M&A戦略とは?企業成長と事業承継を成功に導くためのポイント

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企業が持続的に成長を遂げるためには、社内の努力だけでは限界があることから、外部資源を取り込む手段としてM&Aを活用する企業が増えています。こうした流れは、とりわけ中小企業において顕著です。

しかし、M&Aを成功に導くためには、単なる買収や売却の手続きを超えた「戦略的な設計」が欠かせません。
本記事では、M&A戦略の基礎から立案手順、活用可能なフレームワークや国の支援策、そして成功事例に至るまで、経営判断に役立つ視点を体系的に解説します。

この記事のポイント

  • 国内市場の成熟化や人口減少により、企業はM&Aを通じて競争力強化や事業承継を図っている。特に中小企業では後継者不足が深刻な課題。
  • M&Aの成功には戦略的な計画が不可欠で、リソースの浪費や統合の失敗を避ける必要がある。

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M&A戦略とは?

M&A戦略とは、企業が買収や売却を通じて経営目標を達成するために策定する方針のことです。したがって、M&A戦略を立案するためには、「なぜM&Aを行うのか」「どのような相手・方法で進めるべきか」を明確にすることが重要です。

事業拡大や新市場への参入や経営資源の補完など、M&Aの目的はさまざまです。したがって、目的に応じて戦略の方向性もそれぞれ最適化しなければなりません。

しかし、戦略を持たずに進めるとリソースの浪費や統合の失敗になりかねません。したがって、M&Aを成功に導くためには事前に綿密な計画を立てることが不可欠です。また、M&Aの過程では法務・財務・税務など多くの要素が関わるため、それらを踏まえたうえで最適な戦略を決めなければなりません。

M&A戦略が必要とされる背景

国内市場の成熟化や人口減少により、企業の成長は厳しさを増しています。特に中小企業では、後継者不足や人材難といった経営課題が深刻化しており、事業の存続そのものが危ぶまれるケースも少なくありません。

その打開策として、近年注目を浴びる機会が増えているのがM&Aです。M&Aを活用すれば、競争力強化や事業承継が期待できます。

ただし、M&Aは単に実施すれば成功するものではないため、戦略を欠いたまま進めると、統合の混乱や期待外れに終わるリスクが高まります。

例えば、販路拡大を目的に海外企業を買収するケースや、新技術を獲得するためにスタートアップと統合する動きは増えていますが、明確な戦略がなければ、思うような成果を得ることはできません。

したがって、企業が持続的な成長を遂げるためには、目的を明確にした戦略的なM&Aを活用することが求められているのです。

成長戦略・事業承継との関係性

M&Aは、企業が競争力を維持し、持続的な成長を実現するための重要な経営手段です。新規市場への参入やシェア拡大を図るにあたり、既存企業を買収によって取り込めば、短期間で成長を加速させることが可能になります。

また、外部の技術や経営資源を取り込めば、自社の強みを補完しながら市場での優位性を確立できるでしょう。

さらに、M&Aは事業承継の手段としても活用されており、とりわけ後継者不在の中小企業にとっては、有効な選択肢のひとつとなっています。親族内での承継が難しい場合でも、第三者への売却を通じて企業の存続を図れば、従業員の雇用維持や取引先との関係継続が可能になります。

このように近年では、M&Aは成長戦略と事業承継の両面で企業の発展を支える重要な選択肢となっているのです。

買い手におけるM&A戦略の視点

買い手企業にとって、M&Aは経営資源を拡充し、事業成長を加速させるための重要な戦略手段です。ここでは、買収によって得られる代表的な成果や、その活用の視点について解説します。

市場シェア拡大と顧客基盤の獲得

買収によって同業種や隣接業種の企業を取り込むことは、買い手企業にとって市場シェアを効率的に拡大する手段となります。特に、地域や業種において独自の顧客ネットワークを持つ企業を対象にすれば、新たな販路や顧客層を一気にまとめて獲得することが可能です。

また、買収先の既存顧客に対して自社商品を提案すれば、新たな販売機会も生まれます。特に競争が激しい市場においては、同業の企業と競争するだけでなく、連携・統合によってシェアを押さえる戦略が効果的です。

こうしたM&Aによる顧客基盤の強化は、たんに売上拡大だけでなく、業界内での影響力向上にもつなげられるでしょう。

ノウハウや人材の取り込み

M&Aを通じて獲得できるのは、単に事業資産だけではありません。買収先企業が保有する独自のノウハウや、優秀な人材こそが最大の収穫となるケースもあります。

たとえば、技術に秀でたエンジニア集団や地域密着型の営業力を持つ企業を取り込めば、自社では手に入れにくい専門的な技術や能力一気に強化することが可能です。人材は社風や企業文化にも影響を与えますが、うまく融合すれば新たな組織力やイノベーションを生み出すことも期待できます。

また、成長を続ける企業ほど人材確保に苦慮していることから、M&Aは採用難の時代における有効な解決策ともなり得ます。

新技術・新規事業の買収による経営の多角化

技術革新や市場環境の変化が加速する現代において、新たな成長領域を取り込むことは重要な経営課題です。そこで注目されているのが、新技術や新規事業を持つ企業をM&Aによって取り込む戦略です。

自社で一から研究開発を行うよりも、すでに実績のある企業を買収する方が、時間やコストの面で効率的です。さらに異業種のノウハウを得たり、新たな市場に進出したりすれば、これまでとは異なる分野への展開も望めるでしょう。

また、経営の多角化は、収益源を分散させることで不況時のリスク耐性を高める効果もあります。こうした点から、M&Aは単なる成長手段ではなく、企業全体の安定と進化を支える経営戦略であると言えます。

売り手におけるM&A戦略の視点

企業がM&Aを検討する際、売り手としてどのような戦略を取るべきかは、非常に重要な課題となります。単なる事業売却ではなく、経営資源の再配置や企業価値の最大化を図るためには、状況に応じて適切な戦略を立てなければなりません。

そこで本章では、売り手の視点からM&A戦略を整理し、それぞれの目的に応じた活用方法について解説します。

後継者問題の解決

中小企業では、経営者の高齢化が進み、後継者不足が深刻な課題となっています。親族内や社内などの親族外での承継が難しいケースも多く、企業存続のための選択肢が限られていることから、M&Aによる事業承継が注目されています。

こうした状況において、M&Aを活用すれば企業の価値を維持しながら経営を引き継いでもらうことが可能です。適切な買い手を見つければ、従業員の雇用を守り、取引先との関係を維持しながらスムーズに事業を継続できます。また、シナジー創出が見込める企業グループの一員となることで競争力が向上し、より安定した経営環境が実現します。

雇用やブランドの保護

譲渡オーナーにとって、従業員の雇用やブランドの維持は非常に重要な課題のひとつです。なぜなら従業員の雇用を守り、これまで築き上げてきたブランド価値を維持することは、企業価値を維持し、存続することに直結するからです。

そのため、売却先を選定する際には、単なる金銭的な条件だけでなく、企業文化や事業の継続性も考慮することが大切です。適切な買い手が見つかれば、企業のアイデンティティを維持しながら経営体制の強化を図ることができます。

しかしながら、事業統合の過程で方針が食い違えば、ブランドの価値が損なわれ、従業員のモチベーションも低下しかねません。したがって、M&Aを実施する際には企業の長期的な価値を見据えた売却戦略を策定し、雇用やブランドの維持を考慮した意思決定を行うようにしなければなりません。

経営資源の集中と再配置による企業価値の最大化

企業が持続的に成長するためには、経営資源の適切な配分が不可欠です。なぜなら、既存の事業に過剰なリソースを割いてしまうと、新たな成長機会を逃してしまうからです。

そこでM&Aを活用し、資源の集中と再配置を行い、企業価値の最大化を図ります。例えば収益性の低い事業を売却し、成長性の高い分野へリソースを再投資すれば、経営効率を向上させられます。また、買い手企業との統合を通じて高い技術や広範な販路を補完すれば、シナジー効果を生み出すことも望めるでしょう。

こうした戦略的な再編を行えば、企業は競争力を強化し、市場での存在感を高めることができます。

イグジットによる創業者利益の実現

創業者にとって、長年築いてきた企業を売却し、その成果を資金として確保することは重要な選択肢の一つです。M&Aを活用すれば、事業価値を最大化したうえで資金を回収し、新たな投資や個人資産の形成につなげることが可能になります。

たとえばベンチャー企業の場合、投資家からの出資などにより急成長を遂げた後、適切なタイミングで売却すれば、創業者は自身の利益を確定できます。

このように、M&Aは単なる経営判断だけでなく、創業者の利益を確実にするための手段としても活用されています。

売却による企業成長の加速と新事業展開

企業が持続的な成長を遂げるためには、経営資源の最適化が欠かせません。既存の事業を売却し、得た資金を新たな成長分野へ再投資すれば、企業価値をさらに高めることが可能です。

例えばノンコア事業を売却し、新規市場への参入や高収益分野への展開を進める場合などです。それ以外にも、売却によって得た資金を研究開発や設備投資に充てれば、イノベーションを加速させることが望めるでしょう。

このように、M&Aは単なる資産の売却ではなく、企業の成長戦略の一環として活用できます。

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M&A戦略の立案ステップ

M&Aを成功に導くためには、明確な手順に沿った戦略の立案が欠かせません。 ここでは、戦略の構想から実行に至るまでの基本的な流れを5つのステップに分けて紹介します。

Step1:自社分析と強み・弱みの洗い出し

まずは、自社の現状を正しく把握することが出発点です。経営資源や収益構造、組織の特性などを丁寧に分析し、自社の強みと弱みを可視化していきます。

たとえば、技術力や営業力といった強みが他社と比べてどの程度優位かを知ることは、今後のM&A戦略の軸を定めるうえで非常に大切です。一方で人材不足や業績の不安定さといった弱点も正しく把握できれば、リスクを回避するためのヒントが得られるでしょう。

こうした内省的な自己分析が、次のステップへとつながる土台を築きます。

Step2:M&Aの目的を明確にする

次に行うべきは、自社がM&Aによって何を達成したいのかを明確にすることです。目的があいまいなままでは、買収対象の選定や手法の判断にぶれが生じやすくなります。

M&Aの目的は、成長分野への参入や人材の補強、あるいは事業承継のための後継者確保など、企業ごとに異なります。したがって、自社の経営課題と照らし合わせ、「なぜ今M&Aが必要なのか」という問いに対する明確な答えを見つけることが大切です。

こうした目的意識が、戦略全体の方向性を決定づける鍵となります。

Step3:市場調査と競合動向の把握

戦略を練るためには、自社だけでなく外部環境も的確に把握しなければなりません。特に注目すべきは、市場の成長性や競合他社の動きです。

業界全体の傾向や技術革新のスピード、参入障壁の有無などを調べることで、自社にとって有望な領域がどこかが見極められます。また、過去に同様のM&Aが行われた事例を参照すれば、リスクや成功のポイントも浮かび上がります。

このような情報を収集・分析することで、より現実的で効果的な戦略を立てることが可能になるのです。

Step4:実行可能なスキームと資金計画の検討

M&Aにはさまざまな手法がありますが、自社の状況に適したスキームを選ぶことが成功への近道となります。たとえば、株式譲渡、事業譲渡、合併といったスキームの中から、税務・法務・会計などの観点も考慮したうえで、自社の状況と照らし合わせ、最適な形を見つけなければなりません。

また、資金面も重要な要素です。自己資金で賄うのか、金融機関からの融資や投資家の支援を受けるのかなど、調達方法と返済計画の両面から検討しなければなりません。

無理のない設計と綿密な見積もりを行い、リスクを最小限に抑えるようにすることが重要になります。

Step5:ターゲット企業の選定とアプローチ

最後のステップでは、自社の目的に合った企業を見つけて、コンタクトを取る段階に入ります。まずは、買収の目的や条件に合いそうな企業をリストアップし、優先順位を決めていきます。

このとき、M&Aの仲介会社やマッチングサイトなどを活用すると効率的です。仲介会社などの専門家によるサポートを受け、候補企業が決まったら、まずは秘密保持契約(NDA)を結んでアプローチします。

相手企業の不安を取り除くためにも、丁寧な言葉で説明し、誠実な姿勢で話を進めることが大切です。こうした対応が信頼関係につながり、交渉をスムーズに進める助けになります。

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M&A戦略策定に役立つフレームワーク例

M&Aを成功に導くためには、これまで述べてきたように、適切な戦略を策定することが不可欠です。

そこで本章では、M&A戦略の検討に役立つ代表的なフレームワークを4つ紹介し、それぞれの活用方法について解説します。

SWOT分析

SWOT分析とは、企業の内部環境と外部環境を整理し、戦略立案に役立てるフレームワークのことです。強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats) の4つの要素を明確にすることで、M&A戦略の方向性を見極めることができます。

M&AにおけるSWOT分析では「強み」 を活かせる買収先や提携先を検討し、「弱み」 を補完できるパートナーを探すことが重要です。また、「機会」 となる市場環境の変化や成長分野を特定し、「脅威」 を回避する戦略を構築することで、より成功確率の高いM&Aを実施できます。

例えば、技術力の高い企業が市場拡大の機会を得るために、流通ネットワークを持つ企業とM&Aを行うケースがあります。また競争の激化による脅威を回避するために、業界内での統合を進める企業もあるでしょう。

SWOT分析を活用すれば、こうしたM&Aの意思決定を戦略的に進め、企業価値を最大化することが可能になります。

アンゾフの成長マトリクス

アンゾフの成長マトリクスとは、企業の成長戦略を「市場浸透」「新市場開拓」「新製品開発」「多角化」の4つの象限に分類するフレームワークのことです。M&A戦略を策定する際、自社がどの成長パターンに該当するかを見極めることで、最適な買収や提携の方向性が明確にできます。

例えば市場浸透では競争力強化を目的に同業他社を買収し、既存市場でのシェア拡大を目指します。また新市場開拓では、地理的な拡大や異業種への進出を視野に入れ、海外企業とのM&Aが有力な選択肢となります。

このようにアンゾフの成長マトリクスを活用すれば、M&Aの目的を明確にし、企業の長期的な成長戦略に沿った意思決定を行うことが可能です。

ポーターの競争戦略

ポーターの競争戦略とは、企業が市場で競争優位を確立するためのフレームワークのことです。取るべき戦略を、コストリーダーシップ戦略、差別化戦略、集中戦略(ニッチ戦略)の3つに分類します。

例えばコストリーダーシップ戦略であれば、規模の経済を活かしてコスト削減を図るため、サプライチェーンの統合や生産力の向上を目的としたM&Aが選択肢となるでしょう。また差別化戦略では、技術力やブランド力を強化するために、独自のノウハウを持つ企業との統合が効果的です。

さらに集中戦略(ニッチ戦略)では、特定の市場に特化し、競争力を高めるために同業種の専門企業を買収する戦略が考えられます。このようにポーターの競争戦略を活用すれば、M&Aの目的を市場競争の視点から整理し、長期的な成功に向けた戦略を策定することが可能になります。

バリューチェーン分析

バリューチェーン分析とは、企業の事業活動を「価値を生み出すプロセス」として分解し、どこで競争優位を獲得できるかを見極める手法のことです。この分析を通じて、生産コストの削減が可能な工程や、流通経路を効率化できる要素を特定することができます。

例えば、製造プロセスを評価して「原材料の調達コストが高すぎる」と分かれば、サプライチェーンを統合するM&Aが有効な戦略になります。また、物流のバリューチェーンを見直し、配送ネットワークが非効率だと判明すれば、流通を強化する企業を買収することで競争力を向上させることが可能です。

つまり、生産コスト削減や流通経路の強化は、バリューチェーン分析によって「どの部分に課題があるのか」を明確化したうえで、戦略的にM&Aを活用する際の判断材料となるのです。

M&A戦略の支援制度と政府の取り組み

中小企業がM&Aを円滑に進められるように、政府は補助金や税制優遇、専門家の派遣などの支援策を整備しています。本章では、M&Aを支援する具体的な制度について解説します。

事業承継・M&A補助金

M&Aを支援する制度の一つに、「事業承継・M&A補助金」があります。この補助金は、M&Aを含む事業承継時の設備投資や専門家への相談費用などを補助し、企業の円滑な承継を後押しするものです。

補助金の対象となる経費には、設備投資費、産業財産権取得費、外注費、委託費、専門家への相談費用などが含まれます。特にM&Aの実施に伴うデュー・デリジェンス(DD)費用や、M&A仲介業者への手数料も補助対象となるため、企業は財務的な負担を軽減しながらM&Aを進めることができます。

また、後継者が事業承継後に新たな取り組みを行う際にも活用できるため、事業の発展や競争力向上を支援する制度としても有効です。例えば承継後の企業が新規事業を立ち上げる際の設備投資や、デジタル化推進のためのシステム導入費用なども補助対象となります。

事業承継税制など税制上の支援

M&Aを円滑に進めるため、税制面での支援策も整備されています。代表的なものとしては、事業承継税制や中小企業事業再編投資損失準備金制度などです。

事業承継税制では、後継者が取得する株式にかかる相続税・贈与税の納税が猶予または免除されます。令和7年度の改正では、後継者の就任・従事要件の撤廃や計画提出期限の延長が盛り込まれ、より柔軟な活用が可能となりました。

中小企業事業再編投資損失準備金制度では、M&Aに伴う損失リスクに備え、企業が事前に準備金を積み立てることができます。この制度を利用することで、損失が発生した際の税負担を分散し、財務の安定を維持しながら事業再編を進めることが可能です。

こうした税制度の整備により、企業は過度な財務リスクを避けつつ、戦略的にM&Aを推進できるようになりました。

専門家による支援・相談窓口

事業承継・引継ぎ支援センターは中小企業がM&Aを円滑に進めるため、専門家による支援が受けられる公的相談窓口です。親族承継、M&Aによる第三者への引継ぎなど事業承継に関する個別相談を受けることが可能です。
また、後継者候補とのマッチング支援や、M&Aの実務に関する助言も行われており、企業の承継プロセスをスムーズに進めるためのサポートが充実しています。
全国の商工団体などを通じて展開されており、地域密着型の支援体制で各地域の企業が利用しやすい仕組みとなっています。

M&A仲介会社をはじめとする専門家も、様々な支援を実施しています。M&Aを支援する機関については関連記事ご覧ください。

M&A支援機関登録制度

M&A支援機関登録制度とは、中小企業がM&Aを適正に進めるためのものです。この制度では、中小M&Aガイドラインの遵守を宣言した仲介会社やフィナンシャル・アドバイザー(FA)が支援機関として登録されており、企業は適正な基準に沿ったプロセスでM&Aを進めることができます。

支援機関として登録されている仲介会社やFAは、業界知識や財務戦略に精通しており、企業のニーズに応じた戦略的な助言を提供します。これにより、M&Aのプロセスが円滑に進められ、適正な価格設定や契約条件の調整を通じて、企業価値の最大化が図られます。

なお、事業承継・M&A補助金の専門家活用枠を申請するためには、登録支援機関による支援でなければなりません。そのため、補助金を活用したM&Aを検討する企業にとっては、支援機関に登録しているかどうかが非常に重要な要素となります。

100億企業の育成支援

中小企業庁が推進する成長支援策としては、「100億宣言」があります。これは、企業が売上高100億円を目指すことを宣言し、その達成に向けた取り組みを進める制度です。

宣言を行うことで、補助金や税制優遇の対象となり、成長戦略を加速させることができます。この100億円企業の目玉となる政策が、中小企業成長加速化補助金です。

この補助金は、単なる設備投資の補助にとどまらず、賃上げへの貢献、輸出による外需獲得、域内の仕入による地域経済への波及効果といった、より広範な経済効果を目指しています。

また、宣言企業は経営者ネットワークへの参加が可能になることから、成長企業同士の連携も期待できます。

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M&A戦略立案時に注意すべきポイント

M&A戦略を立案する際には、注意すべきポイントがいくつかあります。その中でも特に重要なのが、以下の3点です。

M&Aは最終手段ではなく「手段のひとつ」として考える

M&Aは企業の成長戦略や経営課題の解決手段のひとつではありますが、必ずしも唯一の選択肢ではありません。したがって、M&Aを実施する前に他の経営手段と比較したうえで、最適な方法を見極めることが重要です。

また、M&Aを検討する際には、その目的や統合の実現可能性を明確にしておくことが大切です。単に競争力強化を図るだけでなく、企業文化や業務オペレーションの統合が可能かどうかも考慮したうえで、慎重に判断しなければなりません。

リスクの事前把握と対策準備

M&Aには法務・財務・税務・人事面のリスクが伴うため、事前の十分な準備が不可欠です。これらのリスクを洗い出し、必要な対応策を講じれば、M&Aの成功確率を高められます。

そのためには、デューデリジェンス(DD)の実施が不可欠です。DDでは、以下のようなリスクを徹底的に分析します。


財務リスク・・・簿外債務の確認、未払い債務、キャッシュフローの安定性など
法務リスク・・・契約上の瑕疵、知的財産権の問題、訴訟リスクの有無
税務リスク・・・税務処理の妥当性、税務調査における潜在的リスク
人事リスク・・・従業員の待遇・雇用契約、退職金負担、組織文化の統合課題

また、リスクを許容可能な範囲に収めるためには、M&A前に適切な対策を準備しておくことも重要です。特に、統合後のPMI(Post-Merger Integration)計画を十分に練り上げ、リスク管理のプロセスを確立することが大切です。

情報漏洩リスクと信頼構築

M&Aは機密性の高い取引であるため、情報管理の徹底が欠かせません。情報が漏洩すると、従業員の動揺、競合企業の先回り、株価への影響など、さまざまなリスクが生じます。

こうした情報漏洩を防ぐためには、M&Aの初期段階において、秘密保持契約(NDA)の締結が必須です。また、交渉が長期化するような場合は、情報管理体制をより強化し、社内外の関係者が慎重に対応できる環境を整えなければなりません。

これらに加え、M&Aプロセスを円滑に進めるためには信頼関係の構築も欠かせません。売り手と買い手がお互いに信頼関係を築き、互いに協力し合えば、統合後のスムーズな運営が実現できます。

企業のM&A戦略事例

最後に、積極的なM&A戦略を行う企業事例をご紹介します。

①既存事業の強化(ニデック)

ニデックは、M&Aを活用して既存事業の強化を進めています。特に工作機械分野の拡充を目的とした買収戦略を展開し、事業の競争力を高めています。

近年の事例としては、2023年にイタリアのPAMA社を買収し、精密加工機械の技術力を強化しました。また、2024年にはカナダのLinear Transfer Automation Inc.を買収し、プレス機械の自動化技術を獲得することで、製造プロセスの効率化を図っています。

②異業種によるシナジー(NTTドコモ×マネックス)

NTTドコモは、通信事業の枠を超えた新たな成長戦略として、金融業界のマネックスグループと資本業務提携を締結しました。これにより、異業種間のシナジーを創出し、金融サービスを強化しています。

ドコモはマネックス証券の親会社となる中間持株会社の株式49%を取得し、金融事業への本格参入を果たしました。ドコモの広範な顧客基盤とデータ活用力を金融サービスに応用し、パーソナライズされた投資提案や「d払い」との連携強化を推進させることが目的です。

それだけでなく、店舗ネットワークを活用した金融教育や投資情報提供を進めることで、通信×金融の融合を実現し、新たな市場開拓を目指します。

③M&Aが活発な物流業界(ヤマトHD)

ヤマトホールディングス(ヤマトHD)は、物流業界の変化に対応するため、積極的なM&A戦略を展開しています。特に、法人向け物流サービスの強化を目的とした買収を進めており、2024年には総合物流業務を手掛けるナカノ商会の株式87.7%を取得し、子会社化しました。

この買収により、ヤマトHDは倉庫・輸送ネットワークの統合運用を進め、法人向け物流サービスの拡充を図っています。また物流業界全体では、2024年問題を背景に業界再編が加速していることから、ヤマトHDを含む大手企業がM&Aを通じて競争力強化を進めています。

④海外戦略(ゼンショー)

ゼンショーホールディングスは、M&Aを活用して海外市場での成長を加速させています。特に、日本食の人気が高まる北米・英国市場に注目し、積極的な買収戦略を展開しています。

2023年には、北米および英国で約3,000店舗を展開するスノーフォックス・トップコを874億円で買収し、海外寿司市場への進出を強化しました。また、2018年には米国の持ち帰り寿司チェーンを約288億円で買収しており、海外市場でのプレゼンスを着実に拡大しています。

この買収により、ゼンショーは食材調達の効率化、物流ネットワークの強化、メニュー開発の多様化を進め、グローバル市場での競争力を高めています。特に、海外市場での新規店舗展開を促進し、日本食の普及を加速させる戦略を取っています。

終わりに

M&Aの成功には、適切な戦略と高度な専門知識が不可欠です。企業の成長を促進するためには、目的に合った戦略を立てるだけでなく、リスク管理や統合プロセスの精度を高めることが必要です。

しかし、M&Aには法務・財務・税務・人事の複雑な課題が伴い、これを自社だけで進めるには限界があります。そのため、仲介会社などの専門家と連携することが成功の鍵となります。

専門家の支援を活用すれば、適切な候補企業の選定、交渉の円滑化、統合後のシナジー創出を効率的に進めることが望めるでしょう。M&Aを検討されている企業は、信頼できる専門家と連携し、最適な戦略を構築することで、確実な成長へとつなげていきましょう。

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著者

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M&A   マガジン編集部

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日立製作所が日立物流を売却へ!M&Aの狙いとは

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日立製作所が日立物流を売却へ!M&Aの狙いとは

日本M&Aセンターの中で特に業界での経験豊富な二人のスペシャリストが、世の中の企業のM&Aの動き、プレスリリースを中心に解説する「M&Aニュースサテライト」。今回は日立製作所の子会社、日立物流の売却をテーマに解説します。(本記事ではYouTube動画の概要をご紹介します。)※撮影は2022年4月下旬に行われました。日立製作所が日立物流を売却へ、その背景とは?西川:このところ大きなM&Aリリースはな

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