[M&A事例]将来の廃業をとりやめM&Aをして5年。新社長が入社し、安心できる体制へ

株式会社ハチロ

譲渡企業情報

  • 社名:
    株式会社ハチロ(北海道)
  • 事業内容:
    設備工事業(管工事・電気工事)、電気機器販売
  • 売上高:
    約1.9億円(2017年4月期)
    従業員数:
    8名(2017年12月期)

譲受け企業情報

  • 社名:
    三洋興熱株式会社(北海道)
  • 事業内容:
    石油製品販売、自動車販売、プロパンガス・ガス器具の販売、設備工事業、不動産賃貸業
  • 売上高:
    約47.4億円(2022年3月期)
    従業員数:
    99名(2022年4月1日時点)

※M&A実行当時の情報

北海道留萌市で建築設備の管工事業を手掛けるハチロは、1961年の創業以来地域に根差した事業で地元の信頼を得る会社です。創業者の父から事業を受け継いだ鉢呂 良一様は、今回、会社と従業員の将来を考え2018年9月に株式譲渡しました。譲渡から5年、この7月に会長に就任した鉢呂様にお話を伺いました。(取材日:2023年7月21日)

M&Aの知識がなく、いずれは廃業するしかないと考えていた

――はじめに事業の歩みをご紹介ください。

譲渡企業 ハチロ 鉢呂様: ハチロは家電販売業で創業しました。3年後の1964年からは住宅設備関係の業務も開始し「ハチロデンキ」の社名で個人のお客様向けに事業をしていましたが、家電量販店の進出や生活形態の変化による先行き不安から、父が中心となって管工事や電気工事業へと事業転換を図り、1982年に管工事を主力事業として社名も現在の「ハチロ」に変更しました。私は2003年に46歳で社長になりましたが、その後も会長の父と二人三脚で経営をしてきました。

会社の将来について考えるようになったのは53歳の頃です。私には息子と娘がいますが、子どもたちに無理に継がせようとは考えていませんでした。というのも、当時のハチロは厳しい事業環境下にありました。「コンクリートから人へ」のスローガンのもと、政府が公共事業を大幅に削減したのです。

また留萌市も財政悪化により市発注の事業を大幅に削減しておりました。官公庁の管工事を中心に事業を行っていましたので、今後の展開を考え個人宅の設備事業へもシフトしようと取り組み始めた頃でした。

加えて子どもたちにも継ぐ意思がありませんでした。従業員承継についても、会社経営の難しさはもちろんのこと、株式を買い取るのは現実的でないと思いました。そうするといずれは廃業するしかない。

父も、「それなりの資金や労力が必要になるから、従業員や取引先、お客様に迷惑がかからないように準備して整理しなさい」と私に生前言っていましたね。当時はM&Aについてまったく知識がありませんでした。

「留萌の人々に安らぎとうるおいを届けたい」という創業からの想いで、全社一丸となって事業に取り組む

「留萌の人々に安らぎとうるおいを届けたい」という創業からの想いで、全社一丸となって事業に取り組む

――M&Aを考え始めたきっかけは何ですか。

鉢呂様: 地元の友人で日本M&Aセンターさんの仲介でM&Aした経営者がいたんです。詳しく話を聞いて、迷った末に紹介してもらい相談してみることにしました。

決意した一番の理由は、手前味噌かもしれませんがハチロが地元で必要とされる会社に成長していたからです。さらに若い従業員が4名入社したこともあり、会社を存続させる道を考え始めました。

日本M&Aセンターさんの担当コンサルタントとは何度も面談しました。最初は、M&Aすることへのうしろめたさや、世間や業界関係者、従業員たちが理解を示してくれるか不安でした。
しかし、現状のままでは自分や現場を中心となってやってくれている専務に何かあればすぐに会社が立ち行かなくなってしまいます。そのほうがよほど従業員に対して無責任だと考えるようになりました。当然、家族にも大変な苦労をかけてしまいます。

非常に悩みましたが、M&Aがすべてを解決してくれる方法だと思い、2017年12月に日本M&Aセンターと提携仲介契約を交わしました。

譲受け企業の尽力で後継者が入社。事業承継を実現し会長へ

――相手企業にどんな希望を出されましたか。

鉢呂様: 従業員の完全雇用、技術者の確保、取引先の継続、事務所や機材をそのまま引き継いでくれることが大前提でした。それ以外は業種にこだわらず幅広く提案してもらいました。

相手探しを始めて3ヵ月ほどで三洋興熱さんを紹介いただきました。帯広市で同じく管工事を手掛ける大手の会社です。

トップ面談では、譲渡後のビジョンについてハチロの営業基盤をベースにグループのネットワークを活かして全道に仲間を増やしたいとお話しいただきました。内容にとても賛同できましたし、笹井 祐三社長、宏一副社長(当時)の紳士的な対応にも好感がもてましたので、話を進めることにしました。

――2018年9月に調印式が行われました。当日をどんなお気持ちで迎えられましたか。

鉢呂様: 未練がないと言えば嘘になります。ただ、従業員やお客様のことを考えたらこれがベストな選択だと思いましたし、会社の将来にやっとめどが立ったという安心感もありました。

2018年9月5日に行われた成約式

2018年9月5日に行われた成約式

――従業員や取引先の反応はいかがでしたか。

鉢呂様: 三洋興熱さんからは当面社長を継続してほしいと言われていましたので、従業員にはまず社長が変わらないことを伝えました。さらに基本的に仕事内容も変わらないことや、親会社ができたことでいろいろサポートしてもらえるといったことを話すと、一様に安心したようでした。取引先にもすんなり理解いただきました。

――M&Aから5年が経とうとしていますが、会社やご自身はどのように変わりましたか。

鉢呂様: 相談先ができたことで心に余裕が生まれました。社長は決めることが仕事ですが、一人で決めなければいけませんし決めるまでには相当悩みます。相談しながら素早い意思決定ができるようになり、安心して経営できるのは大きな変化ですね。

私の後継者探しについても、経営者候補の募集をかけて有望な人物を採用してくれました。2020年4月に取締役として入社してもらい、引継ぎ期間を経て2023年7月に社長に就任し、私は代表権のある会長になりました。

まだ仕事内容にあまり変化はありませんが、今後は新社長がやりやすい環境づくりをサポートしたいと思っています。それには従業員同士の結束を強めることが大切です。皆が働きやすい環境が整えば効率が上がり、結果利益となって会社に返ってきますから、そうした仕事に徹していくつもりです。

日本M&Aセンター担当者コメント

北海道営業所 シニアチーフ 久米 徹
(株式会社ハチロ担当)

北海道営業所 シニアチーフ 久米 徹(株式会社ハチロ担当)

鉢呂社長は創業60年になる老舗企業を受け継ぎ、時代の変化に合わせて家電販売から管工事業へとシフトさせるなど、ハチロを地元留萌で非常に知名度の高い会社へ成長してこられました。地域性が高い中で譲渡を決断することは周囲の目もあり本当に大変だったと思いますが、資本提携後も代表取締役を継続することで、その決断が間違っていなかったことを周囲に示されたのだと感じています。

※役職は取材時

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