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譲渡企業(買収先)の本格検討へ。詳細情報の確認・分析

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譲渡企業(買収先)の本格検討へ。詳細情報の確認・分析
本記事では、M&Aをいよいよ本格的に検討する段階で押さえておきたいポイントについてご紹介してまいります。

譲渡企業(買収先)の本格検討に向けて

まず、買収をなかなかスムーズに実現できない多くの企業が陥りがちな落とし穴として、2点注意していただきたいことがあります。

M&Aをすること」を目的にしない

もともと「M&Aをしたい」ということで検討を始める企業は存在しません。
例えば「売上100億円まで到達したい」、「基盤とするエリアでの業界内での首位を獲りたい」、「建設業界を変えていきたい」、などのビジョンや成長意欲が最初にあり、そのために様々な手法を考え、結果としてM&Aを検討しはじめる企業がほとんどでしょう。つまり、M&Aをすること自体が目的ではなかったはずです。

当初の目的、ビジョンを実現したいのであれば、まずは自社のゴールをしっかりと再認識することが重要です。そこが十分でないと、提案されるM&A案件に対する視野が非常に狭くなり、結果として買収したい企業が見つからない、ということになりかねません。
M&Aをすることは目的ではなく、様々な戦略の中の一つの手段であるということを認識できれば、目的に到達する手段は何通りもの手法がある=様々な企業とのM&Aのパターンが存在するということに気づくことができるはずです。まずは「M&Aを実行したらどんなメリットがあるか」検討し、M&Aを進めるかどうかを判断します。

1つの案件にすべての問題解決を求めない

もう一つM&Aを検討している企業が陥りがちな落とし穴として「すべてを求めすぎる」という点が挙げられます。M&Aにおいて、譲受企業(買い手)は譲渡企業(売り手)よりも規模が大きいケースが比較的多くあります。当然、売上規模、利益水準、社内規定や賃金体系など自社と比べ課題が見えてくる点も出てくるでしょう。一方、時間をかければ解決できる、自社が関与することで解決できる点も非常に多くあります。

M&Aが実現できない企業の共通点として「成功できるかどうか不安である」「情報が不足しているから断念する」「利益水準が自社より低い為、断念する」などの理由で断念するケースはよく見受けられます。一方で、1度に限らず複数回、複数社とM&Aの実行をしている会社の多くは「その経営者が信頼できるか」「事業の成長性があるか」「財務、借入等負債の状況」など、譲渡企業(売り手)そのものに目を向けてM&Aを実行するかどうかの判断をしています。また、そのようにM&Aを数多く経験している経営者たちが共通して口にするのは「スピードを買う」ということです。まさにM&Aの効果で一番大きなものはスピードです。自社単独では成しえない成長を、他社の力を合わせて共同で事業運営することで実現していくのです。そしてさらに不足しているリソースを、次のM&Aで補完し、ビジョンを実現していけばいいのです。そうした観点でいれば、自社でM&Aを検討する際、俯瞰して案件を捉えることができ、一つのM&Aに全ての問題解決を求めすぎずフラットな判断ができるでしょう。

提携仲介契約の締結~個別資料の検討へ

企業概要書で譲渡企業(売り手)について理解を深め、さらに本格的に検討を進める流れについてご説明します。

提携仲介契約の締結

譲渡候補企業とのM&Aを具体的に検討する際、特に大手M&A仲介会社の場合は「提携仲介契約」の締結が求められます。そこには深い理由があります。

昨今、事業承継待ったなしと言われ、様々なM&Aが多く実現しています。世の中には多くの譲渡候補企業の情報があふれ、様々な案件が提案される機会も増えています。一方、その中には雲を掴むような話と言われるようなもの、いわゆる譲渡意志が固まっていない、本来は売る意志のない事案が、残念ながら存在することもあります。当然ながら、譲渡企業側に売却の意志がなければ、100%そのM&Aは実現できません。そういった事案を極力防ぐために、例えば大手M&A仲介の日本M&Aセンターでは原則として

  1. 譲渡企業側からも着手金(企業評価料、案件化料)を受領していること
  2. 株式会社日本M&Aセンターと専属専任契約を締結いただいていること

以上の2点をクリアした譲渡企業(売り手)の案件以外は自社で取り扱うことができないルールとなっています。

一方、譲渡企業(売り手)側のオーナーは、譲受候補(買い手)企業が提案された際、「その企業は本当に譲り受ける気があるのか。」という点を非常に気にされます。その為、株式会社日本M&Aセンターでは、譲受側からも、着手金(情報提供料)を受領した上で進めるということを原則としています。

個別詳細資料の検討・質疑応答

提携仲介契約の締結を経て、M&A仲介会社が譲渡企業(売り手)からお預かりしている書類をもとに、M&Aの検討を具体的に進めます。
厳重な文書管理体制のもとで保管し検討終了後はM&A仲介会社へ返却が求められます。検討を進めるために質疑応答が行われケースもあります。

必要資料の一例

カテゴリ 必要資料
会社概要 会社案内、製品・サービスのカタログ など
決算資料 決算書、固定資産台帳、会計ソフトデータ など
時価関係資料 保険、株式、ゴルフ会員権保有に関する資料 など
事業内訳 3期分の売上内訳、仕入内訳、外注内訳
拠点・不動産 不動産登記簿謄本および公図、固定資産税課税明細書、不動産賃貸契約書
組織・人事規程 組織図、各種社内規程 など
従業員データ 従業員名簿、給与台帳、賞与台帳
契約関係 銀行借入金資料、リース契約書、取引先との取引基本契約書 など

書類は時系列が揃っているか、重要な点で不足がないか気を付けて見ておきましょう。
またこの段階で、下記のような観点で事業分析やリスクを予め検討しておくことは非常に重要です。

  • 対象企業の業務・財務・人的側面
  • 対象企業の収益力・成長性
  • 対象企業の企業価値
  • 統合可否・困難性
  • 統合した場合に見込めるシナジー効果
  • 法的リスク

一方、気をつけておきたいことは「あまり細かい点まで把握しようとしない」ことです。
対象企業についてすべてを把握しておきたい、という思いから、事前の質問が細かくなりすぎるケースがよく見受けられます。
M&Aのプロセスはいずれも大切な場面の連続ですが、最も重要なポイントであるといっても過言ではないのが、次のステップであるトップ面談になります。面談前の質疑応答の地点では、お互いまだ面識がなく、譲渡側(売り手)側のオーナーも自社の詳細情報をどこまで開示していいか不安視される人も少なくありません。もちろん慎重に確認を進めることは大切ですが、トップ面談やその後の買収監査を経て、最終的な条件も含めて交渉していく際に細部の確認を行うことがベターです。

自社の詳細情報を提出する側である譲渡側(売り手)のオーナーは、非常にナーバスになる傾向にあります。トップ面談前のこのタイミングでは、検討を進めるにあたり重要な点のみの確認に留めましょう。そうすることで次のトップ面談後、スムーズな質疑応答になる可能性が高まります。

終わりに

M&Aのプロセスにおいて最も重要な局面であるトップ面談。そのトップ面談前の検討フェーズについてご紹介してまいりました。トップ面談は双方の想い、戦略をすり合わせる場です。面接でも、審査する為の場でもありません。共通項を見つけ、事業の未来はもちろんのこと、相手が求めていることをプレゼンできるかどうかは非常に重要になるということを心に留めておきましょう。
トップ面談の成功に向けて、詳細資料を確認し、譲渡側(売り手)のオーナーが何を求めているか、M&A仲介会社の担当を通じて事前に確認を行いましょう。

詳しくは数々のM&Aを成功に導いた、実績豊富な専門のコンサルタントまでお気軽にお尋ねください。
お問合せはこちらから

著者

川畑 勇人

川畑かわばた 勇人はやと

日本M&Aセンター東日本事業法人チャネル統括部長

キーエンスにて製造業を中心とした中堅中小企業向けのコンサルティングセールスに従事した後、2014年4月、当社へ入社。中堅・中小企業から上場企業まで、様々な企業に対して、買収戦略~M&A実行~PMI(企業結合)を総合的にサポートしている。理論と経験に基づいたハードスキルと中小企業のM&Aに必要なソフトスキルを兼ね備え、数多くのリピーターをかかえている。

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