個人保証とは?メリットやデメリット、関連ガイドラインを解説!

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中小企業の経営者が金融機関から融資を受ける際、多くの場合「個人保証」が求められます。

個人保証に応じることで資金調達の可能性は広がりますが、経営が悪化すれば、経営者自身の個人資産を処分しなければならないリスクも伴います。

特に、事業承継やM&Aを検討している経営者にとって、個人保証の存在が大きな障害となるケースは少なくありません。こうした中、2024年には個人保証に関する信用保証制度の見直しも進み、保証の見直しを図るのに絶好のタイミングを迎えています。

本記事では、個人保証の基本から関連制度の活用、保証解除の実務、そしてM&Aにおける対応まで、経営者が知っておきたいポイントをわかりやすく解説します。

この記事のポイント

  • 個人保証は、企業が融資を受ける際に経営者が債務を保証する制度で、経営者保証とも呼ばれる。
  • 個人保証は企業の与信力を補完し、融資を受けやすくするが、経営不振時には個人に負担がかかるリスクがある。
  • M&Aを通じて個人保証を解除することも可能で、契約書に条件を明記することが重要である。

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個人保証とは

個人保証とは、企業が金融機関から融資を受ける際に、経営者など個人が企業に代わって債務や責任を保証する仕組みを指します。この保証は民法上の「保証契約」に該当し、原則として書面による契約が必要とされています。

個人保証は「経営者保証」とも呼ばれ、多くの場合、経営者本人が会社の借入に対して保証人としての責任を負います。特に実務上では、債務者と同等の返済義務を負う「連帯保証」として扱われるのが一般的です。

また、会社の信用力や経営者の与信能力が不足している場合、あるいは融資金額が大きい場合には、経営者だけでなくその家族や親族にも保証を要請されるケースがあります。

##個人保証が求められる背景
個人保証の主な目的は、融資を受ける企業の与信力が不十分な場合に、その不足分を経営者個人が補うことにあります。特に中小企業では、自己資本や担保となる資産の不足、さらには決算書の信頼性という観点で金融機関の審査基準を満たさないケースが少なくありません。

こうした事情を踏まえ、金融機関は貸し倒れのリスクを抑えるために、経営者に個人保証を求めることで、返済可能性を高めようとします。

一方、個人保証は借り手である企業側にとっても、信用力を補う手段として機能します。

企業単体では信用審査を通過できない場合でも、経営者が個人保証を提供することで信用力が底上げされ、結果として融資を受けやすくなるというメリットがあります。特にプロパー融資や当座貸越など、一定の信用力が求められる融資では、個人保証の有無が融資実行の可否を左右することもあります。

近年は経営者保証に関するガイドラインなどの制度整備により、過剰な保証慣行の見直しも進んでいますが、それでもなお、中小企業金融の現場では個人保証が広く活用されているのが実情です。このように、中小企業が金融機関から融資を受ける際には、多くのケースでこの個人保証制度が用いられているのが現状といえるでしょう。

個人保証は「連帯保証」が基本?

結論からいえば、実務において個人保証はほぼすべてのケースで「連帯保証」として契約されるのが一般的です。
連帯保証とは、借入企業と保証人が連帯して債務を負担する制度であり、保証人が債務者と同等の返済義務を即座に負う点が特徴です。

これに対して「単純保証」は、主たる債務者の返済不能が確定した後に初めて保証人の責任が生じるという、限定的な責任構造になっています。つまり、債務者が返済できるか否かが明らかになるまで、保証人には直接の返済義務が発生しません。

しかし「連帯保証」では、債務者が返済できない場合に限らず、保証人に対して即座に弁済を請求される可能性があります。実際には、債務者と変わらないリスクを保証人が背負うことになるため、その負担は極めて重いものです。

こうした仕組みは、金融機関が確実に債権を回収する手段として連帯保証を慣習的に求めている背景に基づいています。そのため、契約を締結する際には、「単純保証」との違いや、連帯保証の責任の重さを十分に理解しておくことが必要です。なお、経営者保証に関するガイドラインの活用によって、連帯保証の回避や緩和が可能となる場合もあります。保証契約の締結前に、制度の仕組みや選択肢についても検討しておくとよいでしょう。

個人保証が経営にもたらす効果・メリット

経営者が個人保証を提供することで、企業の信用力が補われ、金融機関の融資判断を得やすくなります。中小企業では法人単体の信用力だけでは不十分なことが多く、経営者の個人保証がそれを補います。

さらに、保証の有無は単に融資の可否だけでなく、金利や借入限度額といった借入条件にも影響を及ぼします。資金調達の柔軟性が高まることで事業運営の選択肢が増え、結果的に経営の安定にも寄与するでしょう。

ここでは、信用補完と融資条件の改善という2つの観点から、個人保証が企業経営にもたらすメリットについて解説します。

会社の信用力を高められる

中小企業では、大企業と比較して企業単体の信用力が低下するケースが少なくありません。そこで経営者が個人保証を提供することで、金融機関は返済能力を補う材料として、その保証を評価に加えます。

このように、個人保証が加わることで、金融機関は経営者個人の資産状況や経営実績も評価対象に含めます。結果として、企業全体の信用力を総合的に判断するのが一般的です。その結果、企業単独では難しかった与信判断が好転する可能性もあります。

こうした背景から、個人保証は中小企業の信用力を補う手段として、実務上重要な役割を担っているといえるでしょう。

融資を受けやすくなる

中小企業における融資審査では、信用補完の有無が融資の可否を左右することがあります。企業単体の信用力だけでは不十分と見なされる場合でも、経営者の個人保証が加わることで、金融機関は貸し倒れリスクを抑えられると判断し、融資に前向きになる傾向があります。

また、個人保証の有無は、審査の通過可否にとどまらず、金利や借入限度額、審査スピードといった条件面にも影響を与えます。信用力に不安のある企業でも、個人保証を提供すれば利用可能な融資の選択肢が広がり、資金調達の柔軟性を確保しやすくなります。結果的に、短期的な資金繰りの改善にとどまらず、金融機関との長期的な関係構築にもつながる可能性があります。

個人保証が経営に与えるリスク

個人保証には信用力の補完や融資条件の改善といったメリットがある一方で、経営者個人にとっては重大なリスクも伴います。特に、経営不振や倒産といった局面では、保証債務の履行によって個人資産を失うおそれがあり、家計や生活基盤にも深刻な影響を及ぼしかねません。

さらに、個人保証が残っているために、事業からの撤退や事業承継の判断が滞るケースもあります。たとえ撤退や承継の必要性を認識していても、保証債務の存在が大きな心理的・制度的な障壁となり、柔軟な経営判断を妨げることもあるでしょう。

また、金融機関との交渉においても、保証が足かせとなり、再建や再挑戦の選択肢を狭めることもあります。

ここでは、個人保証が経営不振・事業撤退・事業承継といった各局面でどのような支障をもたらすかを整理し、経営判断への影響についてそれぞれ解説していきます。

経営不振時に発生する個人資産へのリスク

企業が経営不振や資金繰りの悪化によって返済不能に陥った場合、個人保証をしている経営者は、その債務を代わって引き受けることになります。特に連帯保証契約である場合、企業の返済不能と同時に、経営者自身が請求の対象となるのが一般的です。

その際、自宅や預貯金といった個人資産が差し押さえられるリスクも生じます。中小企業では、経営と生活が密接に結びついていることが多く、企業の破綻がそのまま生活破綻に直結するおそれもあります。

債務履行が困難な場合には、自己破産に追い込まれる可能性があり、生活の再建も容易ではありません。さらに、経営者本人だけでなく、家族にも精神的・経済的な影響が及び、社会的な再起にも大きな制約を伴うリスクがあります。

個人保証によって撤退判断が遅れるリスク

個人保証が残っていると、経営者は事業を続けるか否かの判断に際して、強い心理的・制度的な制約を受けることになります。たとえ事業の継続が困難な状況であっても、債務返済の責任から撤退を先延ばしにしてしまうケースは少なくありません。

こうした遅れによって損失が拡大すれば、経営者個人の財務負担はさらに重くなり、再建の難易度も高まります。個人保証を解消しない限り、たとえ事業から撤退しても、経営者に債務が残り続けるという構造的な問題があるためです。

また、M&Aや事業譲渡といった代替策があるにもかかわらず、そうした選択肢が十分に認識されていないために、撤退判断が遅れてしまうケースもあります。

このように、「辞める自由」が事実上制限されてしまうことによって、経営判断の柔軟性が損なわれるという実務的なリスクがある点にも注意が必要です。

事業承継の妨げになる

個人保証が残っている場合、事業承継において後継者にも保証債務の引き継ぎを求められることがあります。これに対し、後継者が責任の重さに不安を感じたり、金融機関との保証交渉が難航したりすることで、承継が思うように進まないケースも少なくありません。

経営者が高齢で、事業承継のタイミングを迎えていたとしても、個人保証が解除されていなければ、後継者に安心してバトンを渡すことはできません。その結果、後継者が保証の引き継ぎを拒否し、承継が成立しないまま廃業や第三者への売却に至る可能性もあります。

本来、個人保証を含めた金融面の整理は、事業承継準備の大前提となるべき要素ですが、十分に対応できていない中小企業も多く見られます。保証解除が事業承継成功のカギになることを認識し、早期に金融機関と協議するなど、計画的な対応を進めていくことが必要でしょう。

経営者保証に関するガイドラインとは

中小企業の経営者にとって、個人保証には慎重にならざるを得ない面がありますが、金融機関からの融資なしに事業を発展させていくことは容易ではありません。

こうした中、個人保証が企業活動の制約となっているとの指摘を受け、その対応策として「経営者保証に関するガイドライン」が2014年に運用開始されました。

このガイドラインは、中小企業の経営者保証に関する契約時および履行時のルールを整理したもので、全国銀行協会と日本商工会議所によって策定されています。法的拘束力はないものの、実際に融資を行う側である金融機関が主導して定めたものであり、保証契約を結ぶ際の一定の判断基準として活用されています。

また、このガイドラインには、経営者保証なしで融資を希望する中小企業に求められる経営状況の要件も明記されています。該当する条件と満たしていれば、保証なしでの資金調達も可能性が広がることになります。

ここでは、このガイドラインの基本的な枠組みと、中小企業経営にとっての意義について解説します。

ガイドラインを活用するメリット

経営者保証に関するガイドラインを活用すれば、一定の条件を満たすことで、金融機関との交渉によって個人保証を外すことが可能になります。その結果、経営者個人が負う財産リスクは軽減され、経営判断の自由度も向上します。こうした効果を得られる点こそが、ガイドラインを活用する大きなメリットといえるでしょう。

また、個人保証が障害となっていた新規融資や事業承継の場面でも、保証が解除されることで、資金調達の選択肢が広がり、後継者選定も進めやすくなります。こうしたメリットを得るためには、経営計画や財務の健全性を適切に整理・提示しながら、金融機関と保証見直しの交渉を行っていくことが必要です。

特に、ガイドラインを活用した保証債務整理を通じて保証が解除された場合には、経営者の信用情報が登録されずに済み、一定の生活資金や財産の保全が認められるといった効果が期待されます。こうした環境が整うことで、経営者は事業再生や生活再建にも取り組みやすくなります。

さらに、こうしたガイドラインに基づく交渉は、金融機関に一方的に従うのではなく、合理的な主張を行うための枠組みとしても機能します。実際に保証解除の実績も徐々に蓄積されており、制度としての実効性も高まりつつあるといえるでしょう。

ガイドライン活用時の注意点

経営者保証に関するガイドラインは、中小企業、経営者、金融機関の間で共有されるべき自主的なルールとして位置付けられています。したがって関係者間で尊重し遵守することが期待されるものの、法的拘束力を持つ制度ではありません。

そのため、ガイドラインに沿って対応したとしても、必ずしも保証が解除されるとは限りません。実際の対応は金融機関ごとに異なるため、それぞれの対応方針や判断基準に応じた柔軟な交渉が必要になります。

また、実務においては経営者側の理解不足や準備不足によって、交渉がうまく進まないケースも少なくありません。保証解除に固執するあまり、交渉全体が頓挫してしまうといったリスクもあるため、全体の資金調達戦略とのバランスを見極めつつ、粘り強く交渉を進める姿勢が重要です。

個人保証をめぐる法改正と制度動向

近年、個人保証を取り巻く法制度や金融行政の運用には大きな変化が見られます。2020年の民法改正をはじめとして、保証契約のルールや金融機関に求められる対応、さらには信用保証制度の在り方に至るまで、幅広い見直しが進められてきました。

これらの動きは、単なる制度上の変更にとどまらず、中小企業の資金調達や経営判断に直接影響を及ぼす重要な要素となっています。特に、経営者保証の合理性を問い直し、個人保証に過度に依存しない融資の実現を目指す方向性が、金融庁を中心に強く打ち出されているといえるでしょう。

ここでは、2020年から2024年にかけて行われた主要な法改正や行政方針の変化を時系列で整理し、経営実務に与える影響について概観します。

経営者保証を不要とする信用保証制度 (2024年3月)

2024年3月、新たに「事業者選択型経営者保証非提供制度(横断的制度)」がスタートしました。この制度は、一定の条件を満たす中小企業が、経営者保証を提供しなくても信用保証協会の保証を利用できるようにするもので、保証料率の上乗せが必要です。

さらに、制度の利用を後押しする目的で、2027年3月末までの時限措置として「経営者保証非提供促進特別保証制度」も設けられました。この制度では、上乗せされた保証料の一部について国の補助が受けられる仕組みとなっており、実質的な負担を抑えつつ制度活用を促進する設計となっています。

これらの制度により、これまで経営者保証がネックとなっていた中小企業にも、保証なしでの資金調達の選択肢が開かれ、より柔軟な経営判断や事業展開が可能となる環境が整いつつあるといえるでしょう。

なお、制度の具体的な利用条件や手続きについては、最寄りの信用保証協会または取引のある金融機関にて確認されることをおすすめします。

※参考:中小企業庁 | 保証料率の上乗せにより経営者保証を提供しないことを選択できる信用保証制度等を開始します(2024年3月15日)

金融機関が個人保証を徴求する手続きに対する監督強化(2023年4月)

2023年4月、金融庁は「経営者保証に関するガイドライン」の実効性を高めるために、金融機関が個人保証を徴求(金融機関が保証を求めること)する際の対応について監督指針の改正を行いました。これにより、保証の徴求がなされるプロセスに対して、より高い透明性と合理性が求められることになります。

今回の改正では、金融機関が個人保証を求める場合には、その必要性や、ガイドラインに沿って代替措置の検討を行ったかどうかなどについて、企業に対して説明責任を果たすことが義務付けられました。加えて、法人と経営者の資産が適切に分離されているか、財務内容が健全かどうかなどを踏まえたうえで、保証徴求の妥当性を判断しているかが審査対象とされます。

これによって、保証徴求に対するプロセスが「見える化」され、経営者にとっては、交渉における情報格差が縮まり、より合理的かつ納得感のある対応を受けられる環境が整いつつあります。

※参考:金融庁「経営者保証改革プログラム」関連資料(2022年12月23日公表、2023年4月施行)

個人保証に関する法改正(2020年4月)

2020年4月、改正民法が施行され、個人による保証契約の適正性を確保するための新たなルールが導入されました。その柱となるのが「保証意思確認書面」の作成義務です。

この改正により、個人が保証人となる際には、契約締結前に「自らの意思で保証すること」を明示した書面を作成・提出することが法的に求められるようになりました。従来は、口頭での意思確認や慣行に基づく手続きも多く、保証人が内容を十分に理解しないまま契約が進むリスクもありました。しかし、今回の改正により、そのような懸念は大幅に軽減されています。

特に中小企業の経営者以外の第三者が保証人となる場合には、この書面の提出が契約成立の前提条件となるため、保証人の保護に実効性を持たせる制度設計となっています。

この改正は、個人保証に伴うトラブルや、保証人が過度な責任を負うことを未然に防ぐという観点から、保証契約の透明性と自発性を確保するうえで大きな意義を持つものといえるでしょう。

※参考:日本公証人連合会ホームページ「保証意思宣明公正証書制度の解説」

個人保証を見直す(外す)には

近年の制度整備や金融行政の方針転換により、個人保証の見直しや解除に向けた環境が少しずつ整ってきています。経営者にとっても、過剰な責任負担を回避し、柔軟な経営判断を可能にするためには、保証の見直しを具体的に検討することが重要です。

ここでは、ガイドラインの活用や財務体質の改善、金融機関との対話など、個人保証の解除に向けて取るべき実務的な対応について解説します。

経営者保証ガイドラインによる解除申請

経営者保証を見直す手段として、最も制度的に確立されているのが「経営者保証に関するガイドライン」に基づく解除申請です。このガイドラインでは、「法人と個人の分離」「財務の健全性」「経営の透明性」という3つの判断基準が明示されており、これらを総合的に満たしていると認められれば、金融機関との交渉を通じて個人保証の見直しや解除が実現する可能性があります。

ただし、形式的に要件を満たしているだけでは十分ではありません。金融機関との信頼関係や、交渉に用いる経営計画書・財務資料などの内容が整っているかどうかも、判断に大きく影響します。実務上はガイドラインの趣旨を理解し、誠実かつ計画的に準備を進めることが、保証解除への第一歩となります。

※参考:中小企業庁ホームページ「経営者保証」

財務基盤の強化で保証を不要にする

個人保証を外すためには、金融機関が「法人単体でも十分な返済能力がある」と判断できる財務体制を築くことが欠かせません。経営者個人の保証に頼らずとも資金の貸し倒れリスクが低いと評価されるためには、企業の財務基盤そのものを強化する取り組みが必要です。

一般的に、次の5つのポイントが、個人保証を不要にするうえで重要な財務的取り組みとして考えられます。

・自己資本比率の改善:内部留保の積み増しや増資の実施により、自己資本比率の健全化を図ります。業種によって異なりますが、一般的には20%以上が一つの目安とされます。
・資金繰りの安定化:3ヶ月先までの資金繰り表を作成・更新し、定期的に金融機関へ提出することで、資金管理の確かさを示します。
・第三者保証の回避:関係会社や取引先に保証人となってもらうのは避け、自社の信用力で融資を受ける姿勢を示します。
・資本関係の整理:社外株主との資本構成を見直し、責任関係を明確にすることで、ガバナンスの強化と財務の透明性向上につなげます。
・法人と経営者の分離:経営者個人と法人の資産を明確に分け、借入の返済を会社の力だけで行える体制を整えることが、保証不要の前提です。

これらの項目は単独ではなく総合的に評価されるため、地道な財務体質の改善と継続的な経営管理が求められます。保証解除を目指すなら、日常的な経営の中でこれらの要素を意識的に整えていくことが重要です。

個人保証は、M&Aで解除できるのか

M&Aによって会社が譲渡・承継された場合でも、経営者の個人保証が自動的に解除されるわけではありません。保証を外すには、金融機関との個別交渉が必要であり、買い手側と金融機関との間で保証の切り替えについて合意が得られなければ、保証は継続される可能性があります。

特に株式譲渡のケースでは、形式上は会社の契約関係がそのまま引き継がれるため、譲渡オーナーの個人保証もそのまま残ることになります。これを買い手側に切り替えるには、金融機関の承諾と新たな保証契約の締結が必要です。

そのため、M&Aを通じて保証解除を目指す場合には、早い段階から金融機関との協議を始めることが大切です。保証の取り扱いは、交渉の成否や手続きの円滑さに直結するため、後回しにせず、事前にしっかりと準備しておく必要があります。

個人保証を外すために知っておくべきこと

個人保証は、中小企業の資金調達を支える一方で、経営悪化時の個人資産の喪失や、事業承継・M&Aの支障となるリスクも抱えています。

しかし、近年では、「経営者保証に関するガイドライン」の整備をはじめ、信用保証制度の見直しや金融行政の監督強化といった制度的な変化により、個人保証に依存しない融資環境の整備が進みつつあります。

ガイドラインの活用、財務基盤の強化、経営者と法人の資産分離といった具体的な取り組みを重ねることで、個人保証の見直しや解除を実現できる可能性は着実に広がっているといえるでしょう。

特に、将来的に事業承継やM&Aを検討する企業にとっては、個人保証の扱いが経営判断に直結します。そのため、早期に金融機関と協議し、必要な準備を進めておくことが欠かせません。

本記事で紹介した各制度や支援策を正しく理解し、自社の状況に応じた現実的な対応を積み重ねていくことが、個人保証解除への確かな一歩となります。

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