面しており、個別施設と地域全体の利害調整が難しいケースもあります。
対応策:
DMO(観光地域づくり法人)や自治体、交通事業者、宿泊施設、周辺観光施設との連携により、「エリア全体での周遊ルート設計」「共通チケット・エリアパスの発行」「共同マーケティング・ブランド発信」などを行うことで、滞在時間と消費額の増加が期待できます。観光庁の観光立国推進基本計画でも、持続可能な観光地域づくり戦略の一環として、こうした地域連携の強化が位置付けられています。
M&A観点:
地域内で複数のレジャー施設・宿泊施設・交通事業者をグループ化し、エリアマネジメントを一体的に行うスキームは、投資回収の見通しを立てやすくすると同時に、地域全体の魅力度向上につながります。M&Aを通じてエコシステム内のキープレイヤーを束ね、自治体やDMOと連携した「地域版プラットフォーム」を構築することは、今後の有力な戦略オプションの一つです。

倒産/再編の地合い

課題:
コロナ禍の影響を受けた中小レジャー施設の中には、金融支援や補助金により急場をしのいだものの、設備更新投資や人件費の上昇に耐えられず、今後数年で資金繰りが厳しくなる可能性がある事業者も存在します。信用調査会社のレポートでも、観光・宿泊・飲食と同様にレジャー関連業種の倒産・休廃業が増加傾向にあることが指摘されています。
対応策:
金融機関との対話を通じた返済条件の見直しや、事業再生・再編スキームの活用により、持続可能な事業構造へ転換することが重要です。採算性の低い事業・施設の整理、収益力の高い施設・サービスへの集中、資本注入・DIPファイナンスなど、状況に応じた手段を組み合わせる必要があります。
M&A観点:
倒産・再編の地合いが高まる局面では、スポンサー型M&Aや事業再生型M&Aの機会が増えます。レジャー・アミューズメント業界特有の資産(土地・建物・施設設備・ブランド・人材)を適切に評価し、必要な投資と構造改革のロードマップを描けるスポンサーが、地域のレジャーインフラを守りながらリターンを確保できる可能性があります。日本M&Aセンターのような専門アドバイザーが、地域金融機関・自治体と連携して再編を支援するケースも増えると考えられます。

リスク管理・BCP

課題:
レジャー・アミューズメント業界は、自然災害(地震・台風・豪雨)、感染症、事故・トラブル、サイバー攻撃、規制変更、為替変動など、多様なリスクにさらされています。特にテーマパークや大型イベントは「密」になりやすい業態であり、感染症や安全事故が発生した場合の影響は極めて大きくなります。また、気候変動に伴う猛暑・豪雨・降雪量の変化は、屋外施設やスキー場などの利用パターンに直接影響を与えます。
対応策:
BCP(事業継続計画)として、①災害・感染症発生時の段階的な営業制限・休業・再開のシナリオ、②代替売上源(オンラインコンテンツ、EC、バーチャルイベント等)の検討、③保険・公的支援制度の活用、④重要設備・ITシステムの冗長化・バックアップなどをあらかじめ設計しておくことが必要です。また、サイバーセキュリティ面では、定期的な訓練とインシデント対応手順の整備が欠かせません。
M&A観点:
BCP体制が整った企業や、多拠点展開によりリスク分散が図られている企業を中核としてグループを形成することで、特定地域・施設に起因するリスクの影響を相対的に低減することができます。M&Aの評価においても、単年度の収益力だけでなく、「危機対応能力」「BCPの成熟度」を重要な評価軸に加えることが、今後の業界再編では一層重要になると考えられます。
経済産業省「特定サービス産業動態統計調査 長期データ(遊園地・テーマパーク)」
総務省統計局「特定サービス産業動態統計調査 長期時系列表13 遊園地・テーマパーク」
CareerTicket「テーマパーク業界の現状と今後の動向は?将来性や就職活動のポイントを解説」
観光庁「インバウンド消費動向調査 2024年暦年の調査結果(確報)の概要」
観光庁「旅行・観光消費動向調査 2023年年間値(確報)」
観光庁「旅行・観光消費動向調査 2024年年間値(確報)」
観光庁「観光立国推進基本計画」
観光庁「『観光立国推進基本計画』を閣議決定」
警察庁「風営適正化法の概要」
文化庁「チケット不正転売禁止法」
政府広報オンライン「チケットの高額転売は禁止です!チケット不正転売禁止法」

レジャー・アミューズメント業界における
M&A活用のメリット

レジャー・アミューズメント業界におけるM&A活用のメリットをご紹介します。

譲渡側のメリット
  • 後継者問題を解決できる
  • オーナー社長は個人保証や担保提供から解放され、ハッピーリタイアができる
  • 個人保証や担保提供から解放されたうえで役員等として継続してかかわることも可能
  • 事業意欲旺盛な会社との協業により、相互に発展することが可能
  • 適切な会社に譲渡すれば、社員の雇用は保証され、成長機会も増える
譲受け側のメリット
  • 立地のよい土地・建物を獲得できる
  • 知名度・ブランドの獲得
  • 売上規模・シェアの拡大が見込める
  • 事業多角化・新規事業への参入
  • 人的リソースを獲得できる
  • リスク分散ができる
  • 財務力強化・コストの削減(仕入れコスト、管理部門コスト、物流コスト等)

レジャー・アミューズメント業界で
M&Aを実行する際のポイント

レジャー・アミューズメント業界でM&Aを実行する際に注意すべきポイントには、下記のようなものがあります。

  • 取引先等との関係性
  • 人的リソース管理
  • 財務問題
  • 労働問題
  • コンプライアンス
  • ガバナンス・管理体制

ここでは一般的なポイントをご紹介させていただいておりますが、実際には、個別事情を勘案すると大きく変わります。また、業界によっては独自の規制や商習慣が存在するため、M&Aの仲介を行ううえで、それぞれの業種・業界の特性を正しく理解していることが非常に大切です。日本M&Aセンターでは各業界に精通したコンサルタントが所属しているため、専門性の高いサービスを提供させていただくことが可能です。
当社では秘密保持を厳守のうえ、個別相談を無料でお受けしています。当社は全国に拠点を展開しております。気になることがありましたら、お気軽にお問い合わせください。

レジャー・アミューズメント業界における
M&Aの価格相場

レジャー・アミューズメント業界のM&Aにおける価格や相場感について説明いたします。まず、中小企業のM&Aには明確な相場が存在せず、最終的な価格は売り手と買い手の交渉によって決まることが特徴です。M&Aの価格は、業種や企業の規模、人材の質、財務状況、ブランド力、将来性、市場環境など、多岐にわたる要素によって変動します。そのため、個別の状況を考慮しながら価格が算出されることになります。
M&Aの価格算定にはいくつかの評価方法がありますが、その中の一つに「取引事例法」があります。取引事例法は、過去のM&A事例の中から、事業内容や地域、財務指標が似ている企業の売買実績を基に価値を評価する方法です。取引事例法において重要なのは、類似の取引事例を参考にすることですが、類似条件を見つけるためには、相当数の事例を蓄積する必要があります。非上場企業のM&Aの多くが非公開情報であることから、他社の実績を参考にすることはハードルが高い方法でもあります。その点、日本M&Aセンターでは、M&Aにおいて成約実績10,000件超、M&A成約件数で世界No.1*のギネス世界記録™に5年連続で認定されるなど、豊富な実績があります。事業内容や地域、財務指標に基づく似た会社の売買事例を選定し、一定のルールに従って公正な価値評価を行うことが可能です。こちらから当社の株価算定シミュレーションを体験することができます。

※ギネス世界記録™:M&Aフィナンシャルアドバイザリー業務の最多取扱い企業 2020~2023年に続き、5年連続でギネス世界記録™に認定

あなたの会社の評価額はいくら?

無料で診断(かんたん60秒

あなたの会社が現在どう評価をされるか、ぜひ見てみませんか?

次に、より高い評価を得て会社を高く譲渡売却するためには、よりシナジーのある買い手を見つけることが重要です。M&Aの最終価格は、売り手企業と買い手企業の交渉によって決まるため、買い手が「この会社が欲しい」と思う要素を増やしていく必要があります。例えば、現在、レジャー・アミューズメント業界の市場では人材不足が全体的な問題となっており、若くて優秀な人材を採用できる利点がある場合、買い手企業にとってM&Aの魅力が増します。
さらに、コンプライアンスやガバナンスに関する問題も重要な要素です。具体的には、顧客とのトラブルが存在しないか、社会保険への適切な加入状況が確認されることが求められます。これらの問題があると、潜在的な費用や負債として見なされ、価格交渉において不利な要因となり得ます。これらの要素が事前にクリアである場合、買い手企業も安心してM&Aを進めることができ、価格交渉もスムーズに進行しやすくなる傾向があります。
最後に、M&Aを成功させるためには、総合的に企業の魅力を高める努力が欠かせません。これは、価格評価への影響だけでなく、交渉の流れにも深く関わる要素であるといえるでしょう。

なお、実際には個別の業種や取引環境等によって価格相場は変動しますし、場所や経営状態によっても大きく左右されます。初期的なご相談や、簡易的な株価診断は無料にておこなっておりますので、よりくわしく評価や課題について聞きたい方は、弊社コンサルタントから詳細をご説明いたしますので、お気軽にご相談ください。

アミューズメント業の
売却の無料相談
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株式会社日本M&Aセンター

業界別M&Aレポート編集部

株式会社日本M&Aセンター

業界別M&Aレポート編集部は、日本M&Aセンターの社員によって執筆・運営されています。各業界・業種のM&Aや事業承継に関する情報、トピックをお届けします。

レジャー・アミューズメント業界の
最新M&A事例を解説

レジャー・アミューズメント業界は、パチンコホール、ゲームセンター、ボウリング場などの娯楽施設、スキー場、ゴルフ場などの運営などを含みます。また、経営者の高齢化や人手不足が進む中で、事業承継を目的とするM&Aが増加しています。また、規模の経済によりコスト削減、人材の確保、業務効率化を目指す企業も、M&Aを通じて事業を拡大しようとしています。

娯楽業×娯楽業(パチンコホール)
ノヴィルホールディングス、パチンコホール事業を平成観光グループへ承継

譲渡企業
ノヴィルホールディングス株式会社(徳島県徳島市)
譲受け企業
株式会社平成観光(岐阜県多治見市)、株式会社MILLION Neo

M&Aの概要

スキーム:会社分割、事業譲渡 実行時期:2025年5月23日

ノヴィルホールディングス株式会社の子会社であるノヴィル株式会社、及び株式会社ネクストは、会社分割により2025年5月23日付で、株式会社平成観光のグループ会社であり、新設会社の株式会社MILLION Neoに、遊技場運営事業を承継することを決定しました。
承継事業は、「ミリオン」の屋号で徳島県を中心に36店舗を運営するパチンコホール事業です。

ノヴィルホールディングスは、パチンコホール事業を含むエンターテインメントビジネスを総合的に展開しています。
平成観光は、パチンコ事業、不動産事業、航空機リース事業、飲食店事業、コンビニ事業を行っている企業です。

本件によりノヴィルホールディングスのパチンコ事業を譲り受けたことで、平成観光グループのパチンコ店舗数は55店舗となります。これにより、ダイナム、マルハン、アンダーツリー、ガイア、NEXUS、延田エンタープライズに次ぐ、業界7位の店舗数となりました。
平成観光グループは、パチンコホールの「ミリオン」店舗におけるサービスの質をより一層高めることへの支援を通じて、地域の発展に貢献していくことを目指しています。
なお、譲渡企業であるノヴィルホールディングスは、MILLION Neoより当面の間、同事業のサポート業務を受託するとともに、一部の店舗を除いた営業店舗の不動産管理を担い、同事業の円滑な運営及び発展に尽力していく予定としています。

小売・ライセンス事業×エンターテイメント
サンリオ、子会社のサンリオファーイーストを吸収合併

譲渡企業
株式会社サンリオファーイースト(東京都品川区)
譲受け企業
株式会社サンリオ(8136)

M&Aの概要

スキーム:吸収合併 実行時期:2024年7月1日

株式会社サンリオは、2024年7月1日を効力発生日として、同社の完全子会社である株式会社サンリオファーイーストを同社に吸収合併しました。
サンリオを存続会社とする吸収合併方式で、サンリオファーイーストは解散し、サンリオファーイーストの子会社にあたる三麗鴎遠東(深圳)貿易有限公司はサンリオの子会社となりました。

サンリオは、ギフト商品の企画・販売、 商品化権の許諾・管理をおこなっています。
サンリオファーイーストは、商品販売及びライセンス事業を行っていました。

本合併の目的

サンリオファーイーストは、商標やアートなどのライセンス管理と、縫製品・成型品などの雑貨を中心とした商品のOEM企画、デザイン、製造、販売支援を主な業務として事業展開を行ってきました。しかし、親会社であるサンリオとの経営資源の有効利用、及び事業運営の効率化を目的に、同社を吸収合併することとなりました。

eスポーツ×ITサービス(AI開発)
木村情報技術、ALBAからプロeスポーツチーム「ALBA E-sports」および大会運営事業を譲受け

譲渡企業
株式会社ALBA(佐賀県佐賀市)
譲受け企業
木村情報技術株式会社(佐賀県佐賀市)

M&Aの概要

スキーム:事業譲渡 実行時期:2024年5月31日

2024年6月26日、木村情報技術株式会社は、株式会社ALBAから、プロeスポーツチーム「ALBA E-sports」および「ALBA JAPAN SERIES」を主とする大会運営事業を譲り受けたことを発表しました。なお、事業譲受は2024年5月31日に完了しています。

木村情報技術は、Web講演会運営・配信サービス「3eLive」及び収録・オンデマンド配信サービス、オンライン学会運用プラットフォーム「KIT-ON」の運営・管理等を行っています。

事業譲受の目的

これまで、ALBAが「ALBA E-sports」のチーム運営および大会運営事業を担い、木村情報技術はその活動を支援してきました。両社は協力体制のもと活動を推進してきましたが、さらなるeスポーツ事業の拡大を目指すには、組織力の強化が必要だと考え、事業譲受に至りました。

両社で検討を重ねた結果、木村情報技術が「ALBA E-sports」および「ALBA JAPAN SERIES」を主とする大会運営事業を譲り受け、プロeスポーツシーンに関わる事業において主導的な役割を担うこととなりました。

一方、ALBAはプロ・アマチュアを問わず、eスポーツに取り組む若者のキャリア形成や教育に関する事業に尽力していきます。

レジャー・アミューズメント業界の
M&Aニュース

レジャー・アミューズメント業界のM&Aニュースを表示します。

レジャー・アミューズメント業界のM&Aニュース一覧

レジャー・アミューズメント業界の
M&A仲介実績

日本M&Aセンターが仲介・支援して成約したレジャー・アミューズメント業界のM&A案件をご紹介します。
※現在、2025年9月までの実績を掲載しています。次回の更新(2025年10月~12月分)は2026年1月30日以降の予定です。

譲渡・売却企業 譲受け・買収企業
2025年9月 理美容(北海道・東北) セールスプロモーション(関東)
2025年9月 測量・地質調査(中国・四国) 建築工事(中国・四国)
2025年9月 測量・地質調査(中国・四国) 舗装工事(九州・沖縄)
2025年9月 産業廃棄物処理(東海・北陸) 産業廃棄物処理(関東)
2025年9月 産業廃棄物処理(関東) 産業廃棄物処理(関東)
2025年9月 法人向けサービス(関東) 会計事務所(関東)
2025年9月 エンターテインメント(中国・四国) エンターテインメント(中国・四国)
2025年9月 法人向けサービス(関東) 自動車小売(関西)
2025年9月 理美容(九州・沖縄) 理美容(関東)
2025年9月 法人向けサービス(関東) 理美容(関東)

レジャー・アミューズメント業界を含むその他サービス業のM&A仲介実績一覧

レジャー・アミューズメント業界の
最新のM&A事例インタビュー

当社の仲介によりM&A・事業承継されたレジャー・アミューズメント業界の事例を、経営者様へのインタビュー形式でご紹介します。

レジャー・アミューズメント業界のM&A事例インタビュー一覧

レジャー・アミューズメント業界の
セミナー情報

当社では、M&Aや事業承継をはじめ、経営に役立つさまざまセミナーを開催しております。ぜひご参加ください。

レジャー・アミューズメント業界向けセミナー一覧

業界別M&A・事業承継の動向

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