事業承継のタイミングとは?最適なタイミングを見極める際のポイント
事業承継は、多くの経営者にとって避けて通れない大きな課題です。承継のタイミングを誤ると、経営混乱や企業価値の低下など深刻なリスクを招きかねません。一方で、経営・業績が安定し、後継者の準備が整っている時期であれば、スムーズに事業承継を実現できるでしょう。本記事では、事業承継の最適なタイミングを見極めるポイントや、判断を誤った場合のリスク、専門家に相談すべき時期について解説します。
この記事のポイント
- 事業承継の最適なタイミングは、「経営・業績が安定している」「後継者の準備が整っている」「経営者に事業承継を進める体力・気力がある」時期である。
- 承継のタイミングを誤ると、事業停止や企業価値の低下、税務負担の増加など、企業にとって大きなリスクを招く可能性がある。
- 後継者の準備が整うまでには5~10年かかるだけでなく、事業承継に関わる課題は多岐にわたるため、早期に専門家へ相談することがスムーズな承継につながる。
⽬次
事業承継のタイミングとは?
事業承継の最適なタイミングを逃すと、後継者が十分に能力を発揮できなかったり、経営が混乱したりするリスクが高まります。事業承継を進める上で、タイミングを見極める際のポイントは主に以下の3点です。
・経営・業績が安定している
・経営を任せられる後継者の準備が整っている
・経営者に承継を進める体力・気力がある
経営・業績が安定している
経営者交代の時期には、社内に不安や混乱が生じやすいため、経営や業績が安定しているタイミングで事業承継を進めるのが理想的です。安定した経営基盤があれば、従業員や取引先への影響を最小限に抑えられ、後継者もスムーズに経営を引き継げるでしょう。
一方、経営が不安定な中で承継を進めると、社内の混乱を増幅させ、業績悪化につながる恐れがあります。ただし、後継者に十分な能力があれば、早期承継によって経営状況を改善できる場合もあるため、状況を総合的に判断することが重要です。
経営を任せられる後継者の準備が整っている
経営を任せられる後継者の準備が整っていれば、事業承継に最適なタイミングだといえます。後継者が経営に必要なスキルと覚悟を備え、経営を引き継ぐ意志が固まっている状態であれば、円滑に事業承継を進められるでしょう。反対に、後継者の準備が不十分なまま事業承継を進めると、経営悪化や従業員の離職といったリスクにつながりかねません。
後継者に経営を任せられるようになるには、経営理念の承継や実務経験の蓄積が不可欠で、一般的に5~10年と長い時間を要します。そのため、後継者の指名・育成はできるだけ早い段階から計画的に進めることが大切です。
経営者に承継を進める体力・気力がある
事業承継は、経営者に十分な体力や気力があるうちに進めることも重要です。前述の通り、後継者の準備が整うまでには一般的に5~10年かかるとされているため、経営者の引退時期や体調面を考慮して早めに準備することが求められます。
中小企業庁の「2021年版 中小企業白書」によると、経営者の平均引退年齢は60代半ば頃です。60代半ばに引退する場合、50代後半には事業承継の準備を進め、後継者の指名・育成を行うのが理想的といえます。経営者に事業承継を進める判断力や体力、気力があるうちに準備を進められれば、後継者への指導・支援を十分に行えるほか、余裕を持った計画の立案も可能です。これにより、経営者の高齢化に伴うリスクを低減でき、スムーズな承継や経営の安定性につながります。

※中小企業庁「2021年版 中小企業白書」より、日本M&Aセンター作成
事業承継のタイミングを見誤るとどうなる?
事業承継は適切な時期を逃すと、経営や企業価値に深刻な影響を及ぼす可能性があります。事業承継のタイミングを誤った場合に想定される主なリスクは、以下の3つです。
・後継者不在による事業継続リスク
・企業価値の低下
・税務負担の増加
後継者不在による事業継続リスク
後継者不在の状況が続くと、事業継続のリスクが高まります。
例えば、後継者が決まらないまま経営者が急逝・退任した場合、経営が混乱し、最悪の場合は事業停止に陥るケースもあるでしょう。また、後継者の選定について親族間での意見対立が表面化し、承継をめぐるトラブルに発展する可能性も高まります。
同様に、候補者の選定や準備が不十分な状態で事業承継をした場合も、従業員や取引先が不安を抱えやすくなります。その結果、信頼関係が崩れ、経営が不安定になってしまうかもしれません。
企業価値の低下
事業承継のタイミングを誤ると、企業価値の低下を招くリスクが高まります。先に述べたように、事業承継は経営・業績が安定している状態で行うのが理想的です。とはいえ、経営改善を優先しすぎるあまり、承継準備を先延ばしにしてしまうのは避けるべきです。
後継者に引き継げないまま業績不振の状態が続いた場合、さらなる業績悪化を招き、企業価値の低下につながりかねません。その結果、M&Aや売却を検討する際に条件が悪化し、適正な評価を受けられない可能性もあります。また、資産だけでなくブランド力などの無形資産も損なわれ、企業全体の競争力が下がるリスクもあります。
税務負担の増加
事業承継のタイミングを誤ると、税務負担が増えるリスクも考えられます。例えば、自社株の評価額が高い時期に事業承継を行うと、贈与税の負担が大きくなってしまいます。
また、税務負担が増えれば、必要な投資や運転資金の確保が困難になることもあるでしょう。場合によっては、資産の売却を余儀なくされることも考えられます。ただし、事業承継税制など、納税負担を軽減できる制度もあるため、適切なタイミングで事業承継を行うとともに、税務についても理解を深めることが大切です。
事業承継の専門家に相談するタイミングと方法
事業承継は後継者の選定や税務対策、M&Aの検討など幅広い課題を含むため、専門家への相談が欠かせません。また、承継準備には長期的な視点が求められるため、早い段階から外部の知見を取り入れることが、リスクを最小限に抑えるポイントとなります。
相談を始めるべきタイミング
専門家への相談は、事業承継を検討し始めた段階で行うことをおすすめします。後継者の準備が整うまでには、5~10年かかるため、準備期間を十分に確保する上でも早めに相談するのが理想的です。承継の準備を先延ばしてしまうと、経営者の高齢化や予期せぬトラブルによって経営が混乱し、事業継続リスクなどにつながりかねません。
リスクを低減し、スムーズな承継を実現させるためにも、後継者の選定や準備、税務対策、M&Aなど、具体的な課題が出てきた段階で、専門家の助言を得ることが大切です。
相談先の種類と役割
事業承継に関わる課題は多岐にわたり、税務や法務、企業価値の判断など、専門的な知識が不可欠です。そのため、課題に応じた専門家から助言を得ることが、事業承継を成功へ導くカギになります。事業承継に関わる相談先とその役割は、以下の通りです。
・税理士・会計士:税務・財務面のアドバイスや申告手続き
・弁護士:法務面の問題解決や契約書作成
・金融機関:資金調達や融資の相談
・M&A仲介会社などM&Aの専門家:M&Aによる事業承継の支援
相談する際の準備
事業承継について専門家に相談する際には、現在の経営状況や抱えている課題、後継者候補の選定・準備の状況などを事前に整理しておくことが大切です。相談内容を具体化することで、実効性のある助言を得やすくなります。
また、複数の専門家から意見を聞くことで、総合的な判断材料を得られ、事業承継がより円滑に進められるでしょう。
M&Aも含めた事業承継の方法を早期に検討しよう
事業承継は、適切なタイミングを見極めて早めに準備を進めることが大切です。後継者の準備が整うまでには5~10年と長い期間を要します。現経営者の引退時期や健康状態も考慮した上で、準備期間を十分に確保することが、様々なリスク回避につながるでしょう。
なお、後継者として適任者がいない場合には、M&Aを含めた第三者承継の選択肢をできるだけ早く検討することが重要です。
日本M&Aセンターは、中小企業庁の「M&A支援機関登録制度」に登録された支援機関です。豊富な実績を持つ専門チームがワンストップでサポートします。事業承継をご検討の際は、ぜひ日本M&Aセンターの無料相談をご活用ください。
よくある質問(FAQ)
事業承継の最適なタイミングは?
事業承継の最適なタイミングは、経営・業績が安定しており、後継者の準備が整っている時期です。さらに、経営者自身に事業承継を進める体力・気力があるうちに準備を行うことで、後継者の指導や支援も行いやすくなります。
詳しくは「事業承継の最適なタイミング」をご確認ください。
事業承継のタイミングを見誤るとどのようなリスクがある?
事業承継のタイミングを見誤ると、「後継者不在による事業停止リスク」「業績悪化に伴う企業価値の低下」、さらには「相続税・贈与税による税務負担の増加」といった問題が生じてしまうかもしれません。準備不足は事業の安定性を大きく損なう要因となります。
詳しくは「事業承継のタイミングを見誤るとどうなる?」をご確認ください。
事業承継の専門家に相談するタイミングは?
事業承継について検討を始めたら、課題に応じて適切な専門家へ相談しましょう。後継者の準備が整うまでには5~10年と長い時間がかかるだけでなく、専門的な知識が不可欠です。事業承継を検討し始めた段階で早めに相談することで、税務対策やM&Aを含む多様な方法を検討でき、スムーズな事業承継につながります。
詳しくは「事業承継の専門家に相談するタイミングと方法」をご確認ください。










