M&Aを学ぶ

譲渡企業(売り手)がM&Aで押さえておきたいポイントとは?

M&Aの基礎知識を学ぶ
更新日:
理想の買い手企業が見つかります。会社売却先シミュレーションM-Compass。シミュレーションする

⽬次

[表示]

譲渡企業(売り手)にがM&Aで押さえておきたいポイント
譲渡を検討するオーナーにとって、M&Aは、一生に一度の選択です。
大切に育ててきた会社を譲るという事実に加え、一度譲渡した後にやり直しはできません。失敗したくない、後悔したくない、最大の結果を得たいと思うのは当然のことです。満足度の高いM&Aの実行で最大の結果を得るために、実行前に押さえておきたいポイントについて確認していきましょう。

日本M&Aセンターは1991年の創業以来、数多くのM&A・事業承継をご支援しています。中小企業のM&Aに精通した専任チームが、お客様のM&A成約まで伴走します。 詳しくはコンサルタントまでお問合せください。

M&Aにおける、譲渡企業のメリット

M&Aにおいて、譲渡企業側にとってのメリットは主に以下の通りです。

事業拡大のチャンス

経営資源の獲得による事業発展
M&Aの実行で譲渡側(売り手)が期待できるメリットの1つは譲受側(買い手)の経営基盤を得ることで、成長に必要な経営資源の獲得ができるようになることです。
GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)といった巨大IT企業の台頭、著しく変化する顧客の消費行動、日本国内の人口減少、新型コロナウイルスによる経済混乱など、外部要因によって企業経営の難易度が年々増しています。
これに対応するには、時代に合わせた事業戦略に加え、自社へ人材・設備・資金などの経営資源を投下し続けていく必要があります。しかし、単独でそのような経営資源を投下し、自社を成長させ続けることは容易ではありません。
そうした環境下で「自社を成長させるための手段」として売却を決断するケースが多く見られるようになりました。
また、呼応するように、譲受側(買い手)によるM&A後の経営支援も、資金・情報・設備・実績など手厚くなる傾向にあります。
売り手・買い手の双方から、M&Aの動きを後押しする傾向になってきていると言えるでしょう。

「選択と集中」のための事業分離売却
M&Aは必ずしも会社全体の譲り渡しとは限らず、選択する手法によっては、一部の事業だけを譲渡する場合もあります。
不採算事業を譲渡し、事業の整理を行うことで、本業に集中できるようになります。これは「過去に事業を幅広く展開させた結果、現在の経営の効率性を欠いている」といった課題を抱える企業にとって特に有効な手立てとなります。

従業員の雇用を維持

廃業や精算で従業員を解雇するのは、経営者として苦渋の決断です。
M&Aを活用することにより、従業員の雇用を守れる可能性が高まります。
中堅・中小企業のM&Aでは多くの場合、「従業員の雇用維持」が譲渡先への条件のひとつに挙げられます。M&A実行後、従業員は新しいオーナーのもと同条件で引き続き雇用され、お客様や取引先もそのまま継承されるケースが一般的です

オーナー利益の実現

M&Aの売却益によって、譲渡側オーナーの手元に多く現金が残ることもメリットの一つです。相続時などを除き、通常、未上場会社の株式を売買する機会はほとんどありません。
M&Aでは土地や商品といった会社の資産を時価評価し、更に営業権を加味した結果、純資産額よりも高い株価評価を受けるケースは決して珍しくありません。M&Aを活用し、自社の株式を譲渡(売却)するということは、大きなキャッシュポイントとなり得ます。譲渡側オーナーが、自社の譲渡後に新たな事業を始める、余裕あるセカンドライフを送るという事例も見られます

後継者問題の解決

M&Aを実行し、第三者承継により新しい経営者を迎えることができれば、後継者問題が解決され、企業は存続し続けることができます。そもそも、M&Aが一般的に広く知られるようになったきっかけは、後継者不在による事業承継問題を解決する手段としてでした。
中小企業庁の調査によると、中小企業の経営者平均年齢は年々上昇、2020年には30万人以上の社長が70歳超えです。同時に、中小企業の70%近くが「後継者不在」と回答しています。後継者問題を抱えている企業にとって、M&Aは事業承継と事業成長を一度に叶える選択肢になりえます。

M&Aにおける譲渡側(売り手)の注意事項・リスク

多くのメリットが期待できる一方、M&Aには懸念点やリスクが存在することを忘れてはいけません。M&Aが意に沿わない結果にならないよう、事前に注意事項や、リスクの観点をよく把握しておくことが大切です。

情報漏洩の懸念

M&Aにおいて財務情報・従業員情報・事業詳細などの開示なしに譲受(買い手)候補先と交渉することはできません。
しかし、そうした情報は当然会社の根幹に関わる重要な情報であり、万が一漏洩した際には会社は大きな損失を被る可能性があります。
M&Aは、「秘密保持に始まり、秘密保持に終わる」と言われます。
すでに事情を知っている関係者へ、秘密保持の重要性を十分に伝えた上で、いかに対処・対策していくかが重要です。

従業員・取引先の理解を得られない

M&Aの事実を伝えた際、既存の取引先や従業員から不安や不満の声がでる可能性があります。
情報開示の場面できちんと経営者の口からM&Aを行った背景、今後の処遇について丁寧に説明を行い、不安を取り除くことが大切です。
開示のタイミング、表現など留意して臨みましょう。

また、M&Aを準備する段階では、必ず主要な取引先との契約内容を確認しましょう。
注意すべき代表的なポイントとして、チェンジオブコントロール条項(COC)があります。これはM&Aなどを理由に一方に経営権の移動があった場合、契約内容に制限がかかったり解除することができる規定となります。
この規定があった際、契約相手に通知し承諾を得る旨が定められている場合もあります。
M&Aによって、既存の取引先や顧客との取引条件が見直され、取引が停止されたという事例があります。
今後の取引先との関係性継続については、事前に譲受企業と意見交換を行いM&A後の取引内容の大幅な変更を防ぐことが、理解を得るために有効な手段です。

M&Aのスムーズな実行向けて

全体の流れを最初に理解をしておくことで、心構えや準備の面で余裕が生まれ、スムーズなM&Aにつながります。良いお相手候補が見つかったら、お相手候補先に会うまでの流れをイメージしておきましょう。検討・準備段階で行う各プロセスを理解することで、「なぜこのプロセスが必要か?」納得感をもってM&Aを進めていただけるはずです。また、自社の情報など準備すべき情報、費用が発生するか認識しておくことも重要です。

終わりに

誰にも頼らず自力でM&Aを完了することは極めて難しい選択肢です。もし譲渡先のお相手に心当たりがあったとしても、実行~完了までには法務・労務・税務など様々な観点からリスクを洗い出す必要があり、専門的なサービス、仲介会社などを利用することが成功の近道といえます。セミナー・勉強会・書籍などでM&Aについての知識を得ることは可能ですが、それは一般的な内容に過ぎません。
一つとして同じ企業がないように、業種・エリア・規模・財務状況によって自社を取り巻く環境は様々であり、お相手候補先も異なります。

自社の株価評価はどのくらいなのか?どのような企業が譲渡先候補に挙がってくる可能性があるのか。

これらのイメージをもっておくだけでも、今後の企業経営の一つの選択肢としても参考になります。そうした意味でもM&Aの検討をはじめた段階から、M&Aの専門家に相談されることをお勧めします。

日本M&Aセンターは1991年の創業以来、数多くのM&A・事業承継をご支援しています。中小企業のM&Aに精通した専任チームが、お客様のM&A成約まで伴走します。 詳しくはコンサルタントまでお問合せください。

著者

M&A マガジン編集部

M&A マガジン編集部

日本M&Aセンター

M&Aマガジンは「M&A・事業承継に関する情報を、正しく・わかりやすく発信するメディア」です。中堅・中小企業経営者の課題に寄り添い、価値あるコンテンツをお届けしていきます。

STEP1

M&Aの基礎知識を学ぶ

STEP2

M&Aの流れを学ぶ

STEP3

M&Aの専門知識を学ぶ

「譲渡企業・M&Aの基礎知識」に関連する学ぶコンテンツ

M&Aの歴史と将来展望

M&Aの歴史と将来展望

日本のM&A件数は年々増加しており、2019年に4,000件を超えて過去最高の水準となりました。今、なぜM&Aはこれほど増えているのでしょうか。また、今後M&Aはどのようになっていくのでしょうか。本記事ではM&Aの歴史をひもときながら、現状のM&A市場の理解、また将来のM&A市場についてお伝えしていきます。【~1990年】バブル期に外国企業を買収かつての日本企業では「企業を買収する」という発想は一

地域別にみる中小企業のM&A動向

地域別にみる中小企業のM&A動向

国内の421万企業のうち99.7%を占める中小企業。地域資源の活用、歴史的背景、立地特性など地域ごとにその特徴も様々です。本記事では、地域別に中小企業のM&A動向について迫ります。全国でM&A件数の圧倒的No.1は?中小企業M&Aの件数は経済活動の規模に比例します。下記の図1は当社におけるM&Aの実績と、「県別の経済活動の規模」を比較したものです。東京を例にとると、グラフ左端が東京の企業が譲渡もし

業界別にみる中小企業のM&A動向

業界別にみる中小企業のM&A動向

現在、あらゆる分野・業種で、大小さまざまな規模のM&Aが行われています。業界再編が進みM&Aが活発な業界や、近年、急激にM&A案件数が増えている業界など、業種や業界によってM&Aの検討のポイントは異なります。本記事では主な業界の現状動向についてご紹介してまいります。医薬品卸・小売業界医薬品卸売・小売という大カテゴリーの中でも、中小企業のM&Aで圧倒的に多く見られる調剤薬局についてご紹介します。調剤

M&Aにおける登場人物とその役割

M&Aにおける登場人物とその役割

M&Aの実行には高度な論点が複雑に絡み合い、高い専門性や知識が必要とされるため当事者以外に多くの関係者が登場します。本記事ではM&Aの関係者・専門家について解説していきます。分類登場人物概要・主な役割M&Aの当事者M&Aの取引対象M&Aで取引されるもの(会社・事業など)譲渡希望企業(M&Aの売り手)「M&Aの取引対象」の保有者(株主・会社)譲受け希望企業(M

譲受け企業(買い手)がM&Aで押さえておきたいポイントとは?

譲受け企業(買い手)がM&Aで押さえておきたいポイントとは?

一言でM&Aといっても、買収戦略を実行していく譲受企業(買い手)側には様々な目的があります。M&Aの成功に向けて、押さえておきたいポイントを確認していきましょう。【登録無料】買収をご検討の方は、希望条件(地域、業種など)を登録することで、条件に合致した譲渡案件のご提案や新着案件情報を受け取ることができます。まずは登録から始めてみませんか?買収希望条件の登録はこちらM&A実行の目的・メリット一般的に

譲渡側(売り手)からみた、譲渡先の選定ポイント

譲渡側(売り手)からみた、譲渡先の選定ポイント

自社の詳細情報(概要書)など必要書類が整ったら、いよいよ次は譲渡先、つまり譲受企業(買い手)探しです。まず思い浮かぶのは同業の大手企業かもしれません。一方で、必ずしもそれだけとは限りません。ここでは、どんな譲受企業(買い手)が候補の選択肢として挙げられるかをふまえ、自社にとって最適な譲渡先企業を選定するポイントを整理します。一般的な譲渡先企業(買い手)の類型上場企業か、未上場企業か上場企業とは、そ

「譲渡企業・M&Aの基礎知識」に関連するコラム

会社の身売りと会社売却の違いとは?

M&A全般
会社の身売りと会社売却の違いとは?

新聞や経済ニュースなどで時折目にする「会社の身売り」という言葉は、会社売却とどのように違うのでしょうか。本記事では、身売りが指す意味合い、会社売却の概要についてご紹介します。日本M&Aセンターは1991年の創業以来、数多くのM&A・事業承継をご支援しています。中小企業のM&Aに精通した専任チームが、お客様のM&A成約まで伴走します。詳しくはコンサルタントまでお問合せください。会社売却・事業承継のお

会社売却後どうなる?会社、社長、社員への影響を解説

M&A全般
会社売却後どうなる?会社、社長、社員への影響を解説

中小企業のオーナー経営者が会社売却を検討する際「売却した後、関係者に与える影響が一番気がかり」と考える人は少なくありません。本記事では、中小企業が会社売却をおこなう際、会社関係者、取引先などそれぞれのステークホルダーに与える影響、メリット、注意点についてご紹介します。日本M&Aセンターは1991年の創業以来、数多くのM&A・事業承継をご支援しています。中小企業のM&Aに精通した専任チームが、お客様

待ったなしの事業承継問題。2025年問題、M&A増加の背景をわかりやすく解説!

事業承継
待ったなしの事業承継問題。2025年問題、M&A増加の背景をわかりやすく解説!

日本M&AセンターでM&Aを実行されたお客様の多くは「M&Aっていいものだね!」とおっしゃられます。その思いや実例をより広くお届けするために今春からYouTubeチャンネルではじまった「いいM&Aチャンネル」。本記事では動画の概要をご紹介します。※動画本編はこちらから2021年のM&A件数は過去最多に岡本:早速ですけど、M&Aは年間どのくらい行われているかご存じですか?縄田:いやいや、この業界長い

譲渡オーナーの財産管理や人生設計をサポートするネクストナビ

その他
譲渡オーナーの財産管理や人生設計をサポートするネクストナビ

M&A後のネクストステージを充実させるために日本M&Aセンターホールディングスでは、M&Aを成功に導くために成約後のアフターサポートを積極的に行っています。ひとつはPMI(PostMergerIntegration)と呼ばれるM&A後の統合プロセスを支援する株式会社日本PMIコンサルティング。もうひとつが、譲渡オーナーのネクストステージをサポートする株式会社ネクストナビです。専任アドバイザーが、譲

鹿児島放送が事業承継・M&Aセミナーを開催 M&Aによる事業承継について解説

事業承継
鹿児島放送が事業承継・M&Aセミナーを開催 M&Aによる事業承継について解説

鹿児島県のテレビ局KKB鹿児島放送は2021年12月23日、地元の経営者向けに事業承継とM&Aを解説するセミナー「事業承継・M&Aセミナー鹿児島企業の10年先の経営を考える」を開催しました。県内で高まる後継者不在率と休廃業数に対する解決策の一つである事業承継型M&Aをテーマにしたセミナーには約百人が参加しました。セミナーに先立って「ニッポンには、跡継ぎが足りない」と題した特別番組も放送され、M&A

M&Aにベストなタイミングとは

M&A全般
M&Aにベストなタイミングとは

事業承継やM&Aに関するお話をしていると「私は65歳になったら譲渡を考える」というオーナーの方がよくいらっしゃいます。たしかに、ご自身の年齢を基準にして事業承継を考えるのは最もイメージしやすい方法です。しかし、年齢を基準にして事業承継や譲渡タイミングを決めてしまうのは、結局そのオーナーのみの満足感しか得られない結果になってしまう可能性が高いです。では、M&Aにベストなタイミングとは一体いつなのか?