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上場企業M&Aマガジン 2015年9月1日

新たな価値創造型M&A
~ジャパンシステムによるネットカムシステムズの株式譲受け

本件M&Aの背景

長引く不況下で抑制されていた企業のIT投資が活発化し、SIer型ビジネスが今好調である。マイナンバー制度に代表される大型システム投資も今後目白押しである。それに伴い、IT技術者不足が深刻化している。その一方で、労働集約型ビジネスには限界が来ており、東京五輪後の市場は縮小傾向にあると見ている。

今回譲受け側となったジャパンシステムにおいても、中長期的に経営陣はこの状況に危機感を持っていた。よって今後のIoTの本格普及を見据え、自社の得意とする技術と協業できるパートナーを探し、新たな価値創造を図ること、かつそのスピードを「爆速(阪口社長談)」レベルで実行していくことを経営課題として掲げていた。具体的には、新たな事業機会が加速度的に創出されていく中で、従来の人月商売から脱却することが戦略の核としておかれた。

こうしたジャパンシステムの状況から、今回ネットカムシステムズとの提携を提案した次第である。両社のトップ面談においては、未来構想、新たな製品・サービスの広がりなど、多くの話題で盛り上がった。その結果、初期提案から成約までわずか1カ月というまさに「爆速」でのM&Aが実現したのである。

本件統合前の両社の概要

本件統合前の両社の概要

* SIerとは、個別のサブシステムを集めて1つにまとめ上げ、それぞれの機能が正しく働くように完成させる「システムインテグレーション」を行なう企業。System Integratorの略。

* IoT(モノのインターネット)とは、コンピュータなどの情報・通信機器だけでなく、世の中に 存在する様々な物体(モノ)に通信機能を持たせ、インターネットに接続したり相互に通信することにより、自動認識や自動制御、遠隔計測などを行うこと。Internet of Thingsの略。

本件提携による両社のシナジー

一般的にシナジーがわかりやすく事例も多いのは「スケールメリット追求型M&A」だが、本件M&Aは、両社の保有する技術と対象としている顧客(業界)の掛算によって、新たな製品やサービスを創出し、新たな市場分野への進出を可能にする「新たな価値創造型M&A」、あるいは「イノベーション創出型M&A」と呼べる。

両社が提携することによって実現可能な新サービスの一部を紹介したい。

(1)屋内地図情報サービス×画像処理技術 (人数カウント、顔認識)

ジャパンシステムは現在、地磁気やBLE(Bluetooth Low Energy)、Wi-Fiなどを用いて、ショッピングセンターなどの屋内であっても自分の居場所をスマホの地図上で確認、目的の店まで案内してくれるシステムを開発中である。ここに、ネットカムシステムズの顔認識や人数カウント機能、プライバシー管理を組み合わせる。すると、ショッピングセンターの来店件数を把握できるようになるだけでなく、来店後の行動履歴などがお得意様個人単位で把握できるようになるのだ。

(2)地域包括介護ICTシステム×医療業界

ネットカムシステムズが提供している医療画像処理の技術は、患者の検診結果という個人情報の最たるものを扱うものであるため、ジャパンシステムの得意とするセキュリティー関連の技術と潜在的に親和性が高い。また、ネットカムシステムズが培ってきた医療現場における信頼やノウハウに、ジャパンシステムの顧客基盤である地方公共団体を被せることにより、ICTを活用した社会システム基盤への充実が可能となる。

まとめ

今回のジャパンシステムとネットカムシステムズのケースでは、異なる技術と顧客基盤の組み合わせによって、1件のM&Aにて大きな相乗効果を生み出すことが可能となる。

一方で、このタイプのM&AにおいてはいわゆるPMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)が重要になる。両社の特長、リソースを色濃く残しつつも、現場サイドで技術面での融合、顧客の相互活用、自由な発想の場、といった具体的な体制作りをいかに早急に構築できるかが、今後の成功のカギを握るのだ。

本件においても、PMIプロジェクトチームを編成し、各種整備を始めている。価値創造の具現化へ向けて1つ1つの実績を確実に積み重ねていこうという両社の姿勢が表れている。

写真:永井 智也

永井ナガイ 智也トモヤ

日本M&Aセンター 企業戦略部

岡山大学卒業後、日本M&Aセンター入社。上場企業を中心とし、戦略的な買収や、選択と集中による子会社の売却など、M&Aアドバイザーとして活躍中。

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