コラム

使い勝手がよい!分割型分割による切り離しスキームを解説

村木 良平

著者

村木良平

日本M&Aセンターコーポレートアドバイザー室(2019年3月時点)

M&A実務

⽬次

[表示]

中小企業M&Aにあたって、事業に関係のない非事業用資産があることはよくあることです。 こういう場合の対応策としては、譲渡企業オーナーがM&A時に買取るか、役員退職金の現物支給という形で譲渡企業から切り離すというスキームが主流です。 しかし、平成29年度税制改正により、分割型分割による切り離しスキームの使い勝手がよくなっています。 今回はその点を解説したいと思います。

分割型分割とは

分割法人が資産等を会社分割の制度により分割承継法人に承継させ、分割法人株主が、最終的に分割承継承継法人株式を取得するという会社分割を「分割型分割」といいます。 分割型分割後、分割法人と分割承継法人は分割法人株主の兄弟会社の状態となります。(下の図参照)

譲渡企業の非事業用資産や譲渡対象外としたい事業を分割型分割により新会社やオーナー保有の別会社へ税負担なく切り離した後、譲渡企業株式を譲渡することで、次のような効果が考えられます。

分割型分割による切り離しスキームの効果

1)許認可等がそのまま

許認可、契約書、従業員などを譲渡企業に残したまま譲受企業に譲渡できます。特に、許認可の承継に手間がかかる業種では有効です。

2)株式譲渡の税負担で済む

株式譲渡の際に課税される20.315%の低い税負担で済みます。

3)株価圧縮

切り離す資産等(車・生命保険・不動産・負債など)を柔軟に決められるため、分割法人株式の株価(M&A株価)を調整できます。なお、担保に供する不動産や金融機関借入金を切り離す場合は金融機関との調整が必要です。

4)買取資金等不要

オーナーは売買の場合と異なり、買取資金なく、分割承継法人株式の取得を通して非事業用資産を保有できます。また、不動産を承継する場合、一定の要件を満たせば不動産取得税がかかりません。

5)相続税対策

本業とは関係のない不動産賃貸業などを分割型分割で切り離し、オーナーの親族に分割承継法人株式を贈与または相続することで、相続税対策として有効な場合もあります。

最後に

税制改正によってM&A税務における基礎実務も変化しています。 このたび、これら平成30年度までの税制改正にも対応した形で『中小企業M&A実務必携 税務編 第二版』を執筆いたしました。 中小企業M&Aの“リアルな現場”を踏まえ、実務場面に直結する書となっておりますので、ぜひお手に取ってみてください。 『中小企業M&A実務必携 税務編 第2版』はこちら

著者

村木 良平

村木むらき 良平りょうへい

日本M&Aセンターコーポレートアドバイザー室(2019年3月時点)

民間企業での経理・財務・社会保険実務全般、上場準備、上場後の開示実務、国際税含めた税務実務、上場企業同士の再編実務等幅広い業務を経験後、株式会社日本M&Aセンターに入社。M&A案件を主に税務面から関与。関与件数は数百件以上にのぼる。著書に『中小企業M&A実務必携税務編第二版』がある。税理士。

この記事に関連するタグ

「M&Aスキーム・M&A税務・税制改正」に関連するコラム

平成31年度税制改正大綱を、M&A実務の視点で読み解く

M&A実務
平成31年度税制改正大綱を、M&A実務の視点で読み解く

昨年末に公表された平成31年度税制改正大綱。M&A実務に影響する点は、例年に比べると軽微という印象です。簡単ですが以下にご紹介させて頂きます。平成31年度税制改正がM&A実務に影響する点以下の7点があげられます。土地売買登録免許税1.5%となる軽減措置、平成33年3月末まで2年延長。個人事業主の相続税、贈与税の納税猶予の創設。平成31年1月からの相続・贈与から。特別法人事業税(国税)の創設、法人事

事業譲渡諸費用の税務上の取扱いを整理しよう!

M&A実務
事業譲渡諸費用の税務上の取扱いを整理しよう!

一般的に仲介会社を介して事業譲渡をする場合は、交渉のステージにそって一定の費用が発生します。それら費用について税務上はどう取り扱うべきでしょうか。今回はその点を解説したいと思います。交渉ステージごとに係る費用負担者別に整理すると、以下の費用がステージごとにかかります。※交渉ステージは日本M&Aセンターの流れに沿っています。※本コラムにおける“事業譲渡”とはスキームのことを指し、株式譲渡の場合の取り

2018年、M&A業界では何が起こる?

M&A全般
2018年、M&A業界では何が起こる?

2018年が始まりましたね!今年一発目のコラムなので、2017年の振り返りをしながら2018年M&A業界を予想してみたいと思います。“2017年問題”なる言葉が巷を賑わせた昨年は、M&A業界にとってひとつの節目であるとともに、次の時代への入り口ともいうべき年であったと思います。あなたが2018年歩むべき道は決まりましたか?平成30年税制改革大綱が意味すること2017年問題とは、団塊の世代が一般男性

M&Aのディールとは?手順やポイントについて徹底解説

M&A全般
M&Aのディールとは?手順やポイントについて徹底解説

海外の映画やドラマを見ていると、ビジネスの交渉が行われるシーンで「It’sdeal(よし、これで手を打とう!)」というセリフを耳にしたことはありませんか?このdeal(ディール)という言葉は、私たちの日常会話でも近年用いられる機会が増えており、たとえば、自動車メーカーと特約店契約を結んだ正規販売店は「ディーラー」と呼ばれます。いっぽうM&Aの世界でも、「ディール」が頻繁に使われています。ただし、そ

株式交付とは?株式交換との違いやM&Aで活用するメリット・注意点を詳しく解説

M&A全般
株式交付とは?株式交換との違いやM&Aで活用するメリット・注意点を詳しく解説

令和3年3月1日に施工された「会社法の一部を改正する法律案」で新たに創設された株式交付制度は、令和3年税制大綱によれば株式を対価とするM&Aを促進することを目的としています。本記事では、株式交付の仕組みや基本的内容を整理し、既存の株式交換との違いやM&Aで活用する場合のメリットや注意すべき点などについて、最新の情報を詳しく解説していきます。株式交付とは?株式交付は、会社法では「株式会社が他の株式会

M&Aにおけるのれんとは?税理士がポイントをわかりやすく解説

M&A実務
M&Aにおけるのれんとは?税理士がポイントをわかりやすく解説

M&Aを検討し、会話を進めていく中でよく「のれん」という言葉を耳にすることがあるかと思います。「なんとなくイメージはわかるけど具体的にはわからない」、「どうやって算定されるものかわからない」という方は非常に多いのではないでしょうか。この「のれん」は、中堅・中小企業M&Aにおいて売り手側の譲渡企業、買い手側の譲受企業のどちらにとっても非常に重要です。詳しくは後述しますが、「のれん」について知っておけ

「M&Aスキーム・M&A税務・税制改正」に関連する学ぶコンテンツ

コラム内検索

人気コラム

注目のタグ

最新のM&Aニュース