コラム

事業譲渡諸費用の税務上の取扱いを整理しよう!

村木 良平

著者

村木良平

日本M&Aセンターコーポレートアドバイザー室(2019年3月時点)

M&A実務
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一般的に仲介会社を介して事業譲渡をする場合は、交渉のステージにそって一定の費用が発生します。 それら費用について税務上はどう取り扱うべきでしょうか。 今回はその点を解説したいと思います。

交渉ステージごとに係る費用

負担者別に整理すると、以下の費用がステージごとにかかります。
※交渉ステージは日本M&Aセンターの流れに沿っています。
※本コラムにおける“事業譲渡”とはスキームのことを指し、株式譲渡の場合の取り扱いではありません。

譲渡企業(売り手) 譲受企業(買い手)
着手金(案件化料・企業評価料) 着手金(情報提供料)
仲介手数料(成功報酬) 基本合意報酬(中間報酬)
監査費用
仲介手数料(成功報酬)

税務上どう取り扱うか

税務上、損金算入できるものと、承継資産の時価の比で按分するものがあります(下の表参照)。

※1の処理は、明確な根拠条文等はないものの、実務的には次の方法が良いと考えられます。

  • 譲受企業の買収の意思決定後に発生する「中間報酬」や「監査費用」「成功報酬」の合計額を、各承継資産(資産調整勘定:税務上の「のれん」を含む)の時価の金額比で按分。

  • 保証金や資産調整勘定など、 付随費用を加算する必要のないものへの対応額は損金処理、 在庫・土地・償却資産・有価証券などへの対応額は資産計上 。

  • 「在庫への対応額」は販売管理システムへの反映が難しく、仕訳伝票のみで資産計上するケースが多い。実際の売却年度または除却年度で売上原価とすべきだが、実務的には直近1~2年などの在庫の回転期間に応じて、売上原価とする処理が合理的な処理。

最後に

中小企業M&Aにはこのように、いわゆる判断に迷う場面がたくさんあります。
実務を担う方に少しでもお力になれるよう、このたび『中小企業M&A実務必携 M&A手法選択の実務』を当社コーポレート・アドバイザー室のメンバー他3名とともに執筆しました。
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著者

村木 良平

村木むらき 良平りょうへい

日本M&Aセンターコーポレートアドバイザー室(2019年3月時点)

民間企業での経理・財務・社会保険実務全般、上場準備、上場後の開示実務、国際税含めた税務実務、上場企業同士の再編実務等幅広い業務を経験後、株式会社日本M&Aセンターに入社。M&A案件を主に税務面から関与。関与件数は数百件以上にのぼる。著書に『中小企業M&A実務必携税務編第二版』がある。税理士。

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