M&Aによる成長戦略は、「会社を買う」ばかりでない

竹内 直樹

株式会社日本M&Aセンター  代表取締役社長 株式会社日本M&Aセンターホールディングス 常務取締役

M&A全般
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「社長、会社を大きく成長するという目的のために、どこと組んだらいいのか ―買収と売却のどちらも視野に入れて、ゼロベースから検討してみませんか」 このような提案を積極的にし始めたのは5年ほど前からです。

「会社を買う話がしたいんだ。売ることなんて考えられない!」 という反応を示す方が最初の頃は多かったと思います。 2016年の日本でのM&A件数は公表ベースで2,652件(執筆当時)。

その3倍はあると言われている未公表の案件を含めると年間約1万件のM&Aが行われていることになります。中堅・中小企業にとってもM&Aは身近なものになってきました。

ただ、まだ大きく誤解されたままの点があります。 それは“M&Aによる成長戦略”=“会社を買うこと”という考え方です。 M&Aは会社の成長や課題解決または世代交代を実現する“手段”であって、目的ではありません。 重要なのは目的を達成することです。手段としてM&Aを選択するときに、売るか買うか片方に決めてしまうのはナンセンスだと思いませんか?

M&Aコンサルタントとして歩んだ経験をもとに、その思いを込めて執筆しました

産業構造の変化についていけるか?

Amazon、メルカリ、ラクスル、Uber… 最近よく耳にしたり、目にしたりする企業ですよね。 彼らの登場によって、様々な業界に大きな変化が生まれています。 共通するのは「ITの活用」です。 大手企業も強化課題としてIT分野を掲げ、積極的なIT投資やベンチャー投資を始めました。それでも、日本は海外に比べて出遅れていると言われています。 では、中堅・中小企業はITの対応が求められる今後にどう対応していけばいいのでしょうか。

これからを勝ち抜ける会社とは?

ITが重要であることは間違いありませんが、それも含めた“多機能化”がこれから成長していける企業の絶対条件です。

では、多機能化とは何か。
1. 商品を創造(製造)して価値を生み出す機能=価値創造
2. 市場に価値を届ける販売やサービス機能=価値提供
3. ビジネスを支える根幹となる機能(人材・物流・金融など)=価値基盤
4. 情報を集積・分析する機能=価値情報 以上4つの機能を備えることです。 多機能化した企業の代表例としてセブン・イレブンがあげられます。 セブンプレミアム、セブン銀行、nanacoカードを思い浮かべていただければ分かりやすいかもしれません。

目的を実現するための“手段”としてのM&A

中堅・中小企業が生き残り、成長するために多機能化する手段としてM&Aを活用するケースが増えてきています。 M&Aは買い手だけでなく売り手にもメリットをもたらします。多機能化という点では売り手のほうが多くのメリットを享受できると言っても過言ではありません。

「買って地区大会で戦うか、売って全国大会に行くか」 M&Aで全国大会への切符を手に入れた実例を覗いてみませんか?

世の中の経営者の多くの方に、この実例をお伝えしたい。

そんな思いを込めて今回『どこと組むかを考える成長戦略型M&A』という本を執筆させていただきました。M&Aコンサルタントの経験が詰まった1冊になったと自負しております。 ぜひお手に取っていただければ幸いです。
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日本M&Aセンターの成長戦略支援サービス
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著者

竹内 直樹

竹内たけうち  直樹なおき

株式会社日本M&Aセンター  代表取締役社長 株式会社日本M&Aセンターホールディングス 常務取締役

1978年生まれ。広島県出身。2007年日本M&Aセンターに入社。主に中堅・中小企業と上場企業に対して買収提案を担う部署の責任者として、上場後のブリッツスケール(爆発的成長)に貢献。譲受企業だけではなく譲渡企業の成長も実現する「成長戦略型M&A」を提唱し、日本経済におけるM&Aの普及・啓発に尽力。2018年から取締役となり、全社の戦略立案と実行を指揮して、連続的な業容拡大を実現。2024年4月より現職。日本M&Aセンターホールディングス取締役も兼務。著書に「どこと組むかを考える成長戦略型M&A」(プレジデント社)がある。

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