買収プレミアムとは?支払われる理由、メリットや注意点などわかりやすく解説

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買収プレミアムとは、企業が買収を行う際に、対象企業の時価総額に加えて支払う対価です。なぜ、追加価格を支払う必要があるのでしょうか。
本記事では、買収プレミアムを支払う背景やメリット・リスクなど企業事例を含めて詳しく解説します。

買収プレミアムとは

買収プレミアムとは、買収企業が対象企業の株式価格に追加で支払う対価です。つまり実際に支払う買収額と時価総額の差額に該当します。
買収企業にとって対象企業を獲得するために必要なコストとも言えます。

買収プレミアムが支払われる背景

買収プレミアムはどういう時に支払われるのでしょうか。ここでは主なケースを見ていきます。

対象企業の成長性、技術力などが高く評価される場合

一般的に多いケースとして、買収企業が対象企業の将来の成長や収益性、独自の技術などを高く評価し、その価値が現在の市場価格には反映されていないと判断した場合が挙げられます。
そのため、買収企業は株主に対して市場価格以上の価格を提供し、その企業の所有権を得るために必要な株式の大多数を購入することができます。

自社とのシナジー効果が大きく見込まれる場合

また、買収企業と対象企業の事業の相性が良く、買収によって得られるシナジー効果が大きいと判断された場合にも、買収プレミアムが発生します。
この場合、買収の理由は対象企業自体が持つ魅力ではなく、買収企業との相性であるため、追加価格は他のケースと比べて抑えられた価格になるケースもあります。

買収を希望する企業が多い場合

そのほか例外として、買収市場が盛んになっている場合に買収プレミアムが必要になる発生するケースがあります。対象企業の買収を希望する企業が多い時には、動向によって買収プレミアムが発生することがあります。

しかし、買収プレミアムが高額になりすぎると、買収後のコスト回収に苦労する可能性があります。
そのため、適切な買収プレミアムを設定するためには、買収企業は対象企業の価値を正確に評価する能力が必要となります。

このように、買収プレミアムは企業買収の一部として重要な要素であり、適切な評価と戦略的意思決定を必要とします。

買収プレミアムを支払うメリット


M&Aにおいて買収プレミアムがもたらすメリットについて、以下のような点が挙げられます。

買収成功の確率が上がる

買収プレミアムが高いほど、対象企業の株主や経営陣は買収提案に賛同しやすくなります。そのため買収を成功に導く確率が上がります。

また、他の企業も同じ企業を買収しようとしている場合、買収プレミアムの提示によって、競合他社との差別化につながり、買収競争に勝つ可能性が上がります。

買収が短期間で成立しやすくなる

高い買収価額を提示することで、上述のように株主からの同意が得やすくなり、交渉がスムーズに進みます。そのため、短期間で買収が成立する可能性が高まります。

以上のように、買収企業側にとって、買収プレミアムは有効な交渉材料の1つになりえます。

買収プレミアムを支払うリスク・注意点

買収プレミアムを支払う際には、以下のリスクに注意が必要です。

のれん減損のリスク

買収プレミアムは「のれん代」として計上されます。買収後、期待していた水準の収益性が得られない場合、会計上でのれんの減損が発生します。これをのれん減損と呼びます。

のれん減損が発生すると、買収企業はその損失を計上する必要があり、財務諸表に影響が生じます。減損損失は直接利益に影響を与え、企業の株価や信用評価に悪影響を及ぼす可能性があります。

投資対効果の低下

対象企業を過大に評価してしまった場合、投資金額の回収が長期化する可能性があります。また、予想に反して対象企業の業績が低迷、あるいは統合が進まなければ、回収できない可能性も出てきます。

以上のリスクを軽減するには、対象企業の評価額を正確に把握しなければなりません。また買収後の対象企業の業績や評価額を継続的にモニタリングし、必要に応じて経営改善策を講じる対策も必要となるでしょう。

買収プレミアムの算出方法

買収プレミアムの算出方法には、主に以下のような方法が挙げられます。

  1. 企業の純粋な時価総額から算出する方法
  2. 企業価値を計算し、時価総額を算出し買収プレミアムを求める方法

2.の企業価値の算出方法は主に「コストアプローチ」「マーケットアプローチ」「インカムアプローチ」の3種類があります。

「コストアプローチ」は、企業の純資産価値に着目した評価方法で、資産や負債の時価を合計して企業価値を算定する方法です。
「マーケットアプローチ」は、類似企業の株式市場における相場に着目して算定する方法です。
「インカムアプローチ」は、企業の将来の収益性に着目して算定する方法です。

これらの方法を用いて算出された企業価値に、対象企業と統合することによるシナジー効果、技術力、ブランドなど対象とする無形資産に対して価格を算定し、買収プレミアムとして加え、買収価額を算出します。

いずれも非常に専門性の高い領域であるため、M&Aの実務経験が豊富な専門家を交えて相談することをお勧めします。

買収プレミアムを適切に設定するポイント

買収プレミアムを設定する際のポイントは、以下のとおりです。

デューデリジェンスを適切に行う

デューデリジェンス(買収監査)で調査した情報は、買収のメリットやリスクを評価して、買収価格やM&Aの可否などを決めるために使われます。

デューデリジェンスの過程で、対象企業の問題点や懸念事項が明らかになった場合には、買収プレミアムの修正が必要になるだけでなく、M&A自体が中止になるケースもあります。

過大な金額で買収を行ってしまうと、買収企業に大きな影響を及ぼすため、デューデリジェンスは綿密に行うことが必要です。

M&Aアドバイザーのサポートを受ける

M&Aの成否に影響する買収プレミアムの設定には、前述の通り専門的な知識と経験が必要です。

M&Aのアドバイザーに依頼をすることで、買収プレミアムの設定で専門的な見地からサポートしてもらえます。買収プレミアムの算定方法や経営への影響を熟知しており、M&Aの経験も豊富なため、買収プレミアムを適切な価格に設定できるでしょう。

またM&Aアドバイザーは、買収プレミアム以外にも、M&Aに関するさまざまなアドバイスを提供可能です。具体的には、買収戦略の立案、買収先企業の選定、買収価格の交渉などあらゆる場面でサポートを受けられます。

買収プレミアムが支払われたM&A事例

最後に、買収プレミアムが支払われた企業M&A事例を、買収プレミアムの割合別にご紹介します。
※プレミアムは公表直前の各社株価に基づく割合

SalesforceのTableau買収(2019年)

Salesforceはデータ分析ツール大手のTableauを157億ドルで買収しました。これはTableauの株価に対して42%のプレミアムを含みます。この買収により、Salesforceは自社のデータ解析能力を大幅に強化しました。

MicrosoftのLinkedIn買収(2016年)

Microsoftはビジネス向けSNSを運営するLinkedInを262億ドルで買収しました。これはLinkedInの時価総額の50%のプレミアムを含んでいます。MicrosoftはLinkedInのプロフェッショナルなユーザーベースとデータが、ビジネス向けソフトウェアやサービスの強化に役立つと判断し、買収を実行しました。

これらの事例からも、買収プレミアムは買収企業が将来の価値や成長性、戦略的な適合性などを評価した結果、支払われていることがわかります。

終わりに

以上、買収プレミアムについてご紹介しました。
企業価値の算出や買収プレミアムの判断は、非常に高度な専門性を要するため、M&Aにおける実績が豊富なM&Aアドバイザーに相談されることをお勧めします。

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M&A マガジン編集部

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