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CEOとは?社長やCOOとの違い、役割をわかりやすく解説

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CEO
企業のトップは代表取締役のほか、CEO、COOなどの役職を持つ場合があります。本記事では、CEOの概要、役割、代表取締役や社長、名称が類似する役職との違いや選定について紹介します。

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CEOとは

CEOは「Chief Executive Officer」の略で、日本語では「最高経営責任者」を意味します。代表取締役と異なり、会社法など日本の法律で規定されている役職ではありません。

CEOの主な役割は、経営方針や事業戦略を策定し、企業全体の業務執行を統括することです。CEOは企業としての方向性を決定し、業務の結果について最終的な責任を負う立場にあります。

世界的に著名なCEOとしては、Meta (旧称Facebook社)のマーク・ザッカーバーグ氏や、Appleのティム・クック氏などが挙げられます。日本企業でもCEOの肩書が導入されるケースが増えています。

CEOの導入が日本企業で進む背景


アメリカにおいて、CEOはコーポレートガバナンスにおける重要な役職です。アメリカのコーポレートガバナンスでは、取締役会がCEOとCOO(Chief Operating Officer:最高執行責任者)を選任し、会社の経営と執行を分離することを特徴としています。

日本の社長は、経営と執行両方のトップを兼ねるケースが多く見られますが、アメリカでは経営はCEO、執行はCOOがトップとなることで、権力を分散させています。

近年は日本でも、アメリカのコーポレートガバナンスの導入に伴い、CEOを使う企業が増えています。

CEOを導入する企業の狙いは、コーポレートガバナンスにより、透明性の高い企業体制を作り、国際的な競争力を獲得することにあります。つまり、役員の業務執行に対する監督機能を強化し、投資家から信用される企業体制を目指しているのです。

ただし、現在の日本の法律に規定のない役職であるため、CEOの概念が完全には統一されておらず、 各社が独自の判断でCEOを導入しているのが現状です。しかし会社法についても、海外企業のコーポレートガバナンスに対応すべく、法改正が重ねられています。

CEOの役割


前述の通り、日本の法律ではCEOについての規定がないため、全てのCEOが同様の役割を担うわけではありません。また、日本のCEOは代表取締役を兼ねる場合も多く、その場合には会社を代表する役割も持ちます。ここでは、一般的にCEOの役割として挙げられるものをご紹介します。

経営理念や方針、事業戦略を策定する

CEOは会社経営の最高責任者として、経営理念や方針、事業戦略を策定します。

業務執行についての意思決定は取締役会や株主総会がおこないます。取締役会や株主総会で決定された事項をもとに、経営理念や経営方針の実現のために具体的に何をすべきなのかを決定するのが、CEOの役割です。

業務執行を統括する

CEOは、会社全体の業務執行を統括する役割をもちます。COO(最高執行責任者)やCFO(最高財務責任者)など、各部門の業務を統括する役職を置く場合でも、CEOは全体の業務執行を統括します。

CEOは、各部門の業務執行の状況を把握・管理し、適切な判断を下さなければなりません。各部門の業務執行の結果について、最終的な責任を負うのはCEOの役割です。

ステークホルダーとの関係を構築する

ステークホルダーとは、株主、顧客、金融機関など会社の利害関係者のことです。ステークホルダーへの適切な情報開示をおこない、ステークホルダーの信頼を確保するのも、CEOの重要な役割の1つです。

コーポレートガバナンスにより、透明性が高く健全な企業経営を実現することで、ステークホルダーからの信頼を高め、企業の持続的な発展につなげることができます。

CEOと代表取締役、社長との違い


「代表取締役」は、会社法に規定されている役職で、対外的な企業の代表者です。また「社長」は会社法の規定はないものの、多くの企業では代表取締役を兼ねる会社のトップにつけられる役職です。

代表取締役と社長はそれぞれ、業務執行を統括する点ではCEOと共通するものがあります。ただし、CEOは法律の規定がない役職であるため、CEOの役職だけでは、会社を代表する業務執行権限をもつか否かは判断できません。

CEOに業務執行権限を与えていない場合でも、CEOの肩書をもつ取締役がおこなった業務執行については、表見代表取締役の規定により、会社が責任を負う可能性があるため注意が必要です(会社法354条)。CEOを導入する場合は、外部からも権限の範囲が明確になるよう配慮すべきでしょう。

日本の企業ではCEOを導入する場合でも、代表取締役と兼ねるケースが多く見られます。また、代表取締役やCEOは複数配置することもできます。企業によっては、代表取締役を1名とし、各事業部門にCEOを配置している場合もあります。

CEOとCOOとの違い

COOとは、「Chief Operating Officer」の略で、日本語では「最高執行責任者」を意味します。

COOの役割は、CEOが決定した経営方針に沿い、営業活動についての業務を統括・執行することです。
アメリカのコーポレートガバナンスでは、CEO(最高経営責任者)が会社のナンバー1 、COO(最高執行責任者)がナンバー2のポジションを担います。

アメリカでは会長がCEO、社長がCOOとなるケースが多く、日本でも同様の形態を採用している企業もあります。
ただしCOOも日本の会社法に規定のない役職のため、日本でのCOOの役割は、企業によって異なる点に注意が必要です。

COOを導入している日本企業は珍しくありませんが、各事業本部ごと、複数COOを配置している例としては、豊田通商が挙げられます(2023年9月時点)。

参考:豊田通商株式会社ホームページ(会社情報/役員一覧)

CEOと似ている名称の役職


COOをはじめ、CEOとよく似た名称の役職は複数存在します。その中でも主な5つを紹介します。

CFO(Chief Financial Officer:最高財務責任者)

CFOは、企業における財務戦略の立案、執行を行う責任者です。コーポレートガバナンスにおいては、COOと同等の権力をもつ重要な役職です。

CTO(Chief Technology Officer:最高技術責任者)

CTOは、企業の技術に関する活動を統括する責任者です。情報技術・研究開発技術など、専門的な技術・知識を用いる技術部門のトップとして設置されます。DXが推進される現在、重要なポジションとして位置づけられるケースが多く見られます。

CIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)

CIOは、企業の情報技術戦略における責任者です。ITインフラの構築・管理、データ管理、情報システムの導入・改善を担い、CIOが担う責任も大きなものとなっています。

CMO(Chief Marketing Officer:最高マーケティング責任者)

CMOは、企業のマーケティング・ブランド戦略における責任者です。広告、プロモーション、製品開発、市場調査、価格設定などの戦略の策定・実行を行います。

CHRO(Chief Human Resource Officer:最高人事責任者)

CHROは、企業の戦略人事における最高人事責任者です。採用、研修、給与・福利厚生、従業員関係の管理など、人材に関する全ての取り組みを経営者視点で推進します。

前述の通りこれら役職は企業ごとに、また、企業の規模や業界によって具体的な役割が異なる点に注意が必要です。

CEOを選任・解任する方法


CEOは日本の法律に規定がないため、選任・解任の方法はCEOを導入している各企業によって異なります。

多くの企業では、CEOは代表取締役もしくは取締役を兼ねているため、代表取締役や取締役の選任・解任手続きに準じた扱いとなるでしょう。
コーポレートガバナンスの観点からは、企業としての手続きの透明性を高めるため、CEOの選任・解任方法についてもステークホルダーに開示すべき情報とされています。

CEOが取締役を兼ねている場合には、株主総会の決議によって選任・解任されることになります。その場合の任期も、取締役に準じて2年以内となるケースが多いです。

CEOに求められる資質・スキル


会社の最高経営責任者として、CEOにはさまざまな資質・スキルが求められます。ここでは、3つの資質・スキルに絞って、具体的な内容を解説します。

将来を見通す能力

CEOは企業の最高経営責任者として、長期的な経営方針を策定する必要があります。そのため、企業の現状を把握するだけでなく、将来を見据えてのさまざまな判断が求められます。

ITの発達などで物事が大きく変化する現代においては、将来を見通す能力はCEOにとって最も重要な資質と言えるでしょう。時代の流れを読んで適切な判断を下すことができれば、企業を大きく成長させられる可能性が高まります。

組織を管理・統括する能力

CEOには、会社のナンバー1としてのマネジメント能力が求められます。自らリーダーシップを見せて行動し続けなくてはなりません。

策定した経営理念、経営方針の実現に向けて、各事業部門における業務執行の状況を管理し、修正の必要があれば即座に対応する必要があります。

各部門の業務執行を担当するCOOやCFOがいる場合でも、最終的な責任を負うのはCEOです。会社全体を見渡して組織を管理・統括する能力は、CEOに欠かせない資質です。

変化に対応する能力

会社経営を長く続けていると、さまざまな変化が起こります。その変化に柔軟に対応しなければ企業は存続できません。

CEOは会社の業務執行を統括する立場として、業務執行の方向性に変化が生じた場合、変化が必要な場合には、状況を素早く把握し適切な対応をしなければなりません。

さまざまな変化に対応しつつ、策定した経営理念、経営方針を完遂する能力は、CEOに欠かせないものです。

終わりに

CEOは日本の法律には規定がない役職のため、具体的な役割は企業ごとに異なります。

日本でCEOを導入する企業は、アメリカ型のコーポレートガバナンスにより、企業経営の透明性を高めようとしていますが、コーポレートガバナンスの実現は、会社法でも目標とするところです。

今後、日本でもCEOの導入は進んでいくと考えられるため、本記事でCEOについて基本的な概念を押さえておくようにしておきましょう。

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著者

M&A マガジン編集部

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