M&Aの最終契約書とは?ポイントを専門家が解説!
⽬次
- 1. M&Aの最終契約書とは
- 2. M&Aのクロージングとは
- 3. M&Aの最終契約書はなぜ複雑になるのか
- 4. M&Aの最終契約書を締結する当事者
- 5. M&Aの最終契約書の基本構造
- 5-1. 全体構成
- 5-2. 前文・定義
- 5-3. 株式譲渡の合意・価格
- 5-4. 表明保証
- 5-5. 誓約事項(譲渡日までの義務)
- 5-6. クロージング条件
- 5-7. 誓約事項(譲渡日後の義務)・付帯合意
- 5-8. 損害賠償又は補償・解除
- 5-9. 一般条項
- 6. M&Aの最終契約書で意識すべきポイント①表明保証
- 7. 最終契約書で意識すべきポイント②損害賠償又は補償
- 8. 最終契約書で意識すべきポイント③契約の解除
- 9. 終わりに
- 9-1. 著者
本記事ではM&Aの最終段階において締結される最終契約書のポイントについて、M&Aの専門家がわかりやすく解説します。
M&Aの最終契約書とは
M&Aにおける最終契約書(Definitive Agreement、通称「DA」)は、M&Aの最終段階において締結される、当事者間の最終的な合意事項を定めた最も重要な契約書です。
基本合意書は、デューデリジェンス(買収監査)実施前における、交渉過程の確認や中間的な合意を確認するためのものであり、今後の交渉を阻害しないための約束事(独占交渉権限の付与や秘密保持義務の設定その他の一般条項)以外は、 原則として法的拘束力を持たない契約 となっています。
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これに対し、最終契約書は、 これまでの当事者の交渉を通じて確定した合意事項をすべて盛り込んだもの です。
契約当事者の一方が最終契約書の内容に違反し、当該違反により他方当事者に損害が生じた場合には、当該違反をした当事者に対し、損害賠償請求ができる旨が定められた、 法的拘束力を持つ契約 となります。
デューデリジェンス(買収監査)は、この最終契約書を作成するために実施するといっても過言ではありません。
したがって、この最終契約書を締結するタイミングは、譲り受け側(買い手)が実施するデューデリジェンス(買収監査)が終わり、その結果を踏まえ、譲渡側(売り手)と譲り受け側(買い手)との間で、全ての条件が合意できた時です。
なお、当事者間で「最終契約書」というタイトルの契約を結ぶわけではありません。
通常は、株式譲渡なら「株式譲渡契約書」(Share Purchase Agreementまたは Stock Purchase Agreement、通称「SPA」)、事業譲渡の場合は「事業譲渡契約書」と呼ぶことが多く、単に「契約書」「基本契約書」と名付けることもあります(これらの契約書を一般的に「最終契約書」と呼びます)。
M&Aのクロージングとは
M&Aの一連のプロセスの中で、「クロージング(closing)」や「デリバリー(delivery)」という言葉を耳にされた方もいらっしゃると思います。
これは、最終契約書に基づく株式譲渡や事業譲渡などのM&A取引を実行し、譲渡側(売り手)から譲り受け側(買い手)に対し、M&Aの対象となる会社や事業の経営権を移転させることを意味します。
一般的には、譲渡側(売り手)の履行義務である「譲渡対象物の引渡し」と、譲り受け側(買い手)の履行義務である「対価の支払い」が行われますが、M&Aのスキーム(手法)によってその内容は異なります。
株券発行会社における株式譲渡の場合には、一般的には譲渡側(売り手)からの「株券の引渡し」に対し、譲り受け側(買い手)からは「譲渡対価の支払い」が行われます。
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また、事業譲渡の場合には、譲渡側(売り手)から譲り受け側(買い手)に移管させる資産、負債及び権利義務について、個別に移管手続きを行い、譲り受け側(買い手)から譲渡側(売り手)への譲渡対価の支払いで完了となります。
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次項で背景を説明しますが、実際はクロージングをするために、一般的には最終契約書においてM&A実行のための前提条件(クロージング条件)が定められています。
クロージングするためには、この前提条件を満たしていることが必要となるため、 最終契約書の締結日からクロージングする日 (呼称には、「譲渡日」「クロージング日」「決済日」あるいは「実行日」等がありますが、ここでは「譲渡日」と呼びます。) まで、一定の期間をあけることが一般的 です。
もっとも、最終契約書の締結の時点で、クロージングに必要な手続きがすべて完了していて、クロージング条件が満たされている場合には、最終契約書の締結日と同一日に実行する場合もあります。
M&Aの最終契約書はなぜ複雑になるのか
ここでは、中小企業M&Aのスキームにおいて用いられることが多い「株式譲渡」を例にとって説明します。
株式譲渡も売買契約の一種ですが、不動産や車両等の他の売買契約書と比べて、複雑でボリュームのある契約書になるケースが多く見られます。なぜでしょうか。
株式譲渡は、端的に表すと、株式と代金の交換です。
つまり、株式譲渡契約は『株式』の売買契約ですので、譲渡対象物、譲渡価格、当事者、譲渡日だけで成立することになります。
したがって
という内容でも十分有効な契約となります (株券発行会社の場合には、上記に加え株券の交付が必要となりますが、ここでは、株券不発行会社を例に説明しています)。
この場合、譲渡側(売り手)が譲り受け側(買い手)に対し、株式を引き渡すことで、最終契約書上の義務を履行したことになります。
したがって、下記のような事態が起きたとしてもなどの事態が起きたとしても、譲り受け側(買い手)は譲渡側(売り手)に何ら責任を問えないことになります。
- 株式譲渡の実行後に、X会社の大口の取引先が今回のM&Aを理由として取引を停止した
- X会社が優秀な従業員を引き抜いて同種の事業を立ち上げて、大きな損害を生じさせた
こうした事態にならないよう、両者が安心・安全なM&Aによる事業承継を進められるようにしなくてはなりません。
実際の契約書では、 譲渡価格等の条件だけでなく、クロージング条件や相手方に対する表明・保証、誓約事項等、数多くの事項について、特約として追加して定める必要がある ため、通常の売買契約書に比べボリュームのある内容になります。
M&Aの最終契約書を締結する当事者
選択するM&Aスキームによって異なりますが、株式譲渡の場合には、譲渡側(売り手)である株主と、譲り受け側(買い手)が当事者となります。M&Aの対象となる会社(以下「対象企業」)は、当事者となることは多くありません。
対象企業に関する事項については、譲渡側(売り手)である株主に義務を負わせれば足りると考えられるためです。
株主が複数いる場合でも、事前に株式を買い集めない限り、100%株式譲渡を行うのであれば、その全員が契約当事者になる必要があります。
事業譲渡や吸収分割の場合には、譲渡側(売り手)となる会社と譲り受け側(買い手)との間で契約を締結しますが、事案により両者の代表者が保証人の立場で当事者に加わる場合もあります。
M&Aの最終契約書の基本構造
ここでは、中小企業M&Aにおいて主流である株式譲渡について、掘り下げて解説します。
全体構成
まずは契約書の全体構成から見ていきます。
株式譲渡の契約で、最もスタンダードな構成は、表に示すと次のような形になります。
前文・定義
まず、この契約の当事者が誰であるかを掲げ、今回の契約の締結目的や定義付けが記載されます。
「締結する当事者」 にあるとおり、 譲渡側(売り手)である株主が複数いる場合には、その全員が契約当事者となる ため、全員の名前を記載することになります。
最終契約書には、直接全員が署名捺印をする方法のほか、一部の株主が他の株主に契約締結の権限を委任する方法をとることもあります。
その場合には、必ず最終契約書の締結前に、一部の株主から委任状をもらっておくようにしましょう。事前に委任状をもらわずに最終契約書を締結してしまい、後で「M&Aに反対だから、委任状は出せない」ということになると、大きな問題に発展しかねません。
また、株主に未成年者が含まれる場合には、その法定代理人である親権者が未成年者に代わり契約書に署名捺印する必要があります。
そのほか、認知症その他の理由により判断能力が不十分な方が株主に含まれる場合には、家庭裁判所における成年後見制度を利用し、家庭裁判所により選任された成年後見人が代わりに契約書に署名捺印することもあります。
契約本文の中で、特に頻繁に使用される用語(例えば「対象会社」「対象株式」「譲渡日」などの用語)については、見やすくするため冒頭の箇所でまとめて記載するケースが多いことも覚えておきましょう。
株式譲渡の合意・価格
契約の要素になる部分の記載になります。契約当事者間で、譲渡対象となる株式の内容や譲渡価額、支払日(譲渡日)、支払方法、実行場所等について、具体的に定めます。
また、株式譲渡代金の受領と引き換えに、譲渡側(売り手)から譲り受け側(買い手)に引き渡す必要があるもの(「重要物品」といいます。)を規定します。
- 株券
- 役員の辞任届
- 株式譲渡承認にかかる各種議事録
- 株主名簿の名義書き換え請求書 等
この他、交渉の過程で取り決めた事項を確認する書類が加わることがありますが、通常、後述の「2.1.4誓約事項(譲渡日までの義務)」に関連するものとなります。
譲り受け側(買い手)としては、これらの重要物品から、 M&Aの前提となる譲渡側(売り手)の手続きが完了して、スムーズに対象企業の支配権を引き継げる状態にある ことの確認が行えます。
表明保証
日常生活では、まず使われない言葉ですので、初めて目にする人も多いかと思います。
詳細は後述しますが、「対象企業は、最終契約書の締結日や譲渡日の時点では、このような状態であることに間違いありません。」といった内容を、譲渡側(売り手)である株主が譲り受け側(買い手)に約束することが中心となります。
この表明保証の内容は、損害賠償請求できる範囲にも繋がるため、最終契約書の中でも重要な条項になります。
通常、譲渡側(売り手)である株主、譲り受け側(買い手)ともに、それぞれ表明保証を行い、譲渡日の時点で、この契約に定めた表明保証の内容が正しくあることが、後述するクロージング条件になります。
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誓約事項(譲渡日までの義務)
最終契約書の締結日から譲渡日まで、一定の期間をあけることが多いことは、「M&Aのクロージングとは」でお伝えしました。
その場合に、譲渡日までに行うべき手続き、あるいは、禁止事項を定める部分になります。表明保証と並んで、きちんと遵守されていることが、クロージング条件になります。
デューデリジェンス(買収監査)で判明した問題点について、譲渡側(売り手)である株主が譲渡日までに解決・改善することを条件とした場合には、この誓約事項(譲渡日までの義務)に加えることになります。
譲渡日までに行うべき手続きの例として、「チェンジ・オブ・コントロール条項(Change of Control、通称「COC」)のある契約への対応を行うこと」があります。
このCOCとは、取引基本契約や不動産賃貸借契約によく見られ、「 経営体制や代表者の変更がある場合には、事前に承諾を得ないと契約を解除する 」というような条項のことです。
この場合、譲渡側(売り手)である株主は、その契約の相手方(例:主要な取引先企業、本社が入居する建物の貸主など)にあらかじめM&Aで変更があることを説明して、今後も取引を継続してもらうことの承諾を得ておくよう、譲り受側(買い手)から求められることがあります。
譲渡日までの禁止事項としては、「実際に株式譲渡するまでは、対象企業に重大な変更を加えないこと」等が挙げられます。
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クロージング条件
株式譲渡を実行するための条件を指します。
特に譲り受け側(買い手)からすると、「この条件が満たされないのであれば、M&A自体を止める」というような、 絶対に譲れない前提条件 を定めます。表明保証した内容が正しいこと、譲渡日までの義務が遵守されていることの2つが柱となりますが、事案により様々な条件が加わることもあります。
万が一、譲渡日にクロージング条件が満たされなかった場合の取り扱い、についても定めておきます。
誓約事項(譲渡日後の義務)・付帯合意
譲渡日後に株式譲渡に付随して、譲渡側(売り手)、譲り受け側(買い手)が遵守すべき事項を規定します。「2.1.4誓約事項(譲渡日までの義務)」とは異なり、クロージング条件には該当しません。
譲渡側(売り手)に対しては、
- 競業避止義務や従業員の引き抜き禁止の義務
について課す場合があります。
譲り受け側(買い手)に対しては、
- 従業員の雇用条件の維持や保証債務の解除の義務
について課すことが多く、中小企業M&Aにおける譲渡側(売り手)の大きな関心事となっています。
また、M&Aに伴い何か取り決めを行う場合には、その内容を定めます。
例えば、対象企業が使用している工場が、譲り受け側(売り手)である株主所有の不動産であるような場合には、M&Aと同時に、その株主から対象企業に売却することを付帯合意として定めます。
損害賠償又は補償・解除
契約書の当事者に、契約上の義務違反や表明保証違反があった場合の損害賠償や補償について定める部分です。
賠償額や期間の定めも含め、交渉の中心になる場合もあり、最終契約書において重要な条項になります。
中小企業M&Aの場合、一般的に契約解除はクロージング前に限るとすることが多いため、契約締結日と譲渡日が同一日である最終契約書に定めるケースはあまり見られません。
一般条項
契約書に記載する一般的な内容が多い部分となりますが、大事な条項として「完全合意」というものがあります。
「これがM&Aについての唯一の契約書であり、この契約書に記載されていない従前の合意、了解事項、交渉、協議等については、譲渡側(売り手)である株主と譲り受け側(買い手)との間で最終契約書の締結がされることをもって、すべて失効する」という内容です。
そのため最終契約書の締結前に当事者が合意していた事項であっても、 最終契約書に記載していなければ、当該合意事項は無かったものと扱われる ため、合意事項が全て盛り込まれているか確認することが重要になります。
この他、秘密保持義務や契約の変更方法、費用負担、管轄裁判所、準拠法、誠実協議条項などについて定めます。
M&Aの最終契約書で意識すべきポイント①表明保証
表明保証は、「当事者の一方が、相手方に対して、契約締結日や譲渡日において、一定の事項が真実かつ正確であることを表明し、その内容を保証すること」を指します。
M&Aにおいては、譲渡側(売り手)である株主が譲り受け側(買い手)に対して、表明し保証すること(つまり約束すること)を、表明保証といいます。(項目は少ないながら、譲り受け側(買い手)にも表明保証を負ってもらいます。)
そして、M&Aにおいて、この表明保証は非常に重要な意味を持つことになります。
一般的には譲渡側(売り手)に網羅的な表明保証をしてもらうことによって、譲り受け側(買い手)に何かしらの問題があった場合には、譲渡側(売り手)に対して責任追及できるようにしておきます。
最終契約書で意識すべきポイント②損害賠償又は補償
最終契約書に定めた誓約事項や付帯合意に関して違反が発覚したり、表明保証した内容に違反があったことにより損害を受けた場合には、相手方に対して、当該損害の賠償の請求又は補償を求めることができる、と契約書に定めることは一般的です。
M&Aの契約書において、この賠償の条項で注意すべきポイントは、 損害賠償の請求又は補償を相手方に求めることができる「期間」 、そして 賠償額の「上限」 についてきちんと定められているかという点になります。
損害賠償又は補償を相手方に対して求めることができる期間が契約書上定められていないと、将来にわたりずっと賠償責任が課される可能性があります。
また上限額が設定されていないと、受領した譲渡代金以上の責任が課される可能性もあります。ですので、この「期間」と「上限額」の定めがあるかが、損害賠償の条項において重要なポイントになります。
最終契約書で意識すべきポイント③契約の解除
M&Aにおいて、 契約の解除ができる時期は、「クロージングまで」 と定めるケースが一般的です。
その理由はM&Aの実行後、原状回復(=M&Aを無かったことにすること)が困難であるためです。
M&Aの実行後は、対象企業の役員は入れ替わり、従業員や取引先に対してもM&Aについて開示を行うことになります。そして、新役員体制のもと新たに会社はスタートすることになりますので、M&Aの実行後のそのような状態で、契約を解除し、M&A自体を無かったことにすることは通常困難です。
そのため契約の解除ができる時期について、クロージングまでと定めてあるか、確認する必要があります(M&A実行後に、例えば表明保証した内容に違反が発覚した場合には、相手方に対して賠償の請求、つまり金銭で解決することが一般的です。)。
終わりに
以上、最終契約書に関わる内容を紹介してきました。ポイントを意識して、最終契約書の内容を定める必要がありますが、複雑で難しい交渉になることもあります。
M&A仲介会社やM&Aアドバイザーをパートナーとしている場合でも、彼らから提供されるものは契約書の草案(ドラフト)ですので、当事者双方自身が、最終的な判断に基づいて意思決定し、責任をとる必要があります。
特に表明保証や誓約事項については、クロージング後に違反が発覚する可能性が残り、契約解除や損害賠償問題に発展する場合もあります。
必要に応じて、弁護士等の専門家のサポートを受けながら、最終契約書で曖昧な点がないか、あるいは、これまで協議してきた内容と最終契約書の内容に相違がないか、きちんと確認することが重要になります。
譲渡側(売り手)、譲り受け側(買い手)ともに、スムーズに思い描いていたような事業承継が行えるよう、後日のトラブルが起きないような最終契約書にして、M&Aの最終局面を迎えましょう。