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PER(株価収益率)とは?計算方法やPBRとの違いをわかりやすく解説

経営・ビジネス
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企業の将来的な成長性を評価する際や、同業他社との比較、適正な株価を判断する時の重要な指標の1つがPER(株価収益率)です。
本記事では、PERの概要や計算式、PERを見る際に注意すべき点などをわかりやすくご紹介します。

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PERからわかること

一般的にPERが高いと利益に比べて株価が割高、低ければ割安と考えられます。

PERが高い場合、市場はその企業の将来の成長や利益に高い期待を寄せていることを意味します。つまり、投資家たちはその企業が将来的に利益を増やし、株価が上昇すると予測しています。

一方、PERが低い場合は、市場がその企業の将来の成長や利益に対して懐疑的な見方をしていることを示します。つまり、投資家たちはその企業の将来の成長が限定的であると予測しており、株価が上昇しづらいと考えています。

約10年間の日経平均のPERを見ると、15倍前後を推移していることから、国内の上場企業では「15倍」が割高、割安を判断する目安とも言われています。

ただしPERには「何倍だと割高、割安」という絶対的な基準が無く、業界・業種によって水準が異なります。そのため、同業の企業同士の比較に用いられることが一般的です。

PERとPBRの違い

PERに似た指標として、PBR(Price Book-value Ratio:株価純資産倍率)があります。これはPERと同様に株価の割高、割安を評価するために用いられます。 PBRは、企業の株価が純資産の何倍であるかを示す指標です。そのため、株価を1株当たりの純資産で割って求めます。

PERは、市場が企業の将来の成長や利益にどれだけの期待を寄せているかを示すのに対し、PBRは企業の実態にもとづいた評価を反映していると言えます。つまり両者はともに株価の妥当性を評価するものの、PERは収益力、PBRは純資産と、判断の基準が異なる点で異なります。

PERの計算例


以下A社のケースを例に、PERを算出してみましょう。

【A社】
発行済株式総数:1万株
当期純利益:1億円
株価:10万円
上記の場合、A社のPERは  10万円 ÷(1億円÷1万株)=10倍 であることがわかります。

同じ条件でA社の株価が10分の1(1万円)の場合のPERを計算してみます。
1万円÷(1億円÷1万株)=1倍

以上の例から、当期純利益が同じでも、株価が10分の1になるとPERも10分の1となり、PERの低いほうが割安と判断できます。

PER(株価収益率)を見る際の注意点


PERを見る上で注意すべきポイントは、以下の通りです。

他の指標と合わせて判断する必要がある

絶対的な基準はないこと、上場企業では15倍が一つの目安になること、をご紹介してきましたが、単年度のPERの数字だけで「割高」「割安」を単純に判断することはできません。

同業の企業間の比較や、複数年のPERの数値の推移を確認しながら、PBRなど他の指標と合わせて判断していく必要があります。

マイナスのPERが出る場合もある

当期純利益が赤字の場合 、算式にマイナスの数字が加わるため、結果的にPERはマイナスに転じてしまいます。
以下B社のPERを例に見ていきましょう。

【B社】
当期純利益:1億円の赤字
発行済株式総数:1万株
株価:10万円
上記内容からB社のPERは以下のように算出できます。 10万円÷(△1億円÷1万株)=△10倍

PERはマイナスになると、投資対象として検討することが難しくなります。

ただし、マイナスだからと言って、必ずしも投資を控えた方が良いというわけでもありません。
例えば、経常利益が黒字にもかかわらず、何らかの特別損失が生じたために、当期純利益がマイナスになる場合があります。

この特別損失の影響が短期的なものであれば、経常利益そのものは黒字であるため、必ずしも投資対象から外したほうが良いと言い切れません。当期純利益が赤字の結果、株価が下落していれば、PERがマイナスでも、むしろ割安となる可能性もあります。

このようにPERがマイナスになる場合は、マイナスとなった原因を特定し、それを加味した上で投資判断を行う必要があります。

終わりに

以上、PER(株価収益率)についてご紹介しました。PERは企業の実態を株価と利益の関係から表し、投資判断や企業価値評価を行う場面で多く用いられています。

ただしPERだけでなく、PBR(株価純資産倍率)、ROE(自己資本利益率)など他の財務指標と併用することで、よりバランスの取れた企業評価が可能になります。

日本M&Aセンターでは、M&Aをはじめ様々な経営課題の解決に向けて専任チームを組成し、ご支援を行っています。詳しくはコンサルタントまでお問合せください。

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M&A マガジン編集部

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