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「僕には継げない」親子で歩んだM&Aの道のり

事業承継

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これは、私が出会ったとある親子の話です。 当社が開催したセミナーに50歳代と30歳代の男性が連れ立ってご参加されました。会場の真ん中に座っていた二人は、私の講演をとても熱心に聞いていただいていました。 「社長を引き継ぐ息子の勉強のためにセミナーに来たのかな」とはじめは思っていました。 セミナー後にその親子にお話をお伺いしたところ、思いもしなかった相談を受けました。 父(社長): 「M&Aで自社の売却を考えている。うちの会社のことをきちんと理解・評価してくれて、成長が見込めるお相手を探してほしい。」 お聞きしたところ、会社はきちんと利益が出ており、無借金。息子さんも取締役として在籍しており、事業承継で困っているようには見えません。 父 : 「息子は当社を継がないので、これからの会社を任せられるお相手を見つけたいんです。」 息子さんはずっと黙って話を聞いていらっしゃいました。 M&Aによる譲渡を決断するまでの経緯を教えていただいたのは、それから数カ月後のことです。

親子で出したM&Aという結論、その理由は?

経営者としての父の想い

父である社長は2代目であり、祖父から会社を継いだとき、会社は赤字で借入もありました。 そんな背景から、「自分が引き渡すときには良い経営状態にしたい」と思ってきたそうです。それが、父の原動力でした。 10年以上かけて黒字化し、会社を優良企業に磨き上げました。 当時、息子さんは別の会社に勤めており渡米していましたが、帰国後は自社に入社しました。得意の英語を活かした海外販路の開拓を行い、会社をより成長させたそうです。 父は息子を信頼し、息子もまた父を尊敬する―そんな良好な親子関係で経営していました。「父の後は息子が継ぐ」という共通認識がお互いにあり、2018年を区切りの年として社長交代のシナリオを描いていたそうです。 父と息子、社長と後継ぎ、まさに理想の関係を築いてきたところでした。 しかし・・・

父に応えたかった息子の想い

「やっぱり僕には社長は無理だよ。ごめん、父さん。」 予定していた2018年の社長交代時期を前に、息子さんは涙ながらにこう打ち明けたそうです。 息子さんはプレッシャーに押しつぶされながらも、「自分がこの会社を継ぐ」という思いで父の背中を追い、頑張っていました。 とても優秀で社員想いの息子さんでしたが、オーナー経営者としてやっていけるかどうかは別問題だったようです。 迫りくる2018年を前に、本音を父に話しました。 父も息子の頑張りを見てきたからこそ、その言葉を静かに受け入れ、他の事業承継の道を探し始めました。

親子で取り組むM&A

息子への承継の次に考えたのは、社員への承継でした。 しかし社員は若い人が多く、オーナー経営者の重責を背負える人間は育っていなかったそうです。 親子で協議を重ね「M&Aでの承継も考えてみよう」と、当社セミナーに参加されたとのことでした。 当社でM&Aプロセスを進めているときも、父は息子に意見を求め、息子は父にアドバイスする関係が続いていました。 M&Aでは様々な判断が求められますが、二人で検討し、両者が納得した結論を出していました。 お二人の会社は、当初予定していた社長交代時期である2018年よりも前に、無事M&Aで譲渡されました。 社員の未来を考えた“成長戦略型のM&A”を望む親子の希望にこたえる形で、我々もこれからの会社の成長を重視したお相手を探しました。 成長戦略型のM&Aでは、M&A後も会社の成長が軌道に乗るまでしばらく社長は継続勤務することが多いのですが、今回は「父を早く楽にしてあげたい」という息子さんの強い希望から、社長の継続期間は1年とし、その後は経営から離れたポジションで会社をサポートするという条件をつけました。 現在、父は会社の成長を一緒に考え支援してくれるパートナーができたことで、事業意欲が再燃しているそうです。

M&Aはカスタムメイド

M&Aには「定型」はありません。それぞれの会社に合ったお相手やスキームをカスタマイズして成約に至ります。 だからこそ、知見や経験に裏打ちされたノウハウが必須になってきます。とはいえ、M&Aを何度も経験する経営者の方は多くないのが現実です。是非、M&Aの専門家を上手く活用していただきたいと思います。 この度、10年間のM&A支援の知恵や経験を事例とともにご紹介する書籍『どこと組むかを考える 成長戦略型M&A』を執筆いたしましたので、そちらもぜひ参考にしていただければ幸いです。

書籍『どこと組むかを考える成長戦略型M&A』

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著者

竹内 直樹

竹内たけうち 直樹なおき

日本M&Aセンター 常務取締役 営業本部長

当社内最大件数(年間100件超)を成約させる事業法人部の責任者として5年間牽引し、上場後の当社の業容拡大に大きく貢献。事業法人部は主にマッチングを行う部署であるが、買い手と売り手との双方の成長戦略を描くなかで、譲渡案件のソーシングにも従事。昨今はミッドキャップ案件(売買金額20~100億円程度)を中心に、ソーシングからクローズに至るまでの全てのフェーズにて陣頭指揮をとっている。買収も売却も実行できるミッドキャップ企業をターゲットとした「成長戦略セミナー」を2015年からスタートさせ、2019年10月で同セミナーは10回を数え、累計参加者は3,000名を超える。 著書に『どこと組むかを考える成長戦略型M&A──「売る・買う」の思考からの脱却と「ミニIPO」の実現』がある。

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