海苔業界を支えるアイサン工業、M&Aで叶える亡き夫との夢
譲渡企業情報
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- 社名:
- アイサン工業株式会社(愛知県)
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- 事業内容:
- 海苔加工機械の販売業・メンテナンス、船舶機の整備など
親会社情報
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- 社名:
- 株式会社ファブフォワード(愛知県)
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- 事業内容:
- グループの経営戦略策定など
1946年の創業以来、海苔製造加工機器の販売とメンテナンスを主な事業とするアイサン工業(愛知県)。三代目の社長が亡くなって以降、奥様である鳥居 裕子様が会社を引き継ぎ、数年後には親族の男性へと社長を交代しましたが、後継者不在に伴いM&Aを決断。現在は、東海エリアを中心にものづくり企業の成長と承継を支援するファブフォワードグループの一員として活躍しています。2025年4月にアイサン工業を譲渡した鳥居様にM&Aの経緯を、ファブフォワード社長の藥袋 和樹様にアイサン工業の今をお聞きしました。(取材日:2026年3月14日)
右:【譲渡企業】アイサン工業株式会社 前代表取締役社長 鳥居 裕子 様
左: 株式会社ファブフォワード 代表取締役社長 藥袋 和樹 様
販売だけでなく生産者と共に品質向上に取り組む
――アイサン工業の事業内容について教えてください。
譲渡企業 アイサン工業 鳥居様: アイサン工業は、海苔の製造に使う加工機械の販売とメンテナンスを主な事業としています。全自動の大型機械だけでなく、付属機器や周辺設備まで幅広く扱い、販売後の調整や修理、現場でのアドバイスまで行っています。
もともとは初代である義理の父が、地域で採れる菜種を使った菜種油の製造・販売をしていました。春から夏が繁忙期となる事業でしたので、秋冬にできる事業を探す中で、九州の海苔の機械メーカーとご縁があり、海苔加工機の販売とメンテナンスを始めました。その後、メーカーから「東日本はアイサン工業でやってほしい」と言っていただき、専属代理店のような形で事業を拡大してきました。任された以上は海苔の産地には必ず拠点をつくるという考えで、拠点を増やしていきました。
――御社の強みはどのような点にあるとお考えですか。
鳥居様: 海苔は原藻の状態や環境によって仕上がりが大きく変わります。そのため、機械を売って終わりではなく、生産者の方々と相談しながら調整し、品質を一緒につくっていく。修理もするし、アドバイスもする。その積み重ねで信頼関係を築いてきたことが、一番の強みだと思っています。
病を得て会社の将来に不安を感じるように
――M&Aを検討することになったきっかけを教えてください。
鳥居様: 主人が三代目社長でしたが病気で急逝し、私が社長に就任しました。当時、私は管理部で総務や経理業務を担当しており、経営を引き継ぐ準備をしていたわけではありません。それでも、お客様や従業員のことを考え、また「みんなで支えるから」という周囲の言葉に背中を押され、社長になる決断をしました。
社長になってすぐ、取引先の銀行から紹介され日本M&Aセンターのセミナーに興味本位で参加しました。その時は「将来の選択肢の一つ」くらいの感覚でした。大きく気持ちが変わったのは、社長就任から2年ほど経った頃、肺腺がんが見つかり手術を受けたときでした。幸い早期発見で助かりましたが、「このまま全部を一人で抱えていたら、命を縮めてしまう」と思いました。会社には内緒で、ドレーン(医療用チューブ)をコートで隠して出社し、支払日を何とか乗り切ったこともあります。その時に強く思ったのが、「私に何かあったら、この会社はどうなるのか」という不安でした。
――具体的にどのように検討されましたか。
鳥居様: 娘が一人いますが、会社を継ぐ意思はありませんでした。そのため、まずは親族に相談しましたが難しく、金融機関にも相談しましたが、なかなか譲受先が見つかりませんでした。半ば諦めかけていた時に、日本M&Aセンターをご紹介いただき、「昔セミナーに行ったところだ」と思い出し、ご縁を感じて相談しました。
日本M&Aセンターにお願いしてからは、とてもスピーディーでした。担当コンサルタントの方がすぐに動いてくださり、4社のお相手候補をご紹介いただきました。それぞれお話を聞きましたが、心の中では早い段階で「ここなら託せる」と気持ちが固まっていました。トップ面談から成約まではおよそ3カ月で、その間迷いはありませんでした。むしろ、手を挙げてくださったこと自体がありがたく、前向きな気持ちで進めることができました。
大切なのは、会社が次のステージで成長すること
――譲渡にあたっての条件やこだわりはありましたか。
鳥居様: ありません。今でも社名は変わっていませんが、条件としては社名を変えてもいいし、やり方を変えてもいいとお伝えしました。私にとってM&Aは「会社を嫁に出す」ような感覚でした。「煮るなり焼くなり、好きに料理してください」とお伝えしたほどです。大切なのは、会社が次のステージで、より良く成長することだと思っていました。
――M&A後、会社の変化をどのように感じていますか。
鳥居様: M&A後、引きつぎを経て引退させていただきました。外から見ると、大きくは変わっていません。私が飾った花や置物もそのままで、「まだ飾ってくれているの」と驚いたくらいです。一方で社中では、主人と私が「やりたかったけれど、できなかったこと」を、少しずつ形にしていただいています。今は事務所を新築する計画が進んでいるようで、それが本当に嬉しいですね。
――鳥居様は現在、どのような生活を送っていらっしゃいますか。
鳥居様: M&Aしたことで、私の仕事人生は一区切りついたと感じています。今は、お稽古事や資格の勉強、旅行など、やりたいと思ってできていなかったことに取り組んでいます。会社を手放したからこそ、次の人生に進むことができました。
――M&Aを検討されている方へメッセージをお願いします。
鳥居様: 大切なのは、まず「動くこと」だと思います。思っているだけでは、何も変わりません。動けば、たとえうまくいかなくても次の道が見えてきます。その第一歩として、日本M&Aセンターに相談することは、とても良い選択だと思います。
地域の産業と文化を次世代につなぐ存在へ
――アイサン工業親会社のファブフォワードについてお伺いします。ファブフォワードのグループとしての強みについて教えてください。
ファブフォワード 藥袋様: ファブフォワードでは、高い技術力を持ち、ニッチな分野でトップクラスの企業を積極的にグループに迎えています。グループの方針としては一方的に統合するのではなく、各社の強みを尊重し、最大限に引き出すことを大切にしています。現在は愛知・岐阜・三重を中心とした東海エリアでグループ企業を増やしており、地理的な近さを生かして、倉庫の相互利用など自然な形でシナジーが生まれています。グループ全体で300名を超える人材ネットワークを生かし、新規事業や販売・営業の可能性も広げています。また、グループとしての規模感が生まれることで、各社単体では難しかった対外的な信用力や発信力が高まる点も大きなメリットだと考えています。
――アイサン工業はファブフォワードグループの中で、どのような存在なのでしょうか。
藥袋様: グループ会社の多くは自動車関連など製造業が中心で、海苔という第一次産業に近い分野の会社は初めてでした。その点で、アイサン工業はグループにとって新しい知見をもたらしてくれる存在です。特に、アイサン工業の販売から修理・メンテナンスまで一貫して対応できる点は、グループ内でも希少で、存在価値が非常に高いと感じています。
――今後、アイサン工業に期待することを教えてください。
藥袋様: アイサン工業は60年以上の歴史があり、全国的な知名度と信頼を持っています。一方で、海苔業界は高齢化が進んでいます。そこで、乾燥工程の受託による生産者の負担軽減や、愛知県産の海苔を高付加価値商品として海外に発信するといった新たな挑戦を進めています。これまで培ってきた技術と信頼を生かし、地域の産業と文化を次世代につなぐ存在として、アイサン工業がさらに成長していくことを期待しています。
- 日本M&Aセンター M&Aコンサルタント コメント
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※役職は取材時産業戦略1部 シニアコンサルタント 原田 真成
「西尾市の歴史ある企業を譲り受けて、西尾市の発展に貢献していきたい」という譲受企業の強いお気持ちがアイサン工業にも伝わり、友好的なM&Aになりました。アイサン工業は今までチャレンジできなかったことにもチャレンジし、今後ますますの発展が期待されます。「会社をそのままに。未来は一緒に。」を掲げるファブフォワード社とともに日本M&Aセンター製造業専門チームも日本の製造業を盛り上げていきます。