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持株会(従業員持株会)の仕組みや特徴とは?メリットや注意点など詳しく解説

経営・ビジネス

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持株会イメージ
持株会を上手く使うと、会社の業績アップや株主の安定化だけでなく、買収防止策などのさまざまな効果を生み出せます。
本記事では、持株会のメリットやデメリットを会社側と従業員側の両視点からまとめるとともに、会社が買収された場合持株会はどうなるのかなどについて解説していきます。

持株会とは

持株会(従業員持株会)とは、従業員が所属する企業の株式を取得することにより、従業員としての権利だけでなく株主としての権利も得られる制度のことをいいます。
会社に関わるあらゆる利害関係者(ステークホルダー)の利益を大切に考える「ステークホルダー資本主義」が世界中で広まりつつあるものの、それでもやはり、会社とは第一義的には株主のものであることに間違いありません。

持株会を通して従業員が自社株を購入できれば、従業員は株主としてのメリットも享受できます。
また、従業員は株主として経営に参画できるため、経営に現場の声が反映しやすくなるだけでなく、会社の利益に応じて配当金も受け取れ、業績の向上を自分の資産形成に反映できます。

持株会の仕組み

持株会の仕組みについて、ここでは非上場の企業を例に話を進めていきます。

  1. 従業員が集まり、持株会(組合)を設立します
  2. 従業員が株式を取得するための資金が本人の給料や賞与などから毎月天引きされ、持株会に支払われます
  3. オーナー創業者などの株主が持株会に株式を譲渡し、その対価として持株会から現金を受け取ります
  4. 持株会の株式は各従業員の出資額に応じて共有の持分となります
  5. 会社が出した利益の中から持株会に配当金が支払われます
  6. 持株会から出資額に応じて各従業員に配当金が支払われます

持株会の仕組みは上記のとおりです。したがって、持株会を通して購入した株式は持株会のものであり、従業員が直接所有するのではありません。分譲マンションなどと同じで共有持分となります。

上場企業の持株会への加入状況

日本取引所グループが発表している2019年度従業員持株会状況調査結果のレポートによると、東京証券取引所に上場している3,708 社のうち、少なくとも3,236社が持株会制度を活用しているのがわかります。
従業員の持株会への加入状況については、調査対象となった3,236社の全従業員751万人のうち289万人が持株会に加入しており、加入割合は38.5%です。

持株会のメリット【会社側視点】

メリデメ

持株会には、会社側と従業員側の双方にメリットがあります。それぞれの立場からみた持株会のメリットについてまとめてみましょう。会社側から見た場合の持株会のメリットは、おもに以下の4点です。

従業員のモチベーションアップにつながる

従業員の頑張りは自分の給料や賞与にだけ反映されるものですが、配当金は会社全体が出した収益に対して株主に還元されるものです。したがって、持株会を通して株主となった従業員は、「自分だけが良ければいい」という考え方から会社全体のことを考えて働くように変わります。このような変化は従業員全体の労働意欲の向上につながり、会社全体の収益を底上げしていきます。

安定した企業経営につながる

会社にとって従業員持株会は、長期に自社の株を保有する安定した株主となります。
自社株が外部に流出することを防ぐため、第三者の一般株主から大量に自社株を取得される敵対的買収の防止策にもなりえます。多くの従業員が持株会に加入することで、結果安定的な企業経営につながります。

インサイダー取引が適用されないので安心できる

自社株の購入はインサイダー取引の対象となりますが、持株会のように一定の計画にしたがって定額購入をする場合に関しては、その対象外です。ただし、情報を得たうえで株式の買い増しをした場合や新たに持株会に入った場合などは、インサイダー取引の対象となるため気を付けなければなりません。

インサイダー取引とは?規制対象と罰則、注意しておきたいポイント

事業承継対策となる

中小企業の株価が高くなり過ぎてしまうと、事業承継や相続などで支払う株式取得のための対価が高額になり、現金で支払うのが難しくなってしまいます。このような問題を解決するために用いるのが、持株会です。
持株会が設立されると、オーナー経営者が保有している株式の一部が持株会に売却されることになるため、将来的に相続財産となる株式を減らせます。もちろんその代わりに現金を得ることになりますが、これは保険などを使ったさまざまなスキームで節税できます。

持株会のメリット【従業員側視点】

次に、従業員から見た場合の持株会のメリットをまとめてみます。従業員側のメリットは、おもに以下の3点です。

福利厚生が充実する

持株会制度を導入すると従業員のモチベーションが上がり、安定株主の誕生により企業経営も安定させられます。その結果、従業員に与えられるメリットが、配当金の増額です。会社の状況が向上することにより収益が上がれば、配当額も増えます。その結果、従業員の個人資産も増えるため、従業員に対する福利厚生を充実できます。

奨励金が支給される

奨励金とは、従業員が自社株を買う場合は会社が一定割合を支給し、その分だけ多く購入できるようにする制度のことをいいます。たとえば、奨励金が10%に設定されている会社において、「毎月1万円ずつ持株会を通じて自社株に投資する」という場合であれば実際に購入できる株式数は以下です。

(例)株価が1,000円の場合の購入株式数
{毎月の購入金額10,000円+奨励金(10,000円×10%=1,000円)}÷株価1,000円=11株

資産形成がしやすい

持株会を通して株式を購入すると、奨励金の支給分だけ株式を多く購入できるだけでなく、社員全員の頑張りによって配当金の増額も期待できます。これは、自社株の利回りを上げるのと同じ効果になるため、資産形成がしやすいです。

持株会のデメリット・注意点【会社側視点】

デメリットも、メリットと同じように会社側と従業員側のどちら側にもあります。それぞれの立場からみた持株会のデメリットや注意点などについて解説します。会社側から見たおもなデメリットは、以下の2点です。

株主総会の議決権が所有できる

会社の株式を従業員が取得すると、持株数に応じて、以下の権利が与えられます。

持株数 付与される権利
1株 株主代表訴訟、議事録閲覧
1%以上 株主総会での議案提出
3%以上 株主総会の開催、帳簿の閲覧
33.33%以上(1/3以上) 特別決議の否決

実際経営に大きな影響を及ぼすケースは少ないですが、安定的な経営が難しくなる可能性も出てきます。議決権をなくし、配当を優先する株だけを購入するといった対策が行われる場合もあります。

配当を出し続ける必要がある

持株会制度の導入は、業績が順調で高配当を出し続けられるうちは、会社にも従業員にもメリットしかないといえるほど魅力的なものです。しかし、常に安定した状態で企業経営が行えることはあり得ません。世界情勢などの影響によって、業績が悪化することは十分に考えられます。
この際、業績悪化によって無配当にしてしまうと、従業員のモチベーションや会社への信頼度が下がってしまう恐れがあります。だからといって無理に配当を出せば、会社のキャッシュフローは悪化し、経営のかじ取りがさらに難しくなることは間違いありません。これらを勘案したうえで、業績が悪化してもある程度配当金を出し続けなければならない点はデメリットといえるでしょう。

持株会のデメリット・注意点【従業員側視点】

次は、従業員から見た場合の持株会のデメリットです。従業員側視点でのデメリットは、以下の3点です。

好きなタイミングで株の購入ができない

持株会を通しての自社株購入は定期的に行われるものであるため、好きなタイミングでの購入はできません。通常の株式投資であれば、値下がりしたときに買って値上がりしたタイミングで売れるため、株価を見ながらリアルタイムでキャピタルゲインを得られます。
しかし、持株会は好きなタイミングで株の購入ができないため、狙った通りのキャピタルゲインが得にくい点はデメリットといっていいでしょう。ただし、キャピタルゲインについては、まったく得られないわけではありません。長期的に保有し、順調に値上がりをしていけば、いつか売却するタイミングでキャピタルゲインを得られます。

会社の業績に左右されやすい

持株会制度を活用した資産形成は、奨励金なども考慮に入れると利回りもよく、非常に効率的で便利です。しかし、通常の株式投資のようにさまざまな銘柄を組み合わせてポートフォリオを組み、リスクをヘッジできない点は問題です。
従業員の個人資産という点で考えたとき、万が一勤めている会社が倒産してしまうと、仕事だけでなく資産の大半も失くしてしまうことになります。業績が悪化すれば給料や賞与は下がり、無配当になることも考えられるでしょう。

すぐに売却したくてもできない

持株会を通して購入した株式は、通常の株式投資のように売りたいタイミングで売れるわけではありません。持株会から従業員の個人口座に株式を振り替える手続きが必要になります。
仮に従業員が証券会社に取引口座を持っていなければ、それを開設するところから始めなければなりません。株式を売却できるのは、それからです。また、売買単位に満たない端株に関しては、持株会に買い取ってもらわなければなりません。
これらの手続きに時間がかかるため、持株会で購入した株式はすぐに売却したくてもできません。

持株会導入前に検討すべき項目

持株会を会社に導入するにあたり、検討すべき主な項目は以下の5点です。

持株会が持つ株式の保有比率

持株会の持つ株式の保有比率が増えると、経営に混乱が生じる可能性があるのは上述のとおりです。したがって、最大でどれほどまでの株式を持株会が持てるのかを事前に検討しておかなければなりません。

奨励金の支給について

奨励金を支給するのかどうか、そして支給する場合はどれだけ支給するのかは、「自社株を持ちたい!」と思う従業員のモチベーションに大きく影響します。したがって、どれだけの奨励金を支給するのがベストかを専門家の意見を聞きながら検討したほうがよいでしょう。

配当金の支払水準

従業員にとって、株式を売ってキャピタルゲインを得ることは難しいため、自社株購入のメリットは配当金しかありません。そのあたりを考慮に入れたうえで、ほかの株主に与える影響なども加味しながら、配当金の支払水準をどのようにするのかを明確にしておかなければなりません。

退職時などによる株式の買い取り価格について

上場企業の株式であれば、株式は退職時などに個人口座へ振り替えられるため、あとはいつでも市場で売れます。しかし、非上場企業の場合は市場で流通しておらず、譲渡制限が設けられている株式がほとんどのため、持株会に買い取ってもらう以外に売却方法はありません。したがって、売却時に持株会がどのような価格で買い取るのかを、あらかじめ規約などに明記しておく必要があります。
なお、非上場企業の株式は上場企業のように市場で取引されていないため、現在の株価がわかりません。従業員から株式を買い取るためには、株式の評価をして時価を求める作業が必要です。
ちなみに、非上場企業の株式は、その株式を誰が持っているのかによって以下のように評価方法が変わります。

  • 会社を支配している同族株主グループの場合・・・原則的評価方法
  • その他少数株主グループの場合・・・特例的評価方法

会社を支配している同族株主グループとはオーナー社長やその親族などのことで、発行済株式数の50%超を持ち、実質的に会社を支配している株主グループのことです。持株会の場合はその他少数株主グループに該当するため、特例的評価方法で株価を求めます。

特例的評価方法による株価算定法
特例的評価方法による株価算定法とは、配当金の金額から株価を算定する方法のことをいいます。会社を支配している同族株主グループは、会社の経営方針や取締役を決める権利などを持っています。
しかし同じ株式でも、少数株主は会社に対してそれ程の影響力を及ぼせないため、株式の価値としては配当金がもらえる程度でしかありません。したがって、同じ株式でも、従業員が持つ場合は配当金の金額から逆算して株価を算定し、それを株式の評価額とするわけです。この評価方法を、配当還元方式といいます。
ただし、最高裁の判例では、従業員から持株会が株式を買い戻す場合は取得価格で買い戻すことは合法であると述べています(最判平成21年2月17日) 。持株会の規約に取得価格で買い戻す旨の規約が書かれている場合は、配当還元方式で計算せずにその価格で買い取っても問題はありません。

持株会の管理方法について

持株会は、設立のために官公庁へ届出を出す必要がないため、一般的に組合の組織形態をとります。組合を設立するためには、設立発起人を誰にするのか決めなければなりません。
また、持株会の管理運営は、社内に置く場合と証券会社などの社外へ委託する場合の2種類があります。これをどうするのかも同時に決めなければなりません。ただし、特別な運営ノウハウなどが自社内にない限りは、証券会社などに委託したほうがよいでしょう。

万が一会社売却を行ったら持株会はどうなる?

会社がM&Aにより売却を決断した場合は、持株会が保有している株式も譲受企業へ売却することになります。多くの持株会は組合という組織形態をとっているため、株式を売却するためには、会員全員の同意を得るか持株会を解散して清算手続きを行わなければなりません。
こうして従業員の持つ自社株は譲受企業へ譲渡され、従業員はその対価を受け取ることになります。

終わりに

持株会の導入は、オーナー経営者にとって相続税対策や事業承継対策に有効なだけでなく、安定株主を増やすことによる経営の安定にも効果があります。一方、従業員にとっても奨励金が上乗せされる自社株購入は、個人資産の形成や資産運用にも役に立つだけでなく、働くモチベーションを高めて給料や賞与を増やすきっかけにもなります。

ただし、持株会の持株数が増えると議決権を持つため、経営の不安定化を招くことも考えられます。従業員にとっても、給料も株式による資産運用も会社任せにしてしまうと、万が一会社に何かがあったときには取り返しがつかないことになってしまいます。持株会を導入する場合は、これらを踏まえたうえで外部の専門家を交えて検討するのがよいでしょう。

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M&A マガジン編集部

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