コラム

ENEOS(エネオス)の買収事例にみる石油業界の今後【M&AニュースサテライトVol.1】

臼井 智

プロフィール

臼井智

日本M&AセンターTOKYO PRO Market事業部 上場推進部長

西川 大介

プロフィール

西川大介

株式会社日本M&Aセンター 執行役員 成長戦略開発センター長/ 株式会社ネクストナビ 取締役

M&A全般
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ENEOS買収事例イメージ1
「世の中のM&A事例をわかりやすく解説してほしい」そんな声にお応えする解説動画が、YouTubeの公式チャンネルでスタートしました。解説を行うのは、日本M&Aセンターの中でも長年業界に携わってきた、M&Aマスターの二人です。本記事では動画の内容をご紹介します。

動画はこちらから

西川: 皆様こんにちは!日本M&Aセンター 企業戦略部の西川です。どうぞよろしくお願いいたします。
日本M&Aセンター西川

臼井: 日本M&Aセンター TOKYO PRO Market事業部の臼井です。どうぞよろしくお願いいたします。
日本M&Aセンター臼井

西川: この動画では、外部に公表されている実際のM&Aの成約、プレスリリースを題材にしてその背景、概略について簡単な解説をお届けしていければと思っています。

臼井: プロの目から見た解説ですね。

2021年のM&Aを振り返る

西川: はい。ということで臼井さん、最初にクイズです。昨年2021年に世の中に公表された、日本企業の関わったM&Aプレスリリースは一体何件あったでしょうか?

ENEOS買収事例イメージ2

臼井: そうですね、答えはなんとなく想像つくのですが、コロナもありましたので多少は減った気もします。コロナ前でも約3,000件は超えていましたので、3,000件台半ばぐらいかなという感じがしますが、どうですか?

西川: ブー!違います。

臼井: えっ!?

西川: 4,000件を超えてますね。4,280件です。

臼井: めちゃめちゃ増えてますね。

西川: はい。M&A件数情報によると前年対比14.7%増で、2年ぶりに最多件数を更新しました。コロナ前よりも件数が増えています。

いま、M&A市場のトレンドのカギを握るのは

西川: 2021年、M&A市場を見ていて、どんな事がキーワードとして挙げられますか?

臼井: その時々に応じてM&Aのトレンドはあると思うんですが、2021年は戦略的な動きが非常に強化されたと感じています。その中でも顕著な動きが見られるのが、 エネルギー関連 ですね。カーボンニュートラル、それに関連したSDGsなど世の中、世界の流れに沿った形でM&Aの動きが見られた1年でした。

ENEOS買収事例イメージ3

西川: そうですね。「脱炭素」「カーボンニュートラル」などたくさん聞きます。再生可能エネルギー関係、あるいは脱炭素に関わる具体的なM&Aってありましたか?

臼井: 個人的に一番印象に残っているのは、ENEOSホールディングスが再生可能エネルギー新興企業のジャパン・リニューアブル・エナジー(以下、JRE)を買収した事例ですね(2021年10月)。
これはちょっと時代のステージが変わった、インパクトのある事例だと思っています。

それまでの石油業界でいうと、地球環境に良いエネルギー原料をという流れで、どちらかというと逆風が吹いていた。その中で石油業界に何が起こっていたでしょうか。そう、業界再編ですよね。

ENEOS買収事例イメージ4

石油業界における業界再編は、これまで10年~15年にわたって連綿と行われてきました。様々な石油元売り各社など、かなりの勢いで再編された結果、最終的にここ1年で残ったのは一方がENEOS(JXTG HG)、もう一方が出光・昭和シェル。時間をかけて、主にこの2系統まで再編されました。

石油業界の再編というのは国内だけはなく、海外でもエクソンモービル社をはじめ、様々な動きが起こっています。それら海外の流れに組み込まれていくのか、どうか。国内の業界再編で生き残った2社が、次に何をするのか注目されている中で、このENEOSさんによる買収が行われたましたが、JREは石油会社からすると異業種ですよね。

西川: JREは再生可能エネルギー、つまり従来のエネルギーに代わる太陽光、風力、バイオマスなど扱う会社なので、ENEOSとは異業種ではありますね。

臼井: 両社にはエネルギーという共通なワードがありますけど、まったく違う方向に一歩踏み出した。
しかもその踏み出し方も、買収額2,000億円ですよ。

ENEOS買収事例イメージ5

西川: うーん、インパクトある数字ですね。

臼井: 買収対象会社の年商をはるかに超える、非常に高い金額で買収したという。

西川: 専門家の中には、割高なのではという声もあるようですが。

臼井: それが割高なのかどうか、まだわからないところはありますが、買収にあたって、きちんと分析・交渉した結果、公表された数字ですので。相当、ENEOSさんは戦略的な一手を打った、といえるのではないかと思います。2021年は、この事例が一番インパクトが大きかったですね。

M&Aのトレンドをおさえ、次のアクションを起こしていく

西川: 今回の案件を通じてENEOSさんの本気度を感じましたし、実際に私もいろいろな現場で、みなさん「ENEOSショック」なんて言い方をされているのを耳にします。

ENEOS買収事例イメージ6

ENEOSさんの(この買収事例の)プレスリリース以降、再生可能エネルギー関連、脱炭素関連のご相談が急増しています。今後M&A市場はこのテーマから目が離せないですね。
それでは最後、臼井さんから今日のテーマについて、ひとことお願いします。

臼井: そうですね、我々M&Aという観点で、世の中の事象を見ていくのが半ば習慣化しているんですけど、その専門家である我々から見ても、今回のENEOSさんの買収事例は「えっ!?」と驚くような案件でした。
逆にいうと、少し頭をやわらかくして考えないといけないとも思っています。
先を見越して、早めにアクションを起こしていく。その戦略を実現していく。これがすごく重要ですよね。

西川: 本当にこのM&Aのトレンドに乗り遅れてはいけないと思っています。
とくに金融機関、あるいは投資家サイドでは、このテーマについて今後さらに重視されていく、といわれています。
投融資のポートフォリオにおいて、温室効果ガス排出量の「ネットゼロ」化を掲げていますので、これをクリアできていないと融資も投資もされないでしょう。これは1日、1年で実現できるような簡単な問題ではありませんので、企業は本気で準備していくことが求められています。場合によってはM&Aを活用することも重要かなと考えます。
本日はありがとうございました。

臼井: ありがとうございました。まだまだ話したいテーマがたくさんありますので(笑)みなさん、これからもよろしくお願いいたします。次回もお楽しみに。

動画はこちらから
【M&A時事解説スタート!!】第1回目:ENEOSが2000億円で買収!?JRE買収に見える石油業界の今後とは?

プロフィール

臼井 智

臼井うすい さとし

日本M&AセンターTOKYO PRO Market事業部 上場推進部長

1991年に山一證券株式会社に入社、M&A部門に配属。同社自主廃業後、大手証券会社M&A部門を経て2009年に日本M&Aセンター入社。27年間にわたり一貫して国内外のM&A仲介アドバイザリー業務の第一線に従事。上場企業同士の経営統合から中小企業の事業承継案件まで、規模の大小を問わず幅広い業界にて200件超のM&A成約実績がある。最近は、S&P Global Market Intelligenceに2024年M&A展望についてコメントを寄稿。

西川 大介

西川にしかわ 大介だいすけ

株式会社日本M&Aセンター 執行役員 成長戦略開発センター長/ 株式会社ネクストナビ 取締役

大手プラントエンジニアリング会社(海外プラント建設)、Big4系コンサルティングファーム(PMI等)、大手証券会社(M&Aアドバイザリー)を経て、2010年に当社に入社。通算20年近いM&A実務経験に強み。現在、上場会社グループに特化してM&Aサービスを提供する部門を率いる。事業ポートフォリオ再構築プランやM&A戦略の立案サポートから、クライアント毎のオーダーに基づく案件オリジネーション、交渉・実行サポートを行う。弊社において、大型案件、複雑案件、及びノンコア切離し案件をリードする。

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