M&Aを学ぶ

M&A成功のカギを握るトップ面談とは。押さえておきたいポイント

M&Aの流れを学ぶ

⽬次

[表示]

トップ面談のイメージ

トップ面談とは

M&A実行プロセスにおける「トップ面談」とは、譲渡企業(売り手)と譲受け候補企業(買い手)両社の経営者同士が直接顔を合わせることです。結婚でいう「お見合い」に相当するもので、互いの事業に関する疑問を解消するとともに、決算書などの文字や数字では見えない相手(経営者)の人間性や経営理念等を把握し、相互理解を深める場となります。

トップ面談の目的

トップ面談は譲渡企業と譲受け候補側の意思決定権者の最初のコンタクトです。
ご挨拶の場という意味合いもありますが、主な目的は譲渡企業と譲受け候補企業の双方が相手側の人間性や企業文化、ビジネスへの理解を深め、疑問点を解消することです。それによって最終決断の重要な材料の一つとし、M&A後の統合プロセス(PMI)を成功に導くことにあります。
PMIについてはこちら

続けて、重要なポイントをご紹介してまいります。

経営者の人間性、経営理念等を確認する

経営者としての生き方や企業文化が近ければ、M&A実行後もうまく引継ぎができる可能性が高いと言えます。一方で、あまりにも違う理念や考え方で経営が行われている場合は、PMIが難航するケースも少なくありません。
たとえば「従業員は人材であり、家族同様大切に育てて大事にする」という文化の会社と、そうでない会社がM&Aを行ってもうまくいくとは考えられません。これは、経営方針として「良い」「悪い」の問題ではなく、文化、理念の相性の問題なのです。
経営者としての生き様や理念に共通したものがあり、今後の将来ビジョンが共有できれば、PMIもスムーズに進み、大きなシナジー効果を生み出すことが期待できるでしょう。
譲渡側(売り手)は「この方(達)に会社の経営と従業員の未来を託したい」、譲受側(買い手)は「この方が経営してきた会社であればリスクを取ってでも引き継ぐことができる」と思えるかどうかが重要です。

譲渡側(売り手)が譲受側(買い手)を理解する場

譲渡企業にとっては相手(譲受け候補企業)が自社のどの部分に関心を持ち、魅力に感じているか、M&A後のビジョンをどのように考えているのか、直接確認できる場となります。
また、トップ面談を行うタイミングでは譲渡側は譲受け候補企業のことを、十分には知らない状態であることが一般的です。事前に譲受け候補企業(買い手)のホームページを参照するなど自ら情報収集を行うほか、仲介会社などからの資料によく目を通しましょう。企業概要や事業内容等に関する疑問点を質問事項としてまとめておき、トップ面談で確認するとよいでしょう。

譲受側(買い手)の自己アピールの場

1社の譲渡企業に対し、複数の企業が譲受け候補として名乗りを上げている状態で、トップ面談が行われることがあります。その場合、トップ面談実施後にそれぞれの譲受け候補企業から譲渡側に対し提示条件を記載した「意向表明書」を提出します。原則それに基づき譲渡企業において交渉を継続する譲受け候補企業を1社、選定します。
この選定の際「意向表明書」だけではなく、トップ面談での印象が大きく影響を及ぼしますので、譲受け候補企業としては譲渡側から選んでもらえるように、自社の考え方や魅力をしっかりとアピールしましょう。ちなみに意向表明書は、譲渡側へ本気度を示すものでもあることから、よくラブレターに例えられます。

トップ面談のタイミング

トップ面談は、譲渡企業の決算書等を基に書面での初期検討を行った後、譲受け候補企業が「前向きに検討を続けたい」と判断したタイミングで実施されます。
1回目のトップ面談で企業文化や経営理念、事業内容を理解しきれなかった場合には、複数回実施されることもあります。

トップ面談の出席者

トップ面談の出席者は大きく譲渡側、譲受け企業側、紹介元の3つに分けられます。また、仲介会社を介している場合、M&Aコンサルタントも同席し司会進行を担います。

譲渡企業(売り手)側の出席者

意思決定権者である株主、経営者が出席します。
経営者が非株主の場合、その時点でM&Aを開示しているのであれば、譲受け企業からの質問対応のためにも同席させることがあります。
株主が複数いる場合、筆頭株主または議決権の過半数を有する株主らが出席します。
また、仲介会社を介している場合、譲渡企業とのアドバイザリー契約にあたり取引金融機関や顧問の会計事務所などの紹介を受けているケースがあります。その場合、金融機関の支店長や会計事務所の先生らも同席されることがあります。

譲受け候補企業(買い手)側の出席者

意思決定権者である経営陣やM&A担当責任者が出席します。
場合によっては技術部門、工場部門の責任者も同席させることがあります。
但し、譲渡企業(売り手)側の出席者に比べ譲受け候補企業(買い手)側の出席者が多い場合、譲渡企業側が過度な圧迫感を抱く可能性もありますので、人数調整には留意が必要です。

トップ面談の場所

トップ面談は、譲渡企業のオフィスの雰囲気を見てもらうために、譲渡企業の社内で行うことが一般的です。ただ、秘密保持の関係から、仲介会社のオフィスやホテルの会議室、金融機関の応接室などで行ったりすることもあります。
また、トップ面談を複数回行う場合、2回目を譲受け候補企業(買い手)のオフィスで行ったり、譲渡企業(売り手)が製造業の場合、2回目のトップ面談を工場見学に充てることもあります。

譲渡側(売り手)が意識しておくべきポイント

トップ面談に臨む上で、譲渡企業(売り手)側が気を付けるポイントは大きく以下の4点です。

アドバイザーがいる場合、直接の条件交渉をしない

トップ面談は結婚でいう「お見合い」にあたります。お互いの人間性や経営理念、事業内容への理解を深め、信頼関係を構築すべき場なのに、「株価は〇〇百万円を希望する。」という発言が出ると、一気に場が冷め、相手先からの不信感を招く可能性が高いです。
アドバイザーがいる場合は、当事者に代わり、豊富な経験に基づく適切な交渉をしてくれますので、安心して任せましょう。

一方的に話し過ぎない

トップ面談で相手先に自社をより深く理解して頂くため、熱心に説明することはいいことですが、時に、マイクを一切離さず話過ぎとなり、相手先がずっと聞く側に回ったケースがあります。
この場合、相手先が聞きたいことを十分に質問できず、また自身も相手先への理解が不十分となり、お互いに消化不良のまませっかくのトップ面談が終了してしまう可能性があります。
この様な事態を避けるため、お互いに話す量(マイクを持つ時間)は半々にする、という意識を持つことが大切です。

質問には正直に、正確に答える

トップ面談では、お互いに相性や価値観、経営理念等を共有し、相互理解を深めた上でその後のステップに進んでいきます。
ただ、その際、事実と異なる情報を伝えたり、大げさな表現で伝えてしまい、後にトラブルに繋がったケースがあります。
事実と異なる情報は、後に行われる買収監査(デューデリジェンス)によって発覚することも多く、場合によっては譲受け候補企業(買い手)が不信感を抱いたり、それまでうまく進んでいたM&Aプロセスが破断する場合もあります。
M&Aが無事に成立し、その後成功するためには双方の信頼関係と誠意ある対応が必要なため、譲受け候補企業(買い手)からの質問には正直かつ、正確に答えましょう。

前向き(建設的)な返答を心掛ける

トップ面談での譲受け候補企業(買い手)からの質問に対し、「それはできません」「無理です」「やったことはありません」などという返事のみを行い、譲受け候補企業側が譲渡企業への理解が進まず破断となってしまったケースがあります。
お互いに企業文化や事業内容、経営資源が異なるため、現時点でできることできないことはあって当然です。トップ面談を通して相互理解を深め信頼関係を構築し、M&Aを成功させるためには譲渡企業(売り手)側の質問応対には前向きな姿勢が望まれます。
例えば、「〇〇すればできるようになるかもしれません。」「〇〇を譲受け候補企業(買い手)で補完して頂ければ検討できます。」など、事実に基づきつつ、返事を前向きに建設的に結ぶことを心掛けましょう。

譲受側(買い手)が意識しておくべきポイント

トップ面談に臨む上で、譲受け候補企業(買い手)側が気を付けるポイントは大きく4点です。
なお、前章でも記載した「アドバイザーがいる場合、直接の条件交渉をしない」「一方的に話し過ぎない」の2点は共通事項なので、残り2点を記載します。

あらかじめ将来ビジョン、期待する相乗効果を明確にする

トップ面談で譲渡企業(売り手)側は、「なぜ自社に関心を持ったのだろう」「仮にM&Aをした場合どのようなビジョンを描いているんだろう」「両社にどのようなメリット・相乗効果があると考えているんだろう」という点を聞きたいものです。
また、あらかじめビジョンや相乗効果の検討がないと、トップ面談での譲渡企業(売り手)側への質問事項が的を射ないものとなり、お互いに無駄な時間を過ごすことになってしまいます。
場合によっては他の譲受け候補企業(買い手)と競合する可能性もあります。譲渡企業(売り手)側の心を掴むため、そしてトップ面談をより有益なものにするためにもあらかじめ将来ビジョン、期待する相乗効果をしっかりと検討しておくべきです。

譲渡企業(売り手)を尊重し、懐を深く持つべき

我が国での中堅中小企業M&Aは年々成約実績が積み上がり、広くM&Aへの理解が進んでいますが、未だに「買い手の方が立場が上だ」という大きな誤解をしている方がおられます。
M&Aでは譲渡企業(売り手)、譲受け候補企業(買い手)は完全に対等です。無事成約に至り、PMIを成功させるためにも双方の信頼関係が必要不可欠です。また、一般的に複数人で検討を進める譲受け候補企業と異なり、譲渡企業側はオーナー1人、あるいはオーナーご夫妻2人のみで検討を進めているケースもあります。その様な場合は孤独と不安に悩んでいる可能性が高いため、心情面への注意が必要です。
譲渡企業(売り手)側を見下したり、その様に捉えられかねない言動は厳に慎むべきです。些細な問題点に目を奪われて、譲渡企業(売り手)側へ過度な質問を行うことが無いように、配慮をしましょう。

トップ面談に向けた事前準備

トップ面談の時間は一般的に1時間半~2時間程度です。限られた時間をお互いにとってより有意義な時間とするためには、事前の準備が必要となります。
以下にポイントを記載します。

相手先の情報収集を行い、質問事項をまとめておく

トップ面談前に企業ホームページ、帝国データバンク、東京商工リサーチ、日経テレコンなどから企業情報を収集するようにしましょう。
それら情報を基に、M&Aの検討において必要な事項を整理し、疑問点があれば、あらかじめ当日の質問事項としてまとめておくことができます。
また、事前の情報収集はお互いの企業情報に限ったものではなく、相手先の出席者個人に関することについても把握するようにしましょう。例えば、共通の話題(例:出身地、出身大学、趣味)があれば一気に距離が縮まり面談がより一層盛り上がることになるので、信頼関係の構築に寄与することになります。
なお、仲介会社を介している場合、あらかじめ疑問点や質問事項をアドバイザーに共有しておくと、当日の進行がスムーズになったり、直接は聞きづらい質問をアドバイザーが代わりに質問してくれます。

自社の情報を整理し、説明できるようにしておく

相手先へ質問を行うのと同じく、相手先からも自社へ質問されますので、自社の創業経緯やこれまでの沿革、事業内容や組織体制など自社に関する情報をしっかりと整理しておきましょう。この際、自社の会社案内や製品パンフレットも準備しておくと、より一層の理解に繋がりますので、トップ面談時に是非持参すべきです。

トップ面談当日の流れ

トップ面談当日の一般的な流れや工場見学の留意点について解説します。これまで説明した通り、トップ面談とは、譲渡企業(売り手)と譲受け候補企業(買い手)がお互いの人間性や経営理念、事業内容等を把握し、疑問点を解消することで、相互理解を深め信頼関係を築くために実施するものです。
必要な場合は複数回実施し、しっかりと疑問点を解消しましょう。なお、具体的な進行については、手続きに慣れているM&Aアドバイザーに依頼することを推奨します。

トップ面談当日の流れ

名刺交換の後、譲渡企業(売り手)から会社案内、譲渡する理由などを話していただきます。次いで譲受け候補企業(買い手)から本件に興味を持った理由、今後の展開・運営方針などを話しいただきます。最後に質疑応答や現場視察などが行われ、全体で90~120分で行われることが一般的となります。

一般的な流れ

仲介会社を介する場合、以下の進行が一般的です。

(1)開始時間5分前に会場に参加者全員が集合し、名刺交換を行う
その後、譲渡企業(売り手)が上座、譲受け候補企業(買い手)が下座に着座

(2)開始時間に合わせアドバイザーが進行を開始
お互いの代表者が各5~10分程度、自社の紹介を行う

(3)その後、質疑応答(フリーディスカッション)を実施

(4)店舗・工場見学を実施

(5)最後、アドバイザーが締め、トップ面談が終了

式次第

トップ面談の限られた時間をより有意義なものとし、場が散らからないようにするため、事前に式次第を作成し、出席者全員に共有しておくことを推奨します。

店舗・工場見学の留意点について

譲渡企業(売り手)が飲食業、小売業、製造業等の場合、トップ面談に合わせ、現場視察を行うことがあります。多くの場合、トップ面談を行うタイミングでは従業員はM&Aを検討していることを知らないため、現場視察で従業員らが不審に思わないように配慮が必要です。
また、専門性が高い分野においては、譲渡企業(売り手)のオーナーよりも、技術者が直接譲受け候補企業(買い手)へ説明すべき場面もあるかと思います。
以下に、現地視察時の留意点を2点記載します。

従業員・技術者への事前の説明が重要

店舗や工場で働く従業員にとって、突然、自社のオーナーが数名を引き連れてくると「なにが起きているんだ」と不審に思うものです。その様な状況を避けるために、あらかじめ譲渡企業(売り手)のオーナーより「〇日に新規取引見込み先の役員〇名がチェックのために店舗・工場にくる」と伝えておくことを推奨します。また、このシナリオはあらかじめ譲受け候補企業(買い手)とも共有しておきましょう。

服装について

現地視察を行う際、服装に注意が必要です。
従業員の目を引かない様、両社で事前の打ち合わせをした上で決定しましょう。必ずしもスーツが望ましい訳ではなく、場合によってはカジュアルな服装や作業服がよいケースもあります。

終わりに

事前の情報収集はもちろんのこと、当日の目的とゴールを両社がしっかりと認識し臨むことが成功のカギとなります。経験・実績豊富なM&A仲介会社のサポートを受けることが望ましいでしょう。
詳しくは数々のM&Aを成功に導いた、経験・実績豊富な専門のコンサルタントまでお気軽にお尋ねください。
お問合せはこちらから

著者

M&A マガジン編集部

M&A マガジン編集部

日本M&Aセンター

M&Aマガジンは「M&A・事業承継に関する情報を、正しく・わかりやすく発信するメディア」です。中堅・中小企業経営者の課題に寄り添い、価値あるコンテンツをお届けしていきます。

STEP1

M&Aの基礎知識を学ぶ

STEP2

M&Aの流れを学ぶ

STEP3

M&Aの専門知識を学ぶ

「M&Aの流れ」に関連する学ぶコンテンツ

デューデリジェンスとは?種類や行う流れ、注意点までくわしく解説

デューデリジェンスとは?種類や行う流れ、注意点までくわしく解説

M&Aを進める中で行われるデューデリジェンスとは、どのような行為を指すのでしょうか。この記事ではデューデリジェンスの概要や種類、流れなどを解説します。そのほか注意する点にも触れており、デューデリジェンスに欠かせない情報が得られるでしょう。******************●M&A・事業承継の無料相談なら、成約実績No1.日本M&Aセンターまで●専門的な会計・税務のご相談なら、税理士法人MAabl

M&Aのディスクロージャーとは?押さえておきたいポイント

M&Aのディスクロージャーとは?押さえておきたいポイント

M&Aは「秘密保持に始まり、秘密保持に終わる」と言われるほど、秘密保持を重視しています。一般的には最終契約書にサインされるまで、たとえ身近な自社の従業員であってもその事実は公表されることはありません。情報漏洩により、M&Aの予定を第三者に知られては会社の存続に関わる問題となりうるからです。本記事ではあらかじめ押さえておきたいポイントをご紹介します。対象者別の対応譲渡側(売り手)オーナーは、M&Aの

M&Aにおける基本合意書の締結

M&Aにおける基本合意書の締結

基本合意書とは中小企業M&Aでは譲渡側(売り手)、譲受側(買い手)双方の意思決定者が顔合わせをするトップ面談で両者の意向が一致すると、M&A対価の概算や対象企業の役員の処遇など基本的な条件のすり合わせが行われます。そして、ある程度条件が固まってくると、その時点での譲渡側(売り手)と譲受側(買い手)の合意事項を確認し、いくつかの基本事項について合意するために契約が書面により締結されます。それが基本合

PMIとは?M&Aとの関係や注意事項、実施プロセスについて解説!

PMIとは?M&Aとの関係や注意事項、実施プロセスについて解説!

PMIとはPMI(=PostMergerIntegration)とは、M&A成立後の「経営統合プロセス」のことです。新経営体制の構築・経営ビジョン実現のための計画策定・両社協業のための体制構築・業務オペレーション、ITシステム統合といった一連の取り組みのことを指し、M&Aによるリスクの最小化と、成果の最大化を目的としています。成約後、M&Aにより目指す未来を実現させるまでに必要不可欠なプロセスとも

M&A仲介とは。その役割・メリットについてご紹介

M&A仲介とは。その役割・メリットについてご紹介

自社の売却、あるいは他社の買収について具体的に検討を進める際に、相談先として複数の選択肢があること。複雑な手続きを一気通貫でサポートできる大手M&A仲介会社に相談することが、円滑なM&A実行にあたって不可欠であることをこれまでご紹介してきました。本記事では「M&Aの仲介」について、その果たす役割や中堅・中小企業のM&Aにおける相談先としてお勧めする理由を、一つひとつ解説してきます。M&A仲介の役割

譲渡企業(買収先)の探し方。ロングリスト、ショートリストとは

譲渡企業(買収先)の探し方。ロングリスト、ショートリストとは

M&A仲介会社などパートナーを選定したら、次は買収先、つまり譲渡企業(売り手)を探すステップに移ります。お相手探しは主に2つの方法で行われます。それぞれについて詳しく見てまいりましょう。譲渡企業の探し方①譲渡案件型1つ目は、M&A仲介会社が既に保有している譲渡企業(売り手)の情報を閲覧し、検討する方法です。最初は譲渡企業の社名が伏せられた「ノンネームシート」を見て、より詳細情報を「企業概要書」で把