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M&Aのディスクロージャーとは?押さえておきたいポイント

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M&Aのディスクロージャーとは?押さえておきたいポイント
M&Aは「秘密保持に始まり、秘密保持に終わる」と言われるほど、秘密保持を重視しています。一般的には最終契約書にサインされるまで、たとえ身近な自社の従業員であってもその事実は公表されることはありません。情報漏洩により、M&Aの予定を第三者に知られては会社の存続に関わる問題となりうるからです。本記事ではあらかじめ押さえておきたいポイントをご紹介します。

対象者別の対応

譲渡側(売り手)オーナーは、M&Aのデリバリー(実行)の前後に、従業員、取引先など関係するステークホルダーに対し、M&Aの実行を関するディスクロージャー(Disclosure:情報開示)を行います。
ディスクロージャー(情報開示)のタイミングは、M&Aを実行した直後というケースが一般的です。また、必要に応じて、重要取引先や幹部社員、M&Aプロセスに大きく関わってもらう従業員(経理担当者等)には、事前に開示することがあります。
重要取引先や幹部社員への事前開示や賛同がクロージング条件(資金決済条件)となることもあります。

ディスクロージャー(情報開示)を行う対象は主に以下の通りです。

  • 従業員
  • 取引先企業
  • 金融機関(メインバンクなど)
  • プレス(新聞社等)
  • 証券取引所 ※上場企業の場合

対象者別にポイントを見ていきましょう。
*開示についてはケースバイケースであることが多いため、あくまで一般的なものとしてご紹介します。

従業員

対象者の中でも特に「従業員」に対しては、伝える段取り、タイミング、メッセージを慎重に検討して行う必要があります。
自分の勤めている会社が他社に譲渡された、という重要な事実を経営者からではなく「新聞で初めて知った」「他社の人に言われて知った」と伝聞という形で耳にしたとしたら。その時の従業員の心境を想像してみてください。ディスクロージャーの進め方ひとつで、社員の今後の士気に重大な影響を与えてしまいます。したがって、正式契約の直後に幹部社員への開示と段取り、そして一般社員への発表を上手に行わなければなりません。従業員へのディスクロージャーが最も重要で難しいのは「やり直しがきかない」という点です。
次に、具体的な開示のポイントについてご紹介します。

社員の中でも優先すべきは幹部社員・ベテラン社員

中堅・中小企業の幹部社員は、経営者と苦楽を共にし長年支えてきた為、自社や経営者への思い入れが人一倍強いケースが多いものです。それなのにM&Aという自社の存続に関わる重要事項を、一般社員と同じタイミングで知らされた場合「なんで先に知らせてくれなかったのか」「自分の存在はそれほど重要ではなかったのか」と信頼関係を失い、最悪の場合、退職してしまう事態に至る可能性もあります。

M&A実行後の統合プロセスであるPMI(Post Merger Integration;ポスト・マージャー・インテグレーション)を成功させるためには、自社のキーマンである幹部社員、ベテラン社員の協力は必要不可欠であるため、特に慎重且つ納得してもらえる丁寧な説明が必要です。

説明する場には、譲渡側(売り手)と譲受側(買い手)揃うことが大事

従業員全体に対しての説明は、デリバリー(M&Aの実行)の当日、終業前後に全員を集めて行われるケースが一般的です。その場には譲渡側(売り手)と譲受側(買い手)の役員らが揃い、一緒に開示説明を行われることが理想的です。従業員の一番の不安は「これまで通り働き続けることができるのかどうか」だということを理解し、彼らが抱く不安や疑問を一緒にその場で解決していくのです。

情報開示を受けた従業員からの質問としてよく挙がるのは次の2点です。

  1. なぜM&Aという選択を行ったのか
  2. 今後、自身の処遇はどうなるのか

例えば1.は譲渡側(売り手)の経営陣から、2.については譲受側(買い手)の担当者から直接説明された方が従業員の納得感は高まるでしょう。丁寧、且つ従業員目線で不安や疑問を払拭し、社内全体の士気が高めることがスムーズな統合の第一歩につながります。

表現に気を付ける

従業員には、今回のM&Aが友好的且つ、企業成長のために実施するポジティブなものであると認識してもらうために、極力ネガティブな表現は避けるようにしましょう。「M&A」「や「買収」等、人によってネガティブに捉えられかねない表現は避け、「資本提携」や「結婚」「融合」等の表現を用いて、今回のM&Aはあくまで友好的且つ対等なものであると伝えましょう。

休日前の開示は避ける

例えば土日休みの場合、金曜の夕方に社内で開示が行われたとします。急な話で不安を抱えたまま週末を過ごす社員の中には、転職を検討する者も出てくるかもしれません。開示のタイミングがコントロールできる状況であれば、極力週の前半に開示を行うことをお勧めします。不安を覚えた社員に対して、さらに説明が必要になった場合でも、その週の中で個別に面談を行うなどリカバリーできるためです。

取引先企業

取引先との友好な関係は、今後の事業を運営する上で極めて重要です。開示方法は譲渡側(売り手)と譲受側(買い手)が揃って取引先企業を訪問する、あるいは挨拶状を送付してお知らせすることが一般的です。
デリバリー前に取引先企業のリストを作成し、取引関係の重要度に応じて方法やタイミングをしっかりと当事者間で打合せをしておきましょう。

また、取引先と取引基本契約を締結している場合、「通知条項」等の名目で代表者変更や株主変更の事実が通知義務となっていることがあります(チェンジオブコントロール条項:)。通知期限や方法が詳細に定められている場合もあるので、あらかじめ取引先との契約書を確認し、定められた内容に沿ってしっかりと対応しましょう。

金融機関(メインバンクなど)

取引先金融機関に対しても、今後の円滑な資金調達やその他金融取引、地場情報の収集等の観点で、デリバリー後も友好な関係を築くことが大切です。一般的に最終契約書に譲渡側(売り手)の保証債務解除を定めている場合も多いため、少なくとも融資取引のある金融機関へはデリバリー後、速やかに譲渡側(売り手)と譲受側(買い手)が揃って訪問し、説明を行うのが望ましいでしょう。

プレス(新聞社等)

プレスへの開示をするかどうかはケースバイケースです。今後の事業戦略上、マーケットにM&Aの事実を周知させることが得策と思う場合は検討しましょう。一般的には譲渡側(売り手)の本社所在地のある主要地方紙数社に開示することが多くあります。

証券取引所

M&Aの当事者のいずれかが上場企業の場合については、金融商品取引法上の開示規制に加えて、金融商品取引所の規則に基づく情報開示制度である適時開示に留意する必要があります。

適時開示とは、上場会社に対して、

  1. 重要な決定事項、発生事実の情報
  2. 決算に対する情報
  3. 株式・(支配)株主に関する情報

の開示を求め、投資家が適切な投資情報を入手し、投資判断を可能とさせる情報開示制度のことです。
例えば東京証券取引所においては、M&Aの最終契約書を締結する前段階であっても、基本合意書の締結等の際に、適時開示に該当する事項を会社が実質的に決議・決定すれば、直ちに情報開示が必要とされています。

インサイダー取引防止の注意点

最後に、ディクロージャ―(情報開示)を行う上で心に留めておかなければならない注意点を紹介します。
M&Aでは、譲受側(買い手)が上場企業等またはその子会社となる場合があります。その場合、下記に定めるインサイダー取引を行わない様、最大限の注意を払う必要があります。
過去、譲受側(買い手)が上場企業(A社)のケースにおいて、最終条件の交渉をしている最中、譲渡側(売り手)のオーナーが「私は今回の件でA社のファンになりました。経営の応援をすべく先日A社の株式を購入しました。」と発言したことを機に、それまで順調に進んでいた商談が破断となった事例があります。
悪意がなくとも、インサイダー取引規制に違反した場合は、M&Aが破談となるだけではなく、法に基づく厳しい罰則が科される可能性があるので、最大限の注意を払いましょう。

終わりに

このように多くの関係者へディスクロージャーを行う際には、伝える相手の立場・目線で、様々なケースを想定しながらシナリオを組み立てる必要があります。
中堅・中小企業のM&Aは後継者不在を解消する手段としてM&Aを選択し、隣接業種へ展開するケースが多く見られます。そのため、従業員の雇用確保が前提となり、譲受側(買い手)からしても譲渡側(売り手)の専門性を有する社員たちに辞められては困るケースがほとんどです。つまり友好的なM&Aを前提としているケースが一般的であるため、両社の事情やニーズを初期の検討段階から把握し交渉を進める仲介会社の利用が、中堅・中小企業のM&Aに向いている理由のひとつに挙げられます。
M&A仲介会社の大手である日本M&Aセンターは、経験豊富なコンサルタントが大切なディスクロージャーの場面でも協力にバックアップし、スムーズなM&A実行に向けてサポートを行っています。

詳しくは数々のM&Aを成功に導いた、経験・実績豊富な専門のコンサルタントまでお気軽にお尋ねください。
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