「本当にM&Aでこんなことできるのか」 わずか1年足らずで経営者の悩みを克服した住宅メーカー「サンオリエント」

広報室だより
更新日:

⽬次

[非表示]

多くの中小企業の経営者は会社の発展と従業員の雇用の安定を常に考えながら、一人で重責を背負い込み、先行き不安のなかで事業の舵取りを担っています。岡山市の住宅メーカー「サンオリエント」の創業者である磯﨑慎一取締役社長は2022年2月、日本有数の高級住宅街として知られる兵庫県芦屋市で成長する住宅メーカー「髙翔」のグループ入りを選びました。磯﨑社長は50代前半ながらM&Aを決断した背景にも、事業の発展と雇用の安定をどう実現していくかという中小企業のオーナー社長が抱える悩みがありました。

経営者として悩みながら、ひらめいたM&A

「経営者としてなかなか良い解決策が見つからない時にM&Aがキーワードになった。自分がトップから一歩下がることで可能性が広がるのではないか」と考えたそうです。M&Aの検討からわずか1年足らずでお互いの強みを発揮できる“経営パートナー”を得て、新しいスタートを踏み出しました。サンオリエントは一級建築士の磯﨑社長が2003年に創業。耐久性と空間デザインの自由度が高い、いわゆる「打ちっぱなし」と総称される鉄筋コンクリート造のRC住宅の設計と施工に強みを持っていました。従業員3人ながら売上は約4億円と少数精鋭の技術者集団として確かな技術を誇り、「まちの成長を支える卓越した技術と人間性の追求」を経営理念にしてきました。一方で「やっぱり技術畑の人間として営業面が弱かった。ここ数年の売上は横ばいで頭打ちを感じていた」と振り返り、自社の課題と向き合い続けてきました。

技術力と営業力を掛け合わせたマッチング

事業の発展と従業員の生活を守るためM&Aの相手候補選びを日本M&Aセンターに依頼しました。M&Aを考え始めてからちょうど一年後の2022年2月15日。岡山市内のホテルで、磯﨑社長は今後の経営パートナーとなる髙翔の中間秀一代表取締役社長らと向き合い、M&A成約式に臨みました。

髙翔は芦屋エリアを中心に、注文住宅や建売販売を手掛け、不動産売買など住居に関わる事業を多角的に展開し、自慢の営業力と情報発信力で成長を続けている会社です。成約式で髙翔の中間社長は「サンオリエントは一言で言えば技術力の結晶。日本中探してもRC住宅を造るノウハウと技術はなかなかない」と企業価値を説明し、「髙翔の営業力を足すことで両社に化学反応が起こり、どこまでも可能性を広げていける」と確かな将来性を語りました。

阪神・淡路大震災の経験から芦屋エリアでは耐震性と耐久性に優れ、設計の自由度も高いRC住宅への高い需要が見込まれます。高翔にとっても大手住宅メーカーとの競争で差別化を図る一手となり、木造や軽量鉄骨造が第一候補となる顧客に対して新たな選択肢の提供につながります。M&Aによってサンオリエントの技術力と髙翔の営業力が掛け合わせることで、岡山と芦屋エリアでの両社の事業拡大も期待できます。

わずか1年で経営者の悩みを克服したM&A

M&A成約式で磯﨑社長は「思い付いてから約一年で、こんな形でM&Aができて意外だった。本当にこんなことできるんだなと。先行き不安を抱えている中小企業の経営者にM&Aの手法が広がり、新しい可能性を伝えられるように一緒に事業を発展させていきたい」と語りました。代表権は持たないものの創業者として引き続きサンオリエントの事業を担い、髙翔との新しい組織体制で事業に専念されます。

成長への期待から高揚感に包まれた成約式には地元メディアも取材に訪れ、両社にとっても忘れられない記念日となりました。曇天だった空模様も式後には光が差し込み、今後の両社の歩みを照らしているようでした。

日本M&AセンターのM&A成功事例インタビューはこちら

著者

M&A マガジン編集部

M&A マガジン編集部

M&Aマガジンは「M&A・事業承継に関する情報を、正しく・わかりやすく発信するメディア」です。中堅・中小企業経営者の課題に寄り添い、価値あるコンテンツをお届けしていきます。

この記事に関連するタグ

「株式譲渡・M&A・PMI・成長戦略」に関連するコラム

買収とは?合併やM&Aとの違い、種類、プロセスを解説

M&A全般
買収とは?合併やM&Aとの違い、種類、プロセスを解説

買収は、企業の成長や事業承継の手法として広く活用されています。売り手側にも買い手側にもメリットがある一方で、リスクもあるため注意が必要です。本記事では、買収と合併、M&Aの違いをはじめ、買収の種類やプロセスをわかりやすく解説します。この記事のポイント買収とは、対象企業の事業や経営権を取得することで、「事業買収」と「企業買収」に分けられる。買収には「友好的買収」と「同意なき買収」があり、一般的に中小

【M&A成約式】 上場企業とのM&Aで生産力向上、メイドインジャパンの製品力で成長促進へ

広報室だより
【M&A成約式】 上場企業とのM&Aで生産力向上、メイドインジャパンの製品力で成長促進へ

「メイドインジャパンの製品を世界に発信したい」という思いが合致したM&Aとなりました。野菜調理器製造事業を行う株式会社ベンリナー(以下、ベンリナー、山口県岩国市)は、印刷品製造業を営む三光産業株式会社(以下、三光産業、東京都)と資本提携を結びました。両社は、2022年12月22日、広島県内のホテルにてM&A成約式を執り行いました。握手を交わす三光産業株式会社代表取締役社長執行役員石井正和氏(左)と

中小企業白書に日本M&Aセンターの海外M&A案件が事例紹介

海外M&A
中小企業白書に日本M&Aセンターの海外M&A案件が事例紹介

日本とマレーシアをつなぐクロスボーダーなM&Aが脚光を浴びました。中小企業庁が策定する2022年版「中小企業白書」に、日本M&AセンターがFA(ファイナンシャルアドバイザー)として支援した海外M&A案件が事例として紹介されました。新型コロナウイルスの世界的な蔓延を受けた渡航制限下で、M&Aの全交渉をフルリモートで完結したウィズコロナ時代に即した先進的なクロスボーダー案件です。中小企業経営のバイブル

25社譲受して成長するハシダ技研工業の「M&Aは人助け」の凄み

広報室だより
25社譲受して成長するハシダ技研工業の「M&Aは人助け」の凄み

「M&Aは人助け」を信条に2008年から2022年までの間、買い手企業として計25社を譲受した大阪市のハシダ技研工業株式会社。火力発電所に使用されるガスタービン部品は高い技術力から、ゼネラル・エレクトリック(GE)社や三菱重工業など名だたる企業を取引先に持ち、自動ドアの自社ブランドも好調な製造業のグループ企業です。後継者のいない製造業を譲り受けながら成長を果たしています。事業はグループ売上高200

買収されるとどうなる?会社の存続や社員にもたらす変化とは

M&A全般
買収されるとどうなる?会社の存続や社員にもたらす変化とは

買収されるとどうなる?生じる変化とは企業買収されると、会社の存続のほか、社員や取引先への影響が懸念されますが、中小企業のM&Aでは株式譲渡のスキームで、会社の法人格がそのまま存続するケースが一般的です。譲受け企業(買い手)の方針にもよりますが、会社の法人格だけでなく、事業用の機械設備、取引先、顧客、従業員などもそのまま引き継がれるケースが多く見られます。友好的買収がほとんどを占める中小企業のM&A

会社売却とは?売却の流れやメリットや注意点、事例を解説【2025年版】

M&A全般
会社売却とは?売却の流れやメリットや注意点、事例を解説【2025年版】

会社売却とは、会社の経営権や事業を第三者に売却し、対価を受け取るプロセスを指します。近年は、後継者問題の解決や企業の成長促進を主な目的として、中小企業の会社売却が増加傾向にあります。現在様々な問題に直面している経営者はもちろん、そうでない方も、会社売却の手続きや税制、メリットなどについて知っておくことで、より柔軟な経営判断ができるようになります。本記事では、企業売却の流れや税金に関する基礎知識のほ

「株式譲渡・M&A・PMI・成長戦略」に関連する学ぶコンテンツ

PMIとは?M&Aを成功させる鉄則、準備から流れ、事例を専門家が解説!

PMIとは?M&Aを成功させる鉄則、準備から流れ、事例を専門家が解説!

PMIとは?PMI(PostMergerIntegration:ポスト・マージャー・インテグレーション)とは、M&A成立後に行われる統合プロセスを指します。これはM&Aの目的を実現させ、成果を最大化するために不可欠なプロセスです。PMIは「経営の総合科目」と呼ばれるように、定量的な面だけでなく、人材や企業文化など定性的な面も考慮することでM&Aの成功につながります。具体的には「新経営体制の構築」「

企業価値評価(バリュエーション)とは?M&Aで用いられる手法、算定方法を解説

企業価値評価(バリュエーション)とは?M&Aで用いられる手法、算定方法を解説

M&Aにおける「企業価値評価」とは、文字通り企業全体の価値を評価することを意味します。本記事では企業価値評価の枠組みにおいて、特に「株式価値」の算定に着目してご紹介しますが、まずは「企業価値」「事業価値」「株式価値」の意味するところの違いを、しっかり区別しておきましょう。この記事のポイントM&Aにおける企業価値評価は、企業全体の価値を算定するプロセスで、株式価値を求めることが特に重要である。評価手

M&Aの事前準備。売り手が押さえておくべきポイント

M&Aの事前準備。売り手が押さえておくべきポイント

自社の売却を考える譲渡オーナーの多くにとってM&Aは未知の体験であり、不安はつきません。本記事では、相手探しを始める前に何を準備しておけばいいのか?どのような状態にしておけばいいのか?売り手が押さえておきたいM&Aの事前準備として資料収集・株式の集約についてご紹介します。M&Aのプロに、まずは相談してみませんか?日本M&Aセンターは、ご相談からM&Aの成約まで、経験豊富なM&Aのプロが丁寧にサポー

譲渡・売却先の探し方、選び方のポイント

譲渡・売却先の探し方、選び方のポイント

会社の譲渡・売却を通じてどういう会社になりたいか、そのためにどんな相手に会社を売却したいか、イメージし明確化することは非常に大切です。本記事では、売却する相手を探す時、そして具体的に検討する時のポイントについてご紹介します。M&Aのプロに、まずは相談してみませんか?日本M&Aセンターは、ご相談からM&Aの成約まで、経験豊富なM&Aのプロが丁寧にサポートいたします。会社の売却をご検討の方は、まずは無

「株式譲渡・M&A・PMI・成長戦略」に関連するM&Aニュース

エコモット、持分法適用関連会社シムックスイニシアティブの保有株式の一部を売却

エコモット株式会社(3987)は、持分法適用関連会社である株式会社シムックスイニシアティブ(東京都港区、以下:CIMX社)の保有株式の一部(20.1%)を、同社代表取締役に譲渡することを決定した。エコモットグループは、IoTテクノロジーと最新のAIを組み合わせることで、社会の課題を解決するテクノロジー企業グループ。CIMX社は、IoT・DXサービス開発を行っている。2024年6月にエコモットは、経

カヤック、eスポーツスクール事業のeSPを売却へ

株式会社カヤック(3904)は、連結子会社である株式会社eSP(東京都新宿区)の発行済株式の全てを、株式会社ZERO1(東京都新宿区)に譲渡することを決定した。カヤックは、近年においてeスポーツ領域を重点分野の一つと捉え、積極的な投資を進めてきた。eスポーツ周辺領域への投資の一環として、2022年にeSPを子会社化し事業を拡大してきたが、eSPの経営陣より、独自の成長戦略を推進したい旨の申し出を受

日本エコシステム、テッククリエイトの全株式取得へ

日本エコシステム株式会社(9249)は、株式会社テッククリエイト(石川県金沢市)の全株式を取得し、グループ化することに関し、株主との間で株式譲渡契約を締結することを決定した。日本エコシステムは、環境、公共サービス、交通インフラに関する事業を行う。テッククリエイトは、北陸三県の鉄道線路・施設の保守点検、石川県内の工場・商業施設・公共施設などの給排水衛生設備、空調設備工事等を行う。テッククリエイトのグ