会長の急逝で、ある日突然の事業承継。「世界の山ちゃん」を率いる山本久美氏が語る、伝統を守るための変化

登壇:株式会社エスワイフード(世界の山ちゃん) 代表取締役 山本 久美 氏
開催:変化する時代に挑む。経営みらい設計勉強会 2026/成長戦略セミナー

会長の急逝で、ある日突然の事業承継。「世界の山ちゃん」を率いる山本久美氏が語る、伝統を守るための変化
登壇者プロフィール

山本 久美氏(株式会社エスワイフード「世界の山ちゃん」を展開)
夫である会長の急逝を受け、事業承継の準備がないまま代表取締役に就任。以来、社是「立派な変人たれ」を掲げ、既存店の収益基盤強化と新業態への挑戦を両立させながら経営を担う。現在は社長を任命し、二人三脚で経営にあたる。

夫である会長の急逝により、ある日突然、経営者となった山本久美氏。「世界の山ちゃん」を展開する株式会社エスワイフードを率いることになった当初は、経営の知識も心構えもないまま、ただ「やると決めた以上は100%でやる」という覚悟だけを頼りに歩みを進めてきました。会長の時代から受け継いだ良さを残しながら、社是「立派な変人たれ」を掲げて新しい挑戦を重ねてきた山本氏に、事業承継後の日々と、伝統を守るために変わり続けることの意味を語っていただきました。

「晴天の霹靂」から始まった事業承継

私にとって事業承継は、何年も前から準備していたものではありませんでした。夫である会長が急逝し、ある日突然、自分が会社を率いる立場になったのです。本当に「晴天の霹靂」という言葉がぴったりでした。経営者になろうと思っていたわけではありませんし、自分に何ができるのかも分かりませんでした。

それでも、やると決めた以上は中途半端にはできません。私は昔から「やるならやる、やらないならやらない」という考え方でした。どうせ引き受けるなら100%でやろう。そう腹をくくりました。

分からないことはたくさんありました。だからこそ、会議や社内イベントにはできるだけ参加しましたし、分からないことは誰にでも聞きました。とにかく自分にできることを一つずつやっていく。それしかありませんでした。当初は絶対に会社を休まないと決め、会社に足を運び続けました。

ただ、経営だけに集中できるわけではありません。家庭もあります。振り返ると、事業承継後に学んだ一番大きなことは「全部を自分でやろうとしないこと」だったかもしれません。任せられることは任せる。できないことは潔く諦める。そうしなければ会社も家庭も守れないと気付いたのです。

まず会社の足元を固める ― 地道な見直しと組織づくり

代表になって最初に考えたのは、「まず会社の足元を固めなければいけない」ということでした。新しいことを始める前に、既存店がしっかり利益を出せる状態をつくる。それが最優先でした。

そこで始めたのが徹底した見直しです。水道光熱費を減らす。食品ロスをなくす。広告費や交際費を見直す。派手な改革ではありません。しかし、そうした地道な積み重ねが会社を強くすると考えました。同時に、本部機能の強化にも取り組みました。誰が何の責任を持っているのかを明確にし、組織を作り直しました。社員には、それぞれの分野で専門性を持ってほしいとも伝えました。組織で成果を出せる会社を目指したのです。

社是「立派な変人たれ」に込めた思い

そして何より力を入れたのが理念です。会長の時代から引き継いだ良さを残しながら、これからの時代に合った方向性を示す必要がありました。そこで掲げたのが「立派な変人たれ」という社是です。変人という言葉には、「変化すること」・「ユニークで面白いこと」という意味を込めています。人として成長すること。明るく元気であること。変化を恐れないこと。これらを全社員で共有したいと思いました。

過去ではなく、自分たちで考え、決断する

事業承継から数年が経った頃、私は次の課題に向き合うようになりました。それは会長の時代に培われた良い物は残し、今やるべきことは今までと一緒でいいのか見直しをすることです。もちろん会長は偉大な存在です。しかし、何かあるたびに「会長ならどうしただろう」と過去ばかり見ていては、新しい未来は創れません。私は社員にもよく話しています。会長の考えを探すのではなく、自分たちで考えよう。自分たちで決断しようと。

会長の考えを探すのではなく、自分たちで考えよう。
自分たちで決断しようと。

― 山本 久美

伝統を守るために、変わり続ける

そのために、さまざまな新しい挑戦を始めました。若者向けの店舗づくり。デザート商品の強化。キッズルームの設置。新業態への挑戦。また、以前なら考えられなかったことにも取り組みました。キッチンカーやチーズメニューの解禁、冷凍手羽先です。当然、反対意見もありました。しかし私は、伝統を守ることと、変化しないことは違うと思っています。変化しなければ、時代から取り残される。時代から取り残されれば、伝統そのものがなくなってしまう。だからこそ、伝統を守るために変わり続ける必要があるのです。

また、M&Aについても将来の選択肢の一つだと思っています。ただし、どんな相手でもいいわけではありません。ブランドの理念を守れること。お客様を大切にできること。従業員の幸せを守れること。その前提があって初めて意味のあるM&Aになると考えています。

伝統を守ることと、変化しないことは違います。
伝統を守るために、変わり続ける必要があるのです。

― 山本 久美

挑戦と柔軟さを両輪に ― 小さな変化の積み重ねが未来をつくる

現在は社長を任命し、二人三脚で経営を行っています。外販の強化や社員教育に力を入れ、新しい領域にも挑戦しています。会社を成長させるには、新しい挑戦も欠かせません。一方で、コロナ禍を経験して、新規事業にはリスクもあることを学びました。だからこそ、挑戦と柔軟さの両方が必要だと考えています。

最後にお伝えしたいのは、「小さな変化を積み重ねることの大切さ」です。企業は一度の大改革で変わるのではありません。毎日の改善。小さな挑戦。小さな進化。その積み重ねが未来をつくります。伝統を守りながら変わり続ける。私はこれからも、その挑戦を続けていきたいと思っています。

開催セミナー概要
セミナー名
変化する時代に挑む。経営みらい設計勉強会 2026/成長戦略セミナー
テーマ
伝統を守りながら変わり続けることの重要性
登壇者
株式会社エスワイフード(世界の山ちゃん) 代表取締役 山本 久美 氏

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