逆境を乗り越えて築いた独自ビジネスと、創業者が選んだM&Aの決断
譲渡企業情報
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- 社名:
- セントラルトレンド株式会社(神奈川県)
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- 事業内容:
- 電子部品・コネクタ関連商社
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- 売上高:
- 約1.8億円(M&A時)
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- 従業員数:
- 2名
譲受企業情報
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- 社名:
- 菱光産業株式会社(広島県)
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- 事業内容:
- 機械部品関連商社
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- 売上高:
- 約16億円
※情報はM&A実行当時
電子部品商社として約30年にわたり事業を展開してきたセントラルトレンド。創業者である元社長の中本 清様は旧財閥系や外資系企業での営業畑を歩んだ後に独立し、防衛や半導体産業向けの電子部品というニッチ市場で独自のポジションを築き上げてきました。
その歩みは決して順風満帆ではなく、日本全体を不況に陥れたリーマンショックでは借り入れができず資金繰りに苦しみ、事業の低迷期も経験。それでも徹底したコスト意識と行動力で事業を立て直し、半導体機器向けの絶縁体を海外から仕入れ、全数検品することでメーカーからの厚い信頼を獲得してきました。
そして後継者不在という課題を背景に、2025年6月にM&Aを決断。今回は、M&Aに至る背景、意思決定の裏側、そして現在の事業状況についてお聞きしました。(取材日:2026年6月3日)
M&Aについて語るセントラルトレンドの中本様
後継者不在と将来不安が重なり、M&Aを検討
――M&Aを検討された背景を教えてください。
中本様:
きっかけは、顧問税理士の先生から「後継者はどうするのか」と聞かれたことです。
息子は2人いますが、どちらも継がせるつもりはありませんでした。妻からも「苦労をさせたくない」と強く言われていましたし、私自身も会社経営の大変さは身に染みていたので、無理に継がせるという考えはなかったですね。事業というのは波があります。今が良くても、5年後、10年後がどうなるかは分からない。その不安定さを背負わせるのは親として違うと思っていました。
その中で、「M&Aという選択肢がある」と紹介されて、まずは情報収集のつもりで日本M&Aセンターの話を聞いたのがスタートです。
――検討開始からすぐに進んだわけではないのですね。
中本様:
そうですね。実は最初に話が出たのは4〜5年前です。その頃はまだ「そのうちやるかもしれない」くらいの感覚でした。
ただ、その後、業績が安定してきて、借入も整理されてきた。「今が一番きれいな会社の状態だ」というタイミングだったこともあり、徐々に現実的に考えるようになりました。また、当時は世界情勢も不安定でしたし、為替や国際物流の問題もあり、将来の見通しが難しい中で、「売るなら今なのかもしれない」という判断もありました。
――実際のプロセスはいかがでしたか。
中本様:
思っていた以上に早かったですね。
資料を出して、すぐに興味を持つ企業が現れて、面談を重ねていくうちに一気に話がまとまりました。トップ面談から成約までも非常にスムーズで、「こんなにトントン拍子に決まるのか」と驚いたくらいです。最初の契約から約半年で最終契約を迎えました。
1年ぐらいでまとまればいいと思っていたので、結果的にはかなり前倒しで進みました。
M&A実行時に感じた「達成感」と「寂しさ」
――実行時の率直なお気持ちはいかがでしたか。
中本様:
やっぱり複雑でしたね。契約が終わった時に、「これで自分の会社ではなくなるんだな」という喪失感がありました。それと同時に、あまりにもスムーズに進みすぎたことで、「もう少しやれたんじゃないか」という思いが残ったのも事実です。
ただ一方で、先行きの不安もあった。世界情勢や為替リスクなどを考えると、「このタイミングは悪くなかった」とも思っています。また、これまで迷惑を掛けてきた家族にしっかりと資産を残すことができた幸福感を噛みしめています。
M&A後に訪れた意外な展開
――M&A実行後の変化はいかがですか。
中本様:
業績は好調です。決算も想像以上に良くて、「こんなに伸びるのか」と驚くくらいです。譲渡時と比較しても売上は伸びていますし、受注も非常に好調です。
M&Aについて朝によく「もったいなかったかな」と思う気持ちもありましたね(笑)。
――好調な要因はどこにありますか。
中本様:
一番大きいのは、事業の裾野が広がったことですね。異業種への種まきの努力が実りました。これまでは防衛産業や半導体分野が中心でしたが、今はそれ以外の産業分野にも展開できるようになってきた。結果的に市場が広がったことで、売上の母数が増えました。
さらに、価格改定のタイミングで先行受注が増えたこともあり、受注が一時的に跳ね上がっています。
――譲受企業とのシナジーはいかがでしょうか。
中本様: 防衛産業向けの単品売りだった商品を複合製品にして付加価値の高い販売展開を進めようと準備しています。経済安全保障への高まりや国による予算増加など追い風も吹いています。譲受先の菱光産業は金属部品の商社なので、さまざまなコラボレーションができると考えています。
例えば、単品販売のケーブルにコネクタを組み合わせてハーネス加工品として販売するといったビジネスモデルへの転換など、新しい構想を持っています。これが軌道に乗れば、大きな成長につながると思います。
半導体向け部品が生み出した競争優位
――貴社の強みについて教えてください。
中本様:
半導体向け部品の絶縁体がヒット製品です。
これは過電流が流れると色が変わる絶縁材で、目視で異常が分かるという特徴があります。もともとは韓国から輸入していました。実は当初は品質に問題があったため、繰り返し改善を求め、品質を上げたうえで市場に投入しました。今では半導体製造装置などの分野で採用が進み、年間数十万個以上を扱うまでに成長しています。
主力製品で半導体向け絶縁体「EYE CAP」
――これまでの経営で大切にしてきたことは何ですか。
中本様:
まずは「コスト意識」です。無駄なコストは徹底的に削る。使えるものは使い回す。それが利益につながる。もう一つは「行動力」です。
社長が机に座って新聞を読んでいるだけではダメで、現場に出てお客さんと話すことが一番大事です。
お客さんの現場にはヒントがたくさんあります。そこから新しいビジネスが生まれるんです。率先垂範を心掛け、「10の考えより100の行動」と思ってこれまで走ってきたように思います。
支えてくれた社員と家族への感謝
――M&A後の社員や家族との関係はいかがですか。
中本様: 小さな会社なので社員には1人3役で頑張ってきてもらいました。M&Aができたのも支えてくれた社員や家族のおかげです。家族にはずいぶん苦労をかけましたし、資金繰りの厳しい時期には家計にも手を付けました。だから今回のM&Aで少しでも社員や家族に恩返しすることができればと思っています。
担当コンサルタントとM&Aを振り返る中本様(右)
――最後に、M&Aを検討している方へメッセージをお願いします。
中本様: 後継者がいて、自信を持って続けられるなら無理にM&Aをする必要はないと思います。 ただ、選択肢としては非常に有効で、大事なのはタイミングです。景気や業績が良い時に動いたほうが、結果として良い条件につながる可能性が高くなります。
――今後の夢や目標を教えてください。
中本様: 現在は顧問として関わりながら、徐々にリタイアできたらと思っています。引き継ぎの目途が立ち、この前はヨーロッパ旅行を満喫できました。今後はゴルフや旅行などを楽しみつつ、友人の企業への助言などを通じて社会とのつながりを保っていきたいです。
税理士事務所鈴木&パートナーズ代表 税理士 鈴木 伸明 様
業績も好調だったので社長とは当初、息子さんに継がせることはできないか何度も話し合いました。ただ同じ苦労をさせたくないと、最終的には社長の決断でM&Aで会社を売るという形になりました。私として成約後も税務顧問として、業績を落とすことなく順調に進んでいることが何よりの喜びです。