セブン&アイホールディングスに対する買収騒動について

水上 雄斗

日本M&Aセンター業種特化2部

業界別M&A
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当コラムは日本M&Aセンターの食品業界専門グループのメンバーが業界の最新情報を執筆しております。
今回は水上が「セブン&アイホールディングスに対する買収騒動」についてお伝えします。

今回の買収提案の概要

セブン&アイホールディングスは2024年8月19日、アリマンタシォン・クシュタール(Alimentation Couche-Tard)から「法的拘束力のない初期的な買収提案を受けている」ことを明らかにしました。

一連の報道の概要

2024年8月19日

アリマンタシォン・クシュタールからの買収提案があったという報道を受け、
セブン&アイホールディングスは「アリマンタシォン・クシュタールより内密に、法的拘束力のない初期的な買収提案を受けていることは事実」とコメントを発表。

2024年9月6日

上記の提案を受け、セブン&アイホールディングスは下記のように回答。

  • 我々は、当社の株主およびその他のステークホルダーにとって最善の利益をもたらすいかなる提案についても真摯に検討をする用意があります
  • 本提案は、当社の本源的価値およびそれら価値を顕在化する機会を「著しく」過小評価しています
  • また、現在の規制環境下で、米国の競争法当局との関係で直面するであろう複数の重要な課題について適切に考慮されていないと考えます

セブン&アイホールディングスは、アリマンタシォン・クシュタールが同社に提示した買収価格は1株14.86米ドルで、全株を現金で取得するものだったと発表しました。

2024年9月8日

上記に対するアリマンタシォン・クシュタールの回答

  • 米独禁法上の問題については「当局の承認を得るために必要となる場合には、事業の切り離しも検討」
  • 買収資金に関しては「現金で実施するだけの十分な余力がある」

2024年9月9日

上記に対するセブン&アイホールディングスの回答

  • 「本案件に関する実効性の伴う議論を行うだけの根拠・材料を提示していないと考えています。また、ACT社の提案は、当社の潜在的な株主価値の短中期的な実現について著しく過小評価している。」と回答。

今回のやり取りを踏まえると、今回の話がすぐに大きく動くことはないと思われます。

アリマンタシォン・クシュタールとは?

アリマンタシォン・クシュタール(Alimentation Couche-Tard)とは、トロント証券取引所に上場するカナダの企業で、世界31の国と地域でコンビニエンスストアやガソリンスタンド等16,700店舗を展開しております。売上高は2024年で1米ドル=140円換算で約10兆円(69,263百万米ドル)です。

アリマンタシォン・クシュタール(Alimentation Couche-Tard)はこれまでにも 成長戦略の一環として、M&Aを説教的に活用してきました。
過去には「Circle K」やノルウェーの「Statoil Fuel & Retail」などを買収し、積極的にM&Aを行い、効率的に事業規模を拡大してきました。

過去にアリマンタシォン・クシュタールが実施した主なM&A

  • 2003年: 「Circle K」ブランドを運営するConocoPhillipsのコンビニ事業を買収
  • 2012年: Statoil Fuel & Retailを買収(北欧)
  • 2016年: コンビニエンスストア「The Pantry」を買収(米国)
  • 2017年: CST Brandsの買収(米国)
  • 2020年:サークルKのフランチャイズ店舗を買収(香港、マカオ)
  • 2021年: アスコン石油(AS24)を買収(豪州)
  • 2023年:トタルエナジーズの給油事業の一部を買収(仏国)

今回の買収の狙い

アリマンタシォン・クシュタール(Alimentation Couche-Tard)の買収の狙いはいくつかあると思いますが、大きくは下記2つの狙いがあったのではないかと推測されます。

食品部門の強化

日本と北米ではそもそもコンビニの利用目的が異なります。日本では日常生活に必要なものが簡単に手に入る場所として利用されていますが、北米ではガソリンスタンドと併設している店舗が多く、ドライブの休憩時に立ち寄る場所となっています。

その為、アリマンタシォン・クシュタールの総売上高のうち、燃料等での売上が約7割を占めており、その他は3割弱にとどまっております。

コンビニの文化が異なるので容易ではないとですが、セブン&アイホールディングスが日本で培ってきた製造、商品開発のノウハウを取り入れることで、ガソリン事業に依存しすぎないコンビニ運営を模索していく狙いがあるのではないかと思われます。

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米国事業の拡大

セブン&アイホールディングスの一番の稼ぎ頭である北米でのコンビニ事業を手に入れることにより、米国でのシェアNo.1の地位を獲得することができます。

セブン&アイホールディグスは2005年に米国の「7ーELEVEN」の株式を取得し完全子会社とし、米国への進出を加速させました。
2021年には業界3位の店舗数を占めていた「スピードウェイ」を買収し、店舗数では2位のクシュタールとは約2倍の差をつけ大きく引き離しています。

独占禁止法の問題が気になりますが、仮に実現したとすると米国内で圧倒的なシェアを獲得することができます。

まとめ

昨今の日本及び世界情勢を踏まえますと、今回ご紹介させていただいた事例のような海外企業とのM&Aの件数、このような買収提案は増えてくると考えられます。
潜在的な日本の少子高齢化や円安環境(一時的に円高となっておりますが)は今後も続いていくと思われます。

また、海外のみならず国内の食品業界全体のM&Aの件数も大変活況であります。2020年には新型コロナウイルスが流行し、食品業界全体として厳しい状況に陥りました。
数年経過し、ようやくコロナ前の水準程度またはそれ以上の業績まで回復してきたという企業が多いのではないかと思います。

買収を検討している企業にとっては投資しやすい状況であり、譲渡を検討している企業にとっても業績が良ければ、より好条件で相手探しをすることができます。
この状況を鑑みると、買収、売却、上場、MBO等企業の戦略として、資本提携を検討していくという流れが更に増加してくることが想定されます。

M&Aを活用し大手企業の傘下に入ることで、スケールメリットの教授、ブランドイメージの強化、大手企業のブランドを活用した採用強化等へと繋げることもできます。
経営課題の解決、会社の成長を考える経営者の皆様には、企業戦略の選択肢のひとつとしてM&Aを活用することをおすすめいたします。

いかがでしたでしょうか?
食品業界のM&Aへのご関心、ご質問、ご相談などございましたら、下記にお問い合わせフォームにてお問い合わせを頂ければ幸甚です。
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また、上場に向けた無料相談も行っております。お気軽にご相談ください。

日本M&Aセンターでは、事業売却をはじめ、様々な手法のM&A・経営戦略を経験・実績豊富なチームがご支援します。詳しくはコンサルタントまでお問合せください。

著者

水上 雄斗

水上みずかみ 雄斗ゆうと

日本M&Aセンター業種特化2部

千葉県出身。成蹊大学経済学部卒業後、三井住友銀行にてリテール営業に従事した後、日本M&Aセンターへ入社。以来、全国の食品業界を専門にM&A業務に取り組む。

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