譲渡・売却先の探し方、選び方のポイント

M&Aの流れを学ぶ
更新日:
理想の買い手企業が見つかります。会社売却先シミュレーションM-Compass。シミュレーションする

会社の譲渡・売却を通じてどういう会社になりたいか、そのためにどんな相手に会社を売却したいか、イメージし明確化することは非常に大切です。
本記事では、売却する相手を探す時、そして具体的に検討する時のポイントについてご紹介します。

M&Aのプロに、まずは相談してみませんか?

日本M&Aセンターは、ご相談からM&Aの成約まで、経験豊富なM&Aのプロが丁寧にサポートいたします。会社の売却をご検討の方は、まずは無料相談でお悩みをお聞かせください。

この記事のポイント

  • M&Aの譲渡先を探す際は、同業種か異業種か、近隣か遠隔地かを考慮し、シナジー効果を見込むことが重要である。
  • 譲渡先が事業会社、ファンド、または個人かによっても戦略が異なり、特にファンドは経営資源を提供するため成長の可能性がある。
  • 譲渡先の目的や企業文化の一致を確認することが必要であり、過去のM&A実績や現地訪問を通じて事前に理解を深めることが推奨される。

⽬次

[非表示]

譲渡先は同業種か、異業種か?

相手の業界、業種が同じか、異なるのかによって、期待できるシナジー(相乗効果)は異なるため重要なポイントです。

同業への譲渡

同業の会社との統合であれば、自社との比較がしやすく、互いに足りないものを補うという観点で統合後のシナジーをイメージしやすい傾向にあります。また、生産効率の向上やコスト削減、市場シェアの拡大、競争力の強化のほか、バリューチェーンの補完による関連事業領域の拡大も期待できます。

同じ業界内で相手企業が持つ技術やノウハウを取り入れることで、製品・サービスの改善や新たなイノベーションが生まれる可能性も考えられます。

しかし、自社の業界が縮小傾向にある場合、同じ業界でばかり探していても、積極的な買い手が見つからず時間ばかりが過ぎることになりかねません。

また、ニッチな業界の場合、自社がM&Aを検討しているという情報が思わぬところから漏洩するリスクを避けるため、あえて同業ではなく異業種から候補先を探すケースもあります。

異業種への譲渡

一方で異なる業種の会社であれば、シナジーによっては自社単独では不可能だった新領域への展開など、成長可能性が広がります。

新たな事業機会や市場への進出が可能になるかという点で検討する
を評価しましょう。異業種の会社との統合によって、新しい市場や技術、顧客ベースにアクセスできる可能性があります。

また、事業の多様化が可能になり、市場変動や業界特有のリスクへの対策が取れます。リスクの分散や事業の安定化が期待できるかを考慮しましょう。異業種の企業との統合によって、

新たな技術やノウハウを獲得し、新たなイノベーションや競争力の向上が期待できます。

同業種か、異業種か、最初の時点では条件を絞り過ぎず、自社固有の特徴をふまえ、可能な限り幅広い可能性を模索することが、早期に、満足度の高いM&Aを実行する上で重要になります。

譲渡先は近隣にあるか、遠隔地にあるか?

近隣地域の会社との統合では、地理的な近さにより、統合後のプロセスがスムーズに行える可能性があります。また、統合による事業成長で、グループだけでなく地域の雇用や地域経済の発展に貢献できる可能性も期待できます。

一方、遠隔地にある会社との統合では、地域に依存しない事業展開や市場の多様化ができるため、新たな顧客層の獲得や事業領域への進出、リスクの分散効果が期待できます。
遠隔地にある会社でも、M&A後にPMIのコンサルタントが両社を行き来し、統合プロセスをサポートするという側面もあります。

譲渡先は事業会社か、ファンドか、個人か?

一般的に、譲渡・売却先として多くの経営者が思い浮かべるのは「事業会社」です。
近年は、中小企業のM&AにおいてもPEファンドなどが買い手となるケースが増えています。

PEファンドは、譲受けた会社へ様々な経営資源(人材やノウハウ、資金など)を投じて、経営をサポートしながら、企業価値を上げていきます。
そのため、ファンドへの譲渡は会社を飛躍的に成長させられる可能性があり、将来的にIPOへの近道になるほか、親族や社内関係者に社長を継がせたり、プロ経営者を社長として招聘してもらうなど選択肢が広がります

また、経営者を志す個人(サーチャー)が、ファンドから資金を調達し、自らが承継したい会社を探して、オーナーと交渉してM&Aを行うケースも生まれています。M&A後はサーチャーが社長としてその会社の経営を担います。

サーチャーと会社がお互いを見極める期間を十分にとり検討できるため、双方にとって自分の価値観に合った相手を探しやすくなります。

譲渡先は上場企業か、未上場企業か?

上場企業は、一般的に認知度が高く、グループの一員となることで、自社の信用力やブランド力の強化が期待できます。M&Aを積極的に進めるケースも多く、両者ともに統合後のシナジー、それぞれに期待する役割を描きやすいことも特徴です。

一方で、株主開示やデューデリジェンスなどM&A実行までの意思決定、手続きに時間を要するケースもあります。

未上場企業は国内株式会社の9割以上を占め、企業規模は様々ですが、上場企業と同様の知名度・ブランドを誇る企業も少なくありません。多くの場合、オーナー一族が株式を保有しており、一度話がまとまれば、スムーズかつ柔軟な対応も期待できます。

次に、候補企業が現れた時に、事業規模や業績など基本的な情報のほか、しっかり確認しておくべきポイントについてご紹介します。

譲渡先の目的は何か?

売却先の目標や戦略が、自社のM&Aの目的、ビジョンや事業戦略と合致していることが重要です。

売り手が候補企業を検討する際に、相手が何を目的に買収をしようとしているのか、その先の戦略までしっかり把握できているケースは意外と多くありません。

「事業成長、拡大」という表面的な言葉だけでなく、具体的に自社のどこに魅力を感じて、どのようなシナジーを期待しているか。相手のM&A後のビジョンについて、売り手側も詳しく把握しておく必要があります。

また、過去のM&A実績も参考になります。これまで譲り受けた会社と現在どのようなシナジーを生み出しているのか、自社とM&Aをした場合の予想図が描けるため、必ず把握するようにしましょう。

譲渡先の企業文化・価値観とギャップはないか?

売却先との文化や価値観の一致も重要です。組織文化や取り組み方、人材採用における価値観などが合致しているかを見ておく必要があります。

これらは書類だけでは判断できないため、M&A仲介会社からの情報やトップ面談でのコミュニケーション、相手企業のオフィスや工場など現地を見学することも検討材料として有効です。

「好条件を提示されたが、実際に会ってみて自社の社風と合わないと思いお見送りした」という譲渡オーナーも少なくありません。文化の違いがM&A後の統合を困難にする可能性があるため、M&Aの目的と合わせてここはしっかり確認しておきましょう。

終わりに

以上、譲渡・売却先を探す、選ぶ際のポイントについてご紹介しました。

初期の検討段階から業種、地域など選択肢に固執せず、それぞれのメリットを意識しながら、目的や状況に応じて広く可能性を探ることが満足度の高いM&Aの鍵になります。

そのために欠かせないのが情報収集です。まずは経験・実績豊富なM&A仲介会社などプロフェッショナルに相談することをおすすめします。

M&Aをするとしたらどのような相手が候補に挙がるのか。M&Aについて、一度話を聞いてみませんか?ご相談は無料、秘密厳守で対応します。

著者

M&A マガジン編集部

M&A   マガジン編集部

日本M&Aセンター

M&Aマガジンは「M&A・事業承継に関する情報を、正しく・わかりやすく発信するメディア」です。中堅・中小企業経営者の課題に寄り添い、価値あるコンテンツをお届けしていきます。

STEP1

M&Aの基礎知識を学ぶ

STEP2

M&Aの流れを学ぶ

STEP3

M&Aの専門知識を学ぶ

「譲渡企業・M&Aの流れ・株式譲渡」に関連する学ぶコンテンツ

M&Aはどこに相談する?M&A支援機関、それぞれの特徴

M&Aはどこに相談する?M&A支援機関、それぞれの特徴

後継者不在や人材不足、円安による原材料の高騰…経営を取り巻くさまざまな課題を解決する手法として、「M&A」への注目が高まるにつれ、M&Aを支援する機関も増え、M&A業界は急速に拡大しています。情報が氾濫する世の中で、長年育ててきた大切な会社の未来を託す相手を見つけるため、経営者はどうすべきか―。M&Aを検討する際のいくつかの選択肢を紹介します。※本記事は「広報誌MAVITAVol.042024」の

売り手が自社の情報を開示する流れ

売り手が自社の情報を開示する流れ

譲渡・売却先の探し方、選び方のポイントでご紹介した通り、譲渡・売却したい相手の条件を明確化した後、具体的な相手探しを進めます。M&Aを検討している、という事実は売り手企業にとって機密情報です。どのように情報管理を行いながら、相手企業に情報を共有し、M&Aの検討を進めていくのでしょうか。本記事では、売り手が情報を開示していくプロセスを中心にご紹介します。M&Aのプロに、まずは相談してみませんか?日本

企業概要書(IM)の準備

企業概要書(IM)の準備

企業概要書(IM)は譲受け企業が譲渡企業を評価し、M&Aの検討を進めるか判断する重要な書類の1つです。本記事では、IM(企業概要書)の概要、記載する内容や作成時の注意点などについて解説します。M&Aのプロに、まずは相談してみませんか?日本M&Aセンターは、ご相談からM&Aの成約まで、経験豊富なM&Aのプロが丁寧にサポートいたします。会社の売却をご検討の方は、まずは無料相談でお悩みをお聞かせください

PMIとは?M&Aを成功させる鉄則、準備から流れ、事例を専門家が解説!

PMIとは?M&Aを成功させる鉄則、準備から流れ、事例を専門家が解説!

PMIとは?PMI(PostMergerIntegration:ポスト・マージャー・インテグレーション)とは、M&A成立後に行われる統合プロセスを指します。これはM&Aの目的を実現させ、成果を最大化するために不可欠なプロセスです。PMIは「経営の総合科目」と呼ばれるように、定量的な面だけでなく、人材や企業文化など定性的な面も考慮することでM&Aの成功につながります。具体的には「新経営体制の構築」「

M&A仲介とは?FAとの違いや活用するメリット、選ぶポイントを解説

M&A仲介とは?FAとの違いや活用するメリット、選ぶポイントを解説

M&A仲介は、企業の合併や買収を円滑に進めるために重要な役割を果たします。専門的な知識と経験を持つ仲介者が、売り手と買い手の間に立ち、最適なマッチングを実現します。市場の動向や企業の価値を的確に分析し、交渉をサポートすることで、成功に導くことが可能です。本記事では、M&A仲介の役割や活用するメリット、FAなど他の支援機関との違いについてわかりやすく解説します。M&Aのプロに、まずは相談してみません

企業価値評価(バリュエーション)とは?M&Aで用いられる手法、算定方法を解説

企業価値評価(バリュエーション)とは?M&Aで用いられる手法、算定方法を解説

M&Aにおける「企業価値評価」とは、文字通り企業全体の価値を評価することを意味します。本記事では企業価値評価の枠組みにおいて、特に「株式価値」の算定に着目してご紹介しますが、まずは「企業価値」「事業価値」「株式価値」の意味するところの違いを、しっかり区別しておきましょう。60秒で「いくらで売却できるか」試算しませんか?株価算定シミュレーションは、中小企業評価の専門会社である「企業評価総合研究所」が

「譲渡企業・M&Aの流れ・株式譲渡」に関連するコラム

社長交代の流れ、必要な手続きを解説

M&A全般
社長交代の流れ、必要な手続きを解説

企業にとって、社長の交代は、経営方針や企業の未来に大きな影響を及ぼす極めて重要なプロセスです。本記事では、代表取締役社長が交代するタイミング、必要な手続きについて概要をご紹介します。※本記事では、「社長=代表取締役」という前提で、社長交代が必要となるケースについて解説します。M&Aのプロに、まずは相談してみませんか?日本M&Aセンターは、ご相談からM&Aの成約まで、経験豊富なM&Aのプロが丁寧にサ

会社の身売りと会社売却の違いとは?

M&A全般
会社の身売りと会社売却の違いとは?

新聞や経済ニュースなどで時折目にする「会社の身売り」という言葉は、会社売却とどのように違うのでしょうか。本記事では、身売りが指す意味合い、会社売却の概要についてご紹介します。日本M&Aセンターは1991年の創業以来、数多くのM&A・事業承継をご支援しています。中小企業のM&Aに精通した専任チームが、お客様のM&A成約まで伴走します。詳しくはコンサルタントまでお問合せください。会社売却・事業承継のお

会社売却後どうなる?会社、社長、社員への影響を解説

M&A全般
会社売却後どうなる?会社、社長、社員への影響を解説

中小企業のオーナー経営者が会社売却を検討する際「売却した後、関係者に与える影響が一番気がかり」と考える人は少なくありません。本記事では、中小企業が会社売却をおこなう際、会社関係者、取引先などそれぞれのステークホルダーに与える影響、メリット、注意点についてご紹介します。M&Aのプロに、まずは相談してみませんか?日本M&Aセンターは、ご相談からM&Aの成約まで、経験豊富なM&Aのプロが丁寧にサポートい

待ったなしの事業承継問題。2025年問題、M&A増加の背景をわかりやすく解説!

事業承継
待ったなしの事業承継問題。2025年問題、M&A増加の背景をわかりやすく解説!

日本M&AセンターでM&Aを実行されたお客様の多くは「M&Aっていいものだね!」とおっしゃられます。その思いや実例をより広くお届けするために今春からYouTubeチャンネルではじまった「いいM&Aチャンネル」。本記事では動画の概要をご紹介します。※動画本編はこちらから2021年のM&A件数は過去最多に岡本:早速ですけど、M&Aは年間どのくらい行われているかご存じですか?縄田:いやいや、この業界長い

会社売却とは?売却の流れやメリットや注意点、事例を解説【2025年版】

M&A全般
会社売却とは?売却の流れやメリットや注意点、事例を解説【2025年版】

会社売却とは、会社の経営権や事業を第三者に売却し、対価を受け取るプロセスを指します。近年は、後継者問題の解決や企業の成長促進を主な目的として、中小企業の会社売却が増加傾向にあります。現在様々な問題に直面している経営者はもちろん、そうでない方も、会社売却の手続きや税制、メリットなどについて知っておくことで、より柔軟な経営判断ができるようになります。本記事では、企業売却の流れや税金に関する基礎知識のほ

株式譲渡とは?M&Aにおける流れ、税金をわかりやすく解説

M&A全般
株式譲渡とは?M&Aにおける流れ、税金をわかりやすく解説

株式譲渡とは株式譲渡とは、売り手が保有する株式を買い手に売却し、会社の経営権を引き継ぐ手法です。株主は比較的簡便な手続きで対価を受け取ることができ、売り手企業の法人格はそのまま存続します。株主構成が変化する以外には、会社への影響が比較的少なく、独立性を維持しやすいため、中小企業のM&Aで多く用いられています。M&Aのプロに、まずは相談してみませんか?日本M&Aセンターは、ご相談からM&Aの成約まで

「譲渡企業・M&Aの流れ・株式譲渡」に関連するM&Aニュース

エイチームHD、子会社のエイチームフィナジーをSasuke Financial Labへ売却

株式会社エイチームホールディングス(3662)は、連結子会社である株式会社エイチームフィナジー(大阪府大阪市)の発行済株式全てを、SasukeFinancialLab株式会社(東京都千代田区)に譲渡することを決定した。エイチームフィナジーは、保険比較・FPに無料相談できる総合保険サイト「ナビナビ保険」等を企画・開発・運営を行っている。SasukeFinancialLabは、デジタル保険代理店「コの

アジアパイルHD、ミャンマーのコンクリートパイル製造子会社を現地合弁パートナーへ売却

アジアパイルホールディングス株式会社(5288、以下:アジアパイルHD)は、連結子会社(特定子会社)であるVJPCo.,Ltd.(ミャンマー、以下:VJP社)の合弁パートナーであるMyanmarV-PileCo.,Ltd.(ミャンマー、以下:MVP社)に、アジアパイルHDが保有するVJP社の全株式を譲渡することを決定した。アジアパイルHDは、建設基礎で国内トップのジャパンパイルを中核とする持株会社

三井金属鉱業、三井金属アクトをハイレックスコーポレーションへ売却

三井金属鉱業株式会社(5706)は、連結子会社である三井金属アクト株式会社(神奈川県横浜市)の全株式を、株式会社ハイレックスコーポレーション(7279)に譲渡することを決定し、株式譲渡契約を締結した。また、本株式譲渡に伴い、特別損失を計上する見込みとなることを発表した。三井金属アクトは、ドア周り専門自動車機器メーカーで、自動車のドア構成製品から電動ドアシステムまで、企画・開発・製造を一貫して自社で