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M&Aのソーシングとは?手順や方法、仲介会社に依頼する際のポイントを解説

M&A実務
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M&Aのソーシングとは
M&Aを成功させる上で、最も大切な要素の一つがマッチングです。M&Aで交渉相手の選択を間違えてしまうと、その後どれだけ努力してもM&Aの成功は難しくなってしまいます。

本記事では、M&Aの成否を握るソーシングについて、重要性や注意点・そして仲介会社に依頼する際に気を付けるべきポイントなどを解説します。

日本M&Aセンターは1991年の創業以来、数多くのM&A・事業承継をご支援しています。中小企業のM&Aに精通した専任チームが、お客様のM&A成約まで伴走します。 詳しくはコンサルタントまでお問合せください。

M&Aにおける「ソーシング」とは

M&Aでは、マッチング相手を探して交渉するまでのプロセスをソーシングと言います。

M&Aのプロセスは、一つ一つがかなり細分化されており、非常に細かいパートが積み重なって全体を構成しています。
このプロセスを時系列に沿って大まかに区切ると、大きく3つの段階に分けられます。この最初の部分にあたるのが、ソーシングです。M&Aの全体プロセスは以下の3つに分類できます。

  1. ソーシング(Sourcing)
  2. オリジネーション(Origination)
  3. エグゼキューション(Execution)

ソーシング

M&Aのプロセスで、 希望条件の明確化から候補企業の情報収集と絞り込み、そして選定と交渉までの部分 がソーシングです。つまり、M&Aの全プロセスのうち、前半部分がソーシングにあたります。そもそもソーシングとは、一般的には仕様や取引条件などの購買条件を指定して、取引先の選択や適切な条件を獲得することです。しかしM&Aでは、売り手や買い手の対象企業をスクリーニングして、条件に見合う相手を探すために絞り込むことを意味します。

なお、ソーシングとはプロセス全体の前半部分を指す言葉ですが、広義では対象企業の絞り込みから基本合意書の締結あたりまでを意味する場合もあります。

オリジネーション

M&Aの案件を打診・発掘して、取得するのがオリジネーションです。オリジネーションという言葉は、M&A以外でも資金調達などの局面で使われます。具体的には、売り手と買い手の企業同士をマッチングさせて、M&A戦略を立案・提案することがオリジネーションのおもな内容です。

エグゼキューション

M&Aの後半部分、一連の事務手続きの実行や管理がエグゼキューションです。基本合意書の締結からデューデリジェンスに至り、最終契約書を締結してクロージングするまでがエグゼキューションに含まれます。仲介会社などが中心となってM&A案件の発掘や提案・選定などを行うソーシングに対し、エグゼキューションは、弁護士や公認会計士などの専門家が中心となって行われます。

M&Aにおけるソーシングの重要性

M&Aを成立させるために極めて重要となるプロセスが、ソーシングです。
M&Aの買い手側は「事業規模の拡大」「新規事業の創出」「販路の拡大」など、売り手側は「従業員の雇用維持」「企業文化の継続」「創業者利益の確保」など、お互いにさまざまな目的でM&Aが行われます。

こうした状況の中で、売り手と買い手の双方が満足するM&Aを成立させるには、お互いのニーズができる限り合致した相手を見つけなければなりません。なぜなら、ニーズがかみ合っていなければ、交渉を進めてもどこかで亀裂が生じてしまいかねないからです。

ただし、売り手・買い手ともに最適な相手を探すためには、相手企業の情報を収集・分析する能力や、日本全国のさまざまな業種にまたがる幅広いネットワークが必要です。このような能力や情報を持ち合わせているのが、M&A仲介会社などの専門家なのです。中小企業がM&Aを行う場合、ほとんどのケースで仲介会社などの専門家が関わっている背景にはこのような理由があります。

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M&Aにおけるソーシングのタイミング

ソーシングがスタートするタイミングは、M&Aの準備段階からです。社内での協議を経てM&Aの必要性と決意が固まったところで、仲介会社などの専門家にアプローチします。ここで、仲介会社はM&Aの売り手(もしくは買い手)に対して候補先として相応しい買い手(もしくは売り手)候補のイメージを伝え、アドバイスや提案を行います。

次に行うのが仲介会社との契約です。担当者のM&Aアドバイザーとアドバイスや提案の内容はもちろんのこと、相性なども踏まえた上で話し合います。そして「問題がない」と判断したら、正式に仲介会社との契約を結びます。ここから本格的に、対象企業の選定と絞り込みがはじまります。

対象企業の選定は、いきなり数社に絞り込むところからはじまるわけではありません。最初は、少しでも可能性のある企業はすべて対象候補のリストに加えられるため、数十社もある中からかなりざっくりとしたリストが作られます。

ここからM&Aの対象として、相応しい相手をじっくり数社に絞り込みます。絞り込みが無事に終わったら、最後に行うのが相手企業との交渉です。この時点では詳しい情報などは伏せた匿名性の高い情報で候補企業にアプローチし、反応が良い相手に対しては秘密保持契約を締結した上でより詳しい資料を開示します。ソーシングは、このようにM&Aの準備段階からスタートして候補企業と交渉を行うところまでが該当します。

M&Aにおけるソーシングの手順

ここでは主に買い手側を例に、一般的なソーシングの手順について見ていきましょう。

➀自社の条件や希望の明確化

はじめに、「何のためにM&Aを行うのか」「どのような条件で成約したら成功と言えるのか」などを明確に定義しておかなければなりません。ゴールの場所が正しく明確に設定できていなければ、どれだけ時間や費用をかけて努力しても、またどれだけ優秀な仲介会社に依頼しても、残念ながら思ったような成果を出すことは難しいでしょう。M&Aの目的は、売り手と買い手、会社ごとに異なりますが、一般的には以下のような目的で行われます。

<売り手企業の主な目的> <買い手企業の主な目的>
・後継者不在問題の解決
・従業員の雇用維持
・会社の発展と成長
・創業者利益の獲得
・事業規模の拡大
・新規事業への参入
・人材やノウハウなどの獲得
・商圏の拡大

これらは一例に過ぎませんが、目的を常に明確にしておくことは今後の交渉においてとても大切なことです。たとえば、売り手側の最大の目的が従業員の雇用維持であれば、売買価額が希望金額に満たなかったとしても、ある程度妥協しても問題ないでしょう。しかし、目的が創業者利益の獲得であるのならば、他の条件はともかく、売買価格は簡単に妥協できません。

このように、はじめに目的を明確に設定できれば、それに合わせて条件が決まってきます。これを、M&Aのスタート時にしっかりと考えておかなければなりません。

②候補企業の情報収集

次に行うのが、候補企業の情報収集です。ここでは、仲介会社のアドバイスや提案などのサポートを受けながら、理想的な候補企業のイメージを作り上げていきます。つまり、M&Aにおける候補企業に対する基準ができるのです。

具体的には、自社の目的と照らし合わせ、どのような企業が候補として相応しいのかを練り上げていきます。たとえば、従業員の雇用がM&Aの最大の目的であれば、候補企業は人材獲得を目指している買い手企業です。

また、会社の発展と成長が目的であれば、自社よりも事業規模が大きく資本力のある買い手企業が候補になるかもしれません。候補企業として相応しい企業がどのような会社なのかを明確にし、その情報に相応しい企業を仲介会社の持つリストの中から大まかにピックアップします。

➂ロングリスト・ショートリストの作成

次に行うのが、ロングリストとショートリストの作成です。ターゲット候補を絞り込む過程で、まず仲介会社が持っている膨大な資料の中から、自社の目的に見合った相手を大まかにピックアップします。このとき作成される候補企業のリストが、ロングリストです。

ロングリストで候補から漏れてしまうと、この後その企業と交渉することはまずありません。万が一漏れてしまった会社の中に理想の候補が紛れ込んでしまったら、M&Aは失敗に終わってしまいかねません。そのため、ロングリストの作成段階では、数十社から百社程度の会社がピックアップされます。

ざっくりと集められたロングリストをもとに、丁寧な絞り込みを行った上で作られるのがショートリストです。ロングリストの段階では、少しでも条件が合う企業であればピックアップされています。したがって、ここで改めてじっくりと1社ごとに条件を確認して、条件により合う企業だけを選別します。

④候補企業の選定

ショートリストである程度絞り込みが終わった段階で、最終的な候補企業の選定を行います。ただし、この段階であまりにも多くの企業が残ってしまうと、具体的な検討や調査に時間がかかってしまいます。そのため、候補企業の選定は数社から十社程度にとどめておいた方が良いでしょう。

⑤候補企業との交渉

最後に行うのが、候補企業との交渉です。リストに絞り込んだ候補企業に対して、具体的な交渉を開始します。ただし、この時点でM&Aの交渉をしていることが外部に漏れてしまうと、取引先との仕事への影響や、従業員の大量離職などを招いたりしかねません。

したがって、この時点で候補企業にアプローチする場合は、こちらの会社名はもちろん、正確な住所や事業内容などを伏せた匿名性の高い資料を使って行われます。このとき使われる資料が、ノンネームシートです。
その後、候補企業がM&Aに興味を示した場合は、秘密保持契約を締結した上で社名などの具体的な情報を開示しながら交渉を進めます。

M&Aにおけるソーシングの2つの方法

M&Aにおけるソーシングはそのアプローチ方法によって「プル型」「プッシュ型」の2つに分けられます。それぞれについて見ていきましょう。

「プル型」ソーシング 「プッシュ型」ソーシング
メリット ・仲介会社などの専門家にサポートして
もらえる
・多くの候補企業の中から絞り込みができる
・専門家に費用を支払う必要がない
留意点 ・仲介会社に自社の希望や目的を
正確に理解してもらわなければならない
・手数料が必要になる
・候補企業を選ぶ選択肢が圧倒的に少ない
・専門家に相談できないため問題が
生じる場合がある

プル型ソーシングとは

M&Aの候補企業に対するアプローチを自ら積極的に行うのではなく、自社にM&Aの案件を引き込んで進めていくソーシング がプル型ソーシングです。プル型ソーシングを行う場合は、M&Aの仲介会社のように多くの案件を抱えている会社にアプローチして、売り手候補や買い手候補を紹介してもらうように依頼しなければなりません。

こちらが買い手企業であれば、自社の情報やM&Aの目的、候補となる企業の大まかなイメージや買収予定価額などを伝えます。反対に売り手企業であれば、自社の情報や希望する条件を伝えるだけでなく、仲介会社がノンネームシートを作成して、買い手企業候補へのアプローチをはじめてもらいます。

プル型ソーシングのメリット

プル型ソーシングの圧倒的なメリットは、仲介会社のようなM&Aの専門家に作業の大半をサポートしてもらえる点です。
M&Aに取り組もうとする中小企業の大半は、M&Aが初めての企業ばかりです。そのため、知識やノウハウがないのがほとんどです。また、M&Aを希望する売り手企業や買い手企業と接触するためのリストやコネクションもまずありません。

しかし、仲介会社のような専門家に依頼すれば、膨大なリストの中から自社の希望に添う候補企業を見つけ出してもらえます。もちろん、基本合意書や最終契約書等の作成やデューデリジェンス、M&A後のPMI(Post Merger Integration、M&Aにおいて売り手企業と買い手企業を統合させていく作業)など、M&Aにまつわるほぼすべてを依頼できます。これらの点が、プル型ソーシングの大きなメリットです。

プル型ソーシングの注意点

プル型ソーシングの注意点は、依頼する仲介会社に、できるだけ詳細に自社の希望やM&Aの目的などを伝えなければ、M&Aが思い通りに進まない点です。仲介会社がどれだけ優秀であっても、こちらのリクエストが正しく伝わらなければ、希望通りの結果につながりません。したがって、必要な資料はすべて揃えた上で、こちらの意思や候補企業のイメージなどを仲介会社のアドバイザーと共有できるようにしておきましょう。

また、仲介会社などを通してM&Aを行うため、その費用が発生する点も注意しておく必要があります。

プッシュ型ソーシング

プル型ソーシングとは異なり、 M&Aに対して自ら積極的にアプローチする方法をプッシュ型ソーシング と言います。具体的には、自社が持っているネットワークや営業力などを使って、M&Aの候補となる企業を探し出して交渉を行います。

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プッシュ型ソーシングのメリット

プッシュ型ソーシングのメリットは、仲介会社などの専門家を介さないため費用が軽減できる点と、M&Aの当事者同士が直接話し合うため、スピーディーに話が進む場合がある点が挙げられます。

プッシュ型ソーシングの注意点

プッシュ型ソーシングの最大の注意点は、M&Aの候補企業の選択肢が狭まる点です。すでに候補企業が決まっているのであれば別ですが、何もないところから自力で候補企業を探していくわけですから、専門である仲介会社のように豊富な顧客リストを抱えているわけではありません。

したがって、理想の相手に出会える確率は、低くなってしまいます。また、M&Aを進めていくと、契約書の作成やリーガルチェック、スキームの選定やタックスプランニングなど、専門知識が必要な場面が出てきます。こういった場面でM&Aに関する知識が不足していると、進捗に問題が生じかねません。

M&A仲介会社にソーシングを依頼する際の6つのポイント

最後に、M&A仲介会社にソーシングを依頼する場合に気を付けておいた方が良い点について解説します。
仲介会社に依頼する際の注意点は、おもに以下の6つです。

1.M&Aの目的と戦略を明確にしておく

M&Aは目的でなく、何かを達成するための手段に過ぎません。売り手の場合であれば、後継者不在問題を解決したい経営者もいれば、従業員の雇用の維持を実現したい経営者もいます。このように同じポジションでも目的が違うのは、買い手の場合も同様です。

ですから、「M&Aを行うことで何を達成したいのか」「自社に不足しているどのような問題を解決したいのか」をはっきりさせておく必要があります。もし目的が明確でなければ、仲介会社もどの企業を候補として選択して良いのかがつかめません。

また、M&A戦略についても同様です。「じっくりと時間をかけて取り組めるのか?」「予算は潤沢に取れるのか?」「優先順位は何を上位にすれば良いのか?」など目的の内容によって、取るべき最善の戦略は変わります。したがって、仲介会社に依頼する前に、目的や戦略を必ず明確にしておかなければなりません。

2.自社の業種や規模を得意とする仲介会社に依頼する

M&Aの仲介会社は、大小さまざまかつ多種多様です。「どこで頼んでも同じ」であることは決してありません。事業規模も、全国に支店があり上場している仲介会社から、設立したばかりの非常に小規模な仲介会社までいろいろあります。

また、全業種にまたがって多様なM&Aを行っている事業者もいる一方で、ある業種や事業、またエリアに特化した仲介会社もいます。
しかし、M&Aは業種や規模によって求められる知識が変わりますので、できるだけ自社の業種や規模を得意としている仲介会社に依頼した方が良いでしょう。

ただし、「自社は小規模だから小さな仲介会社を選ぼう」というのは間違いです。上場しているほど大きな仲介会社でも、小規模案件をたくさんこなしている仲介会社もあります。したがって、自社の業種や規模でのM&Aを過去にどれくらいやったことがあるのか、その実績を仲介会社に尋ねて、それをもとに判断するのが望ましいといえるでしょう。

日本M&AセンターではM&Aに精通した公認会計士・税理士・弁護士など専門家を含めた盤石の体制で安全・安心のM&Aをサポート致します。詳しくはコンサルタントまでお問合せください。

3.手数料の必要性も加味して検討する

仲介会社に支払う手数料についても、事前に検討しておいた方が良いでしょう。
仲介会社への手数料の種類は、大きく以下のように分けられます。

相談料
仲介会社と正式に契約する前に、相談した場合に支払う費用です。大手仲介会社では相談料を無料に設定しているケースが多く見られます。
着手金 仲介会社と契約を済ませた時点で支払うのが、着手金です。着手金も仲介会社によっては無料の場合もありますが、その分「あまりその気はないけど、とりあえず登録だけしておいた」というような企業も一定数紛れ込んでしまう可能性が高いので注意しましょう。
中間金 基本合意書の締結後に支払うのが、中間金です。これも仲介会社によって「無料」「一定額(100万円など)」「成功報酬の総額に対して10~20%」のように分かれています。
デューデリジェンス費用
※買い手側企業
弁護士や公認会計士・税理士などにデューデリジェンスを依頼した場合に支払うのが、デューデリジェンス費用です。対象となる会社の規模や監査対象、期間などによって費用は変動します。
成功報酬 M&Aの最終契約の締結後に支払うのが、成功報酬です。多くの仲介会社は、レーマン方式を報酬の計算基準に採用しています。

仲介会社に支払う手数料は、「安ければ安いほど良い」わけではありません。たとえば着手金を無料にすると、あまりM&Aに乗り気ではない企業もリストに加わってしまいます。こうなると、M&Aの成約率が大幅に下がってしまう恐れがあるのです。
仲介会社への手数料を安く済ませようと思った結果、M&Aが成立しなかったり、あるいは成立したものの希望通りのM&Aとは程遠いものになったりしては、本末転倒と言わざるを得ません。

候補企業に対して適切な事前調査や分析を進めるためには、費用や時間はどうしても必要です。そのための手数料も加味した上で、仲介会社を選ぶことをおすすめします。

4.必ず秘密保持契約を締結する

M&Aで取り扱う情報は、どれも極めて秘匿性の高いものばかりです。したがって、情報を開示する際には、必ず秘密保持契約を締結しなければなりません。仲介会社に依頼してM&Aを進める場合も、秘密保持契約を締結します。
M&Aを進めていく中で、最も大切なものの一つが情報管理です。「M&Aの準備をしている」情報が漏れてしまったら、M&Aそのものが取りやめになるだけでなく、最悪の場合会社の存続が厳しくなってしまうケースも考えられます。

社員に情報が漏れれば、不安が広がってしまいます。会社の未来や自分の将来に不安を抱けば、社員の大量離職が起こりかねません。また、M&Aのうわさが業界に広がってしまったら、客先からの仕事が減ってしまったり、外注先が仕事を引き受けてくれなくなったりすることも考えられます。そのため、M&Aを進行している間は情報管理には十分に気を配り、どうしても開示しなければならない場合は必ず秘密保持契約を締結するようにしましょう。

5.自社の正確な情報を開示できるよう、必要資料を揃えておく

理想の候補企業とのM&Aを成立させるためには、自社の情報を正確に理解してもらわなければなりません。そのために必要なのが、必要情報の整理です。自社の情報は、一般的に仲介会社を通して相手企業へ開示されます。

したがって、相手企業に必要な情報を正しく伝えるためには、まず仲介会社に正しく伝えなければなりません。そのためには、会社概要や決算書などの財務資料はもちろんのこと、契約書や許認可証なども事前に整理しておき、いつでも開示できるようにしておきましょう。

以下に、自社の情報開示に関して一般的に必要だと思われる書類を挙げておきます。必要に応じて確認しておくと良いでしょう。

自社の情報開示に必要な書類(例)
・会社概要
・決算書類一式(決算書、法人税等の申告書類一式など)
・定款
・履歴事項全部証明書
・株主名簿
・組織図
・直近の試算表
・直近の預貯金の内訳と借入金の内訳
・法人が所有している不動産に関する資料一式
・事務所や工場などの契約書
・機会や車両などのリース契約書
・営業許可証や免許など

6.自社の事業内容や強みなど、必要な資料をまとめておく

候補企業に対してアピールしたいポイントなども整理した上で、必要な書類をまとめておくことも大切です。工場などの生産設備の規模や市場での優位性を示すデータなども、同時に整理しておいた方が良いでしょう。
また、強みだけでなく弱みについてもまとめておき、その弱みがM&Aによってどのようなプロセスを経て克服できるのかも検討しておきましょう。

終わりに

M&Aプロセスの中で前半部分を占めるソーシングは、M&Aを成功させる上で極めて重要です。スタートで間違った方向に進んでしまうとその後の修正が難しくなってしまうように、ソーシングに失敗してしまうと、後半でどれだけ頑張ったとしても成功をつかむのは難しいでしょう。このソーシングの成否を握る大きなカギが、仲介会社の選択です。M&Aの候補企業のリストを持っているのは仲介会社であり、ここからロングリストやショートリストが作られます。また、仲介会社からは、さまざまな提案やアドバイスが受けられます。

このように、仲介会社はM&Aのプロセスにおいて極めて重要な役割を果たしています。そのため、仲介会社を決める際には十分に時間をかけ、何社かをさまざまな角度から比較して検討するようにしましょう。

日本M&Aセンターは1991年の創業以来、数多くのM&A・事業承継をご支援しています。中小企業のM&Aに精通した専任チームが、お客様のM&A成約まで伴走します。 詳しくはコンサルタントまでお問合せください。

著者

M&A マガジン編集部

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