「M&Aは身売りではない」。年間300本のテレビ取材を受ける名物社長が明かす、従業員を守る会社売却の方法

登壇:秋葉 弘道 氏(株式会社アキダイ 代表取締役)
開催:事業承継セミナー 日本創生2025 in 大分

「M&Aは身売りではない」。年間300本のテレビ取材を受ける名物社長が明かす、従業員を守る会社売却の方法
登壇者プロフィール

秋葉 弘道氏(株式会社アキダイ 代表取締役)
23歳で青果店を開業し、4回の倒産危機を乗り越えて食品スーパー「アキダイ」を育て上げる。年間約300本のテレビ取材を受ける名物社長。従業員を「アキダイファミリー」と呼び、食品スーパー「ロピア」を展開するグループへの譲渡後も代表として陣頭指揮を執る。

※本記事は事業承継セミナー2025 in 大分での講演・採録・再構成したものです。

23歳で起業し、4回の倒産危機。家賃が払えず自分の車を売り、約2年間は自らの給与を取らなかった——。そんな苦難を従業員とともに乗り越えてきた秋葉弘道社長は、なぜ会社の譲渡を決断したのか。「従業員を守る会社売却」の考え方と、失敗しないM&Aの要諦を、飾らない言葉で語っていただきました。

4回の倒産危機。「もう1年だけ」の積み重ねが今をつくった

23歳で起業し、4回の倒産の危機を乗り越えてここまでやってきました。「青果業界の天才」と呼ばれたこともありますが、31.5坪で36万5千円だった家賃を、1日8万円の売上では支払えない時期もありました。

お店を辞めようと思ったこともあります。それでも、応援してくれた家族や、閉めた場合の負債を考え、「もう1年は頑張ろう」と続けました。後悔のないように続けた結果、地元の方が来店してくださるようになり、気づけばここまで続けてこられました。

経営が苦しくなったときには自分の車を売って会社を存続させました。働いても働いても苦しい日々が続き、家に帰るのが辛いときは、双子の娘の写真を見ながら頑張りました。自分は約2年間給与を取らない状況で、社員に給与の減額を伝えたこともあります。そのとき従業員から返ってきたのは「あきさんだけに苦しい思いをさせてごめんなさい」という言葉でした。従業員の大切さに気づいた瞬間です。以来、従業員は「アキダイファミリー」として、苦しい時期も共に乗り越えてきました。

娘のトランペットで泣いた日。家族と従業員への想い

23歳の開業以来、友人からの誘いは断り続けて働いてきました。家族との旅行はごく稀に1泊2日だけ。2人の娘とディズニーランドに行ったときも、パレード中に仕事をしていて、娘から悲しい顔で「一緒に見たかった」と言われたのは、いまも後悔している出来事です。

そんな中である日、娘に発表会に誘われ、多忙な中を渋々見に行きました。子どものトランペットの発表を見て、泣きました。それをきっかけに家族の大切さに気づき、従業員にも「本当に家族を大事にしなよ」と心から言えるようになりました。いまは1年に2回、全従業員と話をするようにしています。

「秋葉さんがいなくなったら会社はどうなるんですか」

――M&Aを考え始めたきっかけは?

いまの子たちは常に転職を考えています。そんな中、ある日従業員から「秋葉さんがいなくなったら会社はどうなるんですか」と聞かれました。いまでも年間350日くらい働いていますが、45歳のときに同級生の闘病生活を目にして、「もし自分が1か月でもいなくなったら、この会社は続けられず、従業員は路頭に迷ってしまう」と痛感しました。自分がいなくなっても続けていける会社にするべきだ——そう思い、M&Aを考え始めました。

最初に従業員へM&Aを伝えたときは苦い顔をされました。そこでこう伝えたんです。「草野球では俺たちは凄いプレーヤーだったが、大きい企業と一緒になってプロ野球チームで頑張り、いつかはメジャーリーガーになろうよ」と。

――お相手はどのように選びましたか?

M&Aにもいろいろな種類がありますが、私が重要視したのは「自社の夢が開けるか」です。様々な企業の代表とお話しし、様々な金額を提示されましたが、金額よりも、M&A後にアキダイファミリー(従業員)がその企業でずっと働けるか、アキダイがその企業に入ったら何ができるかを一番に考えました。

そんな中で出会ったのがロピアです。ロピアは当時、譲受したスーパーバリューが赤字の状況でした。そこで、アキダイの得意な青果を取り入れてスーパーバリューを黒字化する、というM&Aシナジーを考えました。大きい企業と一緒になることで自社の得意分野を持ち込み、グループの中での自社の位置づけを作ったのです。

M&Aは身売りではなく、「後世に企業を残す、後世に自身の企業の良い所を残す」ことだと思います。

― 秋葉 弘道

失敗しないM&Aの方法——M&Aは結婚と似ている

M&Aから2年以上が経ちましたが、成長は著しく伸びています。若い子たちは驚くほど成長し、それがベテラン勢にも良い影響を与え、全従業員が成長しています。商人としての人生を歩む中で、たくさんの従業員が幸せになっていく姿は本当に嬉しく、幸せな人生を歩めていると思っています。

一方で、M&Aはひとつ間違えると良くない結果になることもあります。私の周りにもM&Aに失敗してしまった方が数名います。だからこそ、自分の会社をM&Aした後には、リーダーシップを取る人間が必要ですし、自分の意見を先方にきちんと伝える必要があります。M&Aは結婚と似ています。自分の意見を相手に伝えながら、関係を築いていくことが大切です。

金額ではなく、「従業員がずっと働けるか」「この会社で自社の夢が開けるか」。それが従業員を守る会社売却の判断軸です。

― 秋葉 弘道
開催セミナー概要
セミナー名
事業承継セミナー 日本創生2025
テーマ
年間300本のテレビ取材を受ける食品スーパーの名物社長が明かす 従業員を守る会社売却の方法
登壇者
株式会社アキダイ 代表取締役 秋葉 弘道 氏
開催日
2025年9月9日(火)
会場
大分会場

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