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アーリーリタイアとは?メリット・デメリット、必要な資金の目安を解説

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アーリーリタイア
日本経済の低迷や働き方改革の推進によって、多様な価値観が生まれつつある中、新たなライフスタイルの1つとしてアーリーリタイアが注目されています。
本記事ではアーリーリタイアの概要、メリット・デメリットや必要な資金についてご紹介します。

アーリーリタイアとは

アーリーリタイアとは、定年を迎える前に早期退職・引退(リタイア)することを指します。「early retirement(早期退職)」に由来する和製英語で、早期リタイアとも呼ばれます。

労働からリタイアし、早期退職金や貯金などの資産をもとに余生を過ごすライフスタイルです。

これまで多くの日本企業では、終身雇用制度の下、定年まで勤め上げリタイアすることが一般的でした。しかし昨今は「仕事だけに時間を費やすのではなく、人生を自由に謳歌したい」と考える人々が増え、アーリーリタイアが注目されています。

アーリーリタイアは、一般的には40~50代から検討を始めるケースが多く見られます。若年層の中でも新しい価値観として広まりつつありますが、働かなくても十分な貯蓄や資産を必要とするため、短期間で準備できる人は限られます。

アーリーリタイアとセミリタイアの違い


アーリーリタイアと混同されやすい言葉に「セミリタイア」があります。両者の違いは、勤労による収入の有無が異なるポイントです。

早期退職金や貯金などの資産をもとに余生を過ごすアーリーリタイアに対し、セミリタイアは早期退職後もアルバイトやフリーランスなど、一定の収入を確保しながら生活を送ります。

そのため、事前に十分な資産形成を行う必要があるアーリーリタイアに比べると、ハードルは下がると捉えられます。

アーリーリタイアとFIREとの違い

FIRE(ファイア)は「Financial Independence, Retire Early」の略語で、経済的自立と早期リタイアを意味する言葉です。

FIREでは、資産運用による経済的自立を目指し、収入の有無という点でアーリーリタイアと異なります。FIREで収入を得る方法として、株式投資や不動産投資、FXなどが挙げられます。

アーリーリタイアほど十分な資産形成を必要としませんが、FIREの実現には、年間支出の25倍の資産が必要と言われています。
さらに、資産を目減りさせないためには、投資元本比の約4%にあたる運用益が必要と言われるため、FIREには高度な投資スキルやノウハウが求められます。

アーリーリタイアのメリット


アーリーリタイアの主なメリットは、以下の通りです。

時間に余裕が生まれ、新たなチャレンジができる

仕事に費やしていた時間を自由に使えるようになるため、趣味や旅行、家族との時間を充実させることができます。また、語学留学や資格の勉強などの学びなおしなど、新しいことにも挑戦しやすくなります。

仕事のストレスからの解放

仕事そのものや責任、人間関係の悩みなど、仕事にまつわる多くのストレスから解放されます。時間や責任に追われること無く、穏やかに余生を過ごすことができるでしょう。

アーリーリタイアのデメリット

アーリーリタイアの主なデメリットは、以下の通りです。

資産が目減りする

総務省統計局から発表された「家計調査年報(家計収支編)2020年(令和2年)」によると、二人以上の世帯の家計消費支出は、月平均27.7万円と言われています。

勤労による収入がなくなるため、資産が目減りしていくことは避けられません。資産に対して毎月の支出が多過ぎると、当然ながら生活資金が無くなるため、あらかじめ綿密なプランニングが必要です。
医療費や家屋の修繕費、家具や家電の買い替え費用など、イレギュラーな出費も考慮しておくと安心です。

出典:総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2020年(令和2年)

将来受け取れる年金額が減る

年金には「老齢厚生年金」と「老齢基礎年金」の二種類があります。このうち「老齢厚生年金」は、年金を納めた期間に応じて年金額が決まります。

つまり、アーリーリタイアを選択した場合、老齢厚生年金を納める期間が短縮されるため、受け取れる年金が減額されます。

一方「老齢基礎年金」は、20~60歳までの国民年金の納付期間で年金額が決まるため、退職した後に国民年金保険料を払い続ければ問題ありません。ただし保険料の免除を受けたり、未納の状態が続くと、減額になるため注意が必要です。

リタイアする前に、将来自分が受け取れる年金額や、国民年金保険料の支払い金額などをシミュレーションしておきましょう。

会社員に比べ、社会的信用を得るのが難しくなる

アーリーリタイアで引退すると、無職になります。会社員から無職になると、社会的信用が低くなり「ローンが借りにくくなる」「クレジットカードを新しく作れなくなる」場面が出てくるでしょう。
その後も社会的信用を維持したいという方は、個人事業主の開業届を出しておくのも一つの手です。

具体的なプランを持たないと、時間を持て余す

自由な時間が増える反面、具体的にどう過ごしたいのか、プランニングが不明瞭なままでは、時間を持て余す事態に陥ります。また、社会との接点が減り、孤独を感じやすくなります。
そうした事態に陥らないよう、具体的にやることや理想の姿をイメージしておき、リタイアに向けて計画的に進めることが大切です。

アーリーリタイアの検討で考慮すべきポイント


アーリーリタイアを検討する際に、考慮しておかなければならないポイントは、以下の通りです。

財務状況の把握とリスク対策

勤労せずに生活できるだけの十分な貯蓄や資産が不可欠です。当然ながらリタイアする時期が早いほど、必要となる金額は大きくなります。
自らの財務状況や社会情勢を正しく把握し、実現可能性をシミュレーションしてみることが検討の第一歩になります。
また、経済状況の変動、健康の問題、家族の事情など、未来の不確実性に備えてリスクを評価し、対策を練ることも重要です。

<主な確認項目>

  • 貯蓄や投資の総額
  • 毎月の収入と支出
  • 退職後の生活費や固定費
  • 未来の予想インフレーション率や税制の変動
  • 緊急時の資金

入念かつ綿密な人生設計

アーリーリタイアしたその後の人生を充実したものにするには、しっかりとした人生設計を立てておく必要があります。

例えば「年に1回は旅行したい」「月に数回は豪勢な外食をしたい」「将来二世帯住宅を建てたい」など、どのような暮らし、ライフスタイルを送りたいのかを明確にします。そしてそれを叶えるためには、具体的にどのくらいの費用が月々必要になるかを算出します。そうすることで、引退までに蓄えておくべき資金の目安が明確になります。

また、アーリーリタイアの影響は自分だけでなく、家族やパートナーにも影響を及ぼします。そのため、彼らの意見や感想もしっかりと取り入れる綿密に計画を練ることが不可欠です。

リタイアに不安を覚える人は、完全に引退する前に、一時的に仕事を休んでアーリーリタイアの生活を試してみることをお勧めします。これにより、アーリーリタイアの生活が自分に合っているかどうかを判断しやすくなります。

最終的には、アーリーリタイアをするかどうか、そしてそのタイミングは個人の価値観や生活の目的、現在の状況に応じて決めることが最善です。十分な情報収集と計画を行い、自分自身の理想的な生活を実現するためのステップを踏んでください。

アーリーリタイアに向いている人の特徴

アーリーリタイアに向いている人の特徴は、以下の通りです。

M&A・投資などで資産形成に成功した人

アーリーリタイアの成功率を上げるものは、十分な貯蓄や資産に他なりません。そのため、すでに何らかの収益で資産を数億円保有する人は当てはまると言えます。

事実、40~50代でアーリーリタイアをしている人の多くは、M&Aや投資などで十分な資産を確保していると言われています。

ライフプランを明確に早くから描いている人

可能な限り早くからファイルプランを明確に描いていることも大切です。

繰り返しになりますがアーリーリタイアには、生涯働かなくても生活を送れるだけの十分は資産が必要です。しかし、早いうちから計画を立てて動かなければ、それだけの資産を確保するのは、難しいでしょう。

また、引退後にかかる費用の算出、資産を確保するための計画に加えて、それを実行に移せる行動力も欠かせません。収支のバランスが崩れたときは原因を究明し、すぐにリカバリーできる対応力も必要です。

アーリーリタイアに必要な資金の目安


最後に、アーリーリタイアするために必要な金額を、30歳、40歳、50歳の年齢別に解説します。

尚、以下で挙げる金額例は、厚生労働省と総務省統計局のデータをもとに作成した概算です。

まず、厚生労働省の「令和2年簡易生命表」より、平均寿命を85歳、総務省統計局の「家計調査年報(家計収支編)2020年(令和2年)」に基づき、1ヶ月の生活費(税金などの支出は除く)を仮定して、それぞれの期間に応じた金額を算出しています。

正確な金額を知りたい場合は、引退後の人生計画を綿密に設計した上で、月にかかる生活費などを詳細に割り出しましょう。
また、その際に年金額や税金の支出なども計算しておくことが重要です。

実行年齢 必要な金額(内訳) (総額)
30歳 【30~65歳までにかかる生活費】
1億3千211万352円

【65~85歳までにかかる生活費】
5千116万920円
【30歳から85歳までにかかる生活費】
1億8千327万1,272円
40歳 【40~65歳までにかかる生活費】
9千541万3,032円

【65~85歳までにかかる生活費】
5千116万920円

【40歳から85歳までにかかる生活費】
1億4千657万3,952円
50歳 【50~65歳までにかかる生活費】
5千871万5,712円

【65~85歳までにかかる生活費】
5千116万920円

【50歳から85歳までにかかる生活費】
1億4千657万3,952円

出典:
厚生労働省 「令和2年 簡易生命表」

総務省統計局 「家計調査報告(家計収支編) 2020年(令和2年)」

上記はあくまで目安のため、世帯の人数や、ライフスタイル、生活水準によって、金額に大きな差が生じます。ご自身や家族のライフプランを綿密に練り、イレギュラーな出費にも対応できるだけの十分な資産を確保しておくことが求められます。

終わりに

以上、アーリーリタイアについてご紹介しました。リタイア後も、一定の収入を確保するセミリタイアやFIREと異なるため、入念なプランニング、資産形成が必要となります。

会社員だけでなく、自分で会社を経営する経営者にとっても、リタイアのタイミングや次の世代へのバトンの渡し方を検討することは重要です。

そもそも経営者には、会社員のように定年が無いため、引退のタイミングを見誤り、事業承継がスムーズに進められなかったというケースは少なくありません。引退を考える方は、M&Aを1つの選択肢とし、今後のライフプランを検討されることをお勧めします。

M&Aで譲渡を行い、経営の一線から退いた経営者はその後どのような人生を歩んでいるのか。M&A事例や、M&Aに関するご質問、お問合せを専任のコンサルタントが受付けています。ご相談は無料、秘密厳守で対応します。

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M&A マガジン編集部

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