SWOT分析とは?やり方や具体例、注意点を解説【図解】

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SWOT分析とは?

SWOT(スウォット)分析とは、自社の内部環境と外部環境を、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の要素で洗い出し、分析する手法です。

ビジネス戦略やプロジェクトマネジメントの分野で幅広く使用されており、組織が現在どのような状況にあるのか、内外要因を明らかにし、将来に向けてどのように対処すべきか、戦略的な意思決定を行う際に役立ちます。

SWOT分析を行うメリット

例えば、事業の成長に行き詰まりが生じている場合、このフレームワークを用いることで見落としていたポイントを見出し、改善点につながる可能性があります。

反対に現在は事業が好調な場合でも、内部環境、外部環境を洗い出すことで、今後発生しうるリスクを把握し、備えることができます。

このようにSWOT分析を行うことで、内外の環境や自社の優位性、短所や不利な点も含め客観的に分析するため、機会と脅威をとらえた攻防一体の戦略の策定につながります。

また、分析に向けて議論を進めることで、関係者間で組織の現状を理解し、共通の目標に向かって協力するためのプロセスとしても機能します。

SWOT分析を行う際の注意点

注意点としては分析者の主観で判断しないこと、それぞれの要素を混同しないよう定義づけることが挙げられます。

例えば内部環境の要素を、「強み」「弱み」どちらに分類するか、分析者の考えや立場によって異なるケースもあります。

また、従来「強み」と関係者間で捉えてきたものは客観的な強みとして分類できるのか、根拠となる数値をもとに検討する必要があります。そのほか「機会」「強み」も混同しやすい要素です。

「機会」は外部にあるビジネスチャンスのこと、「強み」は内部にある要素、と区別し、関係者間で共有しておくことが大切です。客観的なデータをもとに、できれば複数人での議論を進めて多角的に判断することが大切です。

SWOT分析の要素


SWOT分析で対象とする4つの要素でのうち「強み」と「弱み」は内部環境、「機会」と「脅威」は外部環境の要素です。

Strength(強み)

「強み」とは、事業や経営の目標を達成するために優位となる自社内部の特徴を指します。例えば、特許や特別な技術力や会社のブランド力、顧客の満足度の高さなどがこの「強み」にあたります。

「強み」の一例
顧客ネットワーク、技術・ノウハウ、営業拠点数、サービスの品質・市場シェアなど

特定した強みを最大限に活用し競争力を高めることで、組織の成功を支える基盤を築きます。

Weakness(弱み)

「弱み」とは、事業や経営の目標を達成するために障壁となる自社内部の問題点を指します。例えば、人材や資金などのリソース不足や生産力不足などが、この「弱み」にあたります。自社内の課題を起点にすると見つけやすくなります。

「弱み」の一例
商品・サービスの品質・価格、自社の技術でカバーできていない領域、知名度など

弱みを克服するための改善策を策定し、組織の効率性と運営の質を向上させます。

Opportunity(機会)

「機会」とは、自社にとってプラスとなる企業外部の環境要因を指します。例えば、自社ではコントロールできない社会情勢や市場の流行などがこの「機会」にあたります。

「機会」の一例
市場規模や成長性、顧客ニーズ・トレンドの変化、法改正、技術革新など

外部環境からの機会を特定し、それにもとづき戦略を立てます。

Threat(脅威)

「脅威」とは、自社にとってマイナスとなる企業外部の環境要因のことを指します。例えば、競合他社の台頭や社会情勢の変化に伴う市場の縮小などが、この「脅威」にあたります。

「脅威」の一例
社会・経済情勢、競合他社の動向、市場動向など

組織にとっての外部からの危険要因への対処策を考え、リスクの軽減、組織の持続可能性を確保します。

SWOT分析の進め方

SWTO分析の主な進め方は、以下の通りです。

1.目的・ゴールの明確化・準備

SWOT分析は複数人で行うケースが一般的です。目的やゴールが曖昧なままでは、各者の捉え方、認識に差が出てしまい単なる要素のピックアップに終わります。
そのため、まず関係者間でSWOT分析を行う目的を明確化し、共有しておく必要があります。

共通認識を持つために、目的・ゴールはできるだけ数値化することが大切です。例えば「企業価値を上げる」という抽象的な表現ではなく、「売上高を50%増やす」など数字を入れておくことで、その後の分析やアプローチの精度の向上が期待できます。

分析を行うメンバーは、目的や対象に応じて、最適なメンバーを慎重に選定することが大切です。
そして要素をピックアップする際に参考とする社内外の定量・定性データなど、関連する資料や数値データをあらかじめ収集しておくことも大切です。

2.SWOTの各要素のピックアップ

次に「強み」「弱み」「機会」「脅威」の4つの要素をリストアップしていきます。情報のリストアップは偏りや主観が入らないように、できれば様々な立場の複数人で情報を出し合いながら進めることが理想的です。

各要素を書き出す手順に特別なルールはありませんが、一般的には内部環境よりも先に外部環境をリストアップしたほうが、内部環境を客観的に見つめられるといわれています。したがって、「機会」と「脅威」を先に埋めていき、そのあとで「読み」と「弱み」を書き出すのがよいでしょう。

3.クロスSWOT分析の実施

ピックアップした要素をそれぞれ掛け合わせて用いて分析を行い、戦略を立案します。
例えば自社の「強み」と「機会」を掛け合わせて、強みを最大限活用して成長機会につなげるにはどのような対応が適切なのかを検討します。
この掛け合わせによる分析を「クロスSWOT分析」と言います。

クロスSWOT分析の組み合わせは、以下の4つです。
クロスSWOT

【強み】×【機会】

自社の強み(Strength)と機会(Opportunity)を掛け合わせます。
自社の強みを機会に最大限活用して、自社の成長につなげるにはどのような対応が必要なのかを検討します。

例えば、「他社に比べ価格優位性がある(強み)」×「消費者ニーズの高まり(機会)」の場合、他社製品にくらべてコスパが良いことを訴求した販売戦略、などが考えられます。

【弱み】×【機会】

自社の弱み(Weaknesses)と機会(Opportunity)を掛け合わせます。
自社の弱みを補強、もしくは克服し機会を活かすためには、どのような対策が必要なのかを検討します。

例えば、「他社に比べ知名度が低い(弱み)」×「海外からの注目度の高まり(機会)」の場合、海外で重点的にPRを開始する、などが考えられます。

【強み】×【脅威】

自社の強み(Strength)と脅威(Threats)を掛け合わせます。
自社の弱みを補強、もしくは克服し機会を活かすためには、どのような対策が必要なのかを検討します。

例えば、「サービス品質の高さ(強み)」×「競合他社の動向の活発化(脅威)」の場合、サービス品質の高さを他社との差別化にし、販売戦略を展開する、などが考えられます。

【弱み】×【脅威】

自社の弱み(Weaknesses)と脅威(Threats)を掛け合わせます。
自社の弱みをきちんと把握し、脅威による影響力を最小限にとどめるために、どう対応すべきかを検討します。

例えば、「認知度の低さ(弱み)」×「顧客の高齢化によるユーザー減少(脅威)」の場合、新たなユーザー層に向けた認知活動、利用シーンの提案を行う、などが考えられます。

このようにクロスSWOT分析で導き出された結果を踏まえ、最終的にどのような戦略を取るのかを決定していきます。

SWOT分析に役立つ2つのフレームワーク

SWOT分析の中でも「機会」や「脅威」など外部環境をより精密に分析するため、以下2つのフレームワークを用いることがあります。

PEST分析とは

PEST分析とは、ノースウェスタン大学のフィリップ・コトラー教授が提唱した外部環境の分析手法です。
規模の大きな事業を行う場合や海外事業を展開する場合のように、外部環境が事業に与える影響が大きい際に用いられます。

企業を取り巻く外部環境を、政治(Politics)・経済(Economy)・社会(Society)・技術(Technology)の4つの視点から分析し、外部環境の推移にともなってどのような影響が及ぼされるのかを把握したうえで、今後何が起こるかを予測します。

PEST分析を行う際には、これら4つの要素に関する外部環境要因をリストアップしていきます。

ファイブフォース分析

ファイブフォース分析とは、SWOT分析におけるT(脅威)を分析するためのフレームワークとして、バーバード・ビジネススクールのマイケル・E・ポーター教授が提唱した分析法です。

自社が市場で直面している競争要因を5つの脅威に分類し、業界の動向を明らかにするとともに、自社が優位な位置に立つためにはどうすればよいのかを分析します。なお、ファイブフォース分析における5つの脅威とは、以下のものを指します。

① 同業者の脅威

競合他社の競争力をその知名度やブランド力をもとに分析するとともに、業界全体の規模や成長率なども分析していきます。

②新規参入者の脅威

異業種から新規参入する場合の参入のしやすさや必要な技術力などを分析し、それが自社に対してどのような影響を及ぼすのかを考えます。

③ 代替品の脅威

業界の収益構造を根本から変えてしまうほどの代替品が現れた場合、業界の収益構造がどのように変化するのかを分析します。なお、業界の収益構造を根本から変えてしまうほどの代替品とは、CDに対するネット上の定額制音楽配信(サブスクリプション)などがそれにあたります。

④ 買い手(顧客・ユーザー)の交渉力の脅威

市場規模や競合他社の状況を分析し、買い手との間の力関係を製品の価格設定や収益性から分析します。

終わりに

以上、SWOT分析についてご紹介しました。

自社に最適な戦略を立てるには、市場におけるポジションや強みと弱みを正確に把握し、どの方向へ進むのがよいかを考える必要があります。このような経営戦略の立案に欠かせないのがSWOT分析です。

SWOT分析は応用範囲が広いため、事業計画書の作成だけでなく、M&A計画の策定やビジネスデューデリジェンスなどにも大いにその効力を発揮します。

しかし、社内の人材のみで行うSWOT分析は、どうしても主観が入る傾向にあるため、正しい判断につながらない恐れがあります。

このような事態を回避するためには、客観的な判断ができる外部の人物を交えてSWOT分析を行いましょう。特に、M&Aのように自社の将来に大きな影響を及ぼすようなものに関しては、状況を熟知しているアドバイザーなどを交えて行うことをおすすめします。

日本M&Aセンターでは、M&Aをはじめ様々な経営課題の解決に向けて専門チームを組成し、ご支援を行っています。詳しくはコンサルタントまでお問合せください。

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M&A マガジン編集部

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