会社売却後どうなる?会社、社長、社員への影響を解説
⽬次
- 1. 会社売却をした後、どうなるのか
- 1-1. 会社はどうなる
- 1-2. オーナー経営者はどうなる
- 1-3. 役員はどうなる
- 1-4. 社員はどうなる
- 1-5. 取引先はどうなる
- 2. 会社売却が会社にもたらすメリット
- 2-1. 会社を存続させられる
- 2-2. 会社の成長につながる
- 3. 会社売却がオーナーにもたらすメリット
- 3-1. 後継者問題を解決し、売却益を得られる
- 3-2. 個人保証を解除できる
- 4. 会社売却が社員にもたらすメリット
- 4-1. 雇用が守られる
- 4-2. スキルアップ・キャリアアップの機会を得られる
- 4-3. 待遇や福利厚生が改善する可能性がある
- 5. 会社売却をした後の注意点
- 5-1. 経営者が喪失感を抱える可能性がある
- 5-2. 統合プロセスでトラブルが生じる可能性がある
- 5-3. 社員のモチベーションが低下する可能性がある
- 6. 会社売却後を成功させるポイント
- 6-1. 会社売却の目的を明確にする
- 6-2. 適切なタイミングで売却を行う
- 6-3. 専門会社のサポートを受ける
- 7. 終わりに
- 7-1. 著者
中小企業のオーナー経営者が会社売却を検討する際「売却した後、関係者に与える影響が一番気がかり」と考える人は少なくありません。本記事では、中小企業が会社売却をおこなう際、会社関係者、取引先などそれぞれのステークホルダーに与える影響、メリット、注意点についてご紹介します。
会社売却をした後、どうなるのか
まず会社売却をした後に、会社、経営陣、社員、取引先それぞれに与える影響について見ていきます。
会社はどうなる
中小企業のM&Aでは、譲渡企業の株式を譲受け企業に譲渡し、経営権を移動させる「株式譲渡」のスキームが多く用いられます。
売却後、譲渡企業は、譲受け企業(買い手)の子会社となりますが、株主構成や場合によって役員構成が変わる以外に大きな変化はなく、会社そのものは存続し続けます。
ただし譲受け企業の経営方針や社風、人事制度、従業員の福利厚生などの影響は、売却後、緩やかに反映される可能性も考えられます。
会社売却とは?メリットや注意点、流れを解説
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オーナー経営者はどうなる
従来はオーナー経営者が年齢などを理由に、売却と同時に引退するケースが一般的でした。しかし近年は、引退だけでなく、売却後も社長や会長職、もしくは譲渡先の役員等として残り、会社の成長に引き続き携わるという選択肢も珍しくありません。
また、オーナー経営者は、自身が保有する株式を譲受け企業(買い手)に譲渡するため、株式の対価を現金で受け取ります。その譲渡益をもとに、新たなビジネスを始めるケースも最近の傾向として挙げられます。
役員はどうなる
役員は、会社売却後も引き続き会社に残るケースが一般的です。
譲受け企業の経営方針に準じることで、売却前と業務内容や方針が変わる可能性もありますが、基本的には会社売却によって退職を迫られることはありません。
ただし会社売却に伴い、本人の希望で退職する場合は、株主総会の決議を経て規程に従い、役員退職金が支払われます。
社員はどうなる
株式譲渡によって会社売却が行われた場合、社員の雇用契約も譲受け企業に引き継がれるため、一般的には従来通りの労働条件で働くことができます。場合によっては、よりよい労働条件が提示されるケースもあります。
人事制度や福利厚生などについては、譲受け企業の制度に統合されるなど、変化が生じる可能性があります。また、役員と同様に退職金も引き継がれるため、会社売却に伴い、本人の意思で退職を選択した場合は規程に従って退職金が支給されます。
取引先はどうなる
譲渡企業が構築してきた取引先・顧客ネットワークの引き継ぎは、譲受け企業がM&Aを行う主目的の1つです。一般的に取引先との関係時はM&Aの交渉条件にあらかじめ盛り込まれ、会社売却後も継続されるケースが一般的です。
ただし多くの中小企業では、前オーナー経営者との関係性が取引先との関係構築に影響する傾向が強いため、オーナー退任がその後の取引にマイナスの影響を及ぼす場合も考えられます。
こうした状況を回避し、会社売却後も安定した取引を行うためには、取引先に対して十分な説明を行うことが大切です。
買収されるとどうなる?会社の存続や社員にもたらす変化とは
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会社売却が会社にもたらすメリット
会社売却が会社(譲渡企業)にもたらす主なメリットは、以下の通りです。
会社を存続させられる
一番に挙げられるメリットは、従業員の雇用や取引先との関係を維持しながら会社の存続を実現できる点です。
経営のバトンを渡す相手が見つからず、会社売却が実現できなければ、最終的には廃業の選択を迫られます。そうした事態になると、これまで築き上げてきた企業風土やノウハウなどは、次の世代に承継されずに終わってしまいます。
また、従業員は失業してしまうため、新たな雇用先を確保したり、これまで取引を行ってきた会社は代わりとなる新たな会社を探したりする必要が生じ、関係者にも大きな影響を及ぼします。
会社の成長につながる
譲受け企業(買い手)の経営資源を活用することで、譲渡企業(売り手)の事業拡大、経営力強化が期待できます。
また、譲受け企業が上場企業や大手企業などの場合、グループ傘下の企業としてブランド力や信用力が強化され、ビジネスチャンス拡大の可能性が高まるでしょう。
売り手がM&Aを行う目的
譲渡オーナーの中には「M&A(=会社売却)」自体が目的になってしまい、M&Aを通じて会社をどうしていきたいのか、何を実現したいのか、目的が見えづらくなるケースが少なくありません。目的がぶれると、譲渡したい相手の条件や、判断軸も定まらず成約まで長期化してしまいかねません。あるいはM&Aを実行したとしても、満足を得られる結果に至らない可能性もあります。本記事では、中小企業の売り手がM&Aを行う目的につ
会社売却がオーナーにもたらすメリット
会社売却が譲渡するオーナー経営者にもたらす主なメリットは、以下の通りです。
後継者問題を解決し、売却益を得られる
後継者不在の場合、会社売却によって新たな経営者にバトンを渡すことができます。
また、株式譲渡によってオーナー経営者は譲渡益を手にすることができます。この資金をもとに、今後の人生の選択肢を増やすことができます。
個人保証を解除できる
中小企業の経営者の多くは個人保証を行い、金融機関から融資を受けています。
会社売却によって譲受け企業(買い手)側による融資の肩代わり、もしくは保証そのものを引き受ける形で、個人保証の解除が可能になります。
会社売却が社員にもたらすメリット
会社売却が社員にもたらす主なメリットは、以下の通りです。
雇用が守られる
会社が廃業した場合、社員が新たな職場を見つけることができなければ、社員本人だけでなくその家族にも大きな影響が生じてしまいます。
会社売却により、雇用が守られるだけでなく、社員がこれまでのキャリアを無駄にすることなく新たな環境で仕事に打ち込むことができます。
スキルアップ・キャリアアップの機会を得られる
例えば、上場企業など規模の大きな企業の傘下に加わると、会社間の交流や新たなポジションで活躍できる可能性が高まります。
こうした機会を上手に活用し、社員自身のスキルアップやキャリアアップが期待できることもメリットとして挙げられます。
待遇や福利厚生が改善する可能性がある
会社売却が行われると、人事制度や福利厚生制度などは、譲受け企業側のシステムに順次統合されることが一般的です。
一般的に譲受け企業は譲渡企業に比べ会社の規模が大きい傾向にあるため、賃金をはじめとする待遇や、福利厚生などが改善する可能性があります。
会社売却をした後の注意点
会社を売却後に注意すべき点は、以下の通りです。
経営者が喪失感を抱える可能性がある
会社売却を行い、引退、引継ぎが完了した元オーナー経営者が喪失感を抱えてしまうケースは珍しくありません。
充実した残りの人生を送るためには、会社売却を検討始めた時点から、売却後にどう人生を進めていきたいのか、綿密に人生設計を行っておく必要があります。
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統合プロセスでトラブルが生じる可能性がある
売却後に、譲渡先と新たな経営体制の構築、協業のための体制構築、業務オペレーションなど両社が統合してくためのプロセス(PMI)を進めていきます。
この統合プロセスの過程で、例えばシステム面で不具合が続き、取引先や顧客に迷惑を及ぼすなどトラブルが生じる可能性も考えられます。
このような事態を回避するために、主に譲受け企業が主体となり、売却を進めるプロセスと並行して入念に準備を進める必要があります。
PMIとは?M&A成功の鍵を握るPMIについて専門家が解説
M&Aは成約がゴールではありません。両社が思い描いていた成長を実現することこそがゴールであり、M&Aの成約はいわば成長に向けたスタートとも捉えられます。シナジー効果を最大化するために重要になるのがM&A後の経営統合、今回ご紹介するPMIです。本記事では、M&Aの成否の鍵を握るPMIについて、その概要やポイント、最後によくある質問と回答をご紹介します。日本M&AセンターグループのPMIコンサルティン
社員のモチベーションが低下する可能性がある
会社売却後、これまで通りの業務に従事することになっても、譲受け企業の経営方針によって生じる変化に対するストレス、将来への不安を理由に、社員の働くモチベーションが低下、最悪の場合離職する社員が出てくる可能性も考えられます。
このような事態を回避するために、会社売却を行った際のオーナーや譲受け企業からの情報開示の場面で、売却した背景、これからの方針を丁寧に説明し、不安を解消するフォローを行うことが重要です。情報開示で話す内容、表現、タイミングなどは経験豊富な外部の専門家のアドバイスを仰ぐとよいでしょう。
M&Aの伝え方、情報開示(ディスクロージャー)のポイント
譲渡オーナーにとって、M&Aの実行を従業員や取引先、金融機関など関係者に「いつ伝えるか」「どう伝えるか」は大きな関心事の1つです。また、しっかりと意識をもって行わないと、M&A後の経営統合プロセス(PMI)にも影響します。本記事ではM&Aの情報開示について、押さえておきたいポイントをご紹介します。.H04-003-01{background-color:#343d45;color:#fff!imp
会社売却後を成功させるポイント
最後に、中小企業の会社売却を成功させるためのポイントをご紹介します。
会社売却の目的を明確にする
会社売却の目的は「後継者問題の解決」「創業者利益の獲得」「従業員の雇用確保」「事業の飛躍的な成長」など様々です。
目的が違えば、達成するための手段や方法も変わるため、売却の目的を明確にしておくことが一番のポイントと言えます。また、従業員の待遇など譲渡する際の交渉条件などもあらかじめ設定しておくことで、売却後、想定外のトラブルが発生することを回避できます。
適切なタイミングで売却を行う
売却を行う際は、自社の現状の企業価値を把握した上で、売却に向けてさらに価値を高める取り組みを行う必要があります。企業価値の算出は、外部の専門家の協力を仰ぐとスムーズに行うことができます。
また、市場動向など外部環境も売却に影響を及ぼすため、専門家のアドバイスを受けながら、自社にとって最適な売却のタイミングを見極めることが大切です。
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専門会社のサポートを受ける
会社売却にはメリットが大きい反面、リスクを最小化するために注意すべき点もたくさんあります。また、買い手候補のリストアップやトップ面談などのセッティング、各種契約書の作成など、さまざまな場面で高度な専門知識が必要となります。
こうしたプロセスを無事乗り切るためにおすすめなのが、専門会社からのサポートを受けることです。会社売却に詳しい専門家であれば、どのタイミングで何をすれば良いのかを熟知しています。また、どうすれば失敗するのかも熟知しているため、リスクを最小限に抑えられます。
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終わりに
会社を売却すると、会社はもちろん、経営者や社員などにあらゆるステークホルダーにプラスやマイナスの影響を及ぼします。
そのため、会社売却を成功に導くためには、メリットを最大化させるようしながら、リスクを回避することが大切です。