コラム

シナジーとは?企業経営におけるシナジー効果、企業事例を解説

経営・ビジネス

⽬次

[表示]

シナジー効果イメージ
企業が発展していくプロセスが、もしも積み上げ式のいわゆる「足し算方式」しかなければ、歴史の浅いスタートアップ企業は社歴の長い企業や大資本を持った企業には永久に追いつけません。
GoogleやAmazonなどが創業わずか20年程度で世界を代表する大企業となれたのは、この「足し算方式」の経営でなく、「掛け算方式」の経営を効率よく高回転で行ったからです。
企業経営において、この「掛け算方式」を生み出す核となるエンジンが「シナジー」です。本記事では、シナジーとはどのようなもので、どうしたらシナジーを生み出せるのかを解説し、具体的な企業実例について紹介していきます。

企業経営におけるシナジー効果とは?

シナジー(synergy)とは、「共同作用」「相乗作用」を意味し、ビジネスにおいては、複数の事業が連携することによって、単純な足し算ではない「新しい価値」が生まれることを指します。
シナジー効果は企業活動の様々なシーンで見られますが、特にその効果を発揮するといわれているのがM&Aです。M&Aにおけるシナジー効果の一例として、楽天のM&Aを紹介します。
楽天は、2003年に「旅の窓口」をM&Aによって買収し、楽天トラベルとして自社の旅行部門と統合しました。これにより、楽天ポイントが使える巨大な旅行サイト(楽天トラベル)が誕生します。この楽天トラベルの誕生により、旅行代金として楽天ポイントが使えるようになった結果、「旅の窓口」単体で営業していたときよりも競争力が上がり、多くの楽天会員が楽天トラベルを利用するようになりました。
一方、楽天側も楽天ポイントが旅行に使えるようになったことで、ポイントプログラムの価値自体が上がり、会員数をさらに増やすことに成功します。
この楽天の例のように、単純な足し算ではない新たな価値が生まれることを、企業におけるシナジー効果といいます。

対義語「アナジー効果」について

アナジー(anergy)とは、異物に対する生体防御反応の欠如や免疫力の低下のことです。これが転じ、企業活動においては、事業間に生じる相互マイナス効果をアナジー効果といいます。
アナジー効果とは、別名ディスシナジー(もしくはマイナスシナジー)などとも呼ばれ、事業間での連携によりマイナス効果が生じてしまった結果、発生します。アナジー効果はシナジー効果と同様に、企業活動におけるさまざまなシーンで生じる可能性を持っていますが、最もアナジー効果が起きる可能性が高いのも、シナジー効果と同様M&Aです。
M&Aにおいて、譲渡企業と譲受企業との間で方向性や経営理念、企業体質などが大きく違っていた場合や、統合によって社内の重要人物が離職したり顧客離れが進んでしまったりすることなどが原因となり、アナジー効果が起こってしまうことがあります。これ以外にも、大手企業の傘下に入ってしまったために税の優遇措置を受けられなくなってしまうようなアナジー効果が生じる例も挙げられます。

企業活動でシナジー効果が求められる理由

企業活動を効率よく行うためには、上述のように「足し算式」ではなく「掛け算式」の経営を行わなければなりません。単に積み上げていくだけでは、巨大な資本力を背景にした大企業には永久に追いつけないからです。企業活動でシナジー効果が求められる理由および、そのために実施すべき施策は以下の通りです。

自社の競争力を強化、企業価値向上へ

企業におけるシナジー効果は、企業活動のさまざまな場所で生じる可能性があります。このシナジー効果を生じさせるためには、以下の施策を実現しなければなりません。

知識や技術、顧客の共有
社内における業務上の知識や技術、顧客などの情報を属人性の高い業務フローで行っていると、業務の負担が偏り、いつでも高いレベルで均一的に業務を行えなくなってしまいます。しかし、これらを社内で共有することにより、生産性を高められます。また、顧客の情報を共有することも必要です。顧客に合わせた商品の提案や新たなサービスの提供をするためには、社内で顧客に関する情報を共有しておかなければなりません。
このように、知識や技術・顧客情報を共有することが、自社の競争力を強化します。

事業拡大
事業を拡大することにより、市場のシェアを押さえられます。また、知名度や信用力が高くなるため、金融機関から融資などで資金を調達するためのハードルを下げられます。
新規の顧客との取引や大口先との取引口座開設にも有利です。これらの結果、収益の改善はもちろんのこと、事業規模の拡大にともなうスケールメリットなどの発生を期待できます。
その結果、自社の競争力を強化できます。

情報収集や人材採用にかかる時間の削減
正しい情報の収集と分析は、あらゆる分野において必須です。既存のビジネスを推し進めていく場合も、あるいはまったく新規の分野に参入していく場合でも、どの分野にどのように参入していくのかを検討するためには、正しい情報を収集し、それを正確に分析する力がなければなりません。それを迅速に行える体制を整えることが大切です。
また、人材採用に関しても同様。どの分野のビジネスにおいても、企業が収益を生み出す源泉は、優れた機械や設備・ソフトウェアなどではなく「人」です。優秀な人材を採用できるかどうかで、会社の未来は決定します。
しかし、時間やコストをかけ過ぎてしまっても、思うような効果は生じません。必要なリソースを短時間で見極め、迅速に手配することが人材採用についても大切です。
情報収集や人材採用にかかる時間を削減することにより、自社の競争力を強化できます。

コスト削減
企業を経営していくうえで、ほかの何よりも先に行わなければならないのがコスト削減です。売り上げや収益を伸ばすことは大切ですが、かならずしもすぐに達成できるとは限りません。
一方コスト削減は、細かい場所まで定期的に見直すことで達成可能です。コストを削減することにより収益が上がり、その結果、自社の競争力を強化できます。
シナジー効果は企業活動の至る所で生じる可能性があるため、業務の効率化はもちろんのこと、社員のモチベーションアップや地域社会などへの貢献など、その効果はさまざまな場所へ波及していきます。これらはすべて、最終的には企業価値の向上へとつながっていきます。

M&Aにおけるシナジー効果の種類

企業活動の中で起こるシナジーの多くは、M&Aの現場に凝縮された形で表出します。このM&Aにおけるシナジー効果には、おもに以下の6つがあります。

  • 仕入れのシナジー
  • 製造のシナジー
  • 物流のシナジー
  • 販売のシナジー
  • 事業のシナジー
  • 財務のシナジー

仕入れのシナジー

ある一定の生産設備のもとで、生産量や生産規模を高めていくことにより、単位当たりのコストが低減される現象を「規模の経済」といいます。M&Aによって生まれるシナジーの1つ目は、規模の経済によって起こる仕入れのシナジーです。
同業者同士のM&Aでは単純に売上高が足し算されて増えるため、その分だけ仕入高も増えます。その結果、強化されるのが仕入購買力です。今までよりも多くの製品を仕入れることになるので、仕入れ代金の値引きなどの交渉を行いやすくなります。また、M&Aにより収益シナジーが起これば売り上げはさらに増えるため、それにともない仕入のシナジーはさらに増えていきます。

製造のシナジー

M&Aによって生まれるシナジーの2つ目は、製造のシナジーです。
製造のシナジーとは、製品の製造過程において、その生産方式や使用する資材、原材料・機械などを共有化することにより発生するシナジー効果のことをいいます。
生産方式や使用する資材などを共有化できれば、コストの削減や資材・原材料などのロスを少なくできます。

物流のシナジー

M&Aによって生まれるシナジーの3つ目は、物流のシナジーです。M&Aによる統合の結果、物流シナジーが生まれると、以下のコストを削減できます。

物流費
物流ラインの共通化で達成できるのが、物流費のコスト削減です。物流ラインを共通化すると、配送などの作業を無駄なく合理的に行えるようになるため、トラックなどの車両の保有台数を減らせます。この結果、購入代金や燃料代などの維持コストはもちろんのこと、ドライバーなどの人件費も削減できます。

倉庫費
物流ラインを共通化する過程で、製品の出荷や資材の搬入のために用いる倉庫も共有化できれば、必要な倉庫の数を減らせます。したがって、倉庫の賃借料や設備などの維持費、そして人件費などのコストを削減できます。

ITシステム費
物流を管理するために欠くことのできないものがITシステムです。材料の入荷や製品の出荷などを総合的に管理するITシステムを共通化できれば、ITシステム費のコストを削減できます。

人件費
親会社と繁忙期がずれている場合は、人繰りを共通化させることにより、必要な人件費をコストダウンできます。

販売のシナジー
M&Aによって生まれるシナジーの4つ目は、販売のシナジーです。
楽天トラベルの例のように、楽天トラベルに楽天ポイントが使えるようにすることで競争力を高め、その結果、売り上げが伸びて収益力が高まることを販売のシナジーといいます。なお、譲受企業と譲渡企業の特徴をそれぞれ組み合わせることにより、以下のような販売シナジーを生じさせられます。

「譲受企業の強み」と「譲渡企業の強み」を組み合わせる→さらなる競争力を生み出す
「譲受企業の強み」と「譲渡企業の弱み」を組み合わせる→譲渡企業の補強
「譲受企業の弱み」と「譲渡企業の強み」を組み合わせる→譲受企業の補強

このような販売シナジーに代表される収益シナジーは、M&Aにおけるシナジー効果の花形ともいえるもので、組み合わせ次第では非常に大きな成果を生み出す可能性があります。ただし、成功するかどうかは最終的に顧客次第であり、その成功確率は仕入れのシナジーなどに代表されるコストシナジーのほうが高いといえます。

事業のシナジー

M&Aによって生まれるシナジーの5つ目は、事業のシナジーです。
事業間の資源を共有化し、譲受企業の経営資源やノウハウをM&Aによって別事業に応用(横展開)することにより生み出すのが事業シナジーです。
トレーディングカードを制作販売していたブシロードは、2012年に当時赤字企業だった新日本プロレスを買収しました。ブシロード社の持っていたエンターテイメントのノウハウを新日本プロレスに注入して集客数を大幅に増やしたり、レスラーのトレーディングカードを製作したりすることで黒字化に成功しました。
さらにこの経験を生かし、2019年にはスターダムという女子プロレス団体を買収します。新日本プロレスの運営で得たノウハウをさらにスターダムに注入するとともに、新日本プロレスとスターダムを提携させることにより、シナジー効果を生み出し続けているのです。このような例はほかにも、当時ゲーム会社だったDeNA(ディー・エヌ・エー)が大洋ホエールズを買収し、横浜ベイスターズを黒字化させた事例などが挙げられます。

財務のシナジー

M&Aによって生まれるシナジーの6つ目は、財務のシナジーです。
財務のシナジーとは、財務内容が悪く、資金繰りが厳しい場合や大胆な投資がなかなかできない会社を買収し、そこに大きな資本を投入することにより生まれるシナジー効果のことをいいます。
財務のシナジーを生み出すM&Aには、おもに以下の2つがあります。

救済型(企業再生型)M&A
救済型(企業再生型)M&Aとは、事業の失敗などにより大きな赤字を出してしまった会社を救済し、業績を改善させることを目的としたM&Aのことをいいます。
大きな赤字を出してしまった企業が事業内容を見直し、撤退すべきところは撤退し、場合によっては従業員をリストラするためには、それなりの資金が必要です。したがって、財務内容の良い買い手が手を貸す(資本を投入する)ことにより売り手企業を助け、再生への道筋を立てます。
ちなみに、2016年に大赤字で倒産の危機に瀕していたシャープに対して台湾の鴻海が行ったM&Aなどが、この救済型M&Aです。

資金調達型M&A
資金調達型M&Aとは、おもに成長期の企業などが資金調達の一環として大きな会社の資金を受け入れることを目的としたM&Aのことです。
企業が成長期にあるときは、市場シェアを一刻も早く抑えるために赤字を出してでも前のめりに急拡大しようと試みます。旧ライブドアなどが良い例で、急拡大により赤字だったにもかかわらず上場まで漕ぎつけています。
しかし、旧ライブドアのように上場まで辿りつける例はまれで、多くの場合、金融機関からの資金調達に頼らざるを得ません。ただ、赤字では金融機関からの資金調達が難しいケースが多く、このままでは成功のチャンスを断念せざるを得なくなってしまいます。そこでM&Aによって大手の傘下に入り、資金を調達してもらうことで事業拡大を実現します。

企業がシナジー効果を生み出すための4つの方法

企業活動を行う中で、シナジー効果を生み出すためにはいくつかの方法があります。その中でもとくに効率よくシナジー効果を生み出せる方法として以下の4つを紹介してまいります。

① M&A
② 業務提携
③ 多角化戦略
④ グループ一体経営

①M&A

企業がシナジー効果を生み出すための1つ目の方法は、M&Aです。
シナジー効果を生み出すためには、企業の内・外にあるいくつかの要素を、今とは違う形で組み合わせなければなりません。このような、組織再編を行うのに最も適しているのがM&Aなのです。
M&Aは、事業承継や企業買収の手段として使われることで有名ですが、もともとは企業再編を行うための手法として用いられています。とくに、バブル経済崩壊後の企業の立て直しを行うにあたり、合併や会社分割の際にM&Aを用いたスキームが多くの企業によって行われました。
M&Aによる組織変革や拡大は、バブル経済崩壊時のような特別な場合だけでなく、平時においても多くの企業が事業を成長させる目的で戦略的に取り組んでいます。その中でもM&Aによって成長を拡大させている企業の事例として、ソフトバンクグループのM&A戦略について見てみましょう。

【企業事例】ソフトバンクグループのM&A戦略
ソフトバンクグループは、日本最大のポータルサイトを運営するヤフー株式会社や、携帯電話・インターネット回線などの通信インフラ事業を行っているソフトバンク株式会社などを傘下に置く巨大IT企業グループです。その急激な成長を推し進めた最大の推進力は、M&Aです。
ソフトバンクグループの歴史はM&Aの歴史であり、戦略的なM&Aを行うことで、創業から四半世紀足らずで1兆円を超える売り上げ規模を誇る巨大グループとなりました。
1995年から2015年までの20年間の売上高推移を見てみると、売り上げが急激に伸びるきっかけとなった直前には、かならず大きなM&Aを行っています。
ソフトバンクグループがこれまでに行ったM&Aのうち、主要なものを時系列順に並べてみると以下のようになります。

1996 米国Yahoo Inc.との共同出資で日本法人ヤフー株式会社を設立
2004 日本テレコム株式会社の株式を取得して子会社化、固定通信事業に参入
2005 福岡ダイエーホークスの株式を取得して子会社化、球団オーナー企業へ
2006 ボーダフォン株式会社の株式を取得して子会社化、移動通信事業へ参入
2013 米国スプリントの子会社化が完了、日米最大級の顧客基盤を抱える通信事業者へ
2015 ソフトバンクモバイルがソフトバンクBB,ソフトバンクテレコム,ワイモバイルを吸収合併し統合、ソフトバンク株式会社に
2016 半導体テクノロジーにおけるリーダーである英国ARM Holdings plcを子会社化
2019 ヤフーによるZOZOの子会社化
2019 ZホールディングスによるLINEの子会社化(2021年3月 経営統合完了)

ソフトバンクグループが飛躍するきっかけとなったのは、ヤフーの日本法人設立です。これは、米国Yahoo Inc.との共同出資によって設立されました。その後2004年の日本テレコム買収が起爆剤となり、売り上げが急上昇します。ソフトバンクグループは、これまではヤフーBBを通じてADSLやIP電話サービスを個人向けに提供していましたが、日本テレコムを買収して固定通信事業を開始し、法人向けのサービスを展開していきます。
次いでボーダフォンを買収し、「移動体通信事業」を傘下に入れ、これによりインターネットを用いたあらゆる通信サービスを提供するためのインフラを手に入れることになりました。さらに2013年には、米国の携帯電話事業者Sprint Nextelを買収し、米国での通信サービス事業も展開しています。
ソフトバンクグループは、ヤフージャパンの設立も含め、事業を急拡大させる成長戦略として実に見事にM&Aを活用しています。

②業務提携

企業がシナジー効果を生み出すための2つ目の方法が、業務提携です。業務提携とは、提携相手の資源を活用して事業の成長を図る施策のことをいいます。業務提携にはいくつかの方法がありますが、その中でもシナジー効果がとくに生まれやすい提携が以下の2つです。

販売提携
販売提携とは、製品の販売やサービスの提供を、提携先に委託する業務提携のことをいいます。ベンチャー企業や中小企業のように自社の販売サービス網が整備されていない企業にとっては、自社製品を販売するための方法として販売提携は有効な手段です。
なお、販売提携には、提携先がメーカーから商品を仕入れて顧客に販売する「販売店契約」と、提携先がメーカーの代理人として商品を顧客に販売する「代理店契約」などがあります。

技術提携
技術提携とは、技術や特許を持っている会社が他社に対してそれらを開放し、技術開発や製造・販売などに生かすための業務提携のことをいいます。通常は、両社の間でライセンス契約や共同開発契約などを結んだうえで、技術提携が行われます。ここではその代表例として、トヨタ自動車とスズキ自動車の業務提携を見てみましょう。

【企業事例】トヨタ自動車とスズキの業務提携
ハイブリッドカーや電動自動車などの電動化技術やその周辺分野の特許を多数持っているトヨタ自動車は、コンパクトカーを作る技術を持っていませんでした。一方スズキ自動車は、欧州や米国を中心に電動化へ舵を切った自動車を製造するための電動化技術を持っていません。
そこで2016年10月より両社による業務提携に向けた話し合いが行われた結果、2019年8月28日、トヨタ自動車とスズキ自動車は自動運転分野を含めた新たな分野での協力を進めていくために、資本提携に関する合意書を締結しました。
その結果、トヨタ自動車側からはハイブリッド技術が供給されることになり、スズキ自動車側からは、インドやアフリカ市場においてOEM供給されることになりました。
また、自動運転や電気自動車の新技術開発には莫大なコストがかかるため、今回の業務提携により開発コストの軽減にもつなげられます。

③多角化戦略

企業がシナジー効果を生み出すための3つ目の方法が、多角化戦略です。
多角化戦略とは、既存の製品や現在自社製品を展開しているマーケットとは別の場所で、新たに事業展開をしていく戦略のことをいいます。新分野へ進出するのはリスクが高いものの、かといって既存の分野でしか事業を行わなければ、万が一何かあった場合のリスクヘッジにはなりません。多角化戦略は、失敗するリスクはそれなりに高い分だけ、リターンもそれに応じて大きい戦略といえます。
なお、多角化戦略はさらに細かく、いくつかの戦略に分類できます。その中でも、シナジー効果がとくに生まれやすい戦略が以下の4つです。

水平型多角化戦略
水平型多角化戦略とは、現在行っている分野と同じ分野で事業を横展開して広げていく多角化戦略のことをいいます。たとえば自動車メーカーであればトラックを製造したり、電話機メーカーがFAX付き複合機を製造したりする例が挙げられます。水平型多角化戦略は、既存の技術や流通経路を応用して事業を展開していくため、リスクが少なくシナジー効果が期待できる戦略です。

垂直型多角化戦略
これまでの市場と同じ(もしくは似た)市場で、これまでとは違う新製品を投入する多角化戦略が、垂直型多角化戦略です。たとえば、ボールペンのメーカーが高級万年筆を製造したり、電子レンジのメーカーが電子レンジ用の台を製造したりする例などが挙げられます。
また、これ以外にも自社で原材料を製造し、その原材料を使って製品を製造する場合なども垂直型多角化戦略の例として挙げられます。

集中型多角化戦略
既存の製品と生産技術やノウハウなどの関連性が高い製品を別の市場へ投入する多角化戦略が、集中型多角化戦略です。たとえば、デジタルカメラに用いるセンサーなどの技術を医療用機器に応用して製造したり、日本酒メーカーが消毒用アルコールを生産したりする例などが挙げられます。
カメラやフィルムの製造で一世を風靡した富士フイルムが、その技術を転用し、化粧品や医療機器の製造を行う例などは、この集中型多角化戦略の典型です。

集成型(コングロマリット型)多角化戦略
既存の製品やノウハウ、マーケット、顧客などと一切関係のない新たな市場に新しい製品を投入する多角化戦略が、集成型(コングロマリット型)多角化戦略です。たとえば、金融業者が農業をはじめたり、小売業者が製造業をはじめたりする例などが挙げられます。集成型多角化戦略は、既存のビジネスモデルとの接点が何もないためハイリスクで、かつ選ぶ業種によっては莫大な投資が必要な場合があります。リスクの高さに比べリターンが低い場合もあるため、資本力のない中小零細企業には不向きの経営戦略でしょう。

【企業事例】私鉄各社による多角化戦略
多角化戦略はさまざまな業種によって行われています。ここでは、企業事例として私鉄各社によって行われている多角化戦略について解説します。
関西の私鉄を代表する阪急電鉄は、通勤・通学で利用する乗客数の多さが特徴です。そのうえ、定期券のように利用料金の先払いサービスを利用する乗客が多いため、運賃の収益やキャッシュフローが他業種と比べ安定しています。この特徴を生かすための多角化戦略が、自社路線沿線でのサービス展開です。

たとえば阪急電鉄の場合は、ターミナル駅では阪急百貨店を開業し、沿線の住宅開発を阪急阪神不動産が行い、郊外では宝塚劇場や阪急ホテルなどの娯楽施設を展開しています。単なる移動手段に過ぎない鉄道の沿線にこのような事業を展開することにより、移動のための目的が生まれ、その結果、鉄道の利用客も増えるシナジー効果を生んでいます。
また西武鉄道の場合も同様です。西武百貨店をはじめ、八王子ニュータウンや木更津ベイサイドヒルの開発やハワイでの不動産事業、西部球場、赤坂プリンスホテルなどのさまざまな事業を自社路線の沿線に展開しています。

④グループ一体経営

企業がシナジー効果を生み出すための4つ目の方法が、グループ一体経営です。グループ一体経営とは、グループ企業内における業務の一部を共通化することにより、コストの削減や顧客に対するさまざまな商品の提供を行う事業戦略のことをいいます。たとえば金融業界において、銀行を中心にリース会社やクレジットカード会社などを展開し、顧客にさまざまなサービスを展開する例が挙げられます。

【企業事例】LIXILグループによる会計システムの統合
グループ一体経営の例としては、LIXILグループによる会計システムの統合を挙げられます。2001年にトステムとLINAXが統合してできたLIXILグループは、統合後も各社別々の会計システムを利用していました。
しかしこれでは、会計システムの維持費がかさむだけでなく、グループ全体の収益を把握するまでに時間がかかってしまいます。そこで合併によるシナジー効果を生み出すため、2012年7月に子会社105社の会計システムを統合することになります。その結果、会計システムに対するコストダウンはもちろんのこと、繁忙期などの人材ローテーションが可能になり、人材の有効活用と人件費の抑制を達成できるようになりました。

終わりに

企業が目標とする成長を実現するためには、単なる足し算による積み上げ式ではなく、掛け算式に成長していくラインを目指さなければなりません。本記事で紹介した企業事例のように掛け算式以上の指数関数式の成長を遂げたきっかけはM&Aの実行でした。M&Aにはシナジーを生み出すための大きな力があるため、その力を必要なタイミングで上手く使いこなすことが求められます。

M&Aについて詳しく知りたい方は、専任のコンサルタントがお答えします。
お問い合わせはこちらから

著者

M&A マガジン編集部

M&A マガジン編集部

日本M&Aセンター

M&Aマガジンは「M&A・事業承継に関する情報を、正しく・わかりやすく発信するメディア」です。中堅・中小企業経営者の課題に寄り添い、価値あるコンテンツをお届けしていきます。

この記事に関連するタグ

「シナジー効果・シナジー」に関連するコラム

同業・異業種のM&Aで成長スピードを加速 グループ年商150億円を目指す西和物流の挑戦

広報室だより
同業・異業種のM&Aで成長スピードを加速 グループ年商150億円を目指す西和物流の挑戦

M&Aの経験豊富な経営者から経営哲学やM&Aの狙いを聞くインタビューコーナー「巧者に学ぶM&A戦略」が始まりました。初回は奈良県に本社を構える総合物流企業の西和グループです。これまで6度の同業・異業種のM&Aを実行し、グループを拡大させて成長を続けてきました。地元メディアや業界誌で注目企業に選定されるなど地域と業界の発展にも貢献されています。西和グループの中核企業である株式会社西和物流の萩原良介代

事例にみるシナジー創出のポイント

M&A全般
事例にみるシナジー創出のポイント

シナジーは「創出」するものシナジーの実現を考える上でまず認識しなければならないことは、シナジーは買収を行えば自然に湧いて出てくるものではない、ということだ。シナジーは、買収企業が「創出」しなければならない。M&A戦略の策定から、買収価格の決定、買収後の事業計画の策定に至る一連のプロセスは全て買収企業が主導する。買収後は強力なリーダーシップを発揮し、対象会社と二人三脚で事業計画を実現していかなければ

シナジー追求のための PMI取り組みの必要性

PMI
シナジー追求のための PMI取り組みの必要性

シナジーは自然体では得られないM&Aは「企業の成長」という目的を達成する手段だ。オーガニックグロース(自力成長)では成し得ないドラスティックな(レバレッジの利いた)成長を、両社(売り手企業と買い手企業)が実現していくのがM&Aと言える。そういった意味では、両社がM&A後のシナジー効果を得て初めて「M&Aの目的を成就した」と言えるものであって、書類上M&Aが成立したとしても、シナジー効果を実現或いは

シナジー効果とのれん

M&A実務
シナジー効果とのれん

はじめにM&Aによる企業買収を実施することで、既存事業と買収事業のシナジー(相乗)効果が生まれ、収益機会の増加やコストカットを通じた成長が実現可能となる。このシナジー効果と類似した概念で「のれん」という概念があり、のれんは買収先の顧客やブランド、人材といった超過収益力の価値と解釈されている。本稿では、シナジー効果とのれんの関係性を解説するとともに、のれんが会計に与える影響や近年のトピックについて記

20年、30年先を勝ち残るための「M&Aシナジー追求」

M&A全般
20年、30年先を勝ち残るための「M&Aシナジー追求」

「イノベーション」と「M&A」最近、上場企業各社の中期経営計画等IR情報を見ていると、「イノベーション」と「M&A」という2つのキーワードを頻繁に目にする。中には、「今後3年間のM&A資金として総額●●億円を設定」といった一歩踏み込んだ公表を行う例も多い。企業価値向上への取組方針や具体的な取組内容を積極的に内外に向けて発信する上場企業が増えているのは好ましいことだ。近年の金融庁からの経営方針に関す

「シナジー効果・シナジー」に関連するM&Aニュース

コラム内検索

人気コラム

注目のタグ

最新のM&Aニュース