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人口減が全国に15年先行して始まった高知。 都会から人を呼びこみ新ビジネスを支援!

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日本M&Aセンターは2018年9月に高知県と提携しました。 人口減が全国に15年先行して始まった高知県。 その高知県を活性化するため、日々奔走する人々がいます。 今回お話を伺ったのは、坂本龍馬好きが高じ、広告代理店を退職して高知に移住したという吉冨慎作氏。 NPO法人土佐山アカデミー事務局長で、内閣府の認定する「地域活性化伝道師」でもあるそうです。

地元の人と都会に住む人をつなぐ役割

―土佐山アカデミーでは、どんな活動をしているのですか?

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土佐山アカデミー 事務局長 吉冨慎作さん。土佐山の自然は本当に美しかったです!

高知県高知市の土佐山(旧土佐山村)エリアで、土佐山の自然を活かしたプログラムをつくったり、古くなった民家を改修したシェアハウスを提供することで中長期滞在したい人を支援したり、起業志望者の支援を行ったりして、地域活性化に取り組んでいます。 自然を活かしたプログラムというのは、1日単位の子供向けワークショップから、三か月にわたるゆずなどの農作業体験プログラムまで、多様なものを用意しています。 たとえば「森のこども会議」というワークショップは、高知県教育委員会から「次世代リータ?ー養成フ?ロク?ラム」として認定されていて、昨年には、小学生から大学生までが参加し放置された山に人を呼び込む仕組みづくりを考える活動を行いました。 皆で手つかずの竹林を切って高さ8mの超巨大竹製ブランコをつくって誘客をねらうなど、楽しみながらも地域の問題解決に取り組む内容にしています。 ほかにも「究極の森遊びシリーズ」と題した「鏡川源流点の水で淹れる自家焙煎コーヒーワークショップ」や、「山暮らし体験ツアー炭と薪で暮らす二日間」など、子供から大人まで、地元の人から県外の人まで来てくれるようなものを企画・開催しています。 起業支援では、高知でなにか事業を行ってみたいと思っている県外の人をサポートしており、滞在の拠点を提供したり、私たちの人的ネットワークを生かしてコーディネートをしたりしていて、「NARIWAI STARTUP SALON」というコミュニティを作っています。

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ワークショップで制作された、土佐山の魅力を紹介するマップ

私たちの活動は主に県や市から支援していただいているほか、地元で応援してくださる方や東京から賛同して足を運んでくれる方も多く、我々に山をまるごと貸してくださった地元の方までいます。土佐山アカデミーの事務局メンバーは現在3名ですが、支援してくださる方々がいるからこそ、多彩なプログラムを実施できています。 こうした取り組みを通じて都会からたくさん人を呼び新たなビジネスを産むというのはもちろんですが、土佐山の子供たちに、自分の住んでいる地域の魅力を認識してもらいたいという気持ちもあります。将来、自分の地域のために何かしたいと思ってくれる子がいたらうれしいですよね。

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坂本龍馬好きが高じて高知県に移住!

―ご出身は山口県だそうですね。なぜ高知で活動されているのですか? ここに来る前は福岡で外資系広告代理店に勤務していました。坂本龍馬が大好きで、高知には何度も足を運んだことがあったのですが、2012年の冬にこの土佐山アカデミーの事務局長募集告知をたまたま見つけたのです。 事務局長を募集するのは珍しいなと思い、興味をもってすぐに応募しました。 高知県は、人口の自然減が全国より15年早く始まっており、“課題先進県”とも呼ばれています。だから、ここ地域の課題を解決できたら面白いですよね。土佐山だけでなく、高知に、そして全国に、同じような悩みを抱える地域はたくさんありますが、まずはこの場所で「課題」を「資源」に変える取り組みをしたいと感じました。

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過去の土佐山アカデミーのプログラムレポート

“人づくりから始まる持続的な地域のモデル”をつくりたい

―他の地域でもこの取り組みを展開したりはしないのでしょうか? 土佐山をでるというつもりは当面ありません。この活動を広げたいとは思っていますが、その地域の人を知らない限り、何もできないからです。勝手に入って行ってなにかできるわけではない。ただ、他県の市町村から声を掛けられる機会は増えていて、コンサルティングのような仕事はさせていただいています。地域資源を活用した研修や、自治体との協力など、他の団体に自分たちのノウハウを提供することで役に立てればとは思っています。 土佐山は、明治以降の自由民権運動の震源地でもあります。板垣退助の秘書が土佐山出身で、地域住民が集って社会の在り方を議論した「夜学会」発祥の地でもあるのです。昔から社会や学校が人を育てる文化のある土地なので、次の30年も、最先端のテーマについて学べる場所にしていきたいです。 人々が集い、学ぶ場として、土佐山に新たな魅力が加わることで、“人づくりから始まる持続的な地域のモデル”をつくっていけたらと思っています。

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写真左は土佐山アカデミー事務局の下元祥世さん。高知県出身でUターンしてきたそうです。写真右は吉冨さん

―ありがとうございました。 ちなみに取材中、千葉県から土佐山に移住してきて、土佐山アカデミー紹介のシェアハウスに住まれているご夫婦にお話を伺うこともできました。前職で高知県に赴任した際に魅力を感じ、土佐山に移住されたそうです。 奥様も高知の暮らしは楽しかったのですぐに賛成されたのだとか。工業デザイナーとしての過去の経験をいかし、家具などのモノづくりや、Web制作などの分野で起業する準備をされているそうです。

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千葉県から移住してきた鈴木夫妻

“課題先進県”と呼ばれる高知県を活性化すべく活動している方のお話をじかに聞くことができ、非常に有意義な時間でした。ずっとその地域にいる人にとっては当たり前で気が付かない魅力や資源について、外から来た人だからこそ気づき、活かすことができるのかもしれませんね。 中小企業のM&Aでも、伝統技術を外から来た人が活用しシナジーを生み出す事例があり、相通じるものがあると感じました。
土佐山に住む人の魅力は言うまでもなく、山や川など自然も本当に美しい素敵な町!みなさんも足を運んでみてはいかがでしょうか。 日本M&Aセンターでは、これからも「高知県」「地方創生」についての情報発信をしていきます!お楽しみに。

日本M&Aセンターと高知県の提携については詳しくはこちら! 「自治体との連携協定ってどんなことをするの?」
土佐山アカデミーの取り組みについてもっと詳しく知りたい方はこちらから

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M&A マガジン編集部

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