レーマン方式とは?M&A成功報酬の計算方法と注意点をわかりやすく解説

熊谷 秀幸

株式会社日本M&Aセンター 取締役 常務執行役員 バリュー推進本部 副本部長

M&A実務
更新日:

M&Aを検討する際、多くの経営者が気になるのが「仲介手数料はいくらかかるのか」という点ではないでしょうか。
M&A仲介会社の成功報酬の計算方法として広く採用されているのが「レーマン方式」です。
本記事では、

  • レーマン方式の基本的な仕組み
  • 成功報酬の具体的な計算方法
  • 種類ごとの違いと注意点
  • 売り手が理解しておくべきポイント

を中心に、初めてM&Aを検討する方にもわかりやすく解説します。

⽬次

レーマン方式とは?

レーマン方式とは、M&Aの取引金額(報酬基準額)に応じて、段階的に設定された手数料率を掛け合わせて成功報酬を算出する方法です。
最大の特徴は、

  • 取引金額が大きくなるほど手数料率が低くなる、累進的な構造である点
  • M&Aの規模に応じた公平な報酬体系である点

にあります。

なぜM&Aの成功報酬はレーマン方式が主流なのか

レーマン方式が広く用いられている理由は、以下の点に集約されます。

  • 取引規模に応じた公平性がある
  • 事前に費用感を把握しやすい

仮に成功報酬が一律定額や一律定率だった場合、企業規模によっては過度な負担になってしまいます。
レーマン方式は、こうした不公平感を抑える仕組みとして定着してきました。

レーマン方式の計算方法【具体例付き】

レーマン方式の基本の計算式は以下の通りです。

成功報酬の金額=報酬基準額×手数料率(段階適用)

一般的な手数料率の一例は以下のようになっています。

報酬基準額 料率
5億円以下 に該当する部分
5%
5億円超 10億円以下 に該当する部分 4%
10億円超 50億円以下 に該当する部分 3%
50億円超 100億円以下 に該当する部分 2%
100億円超 に該当する部分 1%

計算例

報酬基準額が8億円の場合:

5億円 × 5% = 2,500万円
(8億円 − 5億円)× 4% = 1,200万円

合計:3,700万円

このように、金額帯ごとに分けて計算する点がポイントです。

実際のM&Aでは、「何を報酬基準額とするか」 によって成功報酬は大きく変わります。そのため「自社の場合、株価がいくらになるのか」を事前に把握しておくことが重要です。ご相談前に、まずは株価をシミュレーションしてみませんか?

レーマン方式の種類と報酬基準額の違い


報酬基準額の決め方は支援機関によって異なりますが、主に「株式価値基準」「オーナー受取額基準」「企業価値基準」「移動総資産基準」が用いられます。

株式価値基準(株価レーマン方式)

株式の譲渡価格を報酬基準額とする方式。株式の売却額に対してのみ料率の対象とするため、他の方式と比べてコストを抑えやすい傾向にあります。


報酬基準額= 株式譲渡額

オーナー受取額基準

株式の譲渡額に加え、会社がオーナー経営者やその親族からの借入金(役員借入金)を加えた金額を報酬基準額とする方式です。
多くの場合、会社を譲渡する際に株式譲渡の代金とは別にオーナー経営者に返済されます。


報酬基準額= 株式譲渡額+株主とその家族からの借入金(役員借入金など)

企業価値基準

株式の譲渡額や役員借入金だけでなく、銀行からの借入金なども含めた有利子負債の合計額を報酬基準額に加えた方式。会社を譲渡すれば、オーナー経営者は株式の譲渡代金が受け取れるだけでなく、会社が金融機関などから借りていた負債からも解放されます。その分企業価値が上がるという考え方に基づいたものです。金融機関からの借入金残高が大きい場合は、株価レーマン方式と比べて、多くの報酬が必要になります。


報酬基準額= 株式譲渡額+すべての有利子負債(役員借入金、銀行借入金)

移動総資産基準

株式の譲渡額に加え、有利子負債だけでなく買掛金や未払金などすべての負債合計額を報酬基準額とする方式です。買掛金などすべての負債を含むため、4つの中で報酬基準額が高額になる傾向があります。


報酬基準額= 株式譲渡額+すべての負債(役員借入金や銀行借入金、買掛金など)

どの基準が適用されるかは、M&A仲介会社の方針や、どのような買い手とマッチングするかによっても左右されます。

参考:M&A支援機関登録制度「M&A支援機関(FA・仲介)への報酬」

実際にM&Aを進めるとしたら、どういう会社が候補企業になるのか?をシミュレーションで確認してみませんか?

レーマン方式を採用するメリット

レーマン方式のメリットは以下のとおりです。

M&A規模に応じた公平な報酬体系

成功報酬が一律定額の場合に比べて、レーマン方式ならば、M&Aの規模に応じて支払う額が変わるため、企業の規模に関係なく仲介会社をはじめとする支援機関と公平な取引が行えます。

また、「成功報酬は、基準価額に対して一律10%」と定率式で定められていた場合、基準価額が仮に1億円であれば報酬も1,000万円で済みますが、基準価額が50億円になると、50億円×10%=5億円にも膨れ上がります。
これだと、M&Aの規模が大きくなればなるほど割高感があるように思えるかもしれません。このように定額式や定率式と比べると、レーマン方式による手数料は、双方にとって公平な計算方法であるといえます。

事前に成功報酬の目安を算出できる

レーマン方式で計算される成功報酬額は、報酬基準額を把握できればおおよその金額を計算できます。
変動幅の大きな成功報酬の額さえわかれば、M&A実施に必要な手数料などの費用を見積もることができM&Aの計画も立てやすくなります。

特に売り手にとっては、資金計画を立てやすい点が大きなメリットといえます。

レーマン方式を利用する際の注意点

一方で、以下の点には注意が必要です。

  • 小規模M&Aでは料率が高くなりやすい
  • 最低成功報酬額が設定されている場合がある
  • 報酬基準額の定義によって手数料が大きく変わる

そのため、
「レーマン方式かどうか」だけでなく
「どの基準で計算されるのか」
「手取り額はいくらか」まで確認することが重要です。

レーマン方式を理解した上で、売り手が次にやるべきこと

レーマン方式を理解した後、売り手が取るべき行動は次の3ステップです。

  • 自社の株価・企業価値を把握する
  • 想定される成功報酬と手取り額を確認する
  • 自社に合った売却先・支援会社を検討する

これらを整理することで、「手数料に振り回されないM&A判断」が可能になります。

まとめ

レーマン方式は、M&A成功報酬の代表的な計算方法であり、その仕組みを理解しておくことは、売却を成功させるうえで欠かせません。

M&Aの規模が大きくなればなるほど、報酬額が増えていく特徴があります。また、レーマン方式には株価を報酬基準額にする場合やオーナー経営者が受け取る額を報酬基準額にする場合など、さまざまな方法があり、どれを採用しているかによって最終的な金額が大きく変わります。

したがって、レーマン方式による成功報酬額のバリエーションを知るためには、複数の支援機関から見積もりを取って比較するのが良いでしょう。

ただし、報酬額のみで仲介会社を選んでしまうのはリスクが大きいため、レーマン方式による成功報酬額の違いをある程度理解しておいた上で、これまでの実績や経験、情報量の豊富さ、または自社との相性などを考えた上で総合的に判断することをおすすめします。

日本M&Aセンターでは、M&Aをはじめ様々な経営課題の解決に向けて専門チームを組成し、ご支援を行っています。詳しくはコンサルタントまでお問合せください。

監修

熊谷 秀幸

熊谷くまがい  秀幸ひでゆき

株式会社日本M&Aセンター 取締役 常務執行役員 バリュー推進本部 副本部長

大手監査法人で10年超に渡り、監査業務を中心にIPO、事業承継、M&Aに関するアドバイザリー業務等幅広い業務を経験してきた。 当社入社後は、主にコーポレートアドバイザー室において会計税務を中心とした専門領域の営業サポートを行っており、当社案件の中でもテクニカルな論点が多い案件に幅広く関わっている。 2025年4月より現職。

この記事に関連するタグ

「M&A・成功報酬・レーマン方式・M&A仲介」に関連するコラム

【M&A成約式】 上場企業とのM&Aで生産力向上、メイドインジャパンの製品力で成長促進へ

広報室だより
【M&A成約式】 上場企業とのM&Aで生産力向上、メイドインジャパンの製品力で成長促進へ

「メイドインジャパンの製品を世界に発信したい」という思いが合致したM&Aとなりました。野菜調理器製造事業を行う株式会社ベンリナー(以下、ベンリナー、山口県岩国市)は、印刷品製造業を営む三光産業株式会社(以下、三光産業、東京都)と資本提携を結びました。両社は、2022年12月22日、広島県内のホテルにてM&A成約式を執り行いました。握手を交わす三光産業株式会社代表取締役社長執行役員石井正和氏(左)と

【M&A成約式】将来的な後継者不在を解決し、社長と従業員の夢を実現するM&A

広報室だより
【M&A成約式】将来的な後継者不在を解決し、社長と従業員の夢を実現するM&A

「自分たちが設計したものを、見て触って動かしたい」という譲渡企業の社長と従業員の夢を実現するM&Aが成立しました。機械設計事業・制御設計事業を行うアイドラス株式会社(以下、アイドラス、山梨県中央市)は、省人化設備・自動化設備などの製造業を営む株式会社鳥取メカシステム(以下、鳥取メカシステム、鳥取県鳥取市)と資本提携を結びました。両社の所在地である山梨県と鳥取県は直線距離で実に約400キロ離れていま

世界一のM&A総合企業を目指してHD化

広報室だより
世界一のM&A総合企業を目指してHD化

日本M&Aセンターは2021年10月1日に純粋持株会社体制に移行し、日本M&Aセンターホールディングスに商号変更いたしました。1991年の創業からM&A仲介事業を中心に、企業評価・財産承継・PMI・オンライン事業承継マッチングサービス・PEファンドなどそれぞれの領域に特化した関連会社を設立して、グループ企業として事業領域を拡大してまいりました。この度、創業30周年を迎えた2021年度を第2創業元年

なぜPAPABUBBLEはファンドと組んだのか?8年前の決断と、いま振り返る成長の意味

M&A全般
なぜPAPABUBBLEはファンドと組んだのか?8年前の決断と、いま振り返る成長の意味

バルセロナ発祥のアートキャンディショップを展開するPAPABUBBLE(パパブブレ)は、2017年10月にジャフコグループが運営するファンドの資本参加を受けました。当時のオーナーの決断、またその時の迷いや決め手についてまずは動画をご覧ください。[mokuji]PAPABUBBLEに見る、次の成長カーブの描き方「ファンドに会社を売る」という言葉には、今なおネガティブな印象を抱く経営者も少なくありませ

【2026年最新】事業承継・M&A補助金とは?対象者やメリット、申請方法を解説

事業承継
【2026年最新】事業承継・M&A補助金とは?対象者やメリット、申請方法を解説

中小企業や個人事業主にとって、後継者不足や経営資源の分散は深刻な課題です。国が支援する「事業承継・M&A補助金」は、そのような課題を解決する制度として注目を集めています。本記事では、事業承継・M&A補助金の創設背景や活用時のメリット、注意点、補助される事業者と経費のほか、申請の流れについて解説します。この記事のポイント事業承継・M&A補助金は、中小企業や個人事業主がM&Aや事業引継ぎにかかる費用の

事業売却とは?会社売却との違いやメリット、税金について解説

M&A全般
事業売却とは?会社売却との違いやメリット、税金について解説

事業売却は、企業が特定の事業部門や資産を他の企業に譲渡するプロセスであり、戦略的な再編成や資金調達の手段として広く利用されています。この手法は、企業が不採算部門を整理し、主力事業へ経営資源を集中するなど、事業戦略の見直しを行う場面で活用されます。本記事では、事業売却のメリットやデメリット、手続きについてご紹介します。この記事のポイント事業売却の目的は資金調達、事業ポートフォリオの見直し、事業承継な

「M&A・成功報酬・レーマン方式・M&A仲介」に関連する学ぶコンテンツ

M&A仲介とは?役割・メリット・FAとの違いを専門家がわかりやすく解説

M&A仲介とは?役割・メリット・FAとの違いを専門家がわかりやすく解説

M&A仲介会社とは?M&A仲介とはM&A(企業の合併・買収)において、譲渡企業(売り手)と譲受企業(買い手)の間に立ち、成約までを支援する専門サービスです。M&A仲介会社は、売り手・買い手のどちらか一方ではなく、双方を支援する立場で、以下のようなプロセスを一貫してサポートします。M&Aの目的や条件の整理相手先企業の探索・紹介条件交渉の調整基本合意から最終契約までの支援特に中小企業M&Aでは、初めて

M&Aの支援機関、それぞれの特徴とは?

M&Aの支援機関、それぞれの特徴とは?

後継者不在や人材不足、円安による原材料の高騰…経営を取り巻くさまざまな課題を解決する手法として、「M&A」への注目が高まるにつれ、M&Aを支援する機関も増え、M&A業界は急速に拡大しています。情報が氾濫する世の中で、長年育ててきた大切な会社の未来を託す相手を見つけるため、経営者はどうすべきか―。M&Aを検討する際のいくつかの選択肢を紹介します。※本記事は「広報誌MAVITAVol.042024」の

買い手の相談先

買い手の相談先

買い手がM&Aを行う目的でご紹介した通り、「売上規模の拡大」「新事業への挑戦」などその目的は様々です。本記事では、買い手がM&Aを進めるためのパートナー、M&Aの相談先についてご紹介します。この記事のポイントM&Aの相談先には、売り手と買い手の当事者、M&A仲介会社、FA(ファイナンシャル・アドバイザー)、税理士、公認会計士、弁護士、金融機関などがある。M&A仲介会社は中立的に交渉を進め、FAは特

M&Aの事前準備。売り手が押さえておくべきポイント

M&Aの事前準備。売り手が押さえておくべきポイント

自社の売却を考える譲渡オーナーの多くにとってM&Aは未知の体験であり、不安はつきません。本記事では、相手探しを始める前に何を準備しておけばいいのか?どのような状態にしておけばいいのか?売り手が押さえておきたいM&Aの事前準備として資料収集・株式の集約についてご紹介します。M&Aのプロに、まずは相談してみませんか?日本M&Aセンターは、ご相談からM&Aの成約まで、経験豊富なM&Aのプロが丁寧にサポー

「M&A・成功報酬・レーマン方式・M&A仲介」に関連するM&Aニュース

ウエルシアホールディングス、子会社の現物配当により孫会社が異動へ

ウエルシアホールディングス株式会社(3141)の完全子会社であるウエルシア薬局株式会社(東京都千代田区)は、保有するウエルシア介護サービス株式会社(茨城県つくば市)の発行済全株式を、ウエルシアホールディングスへ現物配当することを決定した。これにより、ウエルシア介護サービスの発行済全株式を取得することとなり、同社はウエルシアホールディングスの完全子会社となる。ウエルシアホールディングスは、調剤併設型

日本エコシステム、テッククリエイトの全株式取得へ

日本エコシステム株式会社(9249)は、株式会社テッククリエイト(石川県金沢市)の全株式を取得し、グループ化することに関し、株主との間で株式譲渡契約を締結することを決定した。日本エコシステムは、環境、公共サービス、交通インフラに関する事業を行う。テッククリエイトは、北陸三県の鉄道線路・施設の保守点検、石川県内の工場・商業施設・公共施設などの給排水衛生設備、空調設備工事等を行う。テッククリエイトのグ

ニッスイのグループ会社、ニュージーランドの漁業会社IFL社を買収へ

株式会社ニッスイ(1332)のグループ企業であるSealordGroupLtd.(ニュージーランドネルソン市、以下シーロード社)は、インディペンデント・フィッシャリーズ(ニュージーランドクライストチャーチ市、以下IFL社)との間で、同社の買収契約を締結した。今後、同国の通商委員会および海外投資局の許可・承認を得ることなどを条件として、買収が成立する見通し。シーロード社は、ニッスイのグループ企業で、

コラム内検索

人気コラム

注目のタグ

最新のM&Aニュース