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日本におけるサーチファンドの第一人者!伊藤公健さんインタビュー

広報室だより
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近年、中小企業の事業承継問題の解決策のひとつとして、経営者を目指す人材(サーチャー)が自ら事業承継する企業を探し資金をファンドが支援する「サーチファンド」という仕組みへの注目が高まっています。今回は、日本におけるサーチファンドの第一人者で、サーチファンド・ジャパン 代表取締役 伊藤公健さんに、ご自身のサーチャーとしての経験や今後の展望を伺いました。

サーチファンドとの出会いを教えてください。

マッキンゼー、ベインキャピタル(PEファンド)を退職後、中小企業向けのPE投資に取り組もうと構想を練っていました。ですが、個人名で実績があるわけでもない若者が資金を集めるのはとても難しく、悶々としていたときにネットで出会ったのが「サーチファンド」という考え方。どうやって辿り着いたかも覚えていないですが、本当に偶然でした。

2014年当時は、カタカナで検索してもほとんど情報がヒットせず、英語でさえ情報が限られる中で勉強してみると 「中小企業のM&Aをやりたいが資金集めに苦労している今の自分の状況を打破できる仕組み」 であることが見えてきました。そして今取り組めば「日本初」になるということも後押しとなり、具体的な活動を始めました。サーチャーとしてピッチ資料をつくって投資家へのアプローチを行う中で、ヨガスタジオをチェーン展開する中小企業と出会い、4年弱経営に携わりました。

サーチファンド・ジャパン設立の経緯を教えてください。

自らがサーチャーとして活動し経営に携わるうちに、世間でのサーチファンドの認知も徐々に広がり「話を聞きたい」という声をいただくことも増えてきました。

今後、サーチファンドの仕組みをもっと世の中に広めてサーチャーというキャリアを確立させていくためには、 人材ファーストのM&Aであるサーチファンドの要諦を理解し、サーチャーに投資できる投資家を増やさなければいけない。今のサーチファンド・ジャパンのような組織が必要であり、それを作るのは数少ないサーチファンド経験者である自分のミッションだと考え 、一念発起して会社設立の準備を始めました。

その過程で、サーチファンドの社会的意義にご賛同いただいた日本M&Aセンターや日本政策投資銀行などパートナー企業との縁をいただいて、2020年10月にサーチファンド・ジャパンを設立し、現在はサーチャーとともに全国の中小企業を対象とした投資活動を行っています。

サーチファンドの魅力とは。

僕自身はサーチファンドの仕組みのおかげで経営者になる機会を得て、経営者の大変さややりがいを身をもって経験することができました。

今の日本で経営者になるには、組織の中で時間をかけて出世するか、起業するかという非常に限られた道ですよね。ですが、サーチファンドであれば ゼロからイチを生み出す起業家タイプではないけれども、既存事業を成長させる能力に長けた優秀な人材が経営者として飛躍する道も広がります。

30年前は転職も一般的ではありませんでしたし、起業に対するイメージも15年前とは今では大きく変わってきています。同じように「サーチファンドで経営者になる道」も当たり前のキャリアの選択肢として世の中に広めていきたいですね。

サーチャーの応募状況はいかがでしょうか。

経営者候補となるサーチャーの募集には一定の手ごたえを感じています。これまで約300名の応募があり、面接と模擬課題を通過したのが約10名、その中から専任サーチャーとして活動することになったのは約3名です。応募者は30~40代で8割を占め、バッググラウンドはメーカー、商社、コンサルなど様々です。

サーチャーの選考において大事にしているのは「人間力」です。譲渡企業からみると「外様社長」になるわけで、最初から100%歓迎されるわけではなく、社内には複雑な思いを持った人もいるはずです。その中でリーダーとしてやっていくわけですから、 相手の懐に入るコミュニケーション能力は素質として欠かせない ものだと考えています。

今後、どのようにサーチファンドを広めていきたいですか。

オーナー側へ、サーチファンドの仕組みについての理解をもっと促していく必要があると感じています。

オーナーの中には、第三者承継を考えていても、同業他社や隣接業者とのM&Aには抵抗がある場合や、ファンドによる買収ではどんな人がトップになるかわからないことがネックになっている場合もあると思うんです。その点、サーチファンドでは 、次の経営を誰が行うかが明確で、サーチャーは「人生を賭けて継ぐ」という覚悟 を持っています。

この仕組みを後継者不足に悩む中小企業の事業承継にもっと活用できる体制を整えて、優秀な人材を全国の中小企業に送り出すことで、地方創生の新たな風を吹かせるきっかけを作っていきたいですね。

全国対象のサーチファンド形式の投資事業者として国内初成約!サーチファンド・ジャパンが事業承継投資を実行

サーチファンド・ジャパンは、運営するサーチファンド・ジャパン第1号投資事業有限責任組合を通じて、専任サーチャー・大屋貴史氏とともに山梨県甲府市に本社を置くミスターデイク株式会社への事業承継投資を実行しました。2022年1月25日に甲府市内で成約式を実施しました。

左:サーチファンド・ジャパン 専任サーチャー・大屋 貴史氏(甲府市出身) 右:ミスターデイクの親会社・株式会社NEXTAGE GROUP 代表取締役 佐々木 洋寧氏

大屋氏はサーチファンド・ジャパンの一人目の専任サーチャーとして、2021年5月より事業承継を目指した活動を開始。大屋氏は甲府市出身で、地元にUターンして事業を承継し、ミスターデイクの代表取締役として地域性への理解やネットワークも活かした経営を目指します。

なお本件は、全国を対象としたサーチファンド投資事業者による国内初の案件となります。また、山梨中央銀行からの融資を受けることでも実現しており、地域金融機関との連携・協業の新たなモデルケースとなることも目指しています。

第1号案件についての詳細はこちら(プレスリリース)

サーチファンド・ジャパン HP

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M&A マガジン編集部

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