売り手がM&Aを行う目的
⽬次
- 1. M&Aの目的①会社の存続を図る
- 2. M&Aの目的②会社のさらなる成長を目指す
- 3. M&Aの目的③譲渡対価を獲得する
- 4. M&Aを行う際の留意点
- 4-1. 情報漏洩に注意
- 4-2. 関係者への伝達に注意
- 4-3. 取引先との契約内容に注意
- 5. 終わりに
- 5-1. 著者
譲渡オーナーの中には「M&A(=会社売却)」自体が目的になってしまい、M&Aを通じて会社をどうしていきたいのか、何を実現したいのか、目的が見えづらくなるケースが少なくありません。
目的がぶれると、譲渡したい相手の条件や、判断軸も定まらず成約まで長期化してしまいかねません。あるいはM&Aを実行したとしても、満足を得られる結果に至らない可能性もあります。
本記事では、中小企業の売り手がM&Aを行う目的について、1つひとつ確認していきましょう。
M&Aの目的①会社の存続を図る
中小企業がM&Aにより会社を譲渡する主な目的は、会社の存続です。
経営者の高齢化や、後継者不在を背景に、廃業の危機に立たされている中小企業は少なくありません。
後継者候補が社内や身内にいなくても、外部の第三者に譲渡することで会社は存続の道を辿ることができます。友好的M&Aでは、多くの場合従業員の雇用や待遇も保証されるため、M&A実行後も引き続き雇用が約束されます。
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M&Aの目的②会社のさらなる成長を目指す
自社単独では成長に限界を感じていた企業が、他社と一緒になることでさらなる成長を図るパターンも近年急増しています。
親から継いだ伝統的な事業を、他社の技術や経営資源を活用することで現代に通用する事業に成長させるケースや、大手傘下にグループ入りし、業界再編の波に対応するケースも事例として一般化しています。
また、複数の事業を展開する中堅企業の場合、不採算事業を譲渡して事業の整理を行うことで、主力事業に経営資源を投下できるようになる、という「選択と集中」のために譲渡を行うケースも見られます。
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M&Aの目的③譲渡対価を獲得する
株式譲渡の場合、譲渡オーナーに譲渡対価が支払われます。M&Aでは土地や商品といった会社の資産を時価評価し、更に営業権を加味した結果、純資産額よりも高い株価評価を受けるケースは決して珍しくありません。
M&Aを活用し、自社の株式を譲渡(売却)するということは、大きなキャッシュポイントとなり得ます。
譲渡オーナーは譲渡後に引退し、獲得した対価を元手にセカンドキャリアを送る、早期リタイアを図るケースが一般的でしたが、近年は、心機一転新たにビジネスを立ち上げ奮闘するケースも増えています。
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M&Aを行う際の留意点
以上のようにM&Aを通じて、会社の存続をはじめ多くのことを期待できる一方、以下の点に注意が必要です。どのような点に注意が必要か、譲渡オーナーがあらかじめ把握しておくことで対処して備えることができます。
情報漏洩に注意
「会社がM&A・売却を検討している」という情報は、進行している事業に大きな影響を与えるセンシティブな情報です。
もし大口の取引先企業が売却の情報を聞きつけ、取引を見直すような事態になってしまったら会社の存続を揺るがしかねません。
M&Aの交渉を進めるにあたっては、候補企業に自社の財務情報など詳細事業を開示する必要があります。そのため開示する相手先を限定する、開示した相手にも秘密保持を徹底させる、など情報の取扱いが非常に重要になります。
情報管理、そして万が一情報が漏洩した場合もダメージを最小限に抑えられるような体制、仕組みを持っているか、という点もM&A仲介会社を選ぶ上で重要な判断軸となります。
NDA(秘密保持契約)とは?概要のメリット・注意点を解説
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関係者への伝達に注意
前述の通り、M&Aは限られた関係者のみで進められるため、一般的には自社の従業員や取引先、家族にはM&Aの事実は成約後に知らせることになります。(例外もあります)
ある日突然、自社が売却されたと経営者から聞いて、動揺しない従業員はいないでしょう。
そのため情報を伝えるタイミング、伝え方については綿密に計画立てて進める必要があります。伝えた後も、不安を取りのぞくためにフォローすることが大切です。
一般的には買い手側の経営陣も同席して、M&Aを行った目的、今後の雇用、待遇について大きな変化はないことを丁寧に説明を尽くす姿勢が求められます。
M&Aの伝え方、情報開示(ディスクロージャー)のポイント
譲渡オーナーにとって、M&Aの実行を従業員や取引先、金融機関など関係者に「いつ伝えるか」「どう伝えるか」は大きな関心事の1つです。本記事ではM&Aの情報開示について、押さえておきたいポイントをご紹介します。日本M&Aセンターは、30年以上にわたり中小企業のM&A・事業承継をご支援してきました。経験豊富なコンサルタントが、大切な情報開示の場面でも強力にバックアップします。M&A・事業承継のご相談はこ
取引先との契約内容に注意
また、M&Aを準備する段階では、必ず主要な取引先との契約内容を確認しましょう。
注意すべき代表的なポイントとして、チェンジオブコントロール条項(COC)があります。
これはM&Aなどを理由に一方に経営権の移動があった場合、契約内容に制限がかかったり解除することができる規定となります。
この規定があった際、契約相手に通知しM&Aについて承諾を得る旨が定められている場合もあります。事前にM&Aの承諾を得なかったばかりに、M&A後、取引条件が見直されたり、取引が停止されたりしたという例もゼロではありません。
今後の取引先との関係性継続については、事前に、買い手企業と意見交換を行い、M&A後の取引内容の大幅な変更を防ぐことが、取引先からの理解を得るために有効な手段です。
チェンジオブコントロール(COC)条項とは?記載例やメリット・デメリットを解説
チェンジオブコントロール条項(以下、COC条項)は、M&Aの場面で特に買い手側企業が把握しておきたい条項です。本記事ではCOC条項が設定されるケースやCOC条項のメリット・デメリットなどについて詳しく解説します。日本M&AセンターではM&Aに精通した公認会計士・税理士・弁護士など専門家を含めた盤石の体制で安全・安心のM&Aをサポート致します。詳しくはコンサルタントまでお問合せください。無料相談はこ
終わりに
以上、売り手がM&Aを行う目的や、事前に押さえておきたい注意点についてご紹介しました。
自社がM&Aを行う目的を改めて振り返ることで、それを実現するためにどのような相手が必要か、M&A前に自社で何を準備しておかなければいけないか、逆算してM&Aの全体スケジュールを検討することができます。
また注意点についても、事前に把握しておくことで、準備を進めておくことができます。「M&Aをすぐに実行しなければならない」という差し迫った状況ではなく、時間的に余裕をもった状況でこれらに取り組むことが、理想のM&Aにつながります。