コラム

【連載】「経営者と家族のための事業承継」現場でみる最新の考え方と進め方 ~第2回「最適な後継者選びに必要なこと」~

長坂 道広

日本M&Aセンター 事業承継エグゼクティブ・アドバイザー

事業承継
更新日:
理想の買い手企業が見つかります。会社売却先シミュレーションM-Compass。シミュレーションする

⽬次

[表示]

中小企業庁の発表では、2025年までに、平均引退年齢である70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、うち約半数の127万社が後継者未定と言われています(2019年11月中小企業庁「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」より)。 中小企業・小規模事業の経営者の皆様の多くは、ご自身の会社の事業をどのように継承していくか、考えられたことがあるかと思います。

事業承継を失敗しないためには、何をどのような視点で考えればよいか。連載で紹介させていただきます。 第2回のテーマは「最適な後継者選びに必要なこと」です。

後継者選びは3択のみか

後継者の選択肢は、書籍やセミナーでも言われている通り、「同族」、「社員」、「第三者」の3択です。これだけ聞くと、狭い範囲からの選択と思われるかもしれませんが、選択肢を整理します。

まず、後継者を属性から選ぶ観点です。 同族承継は、子供であるから、親族で経営できそうな甥がいるからという選び方で、多くても1~2名の候補から選定することになると思います。 社員承継も、幹部社員で仕事のできる人から選ぶこととなります。通常は多くいることはないので、1名か2名が選択肢ではないでしょうか。

第三者となると、経験がないので当然よくわからないと思います。 同じように、だれか1社(1人)候補がいて、それを選ぶかどうかの選択肢となるのではないでしょうか。

第三者承継は、企業の成長を考えた選択肢だが、顔が見えない

同族も社員承継も相手の顔がわかります。性格や能力も見えます。 しかし第三者は、顔が見えませんので、判断しようがありません。 今のM&Aは、企業の成長(成長戦略)という観点で提携相手を選びます。事業を成長させたい。オーナー経営から組織経営にかえたい。会社をより公的なものにしていきたい。会社成長への現経営者の思い。それをかなえてくれる相手を探すということが優先されています。規模、業種、エリアなどを考え、候補は複数出てくる可能性もあり、相手によって実現できる成長戦略が異なってきます。 例えば、西日本への販売が強い会社と提携したら、自社製品の西日本方面への販売が強化される。自社が東日本への販売が得意だったら、一緒になることで全国販売が可能になる。 製造開発が得意な企業と組んだら、自社製品の製造開発が強化される。相手によって提携の効果が異なってきます。 また、第三者承継は顔が見えないと上述しましたが、現在は想定される候補社案を複数リストアップして、経営者と一緒にディスカッションすることもしています。 現状、日本の事業承継の3分の2は第三者承継になっている事実もありますので、M&Aは絶対に知っておいていただきたい選択肢となります。 子供や社員に承継させるつもりなのでM&Aを実行しないと考えていても、M&Aも知ったうえで、後継者選定を判断してほしいと思います。 また、M&Aを考えたけど、よくわからない、抵抗がある方も多いと思います。その場合、M&Aの候補社案をみながらディスカッションしていき、判断のために理解を深めていただくことも可能です。 このように考えると、選択肢は3択というより、選択肢は5択、10択であるともいうこともできると思います。 今回は4つの視点のなかの「後継者選定」のお話をいたしましたが、同族承継の株価とM&Aの株価では数倍異なるので、専門家に試算してもらったうえで承継方法を判断しないといけません。株価については、次回詳しく解説します。

【連載】「経営者と家族のための事業承継」現場でみる最新の考え方と進め方  ~第1回 いい事業承継とは?~

事業承継・M&Aのご相談はこちら

著者

長坂 道広

長坂ながさか 道広みちひろ

日本M&Aセンター 事業承継エグゼクティブ・アドバイザー

創業期の日本M&Aセンターに入社。未上場企業のM&Aという日本で未開拓だった市場で25年間M&A仲介に携わる。 日本M&Aセンターの上場も経験するが、M&Aだけではなく、関係者が喜べるあらゆる承継手法を提供できるよう、2016年日本M&Aセンターと青山財産ネットワークスの協力により「株式会社事業承継ナビゲーター(現 株式会社ネクストナビ)」を設立。取締役就任。

この記事に関連するタグ

「家族・事業承継・後継者・第三者承継・経営者・成長戦略・金融機関・親族内承継・With コロナ」に関連するコラム

【連載】「経営者と家族のための事業承継」現場でみる最新の考え方と進め方 ~第3回「後継者について知ってほしいこと」~

事業承継
【連載】「経営者と家族のための事業承継」現場でみる最新の考え方と進め方 ~第3回「後継者について知ってほしいこと」~

中小企業庁の発表では、2025年までに、平均引退年齢である70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、うち約半数の127万社が後継者未定と言われています(2019年11月中小企業庁「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」より)。中小企業・小規模事業の経営者の皆様の多くは、ご自身の会社の事業をどのように継承していくか、考えられたことがあるかと思います

【連載】「経営者と家族のための事業承継」現場でみる最新の考え方と進め方  ~第1回 いい事業承継とは?~

事業承継
【連載】「経営者と家族のための事業承継」現場でみる最新の考え方と進め方  ~第1回 いい事業承継とは?~

中小企業庁の発表では、2025年までに、平均引退年齢である70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、うち約半数の127万社が後継者未定と言われています(2019年11月中小企業庁「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」より)。経営者の皆様の多くは、ご自身の会社の事業をどのように継承していくか、考えられたことがあるかと思いますが、その参考にしていた

未上場会社の値段はどうやって決まる?「会社の株価や税金」を解説

M&A実務
未上場会社の値段はどうやって決まる?「会社の株価や税金」を解説

中小企業庁の発表では、2025年までに、平均引退年齢である70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、うち約半数の127万社が後継者未定と言われています(2019年11月中小企業庁「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」より)。中小企業・小規模事業の経営者の皆様の多くは、ご自身の会社の事業をどのように継承していくか、考えられたことがあるかと思います

事業承継をはじめるとき、何から考えたらいいの?

事業承継
事業承継をはじめるとき、何から考えたらいいの?

経営者を引退するとき、事業承継は一族全員の問題になります会社の将来を真剣に考える中で事業承継を考えている経営者の方がまず行うべきことは「将来についてできるだけ早く家族と話し合う」ことです。事業承継とは事業承継ガイドこれは幹部社員や顧問の弁護士、公認会計士・税理士、関わりのある金融機関などよりも優先すべきことだと私は思います。というのも、驚くべきことに、そもそも、子どもが事業を継ぎたいのか、継ぎたく

事業承継は会社にとって第二の創業

事業承継
事業承継は会社にとって第二の創業

中小企業の経営者の多くは、自身が引退した後の会社をどうするか答えがないまま、経営を続けてこられたのではないでしょうか。特に、自身も健康で経営も順調であればなおさら、会社の後継者問題に向き合う機会は少ないといえるでしょう。真剣に考えるタイミングを逃しがちになります。事業承継は後継者の人生にかかわる重要な事ですが、だからこそ後継者をはじめとしたご家族と十分なコミュニケーションがとれていない場合がほとん

「僕には継げない」親子で歩んだM&Aの道のり

事業承継
「僕には継げない」親子で歩んだM&Aの道のり

これは、私が出会ったとある親子の話です。当社が開催したセミナーに50歳代と30歳代の男性が連れ立ってご参加されました。会場の真ん中に座っていた二人は、私の講演をとても熱心に聞いていただいていました。「社長を引き継ぐ息子の勉強のためにセミナーに来たのかな」とはじめは思っていました。セミナー後にその親子にお話をお伺いしたところ、思いもしなかった相談を受けました。父(社長):「M&Aで自社の売却を考えて

「家族・事業承継・後継者・第三者承継・経営者・成長戦略・金融機関・親族内承継・With コロナ」に関連するM&Aニュース

アダストリア、TODAY'S SPECIAL事業及び GEOROGE'S事業を吸収分割により承継する会社の株式取得(子会社化)へ

株式会社アダストリア(2685)は、2024年4月17日開催の取締役会において、株式会社ウェルカム(東京都目黒区)が運営するTODAY'SSPECIAL事業及びGEOROGE'S事業を、吸収分割により承継する会社(以下「対象会社」)の全株式を取得し、子会社化することについて決議した。なお、本件は、ウェルカムの100%子会社である株式会社トゥデイズスペシャル(東京都目黒区)に対して、吸収分割の方法に

日本郵政、主要子会社の不動産管理等に関する業務を日本郵政建築に承継へ

日本郵政株式会社(6178)は、2024年2月26日開催の取締役会において、2024年7月1日を効力発生日(予定)として、会社分割の方法により、子会社である日本郵便株式会社、株式会社ゆうちょ銀行及び株式会社かんぽ生命保険(以下、合わせて「主要子会社」)等に対して行う不動産の管理等に関する業務を、2024年4月1日に設立予定の100%子会社(以下「当該子会社」)へ承継させることを決定した。【子会社の

イトーヨーカ堂、北海道・東北・信越エリアの一部店舗の事業承継等を発表

株式会社イトーヨーカ堂(東京都千代田区)は、北海道・東北・信越エリアの一部店舗について、株式会社ヨークベニマル(福島県郡山市)、株式会社ダイイチ(北海道帯広市)及び食品スーパーロピアを運営する株式会社OICグループ(神奈川県川崎市)と事業承継等に関する契約を締結した。【本件の目的】2023年3月9日に株式会社セブン&アイ・ホールディングスが公表した「中期経営計画のアップデートならびにグループ戦略再

M&Aで失敗したくないなら、まずは日本M&Aセンターへ無料相談

コラム内検索

人気コラム

注目のタグ

最新のM&Aニュース