TOB(株式公開買付け)とは?目的・仕組み・流れ・不成立原因をわかりやすく解説

M&A全般
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TOB(株式公開買付け)は、上場企業の買収や完全子会社化を実現するために用いられる代表的なM&A手法です。
近年では、事業再編やグループ化、MBO(経営陣による買収)の手段としても活用されるケースが増えています。
本記事では、TOBの基本的な仕組みから、目的、種類、メリット・デメリット、手続きの流れ、判断時の注意点までを、株主・経営者それぞれの立場からわかりやすく解説します。

⽬次

TOB(株式公開買付け)とは?

TOB(Take-Over Bid、株式公開買付け)とは、証券取引所を通さず、市場外で不特定多数の株主から株式を直接買い付ける方法です。

TOBの仕組み

買い手は、

  • 買付価格
  • 買付期間
  • 買付予定株数

を事前に公表し、その条件に応じて株主が株式を売却します。
市場で大量に株式を買い集めると株価が高騰しやすくなりますが、TOBを利用すれば株価変動の影響を抑えながら、計画的に株式を取得できる点が大きな特徴です。

なぜTOBが行われるのか?主な目的

経営権の取得

TOBの最も代表的な目的は、対象企業の経営権の取得です。
発行済株式の過半数を取得すれば、株主総会の普通決議を単独で可決でき、経営の主導権を握ることが可能になります。

持ち株比率/保有権利の一例

持ち株比率 行使できる権利
持株比率が100% 会社のすべての意思決定を行う事ができる
持株比率が90.0%以上 他の株主から強制的な株式の買い上げ(スクイーズアウト)の実行ができる (会社法第179条第1項)
持株比率が66.7%以上(2/3以上) 株主総会の特別決議(例:自己株式合併など組織変更の決定、事業譲渡の承認等)を単独で可決できる(会社法309条2項)
持株比率が50.0%超(1/2超) 株主総会の普通決議(例:取締役の選任、解任等)を単独で可決できる  (会社法309条1項)
持株比率が33.4%以上(1/3以上) 株主総会の特別決議を単独で阻止できる
持株比率が3%以上 株主総会の招集(会社法297条1項)、会計帳簿の閲覧及び謄写請求ができる(会社法433条1項)
持株比率が1% 以上 株主総会における議案提出ができる (会社法303条2項)

※参考:会社法

完全子会社化・企業再編

親会社が上場子会社を完全子会社化する場合にも、TOBは頻繁に利用されます。
完全子会社化により、

  • 意思決定の迅速化
  • グループ経営の効率化
  • 中長期的な成長戦略の実行

が図りやすくなります。また、複数企業の統合や再編、事業シナジーの創出を目的としたM&A戦略の一環としても活用されます。最近では、MBO(経営陣による買収)や資本業務提携の強化といったケースでも、TOBの活用が増えています。

TOBの種類

友好的TOB

対象企業の経営陣の同意を得たうえで実施されるTOBです。
友好的TOBは、グループ企業間での資本関係の強化や、将来的な事業統合を視野に入れて行われるケースが多く、買収後も現経営陣の体制を維持したまま、親会社・子会社としての関係を築くことが一般的です。

日本国内では友好的TOBがほとんどです。関係各所の協力を得やすく、買収後の統合プロセスや経営安定にもつながるため、実務面でも成功率が高い手法といえます。

同意なき買収(敵対的TOB)

同意なき買収(敵対的TOB)は、買収対象企業の経営陣の同意を得ずに一方的に実施されるTOBです。
このような買収は、経営陣の刷新や戦略的な方向転換、資産の取得などを目的に行われますが、経営陣や従業員との対立を招きやすく、企業価値の低下やレピュテーションリスクを伴う可能性があります。

また、対象企業がポイズンピルやホワイトナイトなどの買収対抗措置を講じることも多く、買収成立までのコストやリスクが高まる傾向にあるため、同意なき買収は慎重な判断が求められる手法といえます。

TOBと他のM&A手法との違い

TOBは上場企業の株式を市場外で直接取得する手法ですが、ほかにも企業買収にはさまざまな手法があります。ここでは、TOBとほかのM&A手法の違いについて解説します。

TOBとMBOの違い

TOBは、上場企業の株式を第三者が市場外で直接買い取る手法です。一方、MBO(Management Buyout)は、企業の経営陣が自らの経営する会社の株式を買い取り、既存株主から経営権を取得する手法です。

また、近年はMBOが急増しており、その実行手段としてTOBが用いられています。このように、両者は目的と実行主体に違いがあり、MBOが経営陣主導の買収であるのに対し、TOBはより広範な買収手段として位置付けられます。

TOBとLBOの違い

LBO(Leveraged Buyout)は、買収対象企業の資産や将来キャッシュフローを担保に借入を行い、その資金で企業を買収する手法です。対象企業は上場・非上場を問いません。

一方、TOBは主に上場企業の株式を対象にしており、市場外においてあらかじめ定めた条件で公開買付けを実施します。LBOが資金調達手段にフォーカスした手法であるのに対し、TOBは株式取得の方法である点に違いがあります。

TOBとIPOの違い

TOBは、すでに上場している企業の株式を非公開で買い取ることで、経営権の取得や完全子会社化を目指す手法です。一方、IPO(Initial Public Offering)は、非上場企業が新たに株式を発行し、証券取引所を通じて一般投資家に公開する手法です。

TOBは公開から非公開へ、IPOは非公開から公開へというプロセスをたどるという点が大きな違いです。また、TOBは買収を目的として行われますが、IPOは資金調達を目的としています。

TOBのメリット・デメリット(買い手)

TOBは、企業が戦略的に株式を取得し経営権を得るための有効な手段です。ここでは、買い手側にとっての主なメリットを紹介します。


<TOBのメリット(買い手)>
- 株価変動の影響を受けにくい
- 取得株数を事前にコントロールできる
- 目標株数に達しなければ中止可能

株価変動の影響を受けにくい

市場を通じて大量の株式を買い付ける場合、その動きが市場に影響を与え、株価が上昇してしまうこともあります。しかし、TOBであれば、あらかじめ設定した価格で買い付けを行うため、株価変動の影響を受けにくく、予測しやすい条件で買収が可能です。

取得株数を事前にコントロールできる

買い手側にとって、TOBは買収成立までの見通しを立てやすいというメリットがあります。TOBでは、買付け価格・期間・株数などを事前に設定し、証券取引所を通さずに株式を直接買い付けるため、市場での売買による需給バランスの変動に左右されず、必要な株数を計画的に取得しやすいのが特徴です。

目標株式数に達しなければ中止できる

TOBでは、事前に定めた株数に達しない場合、買付け自体を中止することが可能です。これにより、買収が不成立となっても、不要な資金の流出を避けることができ、予算超過のリスクも抑えられます。

TOBは計画的な株式取得が可能である一方で、買い手側にはいくつかのデメリットもあります。


<TOBのデメリット(買い手)>
・取引市場に比べ買付コストがかかる
・同意なき買収は成功率が低い

取引市場に比べ買付コストがかかる

TOBでは市場価格にプレミアム分を上乗せして株式を買い付けることが一般的で、買収コストが大きくなりやすい点はデメリットといえるでしょう。これは、株主に対して売却インセンティブを与えるために不可欠な措置ですが、買収予算が膨らむ要因となります。

一方で、事前に特定の大株主から保有株式を獲得する合意ができており、公募に申し込む株主を減らすために、市場価格を下回る価格で公募を行うディスカウントTOBもあります。

同意なき買収は成功率が低い

同意なき買収(敵対的買収)の場合は、対象企業から対抗措置を講じられることもあり、成立率が低くなるというデメリットもあります。

さらに、同意が得られない場合は、買収のために多額の追加費用や長期間の交渉が必要になることもあります。こうした障壁は、買収プロセスの遅延や予算超過のリスクを高めるため、慎重な判断が求められます。

TOBのメリット・デメリット(売り手)

TOBは、株式を保有する株主にとってもメリットがあります。特に、市場価格よりも高い買付価格での売却機会が得られる点は大きな魅力だといえるでしょう。ここでは、売り手側の主なメリットについて解説します。


TOBのメリット(売り手)
・市場価格よりも高く株式を売却できる
・友好的TOBであれば成立しやすい

市場価格よりも高く株式を売却できる

TOBの売り手側のメリットは、市場価格よりも高く株式を売却できることです。市場価格にプレミアムを上乗せした価格で株式を売却できるため、株主は通常の市場売却よりも有利な条件で保有株式を売却することが可能となります。

TOBにおいては、売り手は利益を確定しやすく、特に大量の株式を一度に売却したい投資家や、将来的な株価下落リスクを避けたいと考える株主にとって、魅力的な選択肢となるでしょう。

あなたの会社に最適な選択肢は?

TOBは単なる株式取得ではなく、経営権・企業価値・将来戦略に直結する重要な判断です。 「賛同すべきか」「条件交渉すべきか」「他の選択肢はあるか」といった判断には、第三者の専門的視点が不可欠です。ぜひ無料相談を活用してください。

友好的TOBであれば成立しやすい

TOBが友好的に行われる場合、買収の成功率が高く、取引全体が円滑に進む傾向にあります。買収対象企業の経営陣が買収に同意しているため、株主に対してもTOBの目的やメリットが丁寧に説明されるケースが多く、安心感を持って応募することができます。

また、資本関係強化や事業統合などをスムーズに進められる点も、メリットといえるでしょう。

一方で売り手側が考慮すべき主なデメリットについても見ていきましょう。


<TOBのデメリット(売り手)>
・経営権が移転する可能性
・TOB不成立のリスク

経営権が移転する可能性

TOBによって株式の過半数が買い手に渡ると対象企業の経営権も移るため、それまでの経営陣が意思決定に関与できなくなる可能性もあります。経営方針が大きく変わることがあっても、それに対して影響力を行使できなくなるのです。

TOB不成立のリスク

TOBは、株主にとって市場価格より高い価格で株式を売却できる可能性がある一方で、必ず成立するとは限らないという点がデメリットとして挙げられます。TOBが不成立となると、TOB発表後に一時的に上昇していた株価が急落する可能性があります。先行き不安から株価が不安定な状態に陥ることも少なくありません。
TOBが不成立となる主なケースは TOBが不成立になる原因で紹介します。

TOBの流れ

TOBは、法律で定められた手続きに則って進めなければなりません。買付者が株式を取得するためには、段階的かつ厳格なプロセスが求められます。
ここからは、一般的なTOBの流れを5つのステップで解説します。

1. 公開買付公告の実施

TOBを開始するにあたり、買い手はまず「公開買付公告」を行います。
公告では、買付価格、買付予定株数、買付期間、買付けの目的など、TOBの条件が明示されます。
株主にとっては、この公告がTOBの内容を判断する最初の重要な情報源となり、提示された価格や条件が市場価格や企業の将来性と比べて妥当かどうかを検討することになります。

2. 公開買付届出書の提出

公開買付公告の後、買い手は金融庁に対して公開買付届出書を提出します。
この書類には、TOBの詳細条件や資金の調達方法、買収後の経営方針などが記載されます。
公開買付届出書は一般にも開示されるため、TOBの本気度や実現可能性を判断する材料として、株主や市場関係者から注目されます。

3. 対象企業による意見表明

公開買付届出書の提出を受け、対象企業の経営陣は、TOBに対する賛否や見解を記載した意見表明報告書を公表します。

  • TOBに賛同するのか
  • 条件は妥当と考えているのか
  • 株主に応募を勧めるのか

といった点が明確に示されるため、この意見表明は株主の判断に大きな影響を与えます。

4. 株主による応募・売却

TOB期間中、株主は提示された条件をもとに、

  • TOBに応募して株式を売却する
  • 市場で売却する
  • 応募せず保有を続ける

といった選択を行います。TOB価格が市場価格より魅力的であれば応募が集まりやすくなりますが、成立への不安がある場合は、市場売却を選ぶ株主が増えることもあります。

5. 買付結果の公表

買付期間終了後、買い手は買付結果を公表します。
応募株数があらかじめ定めた目標株数に達していればTOBは成立し、株主には買付代金が支払われます。
一方で、目標株数に達しなかった場合、TOBは不成立となります。(この場合、応募株主の株式は買い取られず返還されます。)

参考:経済産業省「企業買収における行動指針」

日本M&AセンターにTOBを相談できる?

TOBは法律・手続き・交渉が絡む高度な専門性が求められる取引です。 日本M&AセンターはどうTOBをサポートするのか、TOBの進め方や検討ポイントを1冊にまとめた資料をご用意しています。ぜひご覧ください。

TOBが不成立になる原因

TOBは買付者が株式を取得するための効果的な手段ですが、必ず成立するとは限りません。実際には、買付け価格の妥当性や対象企業との関係性、ほかの競合買収の出現など、さまざまな要因によりTOBが不成立となるケースも増えています。ここでは、TOBが不成立になる主な原因を4つ紹介します。

市場価格が買付価格を上回った

TOB発表後、思惑買いや業績期待などにより市場株価が買付価格を上回ってしまうことがあります。
この場合、株主にとってTOBに応じるメリットが薄れ、応募が集まらず不成立となる可能性が高まります。

経営陣の賛同を得られなかった

対象企業の経営陣がTOBに反対し、非賛同の意見を表明した場合、株主は慎重な判断を迫られます。
特に同意なきTOBでは、将来の経営不安や企業価値の低下を懸念して応募が集まりにくくなるケースがあります。

競合する買収提案が現れた

TOBの公表後に、他の企業がより高い買付価格や有利な条件で対抗TOBを行うことがあります。
この場合、株主がより好条件の提案を選択し、当初のTOBへの応募が減少することで、不成立に至る可能性があります。

大株主の反対

対象企業の株式が特定の大株主に集中している場合、その大株主がTOBに応じなければ、目標株数に達しないリスクが高くなります。
事前に大株主との調整や合意形成が十分に行われていないケースでは、TOBが頓挫することも少なくありません。

そのほか「買付下限(最低応募株数)が設定されている場合」に下限未達となると自動的に不成立になります。

TOBの事例

ウェディング関連事業を運営するノバレーゼ社は、貸会議室を運営・管理するティーケーピーによるTOBに賛同する意思決定をしました。日本M&Aセンターは、ノバレーゼ側のファイナンシャル・アドバイザー(FA)として支援しています。TOB成立までの経緯についてインタビューをご覧ください。

【TOB事例インタビュー】ウェディング事業と貸会議室事業の意外なシナジー

まとめ|事前の戦略設計がTOB成功の鍵

このように、TOBは一定の手続きを踏んで進められますが、さまざまな要因によって不成立となるリスクを伴います。
そのため、買い手・売り手双方にとって、事前に

  • 市場動向
  • 経営陣や大株主の意向
  • 競合提案の可能性

を慎重に分析し、戦略を設計することが非常に重要です。

TOBは企業買収や経営権取得の重要な手法であり、基本的な仕組みや目的、種類、メリット・デメリットを理解することが不可欠です。また、買収後の統合作業や従業員対応、株主との信頼関係の構築なども必要になるため、TOBを検討する場合は、専門家に相談して行うことが大切になります。

あなたの会社に最適な選択肢は?

TOBやM&Aは、制度・実務・交渉が複雑に絡む高度な意思決定です。 日本M&Aセンターでは、TOB・M&A支援実績をもとに、状況に応じた最適な選択肢をご提案しています。 ご相談は何度でも無料、秘密厳守で対応します。

よくある質問(FAQ)

Q1.TOBとは簡単に言うと何ですか?

TOB(株式公開買付け)とは、証券取引所を通さずに、市場外で不特定多数の株主から株式を買い付ける方法です。
主に、上場企業の経営権取得、完全子会社化、企業再編などを目的として実施されます。

Q2. TOB価格は必ず市場価格より高くなりますか?

多くの場合、株主に売却を促すため市場価格より高い「プレミアム価格」が設定されます。
ただし、必ず高くなるとは限らず、市場環境や条件によっては市場価格と大きな差が出ないケースもあります。

Q3. TOBに応募しないとどうなりますか?

TOBに応募しなくても違法ではありませんが、

  • TOB成立後に完全子会社化
  • その後、株式が強制的に取得(スクイーズアウト)

されるケースがあります。
その場合、最終的にはTOBと同等または近い条件で株式が現金化されるのが一般的ですが、タイミングや条件が異なることもあります。

Q4. TOBが不成立になることはありますか?

はい、あります。たとえば次のような場合、TOBは不成立となる可能性があります。

  • 市場価格が買付価格を上回った
  • 株主の応募が集まらなかった
  • 大株主や経営陣の賛同が得られなかった

TOBは必ず成立するものではないため、条件や背景の見極めが重要です。
詳しくは「TOBが不成立になる原因」をご確認ください。

Q5. TOBが不成立になると株価はどうなりますか?

TOB発表を受けて上昇していた株価が、不成立を理由に急落することがあります。
TOB期待で株式を保有していた場合、結果的に不利になる可能性がある点には注意が必要です。

Q6. 株主はTOBと市場売却、どちらを選ぶべきですか?

一概にどちらが有利とは言えません。判断のポイントとしては、

  • TOB価格と市場価格の差
  • TOB成立の可能性
  • 売却のタイミング

などを総合的に見極める必要があります。

Q7. 経営者はTOBに必ず賛同しなければなりませんか?

いいえ、必ずしも賛同する必要はありません。経営陣は、

  • 企業価値
  • 従業員への影響
  • 中長期的な経営戦略

を踏まえたうえで、賛同・反対・中立などの意見を表明します。賛同するかどうかは、極めて重要な経営判断となります。

Q8. TOBとMBOの違いは何ですか?

TOB:株式を取得する「方法」
MBO:経営陣が主体となる「買収の形態」

MBOを実行する手段としてTOBが使われるケースも多く、目的と手段が異なる点が大きな違いです。

Q9. TOBを検討する際、誰に相談すべきですか?

TOBは、法務・財務・資本政策・交渉が絡む高度な取引です。そのため、

  • M&Aの専門家
  • ファイナンシャル・アドバイザー
  • 弁護士・会計士

など、実務経験のある専門家に相談することが重要です。

TOBに関するニュース

直近、企業がTOBを実施したニュースについては、M&Aニュースをご覧ください。

TOBに関するニュース

TOBを動画で解説

TOBについて当社コンサルタントが動画でわかりやすく解説しています。あわせてご覧ください。



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