2025年2月の物流トラック運送業界M&Aを読み解く
⽬次
- 1. 物流業界の2025年2月の公表M&A件数は8件
- 2. 日本郵便がトナミ買収
- 3. 物流業界再編の背景を読む
- 3-1. プロフィール
物流業界の2025年2月の公表M&A件数は8件
2025年2月における公表ベースでのM&A(合併・買収)は8件で、前年同月の10件と比較して2件の減少となった。
件数は減ったものの、物流業界の再編を象徴する大手企業同士のM&Aが発表された。
日本郵便がトナミ買収
富山県に本社を置き、特別積合せ事業を中核とするトナミホールディングスは、日本郵便、創業家代表、現経営陣の共同出資会社であるJWT(商号は、JPトナミグループへ変更予定)によるTOB(株式公開買付け)開始を発表した。
この公開買付けの結果、東京証券取引所の基準に従い上場廃止となる見込み。株式の買い付け価格は1株1万200円で取得総額は926億円。うち、750億円は日本郵便が出資する。
現経営陣の合意に基づいたMBO(経営陣が参加する買収)としては異例の70%のプレミアムとなった。
物流業界再編の背景を読む
背景には「2024年問題」対応による人手不足、原油価格の高止まりによるコスト上昇などの課題を解決し、グループが持続的に成長するためには、事業提携による物流網と拠点の再編・統合が必須と考える創業家・現経営陣と、短期的な利益を追求する株主との方向性の違いがあげられている。
また、非公開化に伴い資本市場からの資金調達はできなくなるものの、従来、社債の発行を主な資金調達手法として活用していたこともあり、上場を維持するメリットが相対的に低かった点も意思決定の要因と考えられる。
売上高1400億円、営業利益57億円を計上する大手企業でさえ、外部環境の変化に対応しつつ成長を続けるためにM&Aを選択している。
中堅・中小の物流企業においても団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者となる「2025年問題」に直面する中、依然として社会課題となっている後継者不在、より厳格化されるコンプライアンス(法令順守)など多くの課題を解決するするために能動的に情報を集め、資本政策としてのM&Aを検討するべきフェーズが到来していると考える。