譲渡側(売り手)からみた、譲渡先の選定ポイント
⽬次
- 1. 一般的な譲渡先企業(買い手)の類型
- 1-1. 上場企業か、未上場企業か
- 1-2. 事業会社か、ファンドか
- 1-3. 譲渡(買収)の目的は何か
- 2. 譲渡先の選定ポイント
- 2-1. 事業規模と直近業績
- 2-2. 同業(業界内)か、異業種(別業界)か
- 2-3. 社風
- 3. 終わりに
- 3-1. 著者
自社の詳細情報(概要書)など必要書類が整ったら、いよいよ次は譲渡先、つまり譲受企業(買い手)探しです。
まず思い浮かぶのは同業の大手企業かもしれません。一方で、必ずしもそれだけとは限りません。ここでは、どんな譲受企業(買い手)が候補の選択肢として挙げられるかをふまえ、自社にとって最適な譲渡先企業を選定するポイントを整理します。
一般的な譲渡先企業(買い手)の類型
上場企業か、未上場企業か
上場企業とは、その名の通り証券取引所に上場している企業です。一般的に認知度が高い企業が多く、グループの一員となれば信用力やブランド力の強化が見込めます。「過去M&Aを経験している」企業が多いことも特徴の一つです。一方で、株主開示や買収監査等でM&A実行までに時間がかかる場合もあり、M&A後の経営統合においては柔軟な対応をとることが難しいといったケースもあります。
未上場企業とは、証券取引所に上場していない企業で、国内の株式会社の9割以上が該当します。企業規模は様々ですが、一部の未上場企業は上場企業に劣らない知名度を持ちます。多くの場合、株はオーナー(一族)が保有しており、一度話がまとまれば、スムーズかつ柔軟な対応も期待できます。
事業会社か、ファンドか
譲渡先企業(買い手)として、第一に想像するのは事業会社でしょう。特に同業であれば自社との比較がしやすく、イメージしやすい相手です。一方で、近年はベンチャーキャピタルファンド、プライベートエクイティファンドといった投資ファンドが譲渡先企業(買い手)となるM&Aが急増しています。
投資ファンドが譲渡先となるメリットは以下3点が挙げられます。
- 個別の会社として色がつきにくい
- ファンドの成長支援により、会社が大きく成長できる可能性がある
- オーナーの継続的な一部株式保有など柔軟なスキームが検討できる
一方で、次のようなデメリットもあります。
- 投資ファンドに投資対象として選ばれるハードルが高い
- ファンドは最終的には出資した企業の株式を売って、投資した資金を回収する。(エグジット)
- 株式上場や事業会社への更なる譲渡と同様に、創業者や経営陣が買い戻すケースも考えられ、後継者不在の解決にならない可能性がある。
未だに「ハゲタカ」イメージを持たれることもある投資ファンドですが、未上場企業の譲渡にあたり敵対的買収はありません。(譲渡企業のオーナーの本意に沿わない場合は、売却しなければいいだけです)ファンドの投資対象になること自体、自社が優れた企業である証です。機会があれば、候補先として検討する価値は大いにあります。
譲渡(買収)の目的は何か
事業会社の場合、他にも考慮したいポイントがあります。それは「何のための譲渡(買収)か」という点です。最も一般的なのは、本業の強化・拡大のためという理由です。同業同士のM&Aの多くがこれに該当し、統合後のシナジー(相乗効果)もイメージしやすいM&Aとなります。他方で、新しい収益源を確保するためという動機も存在します。この場合、譲渡(買収)は新規事業の立ち上げにかかる時間を買う、全く新しいシナジーを期待する、といった狙いからM&Aを実行します。例えばWebシステムの会社とベーカリーなど、異業種/異業態同士の組み合わせになることもあります。
譲渡先の選定ポイント
次に、譲渡先企業(買い手)の選定をするにあたり、重要となる見極めポイントを確認しましょう。
事業規模と直近業績
譲渡先企業(買い手)を見極める上で一番初めに参考になるのは、事業規模や直近業績といった定量的な情報です。売上、利益といった基本的な情報は、M&A仲介会社が把握している場合も多くあるので、担当者に確認してみましょう。
一方、最新の詳細情報は、専門機関・サービスを使わない限り把握が難しいものです。あまり神経質にならず、一つの参考値として、未上場企業でも財務優良な企業がたくさんある、といった、視野を広げるための手段として活用することが効果的です。
同業(業界内)か、異業種(別業界)か
上述した譲渡(買収)目的にも繋がりますが、その企業が同業(業界内)か異業種(別業界)かは重要なポイントです。期待できるシナジー(相乗効果)が大きく異なるからです。一概に優劣を付けられるものではありません。
検討の初期段階では、社員への影響を最小限にしたい意図などから、同業(業界内)のM&Aを希望されるケースもあります。しかし縮小傾向にある業界ですと、積極的な譲渡先企業(買い手)が見つからず時間ばかりが過ぎる、といったことになりかねません。逆に、業界が狭い場合、情報漏洩リスクなどの懸念から、あえて同業は避け、異業種から候補先を探すこともあります。ここでも、最初から条件を絞り過ぎず、自社固有の特徴をふまえ、可能な限り幅広い可能性を模索することが、早期に、満足度の高いM&Aを実行する上で重要になります。
社風
最後は、譲渡先企業(買い手)のリストアップから更に進んだポイントです。具体的な候補先が現れ、トップ同士が面談するタイミングになれば、お互いの社風がマッチするかも重要な論点です。相手企業のオフィスや工場を見学することも検討材料として有効です。実際「譲渡先候補(買い手)から良い条件を提示されたが、自社の社風と合わないと思いお見送りした」というケースもあります。
終わりに
以上、譲渡先を正しく見極めるための選定ポイントについて紹介してまいりました。
検討段階から業種、地域など選択肢を狭めずに、目的に応じて多面的に可能性を探ることが満足度の高いM&Aのカギとなります。そのために欠かせないのが情報収集。まずは全国・海外含め広い地域で経験・実績豊富なM&A仲介会社などプロフェッショナルに相談することをおすすめします。
詳しくは専門のコンサルタントまでお気軽にお尋ねください。
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