有限会社は売却できる?手続きや注意点を解説

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会社の形態には、株式会社をはじめ、合同会社や合資会社、合名会社などさまざまな種類があります。このように様々ある会社の形態の一つが、有限会社です。法改正によって、現在では有限会社を新規に設立することは認められていませんが、今でも多くの有限会社が事業を展開しています。

本記事では、有限会社の概要、有限会社のM&Aについて解説します。

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この記事のポイント

  • 有限会社は2006年以前に設立された会社形態で、現在は「特例有限会社」として存在し、新たに設立できない。
  • 売却時には、手続きが複雑で、株主総会の承認が必要な場合がある。また、売却時には情報漏洩のリスクにも注意が必要で、適切な手続きを踏むことが求められる。

⽬次

有限会社とは

有限会社とは、 2006年5月に会社法が施行される以前に設立された会社形態の一つ です。

会社法の施行により株式会社が「資本金が1円以上、取締役が1名以上」と設立のハードルが緩和され、株式会社と有限会社を区別する意義がなくなったため、有限会社法が廃止されました。

現在残っている有限会社は、正しくは「 特例有限会社 」であり、会社法上は「株式会社」として区分されます。所定の手続きを経て、株式会社などへ移行することも可能です。

冒頭の通り、現在有限会社は新たに設立できず休廃業や解散により年々減少していますが、約16万社が特例有限会社として存続しています。

会社形態 総数
株式会社 102万4,428社
特例有限会社 16万9,562社
合名会社 11万5,190社
合資会社 2,995社
合同会社 807社

※日本の会社形態の総数(2023年)…総務省統計局「登記統計 商業・法人 年次 2023年」より抜粋

有限会社と株式会社の違い

有限会社(特例有限会社)の主な特長は、以下の通りです。

新たに設立できない

株式会社の大きな違いは、前述の通り現在新設できない点です。
株式会社は資本金1円以上で設立でき、取締役も1名以上と設立のハードルが低くなっていることが特徴的です。

役員の任期の制限がない

株式会社の役員は基本的に2年(定款の定めにより最短1年から最長10年)と任期が定められています。そのため任期ごとに登記をし直す手続きが発生し、コストも必要になります。

一方、特例有限会社の役員には任期が定められていないため、変更登記は不要となります。

決算公告の義務がない

株式会社には官報等による決算公告義務がありますが、有限会社(特例有限会社)において決算公告を行う義務はありません。

有限会社は売却できるのか

有限会社も株式会社と同様に売却することができますが、後述の通りいくつかの制限が設けられています。

特例有限会社は会社法上は株式会社に分類されており、株主総会の決議を通じて定款を変更すれば株券の発行も可能です。

有限会社は基本的に会社法によって規定されていますが、かつての有限会社独自の性質に関わる部分については「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(以下「整備法」)」で規定されています。

この整備法では、有限会社が吸収合併存続会社や吸収分割承継会社になることを禁止しており、株式交換や株式移転、株式交付の適用も会社法の規定において除外されているため、これらのスキームを用いたM&Aは行えません。

したがって、有限会社も株式会社と同様にM&Aを活用はできるものの、使えるスキームが制限されます。

有限会社の売却における注意点

有限会社の売却を検討する際には、スキームが限定されるほか、以下の点に注意が必要です。

株式の譲渡制限がある

有限会社の株式には譲渡制限が設けられているため、株式譲渡には、原則として株主総会の承認を得て手続きを行う必要があります。
ただし、定款の変更により、株式譲渡の承認機関を代表取締役に変更にすることは可能です。

有限会社では上場ができない

有限会社は株式会社のように株式の譲渡制限を撤廃し、公開会社にすることができません。

したがってM&A後に順調に業績を伸ばし、将来は上場も視野に入れているのであれば、こうした点は理解しておかなければなりません。

ただし有限会社から株式会社への組織変更は前述の通り可能であるため、上場を検討する際には株式会社への組織変更をしておくことで、この点は解消できます。

情報漏洩のリスクに細心の注意を払わなければならない

有限会社は2006年以前から事業を展開しているため、顧客や取引先など、取引関係の長いステークホルダーが多いことも特徴の一つです。

関係各所とのつながりが長く深いだけに、情報漏洩のリスクにより一層の細心の注意を払い、M&A成立まで進めていく必要があるでしょう。

有限会社がM&Aを行う際の手続き

以前は有限会社が株券を発行できませんでしたが、特例有限会社に移行して以降は、株主総会の決議によって定款を変更し、株券を発行する旨を新たに定めれば、株券が発行できるようになりました。

そこで、有限会社を売却する際の手続きを「株券を発行していない場合」と「株券を発行している場合」にわけて解説します。

株券発行をしていない場合

2006年の会社法施行以降は、定款や登記で株券発行会社の定めがない限り、原則としてすべての会社は株券不発行会社となりました。

特例有限会社も同様に、定款や登記で特別に定めがない限り、すべての有限会社は株券不発行会社です。したがって株式譲渡を行うにあたり、発行した株券の現物を揃える必要はありません。

特例有限会社では、旧有限会社時代の社員は「株主」、持分は「株式」となり、出資1口は「1株」となります。

したがって、この株式を買い手に譲渡すればM&Aは成立しますが、株主ではない者が特例有限会社の株式の譲渡を受けるためには、会社の承認を受けなければなりません。

そのため有限会社を売却する際は、買い手との株式譲渡契約を締結するとともに、株主総会の普通決議による承認を得る必要があります。

株券発行をしている場合

特例有限会社が株券発行会社である場合は、株式を譲渡するにあたり現物の株券が必要となります。したがって、まずは株券がすべて手元にあるかどうかを確認しなければなりません。

万が一紛失している場合には再発行の手続きが必要です。しかし株券の再発行には時間がかかるため、あらかじめ確認しておいた方がよいでしょう。

株券が確認できたら、その後は株券不発行会社の場合と同じ流れです。買い手との間で株式譲渡契約を締結し、株主総会の普通決議で承認を得れば終了です。

ただし買い手がすでに売り手の株主である場合は、株主総会を開催する必要はありません。特例有限会社では、株主間の株式の譲渡は当該株主間で株式譲渡契約を締結すれば株式譲渡ができるためです。

終わりに

現在の有限会社は、有限会社の性質を一部だけ残した特例有限会社であり、実質的には株式会社とほぼ同じでです。そのため有限会社も株式会社と同じように、M&Aを活用することが可能です。

したがって後継者が見つからず事業承継が進まない企業や、更なる事業規模の拡大を目指す経営者にとっては、M&Aが有効な企業戦略の手段の一つとなることは間違いありません。

ただし、有限会社と株式会社にはいくつかの相違点があるため、M&Aを検討する際には専門家に相談しながら検討を進めていくことをおすすめします。

日本M&Aセンターは1991年の創業以来、有限会社をはじめ多くの中小企業のM&Aをご支援しています。詳しくはコンサルタントまでお問合せください。

著者

M&A マガジン編集部

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