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“留職”って何? 未来を切り拓く、次世代リーダーを育成する方法。後継者を決める手段としても【前編】

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「部下に、リーダーシップを身につけてほしい。」 「幹部社員や息子に自分の後継者になってほしい。」 「人材育成」は、経営者にとってはもちろんのこと、部下を持つビジネスマンならだれでも考える共通のテーマ。当然ながら、会社の未来を背負うリーダーに求められる能力は多岐にわたり、一朝一夕で身につけられるものではありません。中小企業にとっても大企業にとっても、経営人材の育成が会社の未来を左右するといえるでしょう。 “留職”という言葉を知っていますか? 次世代リーダーを育成できると評判を呼び、リピート率が高い人気の研修プログラムです。このプログラムを運営し急成長しているNPO法人クロスフィールズ 代表理事の小沼大地氏に、人材育成をテーマにお話を伺いました。

NPO法人クロスフィールズ 小沼氏

NPO法人クロスフィールズ 代表理事 小沼大地氏

本業のスキルを活かして課題解決

―「留職プログラム」は非常に人気だそうですね。どのようなものなのでしょうか。 企業の若手社員を約3か月程度、発展途上国の社会課題の現場に派遣し、本業のスキルを活かして現地団体が抱える課題の解決に挑むリーダー育成プログラムです。例えば、エンジニアとして活躍する人が遠隔医療の効率化のためのアプリを開発したり、営業職の人が有機栽培農作物の新規顧客開拓とセールス体制強化に取り組んだ事例など、日本を含むアジア11か国、80団体の社会課題の現場と、日本企業35社で働く150人のビジネスパーソンをつないできました。 渡航前には、事前に派遣元企業の人事担当者や参加者本人と面談を重ね、どのような団体でどのような課題を解決するのか設計しますが、現地に行ってからも参加者本人がどの課題を解決するかを自ら決断しながらプロジェクトを進めていきますす。プログラムの最初の1週間程度は当団体の職員が同行しますが、そこからは1人で文化や言語の異なる現地スタッフとコミュニケーションを行い、成果を出さなければなりません。この過酷な環境下で課題解決に取り組むことが、結果として大きな成長につながります。参加者や派遣元企業、そして現地団体からも好評をいただいており、おかげさまで現在は大手企業を中心に多くの企業から人材育成プログラムのひとつとして導入していただいています。

自分の仕事の枠を超え、何ができるか

―数か月間、途上国に1人で派遣され社会課題解決をするというのは、非常に鍛えられそうですし、日常業務では得られない気づきや学びがありそうですね。参加者の変化はどうでしょうか。 教えてくれる先輩や上司がいない中で、「どうしたら現地の人たちのためになるか」「自分には何ができるのか」を突き詰めて考え行動することで、課題思考力、積極性、実行力、周囲を巻き込むリーダーシップなどが身に付きます。また、異国での圧倒的な原体験を通じて、自分自身に向き合い、自社は社会やお客様にどんな価値を提供できるのか改めて考えることで、仕事へ向き合う姿勢が変わったという感想も耳にします。

CROSS FIELDSのVision・Mission

CROSS FIELDSのVision・Mission

どんな企業も昔は小さなベンチャー企業で、志を持って会社を興した偉大な創業者がいますが、会社の規模が大きくなるにつれ、その志を社員全員に浸透させるのが難しくなってきたり、一人一人の仕事が企業の歯車のような存在になったりしてしまうこともあります。ある程度はやむをえないことですが、大企業にはすばらしい人材、製品、リソースなどがあり、もったいないことだと思います。留職を通じて、社員が改めて自分は何のために仕事をしているのか、自分の決まった仕事の枠を超えて何ができるのかを考え、行動に移すことで、組織を変革する人材の育成につながるのではないでしょうか。 2016年からは、企業の経営層・幹部社員向けの「社会課題体感フィールドスタディ」事業を始めました。国内外の社会課題の現場を「体感」して、困難な課題に立ち向かうリーダーの活動と志から刺激を受けるプログラムです。第1回は6社13名のメンバーで1週間程度インドに行き、テクノロジーを活用して酪農を行う団体や僻地医療の変革に取り組む団体などを視察し、意見交換を行いました。

途上国というと、インフラ整備や医療現場など、草の根での地道な活動をイメージされる方が多いのですが、このプログラムでは最新のテクノロジーをフルに活用している場面も目にするため、参加者からは驚きの声があがります。日本では一流大学の卒業生は大手企業に入社するという流れが主流ですが、東南アジアでは社会課題解決に関わる仕事に就き面白い仕事をしている優秀な人材が一気に増えており、学ぶことが多く刺激を受けます。 フィールドスタディでは、社会課題を肌で感じ、現地の起業家らリーダーの考え方・アプローチ方法を知ることで、自社がどういう未来をつくっていくのか考えるきっかけになります。年明けには、アフリカのルワンダで続編となる企画も予定しており、あっという間に募集定員を超えました。前回参加企業の6社が全社継続して参加して頂いているほどで、私たちも驚いています。 “留職”って何? 未来を切り拓く、次世代リーダーを育成する方法。後継者を決める手段としても【後編】

著者

M&A マガジン編集部

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