『ハゲタカ』の作家が語る、日本企業の今後の展望と中小企業のM&A戦略——「常識を疑う」という武器

登壇:真山 仁 氏(小説家)
開催:事業承継セミナー 日本創生2025 in 東京

『ハゲタカ』の作家が語る、日本企業の今後の展望と中小企業のM&A戦略——「常識を疑う」という武器
登壇者プロフィール

真山 仁 氏(小説家)
新聞記者を経て小説家に。デビュー作『ハゲタカ』は2007年にNHKでドラマ化、11年後にはテレビ朝日でもドラマ化された。経済小説の旗手として知られる一方、被災地を描く作品など幅広く執筆。テレビ東京の経済番組キャスターも務めた。『ハゲタカ』シリーズ6作目の刊行を控える。

※本記事は事業承継セミナー2025 in 東京での講演・採録・再構成したものです。

なぜ小説家がM&Aを語るのか——。『ハゲタカ』の作家・真山仁氏は「経済の本質には欲望がある。お金や欲望が理解できなければ経済も理解できない」と語ります。世界の中の日本を見つめる「ハゲタカ目線」で、カオス化する国際情勢、過熱する株式市場、そして中小企業がM&Aで失敗しないための「自己判断」の重要性を説きました。

なぜ「経済嫌い」の記者が『ハゲタカ』を書いたのか

熱量の高い三宅さん(日本M&AセンターHD社長)の講話のあとで、少し緊張しております。なぜ小説家がこの場にいるのか、不思議に思われる方もいらっしゃるでしょう。デビュー作『ハゲタカ』は経済小説として扱われることが多いのですが、実は私は新聞記者時代、主に警察や検察の取材をしていて、経済は全くの素人でした。ハッキリ言って、数字で世の中を見るのが嫌いなのです。

ではなぜ書いたのか。ひとつは、嫌いだからこそ距離を置いて客観的になれるからです。もうひとつは、オファーをいただいた2003年が、お金の動きを理解しないと政治や国際関係が見えなくなり始めた時期だったからです。経済の本質には欲望が根底にあります。どう綺麗事を言おうとも、「儲けたい」「幸せになりたい」「豊かになりたい」という気持ちは誰もが持っていて、良い意味では原動力、悪い意味では揉める最大の理由になります。これはM&Aや企業経営でも同様です。

デビュー作がドラマ化されて注目されたのはありがたいことですが、デビュー作に囚われることもあります。新作の帯に必ず「ハゲタカの真山仁」と書かれる。被災地の小説でも「ハゲタカの真山仁が書く震災文学」となるのは、やめてほしいのですが(笑)。それでも来年2月には『ハゲタカ』シリーズの6作目が8年ぶりに出ます。今度は台湾の世界最強の半導体メーカーを買いに行く物語で、連載はとても楽しく書きました。

お金や欲望が理解できなければ、経済も理解できない。人が欲望に動かされることは、小説にとって非常に重要な要素です。

― 真山 仁

「ハゲタカ目線」——世界の中の日本を見る

講演のテーマに「ハゲタカ目線で見る」という形容詞がつくことがあります。これは私の小説が日本を舞台にしながら、常に「世界の中の日本」という視点で見ているからです。いま日本で起きていること——円安や高市ブームなどを世界がどう見ているのか。逆に、日本が気にしていなくても日本に大きく影響を与えることは何か。それが「ハゲタカ目線」です。

日本は潮流やトレンドに非常に敏感ですが、反対の視点を持つことが大切です。例えば、いま東京株式市場は5万円を超える盛り上がりを見せていますが、私は「これはバブルだ」と言っています。株価が上がっているのは外国人投資家の思惑の影響が大きいからであり、日本の企業が世界で期待されているわけではない。高市政権への期待の反映とも思えません。アナリストや専門家の発言に従うだけでなく、彼らが言わないことを想像して心の片隅に置いておかないと、企業や人生の選択肢がイエスかノーしか選べなくなります。

世界はいま相当カオスな状態です。5年前には考えられなかった人物が各国のトップに立っている。社会に閉塞感が溜まり、「最後の一手」を求めている表れではないかと危機感を覚えています。中東情勢も同様です。もしイランとイスラエルが戦争を始めれば、ホルムズ海峡が封鎖され、石油の90%を中東からの輸入に頼る日本の経済は深刻な影響を受けます。リスクを考慮せず楽観的に構えているのは危険です。

仲介業者任せにしない。M&Aは「自己判断」で

最後にM&Aについてお話しします。M&Aを進める際に、仲介業者が全てをやってくれると思い込むのはやめましょう。仲介業者は重要な役割を果たしますが、最終的な判断は自分自身で行うべきです。特に売り手側は、自分の会社を手放すという重大な決断をするわけですから、慎重に考えることが求められます。

個人保証の問題も重要です。経営がうまくいかなくなったときに個人保証を求められることが多く、慎重な対応が必要です。社長として、自分の会社と個人の財産を明確に分けることを意識するだけで、トラブルを避けることができます。

M&Aに関しては、常に外部からの視点を持つことが大切です。経済や政治の動向を冷静に分析し、常識を疑う姿勢が必要です。私が小説を書くときのテーマは「常識を疑う」。ある社長の常識が、世の中にとっては非常識な場合があります。特に日本の市場は独特で、思い込みが強い傾向があります。これからの時代、選択肢は複数あることを理解し、自分自身で考える力を養うことが重要です。

選択肢は一つではなく、二つも三つもある。自分自身で考える力を養ってください。

― 真山 仁
開催セミナー概要
セミナー名
事業承継セミナー 日本創生2025 in 東京
テーマ
日本企業の今後の展望と中小企業のM&A戦略
登壇者
小説家 真山 仁 氏
開催日
2025年11月13日(木)
会場
東京会場

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